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クルタ

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第二章

「いやいや、それはね」
「その値段じゃないと駄目なんですよ」
「その値段で最適です」
「それだけの価値ありますよ」
「それ保障出来るの?」
 おばさんは顔を顰めさせて二人に問うた。
「ちゃんと切れるって」
「ほら、この通り」
 ラスルは紙を出してだ、そうして。
 その紙をおばさんが言うハサミで切ってみせた、見事な切れ味だった。
 それどころかだ、タハミーネは。
 ナイフを出して別の紙を切ってみせてだ、おばさんに言った。
「こちらのナイフもです」
「あら、そっちもね」
「どうですか、この切れ味」
「いいわね」
「そうです、よかったらこっちもどうですか?」
 ナイフもというのだ。
「こっちの値段はです」
「あら、その切れ味でなの」
 値段を聞いてだ、おばさんは目を丸くさせて言った。
「いいわね」
「安いですね」
「お買い得ね」
「それでハサムは」
 ラスルもあらためてだ、おばさんに尋ねた。そのハサミを右手に持って。
「どうされますか?」
「そうね、その切れ味ならね」
「この値段でいいですね」
「ええ、それでいいわ」
 おばさんも納得した声で返した。
「もうね」
「ではハサミとナイフですね」
「買わせてもらうわ」
「毎度あり」
 ラスルは笑顔でだ、代金を受け取ったのだった。
 そしてだ、兄妹で他にもだった。
 次から次にだ、威勢良くしかも二人が望む値段でものを売っていった。そしてその日の売上を見てだった。
 ラスルはタハミーネにだ、笑顔で言った。
「いい感じで売れてるな」
「そうね、予想通りね」
「やっぱり俺達才能あるな」
「商売の才能がね」
「学校を休んでまで来たかいがあったな」
「わざわざ首都まで来てね」
「いや、よく売れるよ」
 満面の笑顔での言葉だった。
「これは完売まで近いな」
「そうね、じゃあ完売したら村に帰って」
「お金家に入れような」
「是非ね、ただね」
「ただ。何だ?」
「売上が予想以上だったら」
 それならとだ、タハミーネはここでラスルに言った。
「我儘言っていいかしら」
「我儘?」
「そう、服買っていい?」
 女の子らしいことをだ、タハミーネはラスルに尋ねた。
「ちょっとね」
「売上がよかったらか」
「そう、その時はね」
 こう問うのだった。
「そうしていい?」
「服って何買うんだ」
「いや、実はクラスで最近奇麗な服着てる娘がいて」
 自分の学校生活のことからの話だった。
「それが気になって」
「それでか」
「私もそうした服欲しいって思って」
「高い服は止めろよ」
 これが兄の返事だった。
「今のうちの状況はな」
「お葬式とか他のお家のお祝いとかでもの入りで」
「苦しいからな」
「只でさえ最近景気が悪いのに」
「借金まであと一歩なんだ」
 そうした苦しい状況だからというのだ。 
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