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Unlimited・Oratoria

作者:焼茄子
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一話 プロローグ

―――深層の更に下。

彼ら、・・・・冒険者が明るみに出そうとしている其処には一つの秘密があった。
その秘密とは・・・ダンジョンの起源についてのものであり。神が神に隠した唯一の嘘である。
神が隠した、晒されない神話。死のうとも死ねない不死の魔神を閉じ込める檻。
封印されし神の為の牢獄である・・・。





目が覚める。ひんやりとした地面の感触。自宅じゃありえなかった感覚の存在。おぼろげに見える、自室じゃない天井。ここは何処なのか・・・。俺の家の天井はこんなに高くないし、床はカーペットだからひんやりとした冷気が伝わるわけもない。
背中に力を込め、上半身だけグッと起き上がる。起き上がった後にきょろきょろと周りを見渡す。灰色をベースにした硬質的な壁。本を詰め込んだような本棚。どれも知らない、見たことのないものだ。そして・・・目の前にいる不思議な格好をした子供・・・・。

「あ、目が覚めたかい?」

まず、この状況が理解不能です!誰か教えてくれる優しげ女子家庭教師はいませんか!?あ、若めでお願いします!
―――と半分冗談はさておき、本当にここが何処かとか色々分かりません!

「そっか、分かんないかー・・・じゃあさ!」

「じゃあさ!、じゃないです。と言うかナチュラルに心を読まないでください・・・・」

と疲れたという感情を表に出そうとしないで回想に浸り始める。
何でそんなことをだって?そんなの、ダンまちの世界(ここ)に来た理由を探るためだよ!








―――俺は確か、・・・・色々なアニメを見終わった後。突然、何を思ったのかダンまちの円盤を買おうと思い、近場のDVD店に繰り出した。
なぜかダンまちのDVDだけ無かったので神様を恨み。
・・・・・具体的には、こんな仕打ちをするのはあのペッタンコ神だと決め付けて勝手に恨み、店を出ようとした。
そうすると何の因果か、誰かが落としたDVDが割れて破片が何かしらの、多分スキャナーだと思われるものに入った。それは火花を数瞬散らした後に派手に爆発した。
そして、爆発を帯びたそれは勢いよく地面に倒れ、その熱源にスプリンクラーが作動する。
スプリンクラーの信号と、爆発で末端まで伝わった熱が反応し、スプリンクラーが異常反応を起こし、水じゃなく何か気体のようなものを放出し始めた。
それが水素だったと言うことに気付いたのは、俺の体が爆炎に包まれてからだった・・・・―――。





色々考えてみたがやっぱり分からない。俺は死んだのだ。内臓、肺、その他諸々の焼け溶けていく耐え難い感覚は覚えている。―――ハッ!もしかしたらダンまちの世界は死後の「違うんだなコレがッ!!」くそぅ!俺の考えにまでセリフ乗っけてくるなんてどこまで規格外なんだ!!
そう色々考え込んでいると、思いがけず目の前の、心読み(仮)さんが答えを教えてくれた


「君は死んだ・・・。そして僕が、生き返らせた。単純だろう?」

「OK把握「理解早すぎぃ!!」・・・・・あれ?何でよりにもよって俺が?」

当然の疑問だ。確率だとしてもその中、俺が選ばれる確立は、ただいまの地球の世界人口だけ見ても71億人。さらに、ここから見ると俺達の世界のような異世界までカウントに入れたら、もう計算も不可能だ。パーセクとか天文学的とかじゃ計っても計れないだろう。その中で俺が選ばれただと?

