その手で引き金を引け!!
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第三章 過去と未来
第三話 思い出
俺は外にいる如月に気づいた。
外はすでに夜。危ないに決まっている。
それなのに如月は陽気に歌っていた。
「中に入れ、夜だ。」
「風間さん?心配させちゃいました?」
笑って誤魔化すが、何か考え事をしていたらしい。
気づかないとでも思ったか?
「この歌、好きなんです。まあゲームのエンディングなんですけど。
『空を駆けた流れ星は
二人の願いをして
運命を忘れるほど
ただ綺麗に輝いてた』
彼を大切にして、想いながら歌った歌なんですって・・・
いいな・・・」
「いないのか、そういうやつが。」
「いますよ。もう二度と会えませんけどね」
聞いてはいけなかったと感じた。
しかし、如月はそう思わなかった。
~~~~
きっかけは雨の日。
妖に囲まれた中学一年生の私は、戦うより逃げを選んだ。
まだ弱い私には勝ち目はない。
そんな私を助けてくれた人がいた。
人より霊が正解か。
妖に加勢するもの、人間に加勢するもの。
霊にもパターンがあった。
もとは人間なのだからと加勢してはくれない。
しかし、彼は私を助けてくれた。
「・・・無事か」
第一声。今でも覚えている。
笑いもせず、困りもせず、無表情のまま。
彼は表現が苦手で笑うことはなかった。
あの一度を除いて。
「俺は・・・お前が・・・ちっ」
告白。
彼からだった。表現が苦手な彼から。
不愉快そうな顔で、必死に言う姿が今もあのときも、面白いと思う。
人と霊
交わりのない恋は、私には予想外の終わり方をした。
私は彼が妖になったら狩る覚悟はしていた。
私たちは、誰かに罠にかけられた。
「ぐっ・・・強い!!」
あの日も雨。
私は偶然、強い妖に巡り会った。
反撃がないとはいえ、気を抜けば殺られる相手。
私は、次の一撃で確実に仕留めるつもりだった。
首を落とす、0.6秒が長く感じた。
私は術で彼を妖と勘違いしていたのだ。
その術はこの0.6秒の時に切れた。
しかし、体は止まらない。思考に追い付かない。
あのときの彼は笑っていた。
私は見つめながら・・・
「僕は君を愛しているよ」
彼の口はそう動いた。
そう言っていた。そう感じた。
あの日、私は自分を憎み、何もできない自分に腹を立てた。
私が戦う理由。
それは死者のため。
死者は生者の幸せを望むものだから。
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