ランス ~another story~
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第3章 リーザス陥落
第59話 レイラを救え
~レッドの町~
復興作業音が町の中で木霊する中……、ランスは目を覚まし 外へと来ていた。例によって、ユーリに例の魔法を仕掛けられ、上々の気分で、散歩をしている様だ。傍らには、シィルが来ていた。
「ランス様、おはようございます」
「ふぁーーっ、太陽が赤いぜ。昨日もたーーっぷり出してやったからなっ!」
「あぅ……」
シィルは、頬を赤らめた。
勿論、ユーリに頼まれて、後処理をしていたのだ。そうじゃないと……、宿屋のベッドを汚してしまうから。シィルは別にそれは問題無いんだけど、例え夢の中であっても、少し複雑な想いはあった様だ。ユーリに感謝はしているのは間違いないんだけど……ちょっとだけ。だって、自分以外の女の子だから。
「あ、ランス シィルちゃん。おはよう」
そんな時、かなみもランスとシィルを見つけて、合流していた。
「……ぐふふ、あー、さて今晩は誰とHするかなぁ……、たまにはロリっ子と言うのも悪くはない。……無論限界年齢はあるが」
ランスの守備範囲15歳~29歳だから。……別にそんな情報は要らないが。
「……ったく、朝っぱらからそんな事ばかり……」
かなみは、呆れてしまっていた。
ランスにユーリが掛けた幻覚魔法の事は知っている。ユーリの苦労がしのばれるなぁ……、と思わずにはいられなかった。そして、そのおかげで 魔の手が他の女の子たちに言っていない事を考えると、感謝もせずにはいられなかった。後少し、何かが変わっていれば、違っていれば……、自分が餌食になってしまっていた可能性だってあるのだから。
「がははは! おお、そうだ。今は精力チャージ中だが、かなみが、泣いて頼むと言うのなら、今からでも相手してやるぞ! 路上S○Xするか!?」
「死んでもイ・ヤッ!! ……そんな事より、司令部でマリアさんが呼んでいたわよ。もう、殆ど皆揃ってるって言うのに、しっかりしてよ!」
ランスの申し出を一蹴!
当然だろう、死んでも嫌と言う想いの裏腹には、彼の姿が鮮明に出てきている。……かなみも、他の彼女達と同じ想いがあるのだ。
『自分の初めては好きな人と……』
と言う絶対の想いがあるから。
「……ふふ、……かなみさん」
シィルは笑っていた。
かなみの表情から、何を想っているのか……判るから。互いに想い人がいるからこそ、恋する乙女だからこそ、判るのだ。正直、……同じ相手じゃなくて本当に良かった……、とシィルは思っていた。
「なんだと!? このオレ様を呼びつけているだと!? 生意気な、誰がこの軍隊の最高司令官だと思っていやがるんだ!?」
「え? 実質、ユーリさんでしょ?」
「誰がだ馬鹿! あのガキはただの戦闘狂であり、このオレ様の下僕だと言う事、いつも言ってるだろうが!」
「だから、誰がランスの下僕よっ!!」
かなみがユーリの代わりに抗議するかなみ。……この時、当の本人は くしゃみをしているのだった。
「だぁぁ! 兎も角、ここはその辺をきっちろと教えてやらなくてはならない!」
ランスは、殆ど強引に話を終わらせると、シィルとかなみを連れて司令部に向かっていった。
~リーザス軍司令本部~
ランスは、ずかずかと我が物顔で司令本部へと入っていく。
……ランスの性質は皆が知っているから、今更ケチをつける者などはいなかった。ランス自身の戦闘能力の高さも、リーザス軍の皆が知っているから それも拍車をかけていた。当然だが、騎士道を重んじる彼女は……複雑だったが、自身が最大限に信頼出来るユーリも信頼しているから、一先ず落ち着いていた。
「あ、ランス。遅かったじゃない」
マリアが、ランスに気づいて声を掛けたが……、ランスはというと、さっきのことがあるから、随分と不機嫌気味に。
「うるさいっ! オレ様が司令官だぞ!? 何をしようとオレの勝手だ!」
「はぁ……、随分とご立腹だな? 朝っぱらから」
腕を組んで壁に寄りかかっていたユーリは苦言を呈していた。勿論だが、ユーリ自身も大体の想像はつく。
「どうせ、かなみが呼びに行って、マリアが呼んでいる……と言ったら、『最高司令官に生意気な~~』とか言ったんだろうけど」
「わぁ、流石はユーリさんですね? 間違ってません~」
シィルは、ユーリを見てぱちぱちぱち~っと拍手を贈っていたが、当然ながら、ランスに頭を叩かれた。
「ひんひん……わ、私はただ……、ランス様とユーリさんがとても信頼されていると……」
「馬鹿者! コイツはただの下僕だって言ってるだろうが!!」
「ひんひん……」
「だから、誰が下僕だっての……」
やれやれと、ユーリは首をふる。
ひさしぶりに自分で否定できたなぁ……と、この時思ってしまっていた。いつも、主にかなみが代弁をしてくれていたから。
そして、この場にいるのはリーザス軍の将軍・副将達とカスタム側では、マリアのみ。
他の皆は別作業をしている。町の復興の手伝いであったり、物資の調達等を行ってくれているのだ。それは主にランを中心にしている。
その仕事ぶりは、レッドの町の住人はとても大助かりであり、……これは、1話に1回は言いたいほど、相変わらず、カスタムの面子はスペックが異常に高いのである。
