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MÄR - メルヘヴン - 竜殺しの騎士

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022話

第五回戦も終了し城へと戻ったメル、城では沢山の人達がメルの一同を讃えていた。特に

「いやぁジークあんたって本当に強いんだな!」
「おりゃ最初っからアンタはやるって思ってたぜ!」
「何言ってんだよ諦めちまってるとかいったの誰だっけ?」

ナイトの一人を討ち取ったジークは皆から大きく喝采を浴びていた。ジークはそれらを軽く受け流し確保したチェスのメンバーを城の中へと連れて行き適当にベットに寝かせその耳から、クラスを証明するピアスを外した。そんな時、一人の男が目を覚ました。

「ううう………某は……死んだ、のか………」
「いや生きているぞ、残念な事にな」

目を覚ましたのはラプンツェルに一番最初に制裁された筈のMrフック、彼は目の前にいるジークに驚き身体を起こすが体を走る痛みに顔をしかめる。

「無理はするな、ホーリーARMでの治療は終わっているが完治はしていない。今は身体を休めておけ」
「某は、どうなったのだ………確かにあのラプンツェルめに……」
「確かにお前はラプンツェルに制裁された筈だった、だがこいつを使った」

そう言いながら見せたのは扉のような形をしたARMであった。

「ディメンションARM スペースドア。こいつは使用者が思い描く場所に通じるものでな、これを使ってホーリーARMを持った腕を部分的に空間移動させてお前を治療させた訳だ」
「し、しかし何故そのような事を……何故某を助けたのだ!?」

フックからしたら理解出来ない、自分はチェスの駒の一員で6年前のウォーゲームにも参加しクロスガードの人間を殺した事もある。それに今回のウォーゲームではメルのスノウを倒している、何故そんな自分を助けるのか全く理解できずにいた。その問いを受けたジークは軽く笑いながら答えた。

「―――捨てる神あれば拾う神ありってな。正直何故助けたのは解らないが、俺がそうしたかったからだ」

真っ直ぐと答えたジークにフックは驚きを隠せなかった、この青年の言葉には嘘偽りが全く無い。透き通った清流、いやそれ以上に清らかな人物。正に、聖人だという相応しい人物。フックは耳にピアスの重みがないことに気づく、既に自分はチェスではいられない。

「………某はもうチェスではないのだな」
「ああ、そんな所だ」
「もし良ければ、そなたに仕えてよいか」
「好きにすればいい、なら最初の命令は休め」
「承知した、新たな主よ」

フックはさわやかな気分で目を閉じた、ここまで良い気分で眠りに落ちるのはいつ振りだろうか。ああそうだ、嘗て使えていた貴族の家で感謝された時以来だ………また、この気分を味わえるなんて……。

フックが眠りに付いたの確認してから部屋に鍵をかけてから出る、既に日は落ち夜の帳が下りている。ギンタ達が居る食堂へと向かう、ナイトクラスの敵を倒したという事で今夜はご馳走が用意されているらしいから恐らく全員そこにいるだろう。

「いやぁ勝った後の飯は美味いなぁ!」
「いやっは本当っすねぇ!」
「おう来たかジーク!今日の殊勲賞!」
「おおジーク!お前さんの分の飯とってあるで~!」

皆がそれぞれ食事を楽しんでいる中にジークも入り食事を始める、矢張り偶にはつくりとしてではなく食べる側に集中するのも悪くは無い。そんな中、一人深刻そうな表情をしたドロシーが声を上げた。

「明日、ウォーゲームが休みになるのは知ってるでしょ」
「ああ、ファントムが行きたい場所があるとか言ってたな」
「明日、私と一緒にカルデアに着て欲しいの」

カルデア、メルヘヴンの中でも特異な場所。他の国との国交を一切持たず謎に包まれた魔法の国、そしてドロシーの産まれ故郷でもある場所。魔法使いたちの里といわれれば聞こえはいいが、何故其処に行く必要が出てくるのだろうか。