「それはねぇ、・・・どうしてだったっけ?」

「まじか!!」

「ハハハ、まぁいいじゃないか。多分ロキが一晩でやってくれました☆的な奴だよ」

ナニッ!?くそっ、あのペッタンコめ!覚悟しとけよ!絶対その胸倉に掴みっかかって一発入れてやるから・・・!
あ、その胸倉が地平線(ホライゾン)だから掴みどころが無いか。

「そいえば、自己紹介がまだだったね、僕は先ほどの言ったとおりここに幽閉されている神☆テューポーンだよ。君は親しげにてゅっきゅんって呼んでも「じゃあ、テューで」君もセリフ割り込みとか大概だと思うけど!?」

ダンまちの神は地球の神話の神と同じことは知っている。まぁ、それもアニメの範囲内でしか知らないが。
でも、テューポーンか・・・。確か・・・ガイアの息子で、一説によるとタルタロスとの間の子。エキドナの夫で、キマイラやケルベロス、オルトロス、ラードーン、ヒュドラーなどの怪物の父でもある。また、多くの風の神々の父でもある。一説では、ゼウスの浮気癖に怒ったヘーラーが、彼を懲らしめるためにクロノスからもらった卵から生まれたものという説や、ヘーラーが産みピュートーンに育てさせたという説もあって。
巨体は星々と頭が摩するほどで、その腕は伸ばせば世界の東西の涯にも達する。底知れぬ力を持ち、決して疲れることがない。肩からは百の蛇の頭が生え、炎を放つ目を持ち、腿から上は人間と同じだが、腿から下は巨大な毒蛇がとぐろを巻いた形をしているという。
また、伝承によっては鳥の翼を持ち、多頭竜のような姿をしているとも言われているっていうあれか(wiki参照)。

―――では実物を見てみよう。

背中には堕天したような感じの黒い翼は・・・・なく。じゃあ、頭は蛇のような・・・・でもない。
見た目は髪が白い性別不詳。ただ、所々の装飾品は蛇を象って、服装にも一応神格と言うものが感じられる。
言ってしまうと、神様っぽいがこっちの伝承とは結構違うってことだ。
まぁダンまちの世界なんだから、当たり前だけど。

「ふむ、君は僕の事を結構知っているみたいだけど・・・所々違うね・・・」

「こっちの世界の産物だからな・・・多少は誤りがあるかも・・・」

こんなところで、中学時代の黒歴史が役に立つとは、・・・何か、神話とか結構調べちゃったりするよね?―――えっ?俺だけ?

「誤りがあるにしても・・・なぜテューがここに?というか何故他神がダンジョンを探索させている?」

「それはね、"勝利の果実"を求め"無常の果実"を食わされたのは本当なんだけども、封印したのは山じゃなくダンジョンだったんだ。でも、ゼウスが一回負けてたから戦ってたことすら他の神たちに隠蔽しててね?ファミリアがくるのはそれでなんだけど、・・・モンスターは僕のせいでね。見つかるのが嫌とかじゃないんだけど"無常の果実"のせいで出た力がここに一旦定着しちゃったんだよ。以前僕は封印されてて力が戻らないままだから、力が居座ってるの。元々、僕は魔獣を造ることに長けていたからそれも災いしててね・・・それで・・・・」

おお、意外とヤバめのストーリーのようだ。だが、その話は俺の興味を多分に引き付けるほど面白いものであり、気がつくと俺はテューの話に熱中していた。

「・・・・・なんだけど、話分かった?何か瞼半分下がってるけど?」

「ありがとう、かなり状況が分かった」

その話と冒頭の説明で、ここが深層の下・・・しかも原作の59層なぞ遥かに超えた100層・・・しかも特別部というのが分かった。便利なことにここから30層ほどなら自由にいけるのだとか。便利だなぁ・・・。

「あ、50層以上は1層上がるごとに僕の力の減る量が大幅に変わるのでそこんとこよろしくー」

「お前の辞書にはプライバシーと言う文字は無いのか!?」

これでは、いつでも個人情報丸出しだ。

「とはいっても、僕は力置いてきて下界に来たわけじゃないからね、力が無くともコレくらい当たり前なんだよ」

「ナニソレ怖い」

「とゆうか、こっちに来てくれない?話もした通り、君に恩恵を与えないと・・・」

そうだ、先ほどの話の最後のほうに恩恵が無いとすぐ死んじゃうって・・・。
背筋がゾクッとなる感覚がする。やべ、鳥肌立ってきた。

俺は小説と同じように、着ている上着に続きシャツも脱いだ。ダンジョンの最深部だと言うのに冷気を全く感じない、どういう仕組みしてるんだろうこの部屋。
ふと、この部屋のことを考えて辺りを見回す。―――まぁ、手錠とかヤバめの棚や扉がある以外は、普通の家のリビングかな。
何か気になるものはあったが。今は神の恩恵(ファルナ)のほうが重要だ、部屋はその後じっくり調べるとしよう。
擬似ソファーのようなものにうつぶせになる。数秒後、ツーと液体を付けた手で背中を撫でる感触。円やその他模様を書き終わった後、何か紙を取り出していた。あれにステータスを移すのだろう。