「オレ様は、最高司令官だ! なら、ユーリもマリアも、この解放軍全員がオレ様の部下だ! 敬うのだ!!」
「はいはい。なら、ランスもオレに負けないようにな? 上官のくせに、手加減してくれ~とかは言わないよな?」
「だぁぁぁ!! 誰に向かって言っているのだ!! この最高司令官に向かって!!」
「はいはい。オレに負けない様にな? 手加減はしないから」
「誰がだ! ガキが!」
「誰がガキだ! アホが!!」
……傍から見たら、どう見てもじゃれ合っている様にしか見えない。かなみは、その姿を見てなんだか複雑な想いを浮かべていた。丁度その時。
「はぁ、馬鹿言ってるんじゃないの。ユーリもランスと一緒になってどうするのよ」
司令部の扉が開き、そこから入ってきたのが。
「ああ、おはよう。志津香」
志津香だった。
朝は朝だけど、もう殆ど昼頃。ユーリと志津香は、其々別の持ち場についていたから、本日初対面と言う事で、そう答えていたのだ。
「コラぁ志津香! お前にも、誰が最高司令官なのか、その身体に教えてやらなければならないみたいだなぁ……、あへあへにしてくれる!」
「粘着地面」
「んがっ!!」
このやり取りはひさしぶりに見た気がする……。
ランスは、志津香が放った、粘着地面にべたりとひっつき、身動きがとれなくなってしまっていた。
「はぁ、こんなところに仕掛けたら、ランスは兎も角他の者達にも迷惑だろ?」
「ま、それもそうね。ランスは兎も角」
「ケンカ売ってんのか! だぁぁ! さっさとコレ外せっ!」
行動は縛れても、その大きくて五月蝿い口を縛る事が出来ないので、早々に解いた志津香。まだまだ、怒っていた様だが、話が進まない為だ。
「まぁ、やっぱ お前ら見てると退屈しないな! 本当にいつ見ても」
「……はぁ、こっちは結構疲れるんだぞ? ミリ」
いつの間にか、ミリも戻ってきていた様で、先ほどのやり取りを見てニヤニヤと笑っていた。
「ミリ達の方の仕事は大丈夫なのか?」
「ん? ああ、問題無いさ。ミルも張り切って頑張ってくれてるからね。餅は餅屋、薬は薬屋が一番ってね」
ミリはそう言うと再び笑う。ミルも色々と頑張ってくれているのだ。戦闘面では、どうしても遅れをとってしまう(歳を考えたら、十分驚異的だが……)から、他の面では役に立つとの事だった。
「全部終わったら、労ってやらないとな……?」
「ああ、勿論さ」
そう言って2人は笑っていた。
因みに、他のメンバーの現状報告をすると、真知子と優希はジオの町を中心とした情報収集。
ヒトミは、町の子供達のお世話……と言う名の遊び。精神面で皆をケアしてあげてる、と言っていいだろう。
そして、話は本題に入る。
レッドの町を解放した事によって、解放軍もより大きくなった。その説明がエクス将軍から伝えられる。
「レッドの町で的に洗脳されていたリーザス赤の軍の一部部隊、約2、000名程が新たに仲間として解放軍に加わりました」
「なんだ。たったの2、000か。それも男ばっか」
ランスは、どーでも良いような態度をとり、鼻をほじっていた。それを聞いたシィルは。
「たったって、ランス様。2、000人って凄い数ですよ? 皆様やランス様のおかげです」
「ふん! 超英雄のオレ様が居れば当然の戦果なのだ! ……が、男と言うのがアレなのだ! オレ様に相応しくない!」
堂々とそう宣言するランス。それを見たユーリはと言うと、ため息を1つして。
「はぁ……、昨日あれだけヤっといて、まだ足りんか……。ふむ。夢○と言うのは性欲を抑えたりは出来ないみたいだな……」
と、呟いていた。それを丁度隣で聞いていたのは。
〝どんっ!!〟
思い切り、ユーリの足を踏み抜く少女、志津香である。どうやら、厄介な単語を言ったのが聞こえた様だ。
「……こんな時に何馬鹿なこと言ってんのよっ!」
「だから、なんで足を踏む。……ったく、昨日もランスに色々と掛けたんだよ。なのにアレだ。ちょっとは口が滑ったっていいだろ?」
「あ、ああ……そう言う訳だったのね」
ユーリが苦言を呈していたら、珍しく素直に志津香は直ぐに理解していた。
もう、一言、二言を言わなければこれまでだったら、早々に理解なんかしないのになぁ?と思った程だ。
これには訳があるのである。
~レッドの町 宿屋・昨夜~
それは、昨晩の囁かな女子会での事。パジャマ・パーティーと言っていいだろうか。
志津香・かなみ・ヒトミの3人の囁かな女子会の席で、ミリやロゼも加わって、大所帯になってしまった時の話題が志津香の制裁だった。
『ま、ユーリがMじゃないのはこの私が認めてあげるわ。アイツは、絶対にSよ! 可愛い顔して、アソコはキカンボウ! なんだからさ。う~ん……私の見たてじゃあ……ねぇ……ま、これくらいはあるかしら?』
『い、言わなくていいですっ! そ、そんな変な考察もやめてくださいっ!!』
かなみが、慌てて止めに入った。
興味が全くない訳ではない。……ただ、無性に恥ずかしいのだ。本人がいないし、信憑性は? と言われれば、無い……様な気がするのだが、ロゼの言葉には妙な説得力がある。
『(はは、相変わらず判りやすい)』
ミリは、かなみの方を見てニヤニヤと笑っていた。
