Unlimited・Oratoria
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二話 この牛野郎!
「ふっ・・・・ふっ・・・・・」
俺は今、テューに一室を借りてトレーニングを行っている。一般で言う腹筋というものだ。何でそんなことをしているかって?それはテューとの会話によることなんだが・・・・・。
テューはテーブルでお茶を飲んでいる。ちなみに注いだのは俺だ。
いきなりテューに"どうでもいいけど注がないと死んじゃう病"略して"DT病"を宣言され、更に実際にテューのご機嫌を取らないと死んじゃうので今絶賛召使中なのである。
「悪くはないけど・・・45点!」
「初めからはたったの5点・・・先は長いなぁ」
「いやそんなことはないよ?始めのほうにしては上出来だ」
「本当ですか?」
ああ、本当さ。と軽く答えながら。お茶をまたすすり始める。別に悪いわけではないようで普通には飲んでくれる。だけどただ・・・
「テュー、・・・感想とか無いの?」
「あれ、僕の超!辛口コメントに期待しているのかい?」
「あ、すいませんでした」
何だぁつまらないなぁとかいいながら、また一口。
いつもよりは良かったのだろうか。飲む回数が多い。俺もちょっと飲みたくなったので、テューの横の席に腰掛ける。
自分の分の紅茶を飲んでいると横から不思議な擬音が発ち始めた・・・。
「ふにゅ・・・ぅ」
「・・・・・・・」
テューの喉元を確認する。睡眠中は唾液の量が格段に減るので、飲み込む回数が極端に減る。それを確認するために喉元を凝視する。
喉元には微細な動きも、飲み込む振動もしばし無かった。ゆっくりとした肩の動き、心拍、微細な動きの変化から俺のむすk・・・違う、テューは寝ているということに断定し、テューをよく眺めてみる。
桜色の頬、可愛らしい唇、甘い吐息、丹精な顔、綺麗な瞼。
魅了の神でもないのに、その体は俺を引き付ける。何かに洗脳されたように俺の思考回路がピンク色に染まる。
いやいやいや!駄目でしょう!と俺の理性が過敏に働き、テューの肩にあと数センチで届くといったところでテューから離れる。寝ている奴に愚考をするなんてサイテーだと分かってるのに。
「・・チッ」
「OK、待て話し合おう」
舌打ちで起きていたことを簡単にばらしたテューに色々と話してもらう。彼女はかなーーり渋ったが、俺がテューの(何か封印が施されている)写真集を手に持つとテューは顔を真っ赤にしながら、俯きもじもじ答えてくれる。人差し指を合わせるとか、現実で見れると思わなかった。曰く、何か君の感覚やら危機感やらを確認したかったらしい。
舌打ちしてる時点でこの議論はしゅうりょーです。ハイ。
この後、テューの頭には30分のグリグリ耐久を強いられました。
で、その一騒動が終わったあたり。
「君、そのまま30層出ても死んじゃうよ?(棒)」
「何故棒読みなんだ・・・」
「うーん、そうだ!幸いにもここにはトレーニング施設がある。それを使って能力を一定まで上げた後・・・」
「後?」
「―――地上まで走り抜ける」
――ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッッ!!??――
俺は自分の注いでいた、お茶か何かの茶色の液体を盛大に噴出す。
まぁ、テューに当たる一歩手前で全て消えるのだが・・・・。
テューは何事も無かったの用に続ける。
「地上に君の住むところを用意できる。しばらくはそこを拠点にしてもらって構わない・・・だけど」
「ゴホッゴホッ・・・・だけど?」
「時々、ここに帰ってきて・・・貰えないかな・・・?」
テューがクッションを抱え込み、顔を逸らしている。・・・・チラチラこちらを見ているのも丸分かりだ。
(なんだ、この極限まで可愛い生き物は・・・ッ!!)
我慢できなくなった俺は、テューに急接近する。それだけでもテューはポカンとした顔になるのだが、更に俺は右手を使って頭を撫でる、撫で続ける、撫でまくる!!