神は紙に目を通したとき一瞬顔を硬直させたが、そんなことが無かったようにすぐに戻る。予想よりステータスが低かったとかかな?
俺はその様子を見て、スッとテューの手から紙を抜き取ろうとする。気付いたテューは抵抗するが、遅い。そして、俺の手に紙は渡ってしまう。



神無奈(カムナ)

Lv.1

力:F 389

耐久:G 298

器用:G 221

敏捷:E 416

魔力:E 493

《魔法》



《スキル》
【*****】


その紙には苗字が無かった。そういえば俺は、物心つく前から一人で捨て子と言う扱いになっていた。つまり、両親を知らないから苗字が無いのだ。容姿が良かったのと素直だったのが良かったのか俺は養子として引き取られ、俺は育て親の愛情を一身に受けて育った。一応、育て親の苗字があるにはあるのだが、この世界では反映されていないらしい。ちなみに、下の名前は俺が捨てられているときに手に握られていた紙にカタカナでそう書かれていたらしいので、そのまま名前に使ったと言うことらしい。

まぁ、そんな話は今はいい、重要なことじゃない。原作を見ているとわかる、スキル欄の隠蔽(・・)の跡、それに気付かないほど俺は兎じゃな・・馬鹿じゃない。
心を読めるテューにもそれは伝わっていると思われるのだが、俺はあえて聞かない。こういうとき、教えない理由こそ多様だが目的は全て一緒なのだ。
―――教えることが相手のためにならない。むしろ不利益になる。
コレしかない。というかコレであってほしい。面白半分とかこの世界じゃ死ねるから!

「こ、これだけだと、死んでしまうかもし、知れないし・・・君にグ、グリモアを使うよっ!」

何ということでしょう。あの奔放な神様が一転。何が書いてあったんだ?俺のステータス・・・。

―――でもまぁ、グリモアを使ってくれるのはありがたいし。気にしないでおこう。





「ふぅ、怖いなぁ・・・まさか、あれがスキルになっているなんて・・・ハァ」

手に持った先ほどと違う紙をグリモアで寝ている彼の前でそっと開く。そこには、紙の予知で知った魔法と先ほど隠されていたスキルの二つが書いてあった。
魔法のほうは、特に驚きもしない。まぁ、汎用性が高く、将来性も高いというところが少し関心を得たが。
スキルのほうに目を通すと僕は顔を歪ませてしまう。コレが悩みの種になるのは間違いないのだから。
そっと火を作り紙を燃やす。

「聞こえいないだろうけど・・・・君はこっちに来る必要があった。僕の封印を解くとかそういうことではない。――こちらの世界に来なければ、・・・・君は」

と話していて止めた。どうせ聞いていないのだし。言う必要もないだろう。
静かに紙は燃えていく、燃え尽きそうな時、そっと手を離す。火は紙が落ちるのと一緒にゆらゆらと揺らめく。やがて紙は消え、炭となる。その紙に書かれていた内容、それは――――――


《魔法》
形質変化(メタモルフォーゼ)
・速攻魔法。
・この世に存在しない粒子を発生、変質させる。
・LV、魔力によって効力が大幅に変化する。

《スキル》
不老不死(アンリミテッド)
・その体は決して朽ちることは無い。
・老いを迎えることも無い。
・その心が折れぬ限り効果は持続する。

――神の力の片鱗をその身に宿している。
こちらへ来る理由が存在していたこと。
・・・既にグリモアを使用して精神の内側に入っているだろう名字無しの男は、その事実を知るよしもなかった。 
 

 
後書き
小説の感覚を掴んできたので書きました。
人気は無くてもたぶん続きますが。人気があるとモチベーションがあがります。

 
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