初めてカスタムに来た時、ある程度は成就させてやりたい、と思ったミリ。こんな可愛くされたら、自分もヤりたい?と思ってしまうが、かなみの処女は、アイツの物、……と言わないが、かなみはそれを絶対に望むだろう。
『(ん~、ヘルマンの連中をリーザスから追い出した暁には、色々としてやっか? えーっと、想い人は、ひぃーふーみーよー)』
指を折りながら数えるミリ。片手では収まりきりそうに無かった。
『お兄ちゃんがMかSかは置いといたとしてもね。志津香お姉ちゃんは、ちょっと抑えたほうがいいんじゃないかなぁ?』
『……え?』
突然の矛先が自分に向いた事に志津香はやや動揺する。向けたのはヒトミだった。
ヒトミは因みに、ただ単純に、『あそこまでアカラサマだと、ユーリには兎も角、回りにはバレバレだよ?』と、続けて言いたかったのだが、ロゼがこの話に食いつく。
『そーよ? 志津香。判ってると思うけど、SとMだからこそ、相容れるのよ~? SとSだったら、反発しあうでしょ? アイツの足だって耐久値くらいあるんだから、壊れちゃっても知らないわよ~?』
ほほほほ~っと笑いながらそういうロゼ。……それを訊いた志津香は考えこむ。
『(ロゼの言う事だし……、でもヒトミちゃんも言ってる。……ユーリがヒトミちゃんのお兄ちゃんだし、やっぱり お兄ちゃんにああ言う事されるのは嫌……なのかな)』
考えを改める事にしだした志津香。かなり的はずれだが、更にロゼが詰めかける。
『志津香だってさぁ? ユーリにせめて貰いたい時、足使えなきゃ半減しちゃうわよ~? 腰振りだけだったら、体位決まってくるし? ゆーといろんな事、試したいでしょ??』
『って、うっさい! アンタは少しは自重しなさいってのっ!!』
『は、はぅ……/// ひ、ヒトミちゃんは聞いちゃダメっ!!』
『わ、わわっ!?? お、おねーちゃん どーしたの??』
『あはははっ!! ほんっと、可愛いなぁ? お前らは!』
『ミリもうっさいっ!!』
その後も、下ネタ100%で口撃をするロゼと物理的反撃をしようとする志津香の2人が中心となっていくのだった。
勿論、ロゼがダ・ゲイルとヤりにいっていなくなるまでが一番賑やかだったのだった。
~レッドの町 リーザス解放軍司令本部~
それは昨夜の事である。
つまりはそういう事もあり、少しは……と思った志津香だったが、そこまで変わらないのだった。
「はは、単にジャれてる様に見えてくるな? もうこの形で良いんじゃね? ……ま、ロゼの事だ、あんな志津香を見て一杯やるんだろうけど……。……よし、オレも乗るか」
少し、もじもじとした、志津香を見てミリもニヤニヤと笑うのだった。
志津香の顔はやや赤い。
それは、司令室の窓から朝日が差し込んで、彼女の顔を照らしているから?と思えるが、それだけじゃなさそうだ。あの後、散々ヒトミやらに、色々とユーリとの話を根掘り葉掘り聴かされ、話したから。純粋無垢な、彼女の言葉を無下にしたくない、と思った志津香は必死に回避する市かなかったようだが。
「はいはい! みんな、ちょっといい? ……まだ、大変な問題が残ってるのよ。聞いて」
そんな時、マリアが手を叩いて、皆に注目させた。ランスやユーリの視線はマリアに集まる。
「なんだ? 損害の話とかなら、却下だぞ? 女の子の話なら許す!」
ランスは相変わらず、無茶苦茶の事を……、と思ったマリアだが一先ずクリアした、と思った。ため息を1つして、本題に入る。
「はぁ、ま、安心して。女の子の部隊。リーザス金の軍、リア女王の親衛隊でもある部隊80人が新たに仲間となって加わっているわ」
「うむ、彼女達はリア様を御守りする部隊。戦闘力に関しては男に引けを取らぬ事は我らが保証します。我が軍にとって大きな戦力UPとなるでしょう」
マリアの言葉にバレスがそう言い、後の将軍のエクス、リックも頷いた。ハウレーンも何処か誇らしげに頷く。同じ女性であるからこそ、誇りに想っている部隊なのだろう。
「ほうほう、それは良い事を聞いたな! がはは、今はスッキリしているが、また纏めて色々と指導をしてやろうではないか、がははは!」
「……それは、この件が全部 完全に片付いたらにしてくれ。……とそれよりだ。マリア」
ユーリは、女性だけの部隊の話を聴いてある将校の事を思い出した。
「金の軍の将軍、レイラさんは大丈夫なのか? メナドについては、かなみから 大事無いとは訊いたが、彼女の事はまだ聴いていない」
かなみからも聞いている、その親衛隊……、金の軍 将軍であるレイラの事だ。
あの魔人アイゼルに最も近くに晒され、魂魄までに催眠術をくらったと言ってもいいだろうから。
ユーリのその言葉を聞いて、マリアは顔を暗める。が、反対にランスは、いやらしく、だらしなく鼻の下を伸ばしながら。
「そうだったそうだった、レイラさんはかなりの美女だったな? 助けてやったんだ。お礼くらい……うひ、うひひ、じゅるり……」
ついさっき、今はスッキリしている……とか言ってなかったか?と頭を過るユーリ。
「馬鹿なこと言わないで! ランス! ……レイラさんは今、大変なんだから……」
志津香が代わりにそう答えて、マリア同様に顔を暗めた。……かなみは、近況を知らなかったから、志津香の話を聴いて驚く。
「……え? レイラさんが? いったい何が……」