「皆にも関係する、大事な話があるんだ」
「私たちにも?」
「いいじゃん!魔法の国なんて凄いワクワクする!行こうぜカルデアへ!」

っといった風にキャプテンの一言でカルデア行きは決定した。そんな中ジークは考えていた事があった。

「………」
「如何したのジーくん?」
「………ドロシーの家族の挨拶の為に正装をしていった方がいいか?」
「せいそっ!!!??そ、そう言うの為に行くじゃないから良いよ別に!!?ぜひとも挨拶はして欲しいけどまた今度ねそれは!?」
「そうか」

何処か天然染みたジークであった。


そして翌日、一同は朝早くにカルデアへと出発する事になった。ベルとエドは留守番する事になった、全員の準備が終わったのを確認するとドロシーは指につけたディメンションARMを発動した。

「このメンバーを、カルデアへ!」

魔力の光が満ちて意気一瞬のうちに空間移動が行われた、暫し強い光で目が眩むが次に目を開けた瞬間に広がっていた景色に一同は驚いた。美しい自然なのはわかるがそれ以上に土地自体が強い魔力を放っている、そして空に悠々と浮かんでいる巨大な城。正に魔法の国。

「こ、此処が魔法の国カルデア………」
「ドロシーに生まれ故郷か」

ジークも少々感慨深く周囲を見る、だがこの光景が少し懐かしく思ってしまった。来たことも無いこの場所が、何故懐かしく思えた。何故だろうか

「お~いジークどうしたんだ~?置いてくぞ~!?」
「あ、ああ今行く

先を進むギンタ達を追いかけるように駆けるジークは何時の間にかそんな思考を捨てていた。進んでいく緑の色の巨大なもんが見えてくる、そこには門兵が一人立っておりこちらを見ているがドロシーを見ると顔を明らかに明るくした。

「おおっドロシー様!おかえりなさいませ!!」
「ただいまジム、門を開けてくれる?」
「はい勿論ですが……その、後ろの方々は?如何にも妖しげな……っ!?」

ドロシーの後ろにいたギンタ達を見て入れて良いものか悩んでいる門兵だがジークを視界に捉えた途端に表情を固くし目を見開かせその場で膝を付いた。まるで国を王を目に前にしたように。

「ど、如何したのジム?いきなり」
「はっ………!?す、すいません、私も良く……その方々がドロシー様のお仲間ですか?」
「ええ、特例として入れて欲しいの」
「はっはい!今開けます!」

カルデアは掟として他国の物を入れてはならない、それをあっさり特例として認められる所を見るとドロシーが如何に高いポジションに着いているのかが良く解る。そして開かれた扉、中へと入っていくとドロシーの周囲に次々と人が集まっていく。

「ドロシー姉さまおかえりなさい!」
「ただいま皆」
「トトやクレイジーキルトは元気かい?」
「ええ勿論!」

笑顔で会話をするドロシーにジークは少し笑う、故郷に戻ってきて早々に歓迎され自分の帰りを待っていた人たちと会話をする。それは心が酷く休まり暖かくなる物だ。

「所で後ろの方々は?」
「ああ、一人を除いて子分って所かな?」
「誰がだ!」
「まあまあアルちゃん落ち着きなはれや」

カルデアの住人たちの目はメルのメンバー達にも向く、それぞれへ興味深そうな視線を向けているが先程の門兵と同じようにジークを目にした瞬間に全員が動きを止めてしまう。そして膝をついてしまった。

「………すまない、良く解らないがそんな膝を付かせるような事をさせてしまってすまない……」
「ってジーくんが悪い訳じゃないよきっと!?皆だって如何したのいきなり膝なんてついて!?」
「あっそ、そうだ!何で膝を……?」
「ってそんな事をしてる場合じゃなかった、大爺様と話があるの」

それを言うと住人たちは表情を固くし見つけたのかと問いを掛けドロシーは首を縦に振った。そしてドロシーはアンダータで空に浮かんでいるカルデア宮殿へと移動した。目の前には巨大な門、それは開かれ奥へと進んでいく。

