戦国異伝
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第二百二十八話 二つの策その三
「わかっておる者はわかっているな」
「牛助達のことですな」
「そうじゃ、天下は騒いでおるが」
「はい、家中はです」
「落ち着いておる、よいことじゃ」
「しかし上様」
平手は信長にあえて言った。
「この度のことは」
「考えられぬことじゃな」
「まさか牛助達を」
「そうじゃ、考えられぬことじゃからな」
「よいのですな」
「相手が考えられることをしてはな」
それではというのだ。
「勝てぬわ」
「相手の虚をですな」
「衝いてこそな」
まさにというのだ。
「勝てるものじゃから」
「だからですな」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「ああしたのじゃ」
「ですか」
「さて、相手はどう動くか」
信長は考える声で呟く様にして言った。
「その動きを見て、いや」
「その動きをですか」
「先に読むか」
「あらゆる動きをですな」
「これで相手はかなり慌てる」
間違いなく、というのだ。
「そしてわしや奇妙の命を狙うか」
「上様と跡継ぎである奇妙様も」
「若しもじゃ」
さらに言う信長だった。
「わしと奇妙が同時に死ねばどうなる」
「はい、その時は」
平手もだ、信長に答えた。そうなった場合について。
「主の上様がおられずとも」
「奇妙がおるな」
「そして奇妙様がおられずとも」
「わしが跡継ぎを告げるな」
信忠の他のというのだ。
「そうするな」
「はい」
「片方だけおればまだよい」
「ですな、しかし」
「両方一度におらぬようになれば」
その時はだった。
「天下に主がおらぬ様になる」
「天下の柱が」
「そこから一気に世を乱すことも出来る」
信長はこうも言った。
「若しわしと奇妙がおらぬ様になればな」
「同時にですな」
「そうなる、ここはじゃ」
「まさかと思いますが」
「そのことを逆に使うか」
こう言うのだった。
「ここはな」
「また危ないことをされますか」
「一見するとな、しかしな」
信長は笑ってこうも言った。
「わし一人ではおらぬ、奇妙もな」
「御身の周りには」
「新助と小平太もおりな」
まずは毛利と服部の二人を挙げるのだった。
「源次郎と与六もおる」
「あの二人も」
「そして十勇士もじゃ」
幸村の家臣のこの者達もというのだ。
「そして奇妙にもな」
「飛騨者がおりますな」
「奇妙にはそこにじゃ」
さらにというのだ。
「慶次と才蔵もつけるな」
「あの二人もですか」
「これでわしにも奇妙にも何かあってもな」
それでもというのだ。
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