屈強な彼女の事をかなみはよく知っている。だからこそ、……そこまで心配はしてなかった。それに何より助けだしたのだから……。
「……レイラさんは、あの魔人に強力な催眠をかけられてて……今は……」
「うだうだ言うな! はっきりといえ、はっきりと!」
ランスの一括もあり、マリアは表情を落としていたが、ゆっくりとあげる。
「判ったわ……。それに、ユーリさんに診てもらいたいし」
「ん? オレにか?」
「な、何を言うのよ! マリアっ!!」
マリアの言葉に思わず抗議する志津香。
……なんで志津香が抗議を? とユーリは一瞬思ってしまっていた。そして、ハウレーンも同様に首を横にふる。
「……マリア殿、今のレイラ様のお姿を見せるのは、彼女の尊厳が……」
「それについては、御免なさい、としか言えないわ。……でも、それを踏まえてでも、解決しなくちゃいけない問題だし、このままじゃ、最悪……レイラさんは。……ユーリさんなら、何か判るかもしれないでしょ? 志津香も。……だから、お願い。彼女の為を想って、今回だけは 目を瞑って」
「っ……い、いや、私は何とも、ただちょっと驚いただけよ。なんでユーリに診せなきゃいけないの、って」
「……いったい何の話をしてるんだ?」
ユーリはあまりよくわからない。
……が、ゆっくり構えてられる様に生易しい事態ではないと言う事は理解出来た。
「がー、兎も角、案内しろっ! シィル!」
「え、私ですか?」
「そうだ。こいつらがモタモタするからな? お前が案内しろ」
「え、えっと……、レイラ様が何処で安静になられているか、わからないのですが……」
「この役立たず!」
また無茶な理不尽な事をいって、シィルの頭に拳骨を落とすランス。シィルは、いつもの様に、そのモコモコとした頭を涙目で抑え……。
「ひんひん……」
と泣いていた。
「それでは案内します。あっ……、リックさんは此処でお待ちください」
「え……?」
ハウレーンは、そうリックに言った。……同じ女として、彼女の事を考えての事だった。
「お願いします。……今の彼女を見ないであげてください。彼女の為を思うなら……どうか」
「っ……、はい。判りました」
仲間として、何かしてあげたいと思っていた。でも、何も出来ない、ここで待つしかできない。その事が無念だったが……。
「どうか、レイラさんを宜しくお願いします」
リックは、皆の前で頭を下げそう言っていた。
……ランスは偉そうに色々と言っていた様だが、とりあえずランスが半ば無理矢理話を終わらせて、リックの願いに皆、頷いた。
場所は、2階の最奥の部屋。
何やら厳重に管理されているらしく、部屋にもきっちりと鍵をかけてるとか。
「それで、何をさっきから睨んでる?」
「何でもないわよ!」
何でもない風には全く見えない。わかっているでしょうけれど、志津香である。暫くマリアを先頭に、歩いていて……志津香が此方側に振り向き、人差し指を胸元に強く押し付けてきた。
「……いい? 絶対に余計なこと、するんじゃないわよ!?」
「だから、一体何なんだ? ……それに、マリアはオレの力の事知ってるのか? 志津香か?」
「あ、それは違う。……と言うより、アンタだってこれまではっきりと力は言わなかったけど、匂わせたでしょ? ランスの馬鹿の事だってあるし」
「あぁ、まあそれもそうか。……ま、もう別に問題無いがな? マリアも皆も仲間だし」
別に志津香が、他のメンバーに話していたとしても、別段問題視はしてないユーリ。そもそも、志津香がそんな気軽に話すとも思えなかった。
「ほんっと、アイツは素直じゃねーというかなんというか……」
「はぅ……、そ、それよりミリさん。レイラ様に一体何が?」
「かなみもかなみだぜ? ……あれくれー積極的にだな?」
「う、あぅぅぅ///」
ミリはかなみの肩に手を回しながらそういう。……かなみは、顔を真っ赤にさせていた。
レイラの事が気になるが……、ユーリと志津香の2人を見ていると、そっちの方も気になってしまっていて。
……だが、部屋の中レイラの姿を見て、レイラの状態を知らなかった者達は全員言葉を詰まらせる事になる。
約1名を除いて……。
廊下を進んでいると、むこうからあやしい声が聞こえてきた。
『あっ……ひっ……あぁぁぁんっ………』
それは、どう聞いても、女の声。そして、何処か艶っぽく色っぽさも出ているのだ。
「ぐふふふ……、そそるような声が聞こえてきてるぞぉ……?」
「ランス様……」
鼻の下を伸ばしてそう言うランスを見て、シィルは悲しそうな表情をしていた。そして、マリアはその声、喘ぎ声の聞こえる部屋の前で止まった。
「ここよ」
マリアはそう言うと、扉をゆっくりと開いた。そこには、大きめのベッドがあり、その上でレイラは確かにいた。だが、その格好は……。
「おおっ……!!」
「なっ……れ、レイラ様……っ」
「こ、これは……」
ランスは思わず興奮してしまい、かなみは絶句、シィルも同様だった。
ユーリも驚いてはいたが……、見た瞬間に足にくる激痛のおかげで、何とか平静を保つ事が出来た様だ。
レイラは、なりふり構わず……誰に見られようがお構いなく淫らに自らの秘部を只管弄っていた。……自慰行為に熱中しているか、或いは、回りが全く見えていないのか……?