なぜか、テューの顔がトロンと変化していたのは、また別のお話。
トレーニングを続けて、はや半ヶ月。魔力なども特訓により向上が見られる。最初はダガーのようなものしか作れなかったのだが。ロープなども次第に作れるようになり、中層の竪穴を通っていけばすぐに地上近くまでいけるだろう。
―――そう考えていたのだが。
テューが、たまたま30層以下まで入ってきているパーティを見つけたのだ。しかもそろそろ帰ろうと帰路に立とうとしているらしい。なんて好都合なんだ。主人公補正でもあるように思えてきた(主人公です)。
神様が渡しててくれた鏡のようなものに映像が映る。遠くからの映像なので断定は出来ないが、アイズ一行だろう。
まったく、俺の半ヶ月は何だったんだ・・・。
送る準備が整ったので彼を呼ぶ。
「おーい。神無奈ー!」
呼ばれてこちらに来た彼は、やっと外へいけるんだというように笑顔を浮かべている。そっと心を読んでみたのだが、どうも自分では気付いていないらしい。コレが天然(?)というものか?―――一回、彼の中で天然と呼ばれたことはおいておこう・・・。内容を見た限り、あまり誉められたものではないのだと思うから。
といいつつも地面に起動させた魔方陣を起動させていく。
「・・・いってらっしゃい!」
「!!・・・・いってきます!」
彼は満面の笑みを浮かべ、魔法陣の中に消えていった。
それはそうと余韻に浸っている暇は無い。神無奈の監視と宿の詳しい契約を・・・
彼の名前・・・漢字というんだったか?面倒くさいし、こっちにあわせてカムナにしておこう。うん、それがいい。
―――ギャァァァァアアァァァア!!
何でや!俺は今数匹のミノ牛野郎に追いかけられ中。トラウマになるぞ今畜生!
事を遡り実に3時間前、アイズたちのパーティというのを確認して近づこうとしたのだが、彼らは俺をはるかに上回るスピードで帰路に着く。俺はそれを全力で追っていた。彼らはモンスターと戦い、その後を俺は通るのでもう少しで話が出来る!・・・と思っていたのもつかの間、彼らと戦っていた牛野郎共がこちらに視線を向け、こちらにダッシュ!
そして俺は何匹かの牛をまきながら、上部へ駆け上がってる。今の考え中にも何匹かまき、ついに牛は一体になった。そんなところで目の先には白髪のあからさまにルーキーの冒険者。
「ここでかよぉ!運命って言うもんでもあんのか!?」
なんだか運命に引き込まれている感覚がする。彼が逃げていく先に自然と脚が吸い込まれる。
「ひぃぃいいい!?」
白髪の彼が驚きに顔を歪ませる。原作通りなら、これで俺もろとも助かるだろうと思っての決断だ。アイズとベルの出会いは、ベルにとっても必須だし!WINWINだね!
行き着く先は狙った通りに行き止まりで、先にベルは壁を背にしている。俺も壁にたどり着いたころ、ベルは怯えと驚きを混ぜたような顔を見せてくる。・・・そんな顔しないでくれ、そんな顔しなくても君は助か・・・ッ!!。
気付いてしまう。ミノタウロスがベルに拳を向けていたことに。後ろを走っているアイズが数瞬、間に合わないことに―――。
「クソォ!未来を捻じ曲げてんじゃねぇよ牛野郎ォ!!」
速攻魔法、メタモルフォーゼを使用する。第二位(仮)の攻撃を食らえ!
この魔法は集中力によって出来が大きく変わる。さらに余談だが、作る力が作る物に足りていないときは形はあっている黒い物体が出来る。しかし黒い物体は少したつと消えてしまう。これは概念の維持ができていないからとテューが言っていた。ならば出来るんじゃないかと考えたもの、今からはじめて使う仮説の力を説明しよう。
―――簡単だ。概念が維持できないなら。消える前に使ってしまえばいいのだ。
―――イメージする。天叢雲剣アマノムラクモノツルギ。別名、草薙剣クサナギノツルギ。俺らの世界で伝説の剣とされた刀を手に取り出す。斬る一瞬でいい。維持を・・・・ッ!
