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異世界に呼ばれたら、魔法が使えるようになりました。

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それは独自の生物?

 レイアの紹介通り、鏡の平原はあの町から近かった。
 歩いて十分も本当だったように思う。
 それだけ近い場所にあったのだが、まわりには民家の灯り一つ見えない。

 今日は少し雲が有るだけで晴れており、空には数多の星がまたたいている。
 その空には2つほどつきが浮かんでいて、大きい物の直ぐ側に小さい月が並んでいる。
 空の下には山々や森が広がっていて、これらが街の明かりを覆い隠しているのか元僕は気付いた。

 そして少し冷たい風の吹くこの場所は、草原だった。
 その割に明るいのは、ところどころに青白く輝きながら丸い綿毛のように光を振りまく変わった花があるからだった。
 異世界ならではの植物に感じられる。
 
 そしてそのすぐ側には石板が幾つも立っている。
 石板と言っても岩の塊のようなものがいくつも置かれており、イギリス? に有るストーンヘンジ? か何かのようだった。
 よく知らないので石が立っていると僕にはそう見えてしまう。

 きっと僕の世界でもこれを表現するような謎の石板が他にも転がっているのかもしれないが、とりあえずそんな感じだ。
 しかも石板には文字が書かれている。
 一つとりあえず読んでみると、

『空を映す鏡は静かなる平原となり、星のきらめきが……』

 途中で僕は読むのをやめた。
 部屋の掃除をしていてある火突然黒歴史ノートを見つけてしまったようないたたまれなさを感じる。
 特にその時の設定が……いや、よそう。

 世の中には忘れたほうがいい、そんなものもある。
 それよりもこの草が広がるこの場所のどこが鏡なのだろう。
 たしかに小さな段差のある窪地にも見えるけれど、水の後は何処にも見当たらない。と、

「一月ほど前にある日突然水が枯れてしまったのです。それまではこの森や山、空を映す鏡のような湖で、石板のそばにある“幻光花”と相まって、ここの観光名所の一つだったのですが、今はこのような草原に。……いずれ、荒れ果てた石だらけの場所になるかもしれないと言われています」
「そうなんだ。そんな風には見えないけれど……」
「それよりも魔道書の問題とは何ですか? それを早く解きましょう」
「そうだね。えっと……この場所にきて、『空を裂き我が前にいでよ、そして選定せよ、“まんどらごら”?」

 マンドラゴラってあれだよな? 引っこ抜くと悲鳴を上げると言われている謎の植物。
 というか本当にあれは悲鳴を上げるのかな? どんな構造で? というどうでもいい疑問が僕の中で浮かぶけれどそこで、ヴゥン、といったような低重音が聞こえる。
 同時に僕の足元で白い光の魔法陣が現れる。

 これから何か魔法が発動するのかもしれない。
 周りにあったあの中二臭い……いや、文が強いピンク色に輝いている。
 だがそれらも光輝いていて白く見えてくる。

「とりあえずこれで試験は受けられるのかな?」
「そうみたいですね。とりあえずは警戒しておきましょう。なにが出てくるのか分かりませんから」
「? “まんどらごら”ってこの世界の生物ではないの?」
「はい、聞いたことがありません。おそらくはこの魔導書を作った肩独自の生物ではないかと」
「独自の生物?」
「はい、こういった高度な魔道書は試練として魔法で作った特殊な生物と戦わせることがあるのです」
「そんな生物が……まさかこの地に封じられているとか?」
「そうですね。たぶん今一生懸命呼び出していう最中だと思います」

 さらなる展開が待っていそうだなと僕は思っているとそこで、空が割れる音がした。
 稲妻のような光が走り、バチバチと音がして振り返ると、そこには大きな魔法陣が浮かび上がっている。
 禍々しい色のそれと模様。
 
 描かれる図形は空を割るように強く輝き、そこでその音とは別の、そう、獣のような咆哮が聞こえる。
 同時に魔法陣の中心部の文字が、水滴のようにドロリと雫のように垂れ下がり、それはどんどん大きくなって……大きくなった水滴が地面に落ちるようにその光のしずくも地面へと滴り落ちる。

 大きな何かが落ちる音がした。
 けれどそれはまだ白い光に包まれて姿は見えない。
 嫌な予感がする。

 何かとても危険なもののような気がして僕はすぐに警戒するようにそちらを見つめ“魔法結晶石”の一つを取り出したのだった。
 
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