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英雄は誰がために立つ

作者:昼猫
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Life18 騎士王の末裔、正当後継者VS受肉ある英霊、叛逆の騎士

 数年前のある日、士郎は姉のイリヤと共に買い物に出かけていた。
 そして買い物の帰り道の途中の空き地で、ボロボロで倒れている一匹の黒猫を見つけた。
 情の深かった2人は、連れ帰ってから怪我の手当てをして、起きるまで2人で代わりバンコで看病した(士郎の方が大半だったが)。
 そうして目を覚ましてから2人は名前を付ける事にした。

 「――――クロにしましょうよ!」
 「安直すぎじゃないか?それに近所の前田さんの家のペットの黒猫の名前も、確かクロだった筈だぞ?イリヤ」
 「むぅ、ならどんな名前が良いのよ?」
 「フランス語・・・・・・あたりの黒でいいんじゃないかな?そう、つまりお前の名前は―――――」


 -Interlude-


 「士郎さんが姉様の・・・・・・御主人様・・・ですか?」

 士郎達の中で誰よりも早く復帰した小猫が、士郎と黒歌を何度も繰り返し様に見る。
 それに他の者も復帰しだした。

 「――――士郎!あちこちで女性を無闇に誑かすなって、忠告したでしょう!?」
 「初めて聞いたぞ!?それ以前に、なんて人聞きの悪い事を言うんだ!俺は女性を誑かした事なんて無い!!」

 自分に自信があまりない士郎は、何時もの様に反論する。
 その士郎の言葉に一誠は、禁手(バランス・ブレイカー)のまま閃いて提案する。

 「士郎さん、それをゼノヴィアの目の前で言うんです!そうすればゼノヴィアが何時もの調子で暴走して、元気になりますよ!」
 「如何してそこでゼノヴィアが出て来るんだ?」
 「如何してですって?あ~もう!如何してこの唐変木はこんなにまで鈍いのかしら!この朴念仁がっ!!」
 「理不尽すぎるだろ!?俺が一体何をしたって言うんだ!」

 ぎゃあぎゃあと言い合う士郎達に、戦闘を一時的に止めたタンニーンが豪快に笑う。

 「人間界には、英雄色を好むと言う言葉があると聞いた事があるが、士郎の奴はその逆だな!ガッハッハッハッハッハッ!!」

 そのタンニーンと相対していた美猴は、黒歌の言動と行動に眉根を下げた。

 「何トチ狂ってるんだ?黒歌の奴・・・。あの人間が御主人様だぁ!?」

 そして当の黒歌は・・・。

 「御主人様が如何して冥界に?一般人じゃ、にゃかったの!?」
 「誰が御主人様だ!?俺は、テロリストに知り合いはいないぞ!」

 士郎からの拒絶の言葉に、黒歌はショックを受ける。

 「そんにゃぁ・・・・・・・・・・・・・・・って、そうにゃ!」

 何を閃いたのか、一瞬にして黒猫に変わった。
 その黒歌の姿に士郎は、思わず目を見開く。

 「これなら如何ニャ!」
 「・・・・・・お前、ノワール・・・か?」
 『ノワール??』

 目の前の相手の名前は黒歌だった筈だ。
 にも拘らず、士郎は彼女をノワールと呼ぶ。
 これは一体・・・?と一誠達が頭を捻っている時に、黒歌は士郎の言葉を肯定する。

 「そうにゃ!数年前に、御主人様達――――シロウとイリヤに拾われた黒猫が私にゃ!」

 黒歌は、士郎にノワールと名付けられてから残してきた妹である白音に対して罪悪感を感じつつも、非常に居心地のいい日々を過ごしていた。
 その当時は、士郎はノワールの事を只の猫では無いと気づいていたが、何も悪さもしてこないので気付かないフリをしていたかつ、念のために魔術回路を一切空けずにいたのに加えて、魔力殺しのペンダントを身に着けていた。
 そんなノワールの怪我が、ほぼ全快状態になった1月の事に悪魔の気配を察した黒歌は、士郎達に迷惑をかけるわけにはいかないと、黙って藤村家の前から姿を消したのだった。

 「そうか、あの時の・・・。だがテロリスト――――」
 「黒歌、美猴、何をしているのですか?」
 『!?』

 空間に突如として裂け目が出来てから、聖剣を携えた眼鏡をかける金髪の青年――――アーサー・ペンドラゴンが現れた。
 それを見かけた美猴が、筋斗雲から彼目掛けて降りて来た。

