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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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032話

「え~皆様おはよう御座います」

ジークとドロシーが修練の門から出て1日、遂にやって来たウォーゲームの再開日。審判のポズンが到着しサイコロを上へと投げたポズン、太陽に重なってから地面に落ちたサイコロは数回バウンドしてから出目をあらわにした。6と2。

「人数は6人!そしてフィールドはキノコフィールドとなりました!では参加する方は前へお願いします」

戦い場も決まり次は出場する選手。ギンタ、スノウ、ドロシー、ジーク、アルヴィス。そして最後にかっこよく出ようとしたナナシだがそんな彼を差し置き一人の男が前に出た。

「俺様が行くぞ」
「なんやアランのおっさん、今回は出るんかいな」
「久しぶりだなおっさん出るの」
「偶には運動しねぇとな」

これで6人が決まりポズンは早速アンダータを発動しメルのメンバーと共にキノコフィールドへと移動した。アンダータの光に包まれ今回の戦場となるキノコステージへとやってきた。あたり一面あるのは無数の巨大キノコの数々。

「な、なんだぁここぉ!?キノコの森か!?」
「食えるかの?」
「こんな色のキノコはちょっと……」

見るからに毒キノコと言わんばかりの毒々しい色に少々げんなりしつつ周囲に目を凝らすと中央部に一際巨大なキノコが育っていた。ガーディアンを発動させてもスペース的に問題が生じないレベルの巨大キノコに驚くギンタだが迫り来る魔力に顔を引き締めた。

次々と転移してくる深くフードつきのマントを羽織ったチェスの戦士達の禍々しい魔力に驚く一同。その魔力に鳥肌が立つがその中でも異彩を放つ魔力の持ち主が転移してきた。炎を纏い転移してきた男、カルナ。禍々しい魔力の中に浮かんだ清純で粗さがない魔力の持ち主。

「カルナ………」

無意識にバルムンクの柄を握り締めるジーク、自分はカルナと戦う事が決定しており鋭い高のような瞳は一直線に此方を見据えている。混じり気のない純粋な闘気、自分に奴が倒せるかと言う一抹不安が心を過ぎるが直ぐに一蹴する。自分にはドロシーと言う頼もしい女性がいる限り負けはしない。

「全員がナイトクラスだが知らないがな、俺が一蹴してやるぜ」
「おおいきなりおっさん出るのか!?期待してるぜ!!」
「任せとけ!」

そう言って巨大なキノコの上へと降りるアラン。チェスも一人身軽な動きでキノコの上へと着地しアランと対峙する。

「メル アラン! チェスの駒 シャトン!試合開始!」
「行くぞッ!」

早速駆け出したシャトンは大きくジャンプしながらマントを脱ぎ捨てた、そして姿が露になるがその招待に思わず凍りつく一同。猫のような獣の耳に可愛らしい尻尾を持っている娘であった。そんな思い掛けない姿に呆然としたのかアランも口を開けたまま何も言えずにいた。

「何だあの子………」
「猫耳って……」
「(ドロシーが付けたら似合いそう………後で頼んでみよう)」
「でも凄い使い手かもよ?」
「だがあのアランさんに限って負けることはないだろう」

と思い思いの言葉を言う一同だが当のアランは顔を青くし戦いたく無さそうにしている。そして誰変わってくれとまで言う始末、それに思わず笑いが起きるがポズンによって交代は却下されてしまいそのままアランが戦う事に。

「おじちゃ~ん、そっちから行かないならこっちから行くニャ~ン♪ウェポンARM パラ・クロー!行くニャ~!」

猫のような身のこなしと俊敏さを見せ付けるような柔らかな動きでアランに接近しつつ黄色に染まって左手で襲い掛かってくるシャトン。それをギリギリのところで見切るように回避して行くアランにギンタ達はやはり余裕を見せるアランは流石だと褒め称えるが何処か様子が可笑しいと感じるジーク、ドロシー、アルヴィス。

「なんかおっさん変じゃないか?妙にうろたえた動きと言うか……」
「ああ。触れられたくないから必死で避けてるって感じだな」
「う~ん、アランってああいうタイプの女の子苦手なのかしら?」