いや、どちらでも内容だ。
「おおおっ、やらしいなぁ……、これってやっぱり、オレ様を誘っているのか?」
「もう! そんなわけないでしょっ! ……レイラさんは、昨日の晩からずっとこの調子なのよ……」
「そうだぜ。オレも混ぜてもらおうとしたんだがな? まるっきり無視してくれやがった。……流石に傷ついたなぁ」
「アンタも黙ってなさい!」
流石はミリ……、両刀使い、女版ランスである。ランスは、じ~~っとレイラを視姦!じゃなく、眺めてニヤニヤとしている。
そして、レイラの傍で診ていた女性がゆっくりと立ち上がった。
「……駄目です。呪いに似た何か。それも強い力です。私の力では……彼女を救う事ができません」
表情を落としてそう言う。
「お? 君は確か……」
「あ……、ランスさん、ですね。ごきげんよう」
「教会のセルさんよ。彼女にも治療を御願いしていたんだけど……。やっぱり駄目みたいで……だから、ユーリさんに見てもらおう、って事になったの」
「何ぃ! オレ様が美味しくいただくと言うのに、なぜユーリなのだ! 馬鹿者っ!」
「だーかーらー、そう言う問題じゃないってば!」
マリアは、暴走しようとしてるランスを抑えつつ、本題に入ろうとしていた。かなみも、心配そうにレイラを見ていて……。
「……レイラ様は、こんな、こんなみだらな人じゃありませんっ……とっても強くて、格好も良くて……、皆の憧れでもあって……。マリアさん、ユーリさんに診てもらうって言うのは……?」
「うん。ユーリさんなら……どうにかしてくれる、って想って。……変に期待しちゃって悪いとは思ったけど」
マリアは少し申し訳なさそうにそう言う。
これまで、色々と対処しようとしたり、衛生兵にも相談をしていたけれど、解決の糸口すら見られないのだ。それは、仕方がない、とも言える。人外の存在である魔人に直接催眠術をかけられたのだから。
「ぐふふ……、一晩中かぁ……、全くをもってけしからんなぁ……へへへへへへへへ。だへだへだへ……」
「ったく、五月蝿い。粘着地面」
「んがっ!!」
志津香は、妙な事をしない様に、とランスに粘着地面を。当然だが、身動きの取れないランス。
「コラァ! 動けないではないか!!」
「なんなら、視界も塞いで上げようか?」
「やめろ! こんな眼福光景、滅多にないのだぞ!!」
「なら、そこでおとなしくしてなさい。終わったら解除するから」
志津香は、それだけ言うと、ランスから目を離した。今はランスよりも、気になる人物がいるからだ。ランスは何か言っている様だが、完全に無視して歩いて行った。シィルは、ランスに外せと言われて対処をしているが……、志津香の魔力の方が圧倒的な為、彼女では解除出来なかった様だ。
「はぅ……、物凄い粘着力です……」
「えぇい! 役立たず!」
「ひんひん……(でも、嬉しいです……)」
罵倒されながらも、シィルは内心喜んでいた。レイラの裸と行為を見てなかったから。
「ユーリさん。宜しくお願いします。お力になれずに、申し訳ありません」
「いや、セルさんには、優希が世話になったんだ。それに、今の今までずっと、神魔法で彼女を助けようとしていてくれたんだろう? ……十分すぎるよ。ありがとう」
ユーリは、セルの肩を軽く叩く。セルは、ゆっくりとお辞儀をした。暗くなっていた表情は、少しだけ、明るくなる。
ユーリは、そのまま レイラの傍へと向かった。ゆっくりと腰を下ろし、彼女の手を取る。
「……ユーリ殿、判るのですか?」
ハウレーンは当初こそ、男性であるユーリが診る事が、複雑そうだったが、今はそうでもない。あのレイラの姿を診て、一瞬……表情を赤らめ、視線を逸らしたが今はそんな邪な感情は感じ取れない。純粋に、彼女の事を心配している様だからだ。そして、セルに言った言葉を訊いてもそう。……誠実な人だと言う事は、もう 十分すぎるほどに判っているから。
「……魔人アイゼルに直接、催眠をかけられたんだ……。ランス達が撃退したサファイア、と言う者が使っていたとされている、魔法のそれとは比べ物にならないだろう。……他の洗脳されていた兵士達はどうなんだ?」
「うん。……、レイラさん以外は……もう正常になったの。でも、レイラさんは……」
マリアは、そう言って表情を落とした。そして、再びレイラを見ると。
「あっ……いいわぁ、も、もっと……あぁ……、あ、アイゼルさまぁ……あっ……」
レイラは淫らにそう叫び続けた。その内容から、ユーリが言っていた言葉が間違いないと言う事だった。
「……あんな奴にっ……」
かなみは、ぐっと歯を食いしばり、そして拳を握り締めた。彼女を意のままに操っただけに飽き足らず、こんな女の尊厳を奪ってしまうなんて、同じ女として、一緒に訓練をしてくれた恩人の1人として、……大切な仲間の1人として。許せる事じゃなかった。
「ユーリさん……、何とかならないのですか……? 御願い、し……ます」
「……」
かなみの懇願に、ユーリは深く目をつむった。
「こう言う術は、その者固有のモノだ。……だから、術をかけた本人が解く、もしくは……アイゼル本人を倒して、術とリンクしているだろう意識を断ち切る事、か」
「がはは! 簡単じゃないか、アイゼルをとっとと倒したらいいんじゃないか! と、言う訳で、さっさとコレとけ!!」
ランスは、へばりついたまま、そう吠えた。いつまでも、貼り付けられていたら……まぁ、ランスじゃなくても同じだろうけど。
「で、でも、ランス様。アイゼルさんって何処にいるか判りません。……あの時、誰も気づかずに立ち去ってしまいましたし。凄い速さです。そんな人を、無理では……?」
「探したらなんとかなるのだ! オレ様が探せば楽勝だ!」
粘着地面を受けた状態で、豪語しているが、まるで説得力が無い。……が、ランスのそう言う類の運は、他の人物よりは一線を超えていると言っていいだろう。
「……駄目だ。いくらランスの強運を駆使して探し当てたとしても、今も体力が減っている。……このままじゃレイラさんの身体がもたない。……よくで数日程度。……じゃないか?」