 「黒歌は遅いし、美猴の姿も無い。もしやと思い駆けつけたら、これですか」

 アーサーは、溜息を吐きながらヤレヤレとかぶりを振るう。

 「一誠、リアス嬢、お前達はそいつに近づくな!持っているのが最強の聖剣と言われるコールブランドだ。喰らえば瞬時に昇天逝きだぞ!!」

 アーサーの携えている聖剣を確認したタンニーンが、注意を呼びかける。

 「うえ!?」
 「あれが・・・!」
 「ハ~~~ン・・・」
 「・・・・・・」

 タンニーンの言葉に思わず警戒を最大限に引き上げる一誠とリアスをよそに、モードと士郎は訝しむ目線を送っていた。
 士郎は、違う世界なのだから史実通りじゃなくても仕方がないのは理解しているが、納得しきれてなかった。
 モードは、士郎とは別にそんな事は如何でも良かった。
 ただ彼女の興味を示しているのは武器では無く、所有者の方だった。

 「それに、その腰の帯剣も聖剣だな?」
 「はい。こちらは最近発見されたばかりの最後にして最強のエクスカリバ―、支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)ですよ」
 「そんなに言っちまって平気なのか?」

 タンニーンの問いに、正直に説明したアーサーに対して美猴は危惧する。

 「構いません。私はそちらにおわす、リアス嬢の眷属であるデュランダルの使い手と聖魔剣に至った転生悪魔たちに興味が有りますから。良ければいつか、1人の剣士として相まみえましょうと、伝えてもらえると嬉しいですね」

 大胆不敵の物言いに、リアスと一誠は何とも言えない顔をする。
 言いたい事を言い終えたアーサーは、黒歌と美猴に視線を送る。

 「では2人とも、逃げ帰りましょう――――」
 「おいおい、此処まで荒らしといて今更逃げる気かよ?」

 それを、モードが引き留める。

 「・・・・・・これぐらいで手打ちにした方が、お互いに良いと思ったまでですが?」
 「逃げ帰ると発言してた割りには、随分と上から目線だな?――――オレは此処に来るまでで、アイツらの会話は耳に入ってたんだぜ?それを何の御咎めなしで逃げようなんて虫のいい話じゃねぇのか・・・」
 「お前さん、赤龍帝たちに嫌われているようだったのに、なんでそんなに庇護するんだよい?」

 美猴は、当然の質問をモードにぶつける。
 だがモードはそれが如何した?と、切り返す。

 「オレがアイツらに嫌われていようと、そんな事は如何だっていいんだよ!お前たちは自分たちの欲望を押し通そうとしたと言う事で民草に遠慮なしに手出しをした。お前らに誅罰を与える理由にはその程度で十分だ・・・!」
 『・・・・・・・・・・・・』

 自分がどれだけ嫌ってい様とも、守るべき対象に手を出す奴には報復すると言う揺らがないモードの思想に、ゼノヴィアの件で嫌悪感を露わにしていた一誠達は驚きと戸惑いに満たされていた。

 「なるほど、では力づくと言う事でよろしいのですっ!?」

 モードの答えを返そうと尋ねようとしたところで、アーサーは反射的にその場を瞬時に離れる事で、瞬動で目の前に来ていたモードの斬撃を躱す。

 「ほぉ?あれを躱すか。やるじゃねぇか?」
 「まだまだ見る目が無かった様ですね。これ程の剣の使い手の情報を見逃していたとは・・・」

 アーサーは、モードの不意打ちを責めることなく、自分の視野の狭さを糾弾した。
 モードは躱したとは言ったが、完全に躱しきれてはいなかった。
 その証拠に、彼の右頬に僅かに切れ傷が出来ていて、血が地味に溢れ出ていた。

