『堕天使と人間』
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
『涙』
僕は、君の哀しみごと包みたいと想ったんだ。
此の腕の中で、いっぱい泣いて欲しいと想ったんだ。
でも、うまく言えなくて...
ふと口をついて出たのは何とも稚拙な言葉だった。
『そっか、其れは哀しいね...』
間違った。
そう思い焦った僕は、君から視線を逸らしてしまった。
其れも違う。
僕は慌てて君に視線を戻す。
君は、不思議そうに僕を見ていた。
僕はきっと不安な表情だったんだろう。
君は、優しく微笑んだ。
そして、また淡々と言うんだ。
『それが、全然平気なんだ。
僕は何も辛くないし哀しくもない。
何も感じないんだ。』
勝手に涙が溢れてきた。
だって、何も感じないなんて...
ページ上へ戻る