「……はい。このままでは、本格的に発狂して……、衰弱死と言う事もあります……」
ユーリの言葉を聞いて、セルが答え、そしてマリアは勿論、ハウレーン、バレス、エクスと言ったメンバーは表情を落とした。
「……ふむ」
ユーリは、レイラに近づく。この時ばかりは、志津香もかなみも 心配そうに彼女を見ているだけだった。ランスは、うるさいようだが、ユーリは集中しているようで、まるで耳に入っていない。
「(……あんな、裸の美人がオ○ニーしてるって言うのに、ユーリの奴、最初以外、殆ど反応してないぞ? もち、下も反応してないっぽい。志津香……、厳しいんじゃないか?)」
「っ!!」
志津香は、ミリの耳打ちに驚き、背筋をピンっと伸ばした。
慌てて、振り返って……いつもの様に怒鳴りつけようと思ったが、今は駄目、だろう。ユーリは集中している様だし、邪魔をするわけにはいかない。それに、皆殆ど固唾を呑んで、ユーリとレイラを見ている。そんな中で、声をあげられるはずもなく、そしてなんとか言葉を飲み込むことが出来た彼女もファインプレーと言っていいだろう。
「(な、何言ってるのよ、だから、前々から言ってるでしょ……、アンタもちょっとは自重しなさいって、それに今はそんな事を言ってる場合じゃないでしょ)」
限りなく小声でそう言い返す。
レイラの事を考えたら、今はそんな安易な事を言っている場合じゃない。ちょっと、空気を読まなさすぎだろう。
「(はは、オレは大丈夫だって思うぜ? なんも心配してねぇよ。……何せ、オレ達にはアイツがいるんだからよ。……今は無理だったとしても、最後はきっとなんとかしてくれる。ってな? 志津香だって、信じてるだろ?)」
「(っ……)」
ミリは、ニヤリと笑う。
そのミリの言葉には説得力があった。そして、自分も何処かでそう強く思っていた。ミリ自身も、強く想っている。
自分自身の身体の状態を知っても、人間では、不治の病とされている病名を訊いてもなお、『必ず治す方法を見つける』と言ってのけた男だから。
「……《解析》」
ユーリは、目を瞑ったまま、レイラの額に手のひらを当てた。そして、強く、深く……その異物に似た違和感を探る。
網膜を当して感じる歪な気配。
それは、レイラの脳髄の、精神の奥にまで侵食されているようだ。……人間の手では、明らかに届かない領域にまで。
「(……魔人の力、か。それでも、結界が判ったんだ。……だから、魔法であれば、なんとかなるか、と思ったが、駄目だ……。解析からない。セルさんの言う通りだ。呪い、か)」
ぎりっ……と、力を入れていた。今の自分の力では 魔法は解析する事が出来ても、呪術に近い位置に分類されるであろう、この力は無理だった。絶対的に経験が足りないと言う理由も勿論あるだろう。……心配しているかなみや、皆の為になんとか……と思っていたから。だが、まだ出来る事はある。
「……すまない、オレの力では解くのは無理だ。……この力は魔法じゃない。セルさんの言う通り呪い。若しくは固有能力の類。ランの幻術魔法とも違うみたいだ……」
ユーリはそう言うと首を振った。皆は、少し落胆をしかけたが、直ぐに表情を戻す。……ユーリの無念さを感じ取ったからだ。
「……だが、悲観するする必要はない。まだ、方法はある」
「ほ、本当ですか!?」
その言葉にハウレーンが声を上げた。ユーリは頷く。
「聖獣ユニコーンだ」
「あっ!!」
ユーリの口から、その名前を聞いて、マリアは はっ!として顔を上げた。
「そうよ、そうだったわ! 私ったら、うっかりしてた!」
「え? 一体どうしたんですか?」
「ユーリさんが言っている聖獣ユニコーンよ。その蜜を飲ませたら、どんな異常状態もたちどころに消える、と聞くわ。それさえ見つければっ! なんだっ! いい方法があったのよっ!」
マリアは、ぱぁっと顔を上げた。
そして、漸く粘着地面から解放されたランスが声をかける。
「ほうほう、ならばその蜜とやらが取れる場所も把握してるんだろうな? マリアは」
「う゛……、そ、それはこれからで……」
「やっぱり、マリアはマリアだったな。役立たず」
「むきぃぃ!!! す、直ぐに調べるわよっ!!」
相変わらずなやり取りをしている傍ら、ユーリは声をかけた。
「はぁ、ユニコーンの生息地なら ちゃんと判っているよ。ラジールの町の東にある迷子の森と呼ばれている森の中。いや森の奥、だ」
「あっ!」
「ほうほう、流石はオレ様の下僕だ。マリアとは一味も二味も違う訳だ」
「ムキー!! ゆ、ユーリさんと比べないでよっ!」
ランスとマリアのやり取りを、苦笑いしながら見ているユーリ。そこにかなみと志津香がやって来る。
「……ありがとうございます。ユーリさん」
「構わないさ。だが、これからまだまだ大変だぞ。あの森のモンスターは一筋縄ではいかないからな」
「……はいっ!」
かなみは、元気よく頷いた。レイラを助けられる、そう思っただけで嬉しい。そして、何よりもユーリだから。……安心できるから。
それは一先ず解決の糸口が見つかり、安堵したのだが、重要な事? が志津香にはあった。
「それで、アンタはいつまでレイラさんを見ているのかしら?」
そう、その事だった。さっきから、ずっとレイラの傍にユーリがおり、逐一見ている訳ではないのだが、それでも志津香にとっては 嫌だったのである。
「はぁ、別に本人の姿、身体とかは 見てないだろ? まぁ、顔辺りまでは仕方ないにしても、だ。ランスの様に見るつもりは毛頭ない。……魔人の力、今はまだちょっと判る事があるかどうかを、後調べようと……」
ユーリが、レイラの方に向いたその時だ。
「あぁ……アイゼル、アイゼルさまぁ……そこにいらしたのですね……」
「っ……!?」
いつの間にか、秘部を触っていた手を除け、ユーリの首に両手を回して抱き、押し倒される形になった。
〝どさっ〟と言う音と共にベッドの上で重なり合うレイラとユーリ。まるで、恋人を求めるかの様に、レイラにユーリの身体を絡め取られた。
どうやら、彼女を視る為に 深くまで調べていたからだろうか、催眠作用の何かに引っかかったのだろうか?