 「一々上から目線じゃねぇか、よっ!」
 「気に入らないのでしたら、圧倒してみてください・・・!」

 2りの剣戟は悪魔の視力をもってしても僅かな軌跡と残像しか見えないほどの速度による切り結び合いだった。
 少なくともリアスに一誠、そして小猫にはその様にしか見えていなかった。
 剣と剣がぶつかり合うたびに、激しく唸る金属音が鳴り響いて来る。
 本人らは斬る上げから斬り下ろし、突き、払いと眼前の敵の命を容易く刈り取れるような剣戟を繰り広げている。
 しかもすべての斬撃に付加効果でも混じっているのかの様に、2人の周りの地面は斬撃に斬り抉られた跡が既に数重もの痕跡を作っており、大気にいたっては延々と悲鳴を上げ続けていた。
 そうした斬り合いから互いに身を離すと同時に、アーサーは聖王剣を明後日の方向に突き刺すと空間に裂け目が生じてその空間に刀身だけが吸い込まれるように消えた。
 その行動の観察の結果、最低限に僅かに身を反らす事でモードの真横から現れた聖王剣の刀身による突きを躱した。
 しかしモードは躱すだけでは無く、その刀身の平の部分を掴みながらあらん限りの腕力で引く。

 「くっ!?」

 幾ら騎士王の末裔の正当後継者であろうと、受肉した英霊の腕力に叶う事は無く、アーサーは無常にもそのまま自分事引かれてしまう。
 そして当然の結末のように引かれたアーサーは、モードによる攻撃――――鳩尾にまたも腕力のモノを言わせた肘打ちを浴びせて打った。

 「ごはっ!!」

 アーサーはその痛みにより地面を転がったが、その時の衝撃と意地でも武器だけは手放さないと言う剣士としての本能にから起こした奇跡により、聖王剣と共にモードから離れることが出来た。
 そこから瞬時に立て直しを図るためにモードから距離を取った。
 此処まで、刹那の剣戟が始まってからまだ10秒間の経過していなかったが、その短時間内の斬り合いでも判る事があった。
 自分が今対峙している剣士の技は自分と同じ流派であると。
 別にあり得ないとは言わない。騎士王の末裔以外にも自分たちの剣技は伝わっているのだから。
 だがそれでも自分たちの末裔以外の者が、自分達以上の剣技を習得していると言うのは如何考えても異常であると。
 そうして考えながらも距離を取り終えたアーサーは、モードを睨み見る。
 
 「・・・・・・・・・・・・これは何の真似です?何故隙を突かないで、斬りに来なかったのですか?」

 考えれば考えるほど疑問は湧いて来るし聞きたいところだが、敵の自分の疑問に答えを返してもらえるとは思えない。
 それに今は、先ほどの空間の裂け目から無理矢理引きずり出された結果、斬られるのではなく肘打ちを加えられた事、それにこうして離れるまで地べたを這いずり回っていた時のも大きな隙があった。
 それにも拘らず、敵の魔剣士は隙を突かなかったことの疑問がアーサーの頭の中で優先事項とされていた。
 そんなアーサーの考えなど疑問に、兜の中の両目が嗤った。

 「剣を使わないで肘打ち、それに隙を敢えて見逃す。こうした方がお前位の剣士としては屈辱的だろう?騎士王の末裔、アーサー・ペンドラゴンさんよぉ・・・!」
 「・・・・・・・・・」

 如何やらアーサーの機嫌を逆撫でにするのが目的だったようだ。
 それに上から目線のやり返しと言った所でもあるのだろう。
 好戦的なモードらしいと言えばモードらしい。
 事実、表情は依然として冷静なままではあるが瞳の奥の感情は凍り付き、腸は煮えくり返っていた。
 モードの狙い通り、相応の剣士の誇りを傷つけられたアーサーの内心は、憤怒に彩られていた。

 「なるほど、尋常な勝負がお望みだったのですね。でしたら――――」
 「能書きはいいから、とっとと来い・・・・・・雑魚・・・!」

 空いている片方の手の動きでも挑発するモードに対して、非常に珍しい位にキレたアーサーが襲い掛かった。

 「言わせておけば――――」
 「だから遅ぇんだよ、ノロマ!」
 「クッ!?ガッ!」

 直進した先にはモードの姿は無く、代わりに後ろから声が聞こえたので振り向くと同時に横薙ぎに切り裂くが、剣は空を切った。
 そしてまたも背後を取られたと焦るアーサーだったが、また剣で斬るのではなく、今度は蹴りで背中を打つ。
 蹴られたアーサーは強烈な痛みと衝撃に襲われたが、どの程度を確認せずにモードを視界に入れて斬りに行く。
 最早意地になっていた。
 こんなアーサーは本当に珍しい。
 そんなアーサーの醜態を見せつけられていた他の者達は、ほとんど釘付けになっていたが、空からの火の息吹が合図に成って時は動き出した。