「ええいもううっとおしい!エアハンマァア!!」

漸く攻撃に打って出たアランは空気を圧縮した爆弾を連続発射しシャトンを攻撃する。シャトンも余りの手数に怯み連続で空気の爆弾を喰らい倒れこむ。が直ぐに起き上がり

「ニャアアアアア!!!痛いニャアアアアア!!」

なんと泣き始めた。大声を上げての号泣、流石のアランも少女を泣かせた事に心を痛めているのかたじろき大量の汗を掻き始めた。明らかに普段のアランからは考えらない挙動。そんな姿を見たスノウはある重大な事を思い出した。

「私思い出した……アランは」
「「「「「「アランはっ?」」」」」」
「猫アレルギーなの!!!」
「「「「「「ええええええ!!!!??」」」」」」

なんとアランがシャトンの攻撃を必死に回避していたり泣き始めた姿を見て顔色を悪くしたりしていたのはアレルギーだと言うのが原因だった。

「ね、猫アレルギー……ってでもおっさんメリロさん持ってるじゃん!」
「そういえばあの娘も猫耳だな」
「わ、私てっきり猫耳っ子大好きなのかとずっと思ってた………プククク……」

強面な顔に似合わず猫アレルギーで猫が大の苦手だと言う事が判明し思わず大笑いしていしまう一堂にアランは憤り思わず怒鳴り散らす。本人曰くメリロはARMだから平気とのこと。

「アラン兎に角エアハンマー連射で行った方がいいぞ!」
「わぁーとるわってこっちくんなぁあああああ!!!!??」
「ニャニャニャー良い事聞いちゃったニャー!待てニャー!!」
「だああああああ!!」

猛スピードで迫ってくるシャトンに全力疾走で逃げ回るアラン、その必死の形相で走る姿は前回のウォーゲームの猛者ぶりを知っている者からしたらかなりきつい物がありアルヴィスは見ていられないのか完全に目を伏せてしまっている。

「だぁああかああらああ来るなあああ!!!」
「逃がさないニャ~!!ネイチャーARM キャットウォーク!!」

ARMを発動すると更に加速したシャトン、猫と言うよりもチーターなどを思わせるスピードを発揮し一気にアランの頭上を取る事に成功する。

「ぬぉ!!!」
「これで、終わりニャアア!!」
「ぎゃあああああああ!!!!」

鋭い爪がアランの身体を引き裂き大地にも大きな傷跡を残す、深々と抉られた身体からぼたぼたと血が流れ出し地面を染め上げていく。

「ニャハハハハ!おじちゃんやるねぇ、一瞬身を引いて致命傷は避けたニャ!気に入ったのニャ!」
「てめえみたいな猫娘に気に入られても嬉しくねぇよ………!(だ、だがやべぇ……結構深いぜこの傷………)」

何とか致命傷は避けたもののアランが負った傷は相当な深手。このまま戦い続ければ出血多様でショックを起こす可能性がある。

「こ、こうなったら取って置きのARMで………!!」
「ニャン(チュッ♪)」
「―――………(バタンッ!)」

切り札を出すと決意し顔を上げた瞬間ドアップのシャトンの顔面を凝視してしまったアランが悲劇は連鎖する。なんとそのままアランはキスされてしまいその際のショックで気を失って倒れ込んでしまった。

「勝者シャトン!」
「おじちゃん可愛いニャ~ン♪」
「……お、おっさんぇ………」
「俺は何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない何も見てない」
「現実と向き合えアル」

なんともカオスな空気のまま第一戦が終了してしまった。敗北してしまったアランは白目を剥き口から泡を吹いている。

「ありゃあ………ス、スノウ治療出来るか……?」
「外傷なら」
「しかしまさかこんな弱点があったとは………」
「まあアレルギーはものによっちゃ死んじまうらしいししょうがないじゃないか……?」
「でも、かなり情けないよねこれ……」
「言ってやるなドロシー」

初戦を落としてしまったメル。果たしてこんな調子で今回のウォーゲームを勝ち抜けるのか? 
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