「(……と、冷静に考えられるんだけど)」
視線を、ゆっくりと上にして、かなみや志津香の方を見た……。ランス達は、まだマリアと色々言い合ってるし、他のメンバーもレイラを救う事が出来る可能性がある事を知って安堵の表情であった為、此方の方には気づいてなかったようだが……。問題は彼女達だ。
否、志津香だけだ。
〝ごごごごごごごご…………〟
志津香の背景に、地獄の炎が視える……。赤く染まっていく脚も一緒に視える。かなみは、驚いていた様だが、何処か悲しそうな表情をしていた、と言うより、今の状況を考えたらユーリに非がない事くらい判りそうな物だけど、志津香にとっては、そんなのは、おかまいなしなのである。
「はははは! 色男はつらいねぇ? お、そーだユーリ。オレとも肌を重ねないか?」
「……馬鹿言うな」
ミリも見ていた様で、ココぞとばかりに声を上げた。
ユーリは、彼女の身体を無理矢理は剥がす訳にもいかず……、ただただ抱き枕状態となってしまっている。レイラは裸だから、更に女性陣達の闘争心を、掻き立てる様だ。
「だから、いつまで抱き合ってるのよっ!!!」
「ゆ、ユーリさん……っ!」
「こらこらこら!! 一言一句、想像出来るセリフを放ってくるな! 今のレイラを無理矢理、乱暴に退ける訳にはいかんだろ? だから、手伝ってくれって!」
ユーリの言葉を聴いて、やや殺気を抑えながらも、志津香はレイラの身体をゆっくりと剥がした。かなみは、せめて誰にも見られない様に、とレイラの身体に薄い毛布を被せた。
「……ありがとう、って素直に言いたいがな。脚、踏まれなければ」
「……うるさいわねっ!」
「はぁ、かなみもだ……、オレを握る手、痛いぞ」
「うえっ!? あ、す、すみません……(わ、私もつい……)」
かなみは慌てて握る手を緩めつつ、ユーリの身体を起こした。ヒリヒリと痛む脚と腕……。だが、この先の事はまるで、心配ないな、と何処かで思っていた。
戦い以外でも色々と痛い目にあう事が多いが、心底信頼出来るメンバーが多いから。
「さぁ、ランス様。ユニコーンをみなさんで捕まえに行きましょう。早く助けてあげないと」
「うむ、それでお礼にHをしてもらおうじゃないか! 楽しい夜の情事だ! がははは! ……うひうひ、へへへへ」
「もう、散々人をなじっておいて、あっさりしてるんだからっ!」
どうやら、ランス達の話も纏まっていた様だ。そして、リーザス将軍達は話し合いをしている様だ。
「我らが動き、捕らえる方が早いと思います」
「うむ……じゃが、此処の拠点を攻めてくる可能性はゼロじゃない」
「そうですね。……そして大人数で動けば、敵に知られる可能性も出てきます。……敵側には魔人と言う人外も控えているのですから」
3人の将校はそう言い合う。
大人数が動けば、確かに早くに捕まえられるかもしれない。……が、町の守りも手薄になる。将校達が最も強い戦力であるが、彼等が動けば統率力も著しく低下するだろう。
「……ああ、オレたちが行くよ」
そこに、ユーリが来た。
「ユーリ殿」
バレスは、ユーリの言葉を聴いて、振り向く。
……何やら、脚と腕を気にしているし、赤くなっている様だが……、一先ず置いておく。
「それに、ユニコーンは、繊細なモンスターだ。……反応もかなり敏感。大人数で行けば、気配で逃げられる可能性の方が遥かに高い。町の守り、そしてジオへの偵察の件を考えたら、小人数精鋭がいいだろう、ランスを含めたオレ達がユニコーンを捕まえてくる。……それが最善だと思うが、どうだ?」
「……確かに、ユーリ殿の言う方法が最善、ですね。僕としても」
ユーリの案に、エクスは頷いた。
バレスも同様だったようだ、現時点では間違いなくそれが……だと。ただ、身内事だった為かバレスは強く思うこともある。
「……ユーリ殿。何から何まで申し訳ない」
バレスのその言葉を聞いたユーリは、直ぐに返す。
「……はぁ、何を言ってるんだ? バレス将軍。かつては所属さえ違うが、今はオレ達は仲間、だろう? 今更軍人も一般人も、ただの一介の冒険者も無い。……この解放軍に所属する以上は仲間だ。見捨てたりはしないし、できない」
ユーリは、少しため息をしながらも……、目ははっきりと開いていた。その言葉を聞いたバレスをはじめとした他の2人は、ゆっくりと頭を下げていた。確かに、今は解放を目的とした仲間だ。……が、それでも感謝の意を示したかった。ただ、それだけだった。
~ラジールの町~
ユニコーン捕獲隊のメンバーとして、ランス、ユーリ、シィル、志津香、かなみ、ミリの6人となった。
トマトとランは仕切りに行きたそうにしていたが……、其々には役目がちゃんと定められていたが、それは今回の事が知らされる前だった為、タイミングが悪かった様だ。