 「チィィ!」

 日の息吹を出したのは勿論タンニーンであり、標的は美猴だった。
 美猴は、如意棒を大きく長くしてから器用に回転させて、仙術を込めた風を生み出して火の息吹を防いだ。

 「元龍王ともあろうが不意打ちなんて、汚ぇ真似使うじゃねぇか!」
 「ハッ!本当の戦いに卑怯も糞もあるモノか!それに貴様らテロリスト風情に正道で挑めと?笑わせるなよ、猿!!」
 「一々うるせぇんだよ、爬虫類!」

 タンニーンの言葉に言い返しながら筋斗雲に再度乗り込んだ美猴は、再び空へ舞い上がり戦闘を再開させる。
 こうして見事に戦闘が再開した時に士郎は、一誠達を庇う様に前に立ち黒歌を睨み付ける。

 「ノワール――――いや、黒歌だったか。俺もモードと同じように、お前たちの会話だけは耳に入って来てた。お前がどんな気持ちで今日まで生きて来たかは俺の知る由も無いが、俺の後ろに居る3人は大切な友人達だ。それを害すると言う事は、例えお前でもテロリストの一員である以上、俺はお前と敵対する事も躊躇わんぞ?」

 結界破壊に使った突き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)を霧散させると同時に干将莫邪を投影した士郎は、後ろの3人を守る様な姿勢で黒歌を睨み付けた。
 士郎の覚悟に後ろの3人は複雑なれど多かれ少なかれの喜悦に満たされていた。
 そして対峙している黒歌は、士郎のリアクションに――――。

 「ぅぅぅに、にゃぁああああぁああああああぁああああああああああ!!!」
 『!!?』

 あまりにショックだったのか、戦闘意思を見せることなくアーサーが開けて来た空間の裂け目目掛けて逃亡を図った。
 その直前に女性陣であるリアスと小猫は確かに見た。
 黒歌が泣きながら走り去っていく様を。

 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

 それを見送った士郎だったが、後ろから裏切りにも似た糾弾の声が上がる。

 「士郎、女性を泣かせるなんて藤村家の家訓に反してるんじゃないの?」
 「士郎先輩は女泣かせだったんですか?」
 「ハーレム創る時は俺も気を付けよう」
 『モテすぎるのも考え物だな』
 「なんでさ!?」

 言いたい放題に言われた士郎が、あまりの理不尽に叫ぶ。
 そんな士郎達がミニコントしている時に、今だ戦闘している4人の内の2人に動きがあった。

 「ん?転移魔法陣」
 「これは、ヴァ―リn――――」

 4人の内の2人であるアーサーと美猴の足元に転移魔法陣が出現したと同時に、その場から消え失せてしまった。

 「あんだよ?折角乗って来たのに・・・」
 「逃がしたか・・・。悪魔たちの増援が来るまで持たせたかったが」

 この夜の一幕は突然に終わりを告げた。
 その後、騒ぎを聞きつけた他の警備兵達と合流後に事情を説明したら、急遽パーティーは中止となった。


 -Interlude-


 あの急遽パーティーを中止した日の次の朝、モードが転移魔法陣で人間界に戻ろうとした所でリアス達に呼び止められた。

 「なんだ?オレの事、嫌ってたんじゃねぇのかよ?」
 「ええ、今でもゼノヴィアの事は許していないわよ。でも貴女は昨夜、私たちから嫌われても守ろうとしてくれた事には、お礼を言っておこうと思ったの」

 リアスの後ろに居る眷属らの内、5人の内のゼノヴィア以外はそのこと自体にもまだ納得しきれていなかったが、一応ついてきた形だった。

 「律儀なこったな」
 「その程度の器量も無ければグレモリー家次期当主には相応しくないモノ。だから本当に昨夜は感謝してるわ」
 「俺も感謝してるが聞きたい事がある。あんたの思想について。結局の所、如何して守ろうとしてくれたんだ?」
 「別に可笑しい事はねぇだろ。お前らは士郎のダチ何だろ?なら、マスター(ダチ)のダチから嫌われて様が、そいつらに手を出した奴らに相応に痛めつけるのは当然だろ?それに見過ごしたままなんて、オレ自身が気持ち悪かった・・・・・・ただそんだけだっつーの」

