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魔道書を使ってみた
そのふりげた杖の先からは青白い魔法陣が浮かび上がり、その先に白く透き通った分厚い氷の壁が現れる。
今更ながらレイアの持っている白い杖を真面目に僕は見た。
細い蔓草と花、果実の模様が組み込まれ、先端部分には硝子のケースのようなものが作られて、その中では青い石が輝いている。
そこから何となく“魔力”というものを僕は感じる。
もしかしたならこれが“高度言語の杖”なのかもしれない。
確かに呪文を必要としていなかった気がするから、そうなのだろう。と、
「ふーん、中々やるわね。でもその程度の氷の魔法で防げるのが、私の実力だって思わないことね!」
その声と同時に、氷の壁に亀裂が入る。
すると即座にレイアは、氷の壁を三枚ほど作り僕の手を握り、
「魔道書は見つかりましたので、ここに用はありません」
「あ、うん、そうだね」
「それに吸血鬼は魔族の中では強い力を持つ者。それも彼女が本当の事を言っているのだとしたら貴族……魔力の強いものが多いと言われている彼らのうちの一人。正面切って戦うのは得策ではありません」
そう告げるレイアの声が心のなしか焦っている気がしたけれど、とりあえずは本を片手に僕はレイアに手を惹かれて一回まで来たのだけれど……。
「にがさないわよ!」
この図書館は吹き抜けになっているのを忘れていた。
この吸血鬼と名乗る少女は、空から花弁が舞い落ちるように軽やかに僕達の前に現れる。
余裕の笑みを浮かべる彼女に、危険な強敵なのかもしれないと僕が思っていると、
「さて、その魔導書をよこしなさい。私がそれを手に取ろうとしたらその魔道書、嫌がって逃げやがったし」
「……魔道書に認められていないということでは?」
つい僕はそう言ってしまう。
先ほどレイアから聞いた範囲では、魔道書には認められないといけないようなのだ。
僕にわざとぶつかりにきた辺りは突っ込みどころがあるが、多分この魔道書は僕を選んでいる。
だって先ほどから全然逃げようとせずに僕に捕まえられたままでいるし。
そこで目の前の吸血鬼を名乗った女の子がムッとしたように、
「なによ、この美貌に有り余る魔力! そして貴族としての教養の高さ! どれもが魔導性を持つにふさわしい私を認めないことのほうがおかしいのよ!」
「世の中には変わった好みの魔導書がいるのかも?」
そう試しに僕は言ってみるが、彼女は、
「いいえ! 魔道書が選ぶのは強き者! そうなってくると貴方はとても強い力を持っているはず。なのに女の子に守られて……気に入らないわ! 正々堂々と勝負しなさい!」
「え、いえ、あのでも……」
僕は魔法が使えない状態なのだ。
けれどここで彼女を攻撃しないといつまでも追ってきそうである。
どうしようかと思っていると魔導書がブルブルと震える。
なんだろうと思ってみると魔導書が一部を開いている。
そこでレイアが僕に、
「魔導書がそのページを読めと言っているようです」
「そうなんだ、えっと……」
そこに描かれているのは、風の魔法であるらしかった。
なので僕は無意識の内にその文字を超えにだして読んでいて、
「“強き女神の風”」
一言その言葉をつぶやいた。
すると僕とレイアのいる場所の地面に白く輝く魔法陣が浮かび上がり、その周囲で風が蠢く。
同時にその風は目の前の吸血鬼の少女に向かっていき、
「ちょ、えっ、待って、ぁあああああああ」
その風に煽られて入口のドアが開き、そこからその吸血鬼の少女は何処かへとたばされていってしまったのだった。
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