『むー、トマトとした事が……ですかねー……。正妻決定戦に参加できずに終わるとか、ありえないですかねーー!!』
『うぅ……、で、でも、私はこの町の復興支援、任されてるし……、でも行きたいのに……』
……地団駄を踏んでいるトマトと意気消沈しているランだった。
ばっちりとついて行く事が出来た他のメンバーは意気揚々!まぁ、勿論 一部決して認めようとしない者もいるけど。
「ランス様、皆さん、迷子の森に行きましょう! ラジールの町の直ぐ傍ですよ!」
「よしよし、しっかりオレ様の荷物も持てよ? シィル!」
ランスは、シィルにそう言うと、拳を突き上げた。……シィルが担ぐ荷物の多さを見て、かなみがため息を吐く。
「ちょっと、シィルちゃんが可愛そうじゃない。少しくらい持ってあげなさいよ」
「馬鹿言うな、オレ様の奴隷だぞ? 当然じゃないか」
「はぁ、どうせガラクタばっかなんでしょ? 全部置いてきなさいよ」
「オレ様の必需品なのだ! 一流の冒険者には、一流のアイテムが必要なのだ、馬鹿者!」
「……ランスに何言っても無理だって、シィルちゃん。辛くなったら言ってくれ。手伝うよ」
「あ、はい。ありがとうございます。ユーリさんも皆さんも」
シィルは、自分の為に言ってくれている。その事が嬉しくて、笑顔でお礼を言っていた。勿論、ランスに叩かれてしまったが、それでも笑顔だった。
~迷子の森~
その場所は、ラジールの町の東に位置する森。『迷子』と呼ばれているだけもあり、同じ様な景色が続き、且つ広大。樹海と言っていいだろう。だからこそ、名のとおりに……。
「オレ達が迷子にならない様に注意しないとな」
「がははは! 馬鹿者、迷子になるのは、ガキか三流冒険者くらいだ。超一流のオレ様がなるわけ無いだろう、つまり、オレ様に付きっきりでいれば、安全、と言う訳だぞ? お前たち?? ん? どうだ? 心配なら、オレ様にぎゅーっとしがみつく事を許可しようではないか、がはは!」
デヘ、デヘっと表情をだらしなく緩めながらそう言うが……、明らかにしらーっとしている女性陣。
無言で奥へと進んでいく。その中には、ユーリも加わっていた。話が長くならない内に先へ……と思ったのだろう。ガキ……と言う言葉には、ピクリと来たが、殆ど皆が同じように奥へと進んでいくと言う集団心理?も幸いしたようだ。
「黙って進むなぁ!!」
「……馬鹿、これは優しさってヤツだぜ? ランス」
ふんがー!と怒っているランスにミリは、耳打ちをした。
「なんだと?」
「お前は、ユーリの様に超鈍感、って訳じゃないだろ?」
「当たり前だ。オレ様をあのガキと一緒にするんじゃない」
ランスは、胸を張ってそう答える。
これは、完全なやぶへびである。ランスは遠まわしに認めてしまったと言う事なのだから。
「……なら、アイツ等全員 ユーリに惹かれてるのも判ってるって事だろ?」
「……ぐ……むむむむ!!」
全世界の美女はオレ様の物、を信条としているランス。他人に取られる事を嫌うランス。……だからこそ、認めたく無かった様だ。ただ、ユーリがそう言う気配をみせなかったから、これまでは別段意識しなかったようだが。
「ふん! 所詮アイツは、戦闘馬鹿だ! ガキだし、女に興味など100万年早いと言う事だ! ま、あいつが気づく筈もない、最後にはアイツ等はオレ様に寄ってくるのだ! がはは!」
ランスは、そう言うと大股で歩いて行った。その後ろ姿を必死に追いかけるのはシィルだ。
「ら、ランス様ーっ! わ、私も行きますっ!」
少々重たい荷物をなんとか頑張って運ぶシィル。
文句言わずに運ぶ所を見ると、彼女がランスを想う気持ちは本気であり、本物……と言うやつだろう。
「あー、ランスには勿体無いねぇ……、シィルともヤってみたいな……」
ミリは、そう言いつつ、舌なめずりをしつつ、後を追いかける。
そのまま、ユニコーンを目指して 先へと進んでいくのだった。
〜モンスター紹介〜
□ 聖獣ユニコーン
迷いの森に生息している聖獣。
繊細であり、敏感なモンスター。……実はレア女の子モンスター?とも言われているが、汚れなき乙女以外が近づくと逃げてしまう。
ユーリが言っていたのは以前に得ていたモンスターの情報であり、そこまで正確ではなかったが、大体は合っている。
大人数で行った場合はほぼ100%逃げられてしまう。
……今回のパーティでは、汚れのない女の子が約2名程いるので、絶好の機会だったりする。
〜場所紹介〜
□ 迷子の森
ラジールの町の東に位置する広大な森。
名の通り、ここでに入ってしまえば高確率で迷子になってしまうし、アナウンスもしてくれないから、取り残されてしまう可能性大である。
後書き
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