 つまりは自己満足だと付け加えるモードの思想に、一誠は一応の納得と理解をした。

 「・・・・・・あと、悪かったな。そいつの件は」
 「・・・!今更――――」
 「待ちなさい」

 リアス達の反応を見てゼノヴィアの件を謝罪したモードだったが、まだ全く赦せていないメンバの内の1人である祐斗が、軽い謝罪に思えて反応したところにリアスが制止を掛ける。

 「貴女もちょっと待って!今だから思えるのだけど・・・・・・私たちを守ろうとしようとしてくれた貴女が、ゼノヴィアを理由なく追い詰めるなんて考えづらいのだけれど、何があったの?」
 「そいつから聞いたんじゃねぇのか?」
 「アレはゼノヴィアの主観でしょ?私が聞きたいのは貴女側からの情報よ」

 物好きな奴だと皮肉ってから説明しだした。
 ゼノヴィアから聞いた話とは半分以上も違っていた上に、あまりの戦闘力差に逆切れしたゼノヴィアが、士郎との関係を問いただしてきたことが原因らしかった。
 しかもしつこい上に、特訓を開始する前にモードは自分が女呼ばわりされるのが嫌いだからと忠告したにも拘らず、それもしつこく連呼された事に腹を立てたモードが遂にはゼノヴィアを追い詰めたらしいことが分かった。
 つまり、確かに追い詰め過ぎたモードも悪いが、一番の原因は逆切れしたゼノヴィアだった。
 もう一つは感情的になり、モードの話を聞こうとしなかったリアス達も悪いのだが、結局一番の原因はゼノヴィアに変わりなかった。
 全ての説明を聞き終えたリアスは、その場から逃げようとしたゼノヴィアの肩を掴む。

 「ちょっと待ちなさい♪」
 「ま、待ってくれ、部長!は、話を――――」
 「言い訳は後で幾らでも聞いてあげるから、今はお仕置よ♡」

 狼狽えるゼノヴィアに笑顔で怒るリアス。
 心配させたことに加えて虚偽をした下僕へのお仕置が今始まった。

 「うわぁあああああああぁあああああああああ!!?」

 ゼノヴィアの悲鳴をBGMに、モードは呆れ顔を作ったまま人間界に帰って行った。


 -Interlude-


 リアス対ソーナ戦の当日。

 リアス達はレーティングゲームがもうすぐ始まる前に、アザゼルからアドバイスを受け終えていた。

 「――――そう言えば先生?士郎さんはゲストルーム?」
 「ん?お前ら聞いてなかったのか?アイツ、どうしても外せない用事があるってんで、いねぇぞ?」
 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・えぇえええええ!!?』

 アザゼルの答えに驚く一同。

 「内容は聞いてねぇが、なんでも欧州に用があるってんで居ねぇな」
 「私は初耳だぞ!?」

 家族同然の1人であるゼノヴィアが怒鳴り口調で言う。

 「ゼノヴィアは騒動を起こしたから、聞かされなかったんじゃねぇのか?」
 「う゛」

 アザゼルの言葉に小さくなるゼノヴィア。
 あれから被害者を装ったと言う事で全員からお叱りを受けたらしい。
 勿論士郎からも。
 因みに近いうちに全員でモードに詫びに行こうと決定されている。
 勿論、お詫びの品はゼノヴィアの懐から全額出される予定だ。

 「レーティングゲームに間に合うか怪しいと言う理由から、サーゼクスの好意で魔術協会のあるロンドンに転移してから目的地に行くらしい。そっちの方が早いらしいからな」

 アザゼルの説明に一同が多かれ少なかれ憤っていた。
 リアス達は皆、士郎に深い信頼(約1名は異性としての愛情)を寄せていた。
 当然、今日と言う日は訓練の成果を知ってもらえると思っていた日だと、緊張しながらも楽しみにしていたのだ。
 それをある意味裏切られた様なモノだから、その感情も仕方は無いだろう。

 『士郎(さん・君・先輩)の馬鹿っ~~~~~~~~~!!!』

 あまりの事に、此処には居ない士郎に対してほぼ全員で叫ぶのだった。

 因みに、ソーナ側でもその事実を聞かされたとき、匙は嬉しがる一方で、椿姫もリアス達と同じ位に憤り、ソーナは憤り半分悲しみ半分と言った感じだったらしい。 
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