視界が目眩のようなものでチカチカしている。精神疲労マインドダウンの前兆だ。だがそんなものはどうでもいい、MP切れだァ!?LV1だァ!?・・・人を助けるのをやめる理由にならないだろ。元はといえば俺がまいた種だ。俺がかたずけなくてどうする!!
払う。俺の手に持つ黒い物体がミノの胸と殴りかかろうとした腕を一瞬にして斬り飛ばす。本物ならもっと強いのだろうが、俺の魔力とイメージじゃ、ここまでだろう。あ・・れ?視界が・・・。
目が覚める。
広がる視界には家屋であろう物の天井。つまり、ダンジョンではなく家の中ということだ。俺の思考はそこで止まる。俺が寝ているであろうベッドの脇に彼女が。超重要原作キャラであるアイズ・ヴァレンシュタインがいたからだ。
幸いにもまだ起きたことには気付いていないらしい。
自分の魔法的にも追いかけられないとは決していえないし、ここまで待っているとは何か事情があるのだろう。決して、アイズさんとどーのこーのなりたいわけではないよ?
やましい気持ちなんて四分の一ぐらいしかないからね?
でもどうしようか、このままだと原作ブレイク直行ルートなのだが、出来るだけそれは避けたい。こっそり気付かれない様に横の窓から出る・・・とか?。アイズたん絶賛凝視中。
すばやく脱出☆逃走☆。地獄まで追ってきそうなアイズさん。
・・・まぁ、あの凄そうな力を一応全力で使ったしなぁ・・・。―――――だめだ、逃げ出せる力が絶対的に無い。
あきらめて俺はベッドから背中を離す。
「起きた、の?」
「あぁ、起きた。体調もばっちりだ」
「悪いけど、君のステータスを見せてもらった。・・・・どうみても、あんなことが出来るステータスだとは思えなかった」
穴が開くぐらい俺のことを凝視している。あぁこれは質問攻めですな。
「そんな睨まないでくれ、綺麗な顔してるのに睨んでたらもったいないぞ?ほら笑顔笑顔」
俺は満面の笑みを浮かべる。前世では笑い顔はすごくよいと言われた俺に笑顔がうまく出来ないわけがないだろう。
「笑顔?・・・こう?」
彼女も笑顔を見せてくれる、ちょっとぎこちなかったもののその女神のスマイルは俺の目が浄化されていく。うむ、眼福眼福。
「それで、なんであんなことが?」
・・・Oh・・・。話を変えて避けようとしていたのだが。俺のなけなしの話術では無理なようだ。嘘の付けない俺は渋々魔法のことを話そうと・・・・
―――バァァァァァアアアァン。
「アイズたんが男連れ込んだってホントかァァァ!?」
あ、ペッタン神だ。掴みかかりたいけど、その無い胸じゃつかめないかも。割とマジで。
「・・・?うん、ホント」
「待ってろ、餓鬼ィィィィ!その首切り落としてやるから待っときぃやぁ!」
「駄目、彼病人。だよ?」
神怖い、この世界で殺人ってオッケーだっけ?怖さで恨み消し飛んだわ。
アイズの必死の説得により、ロキは正気を取り戻した。
「ロキファミリアに入ればいいやん」
「はいぃ!?」
俺がアイズを退出させて、ロキに洗いざらい話していると、ロキは突然そんなことを言い出した。
話をちゃんと聞いてみると、建前的にロキファミリアにしとけば、冒険者登録もスムーズだろうと話してくれた。でも、話中の小声で言っていたのは何なんだろう、何か裏がありそうだ。
そういうのは俺の得意分野じゃないので、ロキに任せることにした。
まぁ確かに便利なのにはかわりないなので俺は誘いを受けることにした。
ロキはチャッチャと神の恩恵を受けて、晴れてロキファミリア入りした。
後書き
私はロキファミリアが大好きです。
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