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魔道書を探しに
銀色の髪が、彼女がこちらに来る動きでさらりと流れる。
緑色の双眸は好奇心に彩られて僕を見ていて、何となく気圧された僕は一歩後ずさる。
そこで新しく現れた彼女にレイアは、
「リリア、どうされたのですか?」
「ん? どうして私がここにいるのかって事? それとも部活をお休みした事?」
「……両方でしょうか」
そう問いかけるレイアは何処か緊張しているようだった。
どうしてだろうと僕が思っていると、リリア肩をすくめて嘆息する。
「別にレイア、幼馴染の貴方の行動を監視しているわけではないわ。貴方の性格は良く知っているし、貴方のお父様もお母様も良く知っているもの」
「……」
「だから、本当に偶然よ。気になっている魔法があるから、調べに来ただけ。そして部活は……ちょっと今どんな風にしようか詰まってし待ったからお休みして気分転換中なのよ」
「……そうやってお休みばかりしていると、部活動の会誌の締め切りをまた破りますよ」
「う、相変わらずレイアはちょっと手厳しいわね……。それでそちらの子は? 見かけない顔と服だけれど」
そのリリアの問いかけに、レイアがしまったといった顔に一瞬なる。
けれどすぐに無表情になって、
「たまたま近くで仲良くなった異国の子です。それでは……」
そういってレイアは僕の手をひく。
何でレイアはこんなに焦っているのだろうと思っていると、そこでリリアが後ろから声をかけてきた。
「レイア、何か困った事があったらいつでも言ってね。……私なりに力になるから」
「……ありがとうございます」
レイアはリリアに振り返らずにそう、無感情に答えていたのだった。
やってきた階は5階であるらしい。
そのフロアには、そこそこ人がいるようではあったが、あまり近づかないようだった。
そしてその理由はすぐに分かった。
「“不機嫌な魔道書に注意。命の保証はできません”って、え?」
僕は注意書きの書かれた立札を見て立ち止まる。
だがそんな僕の手を引っ張ってレイアは、
「さあ行きましょう。颯太に合った魔道書を探しに」
「で、でも危険そうなんじゃ……」
「気に入らなければ魔道書は自分から近づいてきませんから大丈夫です。起こさないように歩いていけばいいだけ。しかも今この場所には、誰にも今まで……500年近く持ち主を選ばなかったために、厳重な書庫から取り出されて見える場所に置かれてしまったという伝説の魔道書“ニートナ備忘録”があるというのです」
「そ、そうなんだ……でもそんな凄い本に僕は選ばれるわけがないよね?」
そこでレイアは沈黙してから僕を見て、
「異世界から来た方は特に魔道書に気に入られやすいと言われています」
「……え?」
「そもそも魔道書は伝説んぽ魔法使いや高度な魔法使い達が、彼らの知識を濃縮してかきこんだ物。それ故に、その知識を扱わせるには十分か、魔道書自身がその主を選ぶ権利があるという物です」
「そうなんだ。魔道書を使うと何が出来るのかな? もっと色々な魔法が使えたりするのかな?」
「そうですね、使える魔法の幅を一気に広げてくれる、魔道書自体が魔法を使うための媒介、つまり“魔法結晶石”の様な役割をしてくれるのです」
それはそれで、僕には最適に思える。
そもそも僕は無意識のうちに魔法を否定しているようだから。
そんな事を考えながら進んで行くと、何処からともなく何かが飛んできて僕の顔面にぶつかったのだった。
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