「ドロシーってこの国でどういう立場なんだ?」
「お姫様みたいな物かな♪」
「姫様ねぇ、スノウとはでっけえ違いだな」
「五月蝿いねぇ、此処から突き落としてやろうか!」

小言を聞きながら暗い廊下を進んでいく一行、廊下の中も魔力に満ちている。魔法の国というのは伊達ではないようだ、此処にいるだけでも魔力の貯蔵量が増えそうな気がしてならない。そんな事を考えていると奥にろうそくの光が見えてきた。そこは大きな広間で、中心部には魔方陣がありそこにはローブを羽織った老人が立っていた。

「……久方じゃのうドロシー、帰ってきたということはつまり」
「はい、大爺様。ディアナを見つけました」

ディアナ、ラプンツェルから聞き出したクイーンの名。そしてジークのみを欲している人物でもある、がその名を聞いたスノウは身を凍らせた、瞳は限界まで見開き驚愕していた。

「チェスの駒をご存知ですか」
「うむ、6年前に戦火を巻き起こした者達じゃな」
「その中のクイーンです、ディアナは」

「ドロシー、ディアナというのは何者だ。そいつは俺を望んでいる、是非知りたい」

カルデアの長である大爺と会話しているドロシーに割り込むように口を開いた、彼も自分自分のみをそのディアナに狙われている。知る権利は十分にある。重々しい口を、言い辛そうに、ドロシーは口を開いた。

「ディアナはカルデアを捨て、レスターヴァの王妃となりスノウの義母となった女だよ。ジーくん」
「スノウの母ちゃんが、ドロシーの姉ちゃん!?それがクイーン!?」
「な、なんか訳解らなくなってきたっす~!!!ク、クイーンってチェスの一人っすか!?」

混乱する一同、そしてジャックの言葉にアランが答えた。

「ナイトの上にいる二人の存在の一人だ、前回のウォーゲームでは見つからず決着がつかなかった。見付かる訳がねぇ、味方と思っていた中にいやがったんだからな!」
「ディアナはね、昔から何でも欲しがってた。食べ物でもおもちゃでも、そしてその欲望は爆発して大事件を起こした。カルデアにある特殊能力を持った798のARMを盗んで逃げた」
「うむ、8年前の事じゃったな。ディアナはカルデアを裏切った反逆者じゃ、禁忌を犯したものは身内が何とかせねばならぬ」

それを聞いたジークは理解した、ドロシーはディアナという名を聞いたとき顔色を変えたのか。そして何故彼女を追っているのかを。

「つまりだ大爺よ、身内である妹のドロシーがそのディアナを始末しなきゃならないって事か」
「「「「「「ッ!」」」」」」
「……うむ、正にその通りじゃ。察しがいいの、竜の血を浴びし騎士よ」

それを聞いた一同は驚愕した、ドロシーはディアナを殺す為に旅をしていたのだ。そしてギンタは怒った、幾ら掟とはいえ姉妹で殺し合いをさせるなんて酷すぎる。血も涙もないのかと。そんなギンタを制止するようにジークは声を上げた。

「ならだ大爺。俺は将来的にはドロシーと結婚する気だ、俺がディアナを討ちとっても良い訳だな」
「「「「「えええええええええええええええええええ!!!!!!????」」」」」

あっさり口走った言葉、それはその場全員に嘗て無いほどの衝撃と驚きを与えドロシーは顔を真っ赤にしパクパクと口を開閉させていた。

「おお、おおおおおジークお前マジかよ!?えっマジ!?ドロシーと結婚する気なのお前!?」
「本気かジーク!?お、おぬしにはもっと相応しい女子がおるじゃろ!?」
「っていうか付き合ってたんすか!?」
「ど、如何いう馴れ初めで付き合ったの!?キスとかしたの!?ねぇ~教えてジークさん!」
「キッ~~!!!ジーク!!自分は羨ましいぞぉお!!羨ましいぞおお!!」
「お前の趣味は解らんな」
「まあ、似合いのカップルじゃないか?」

それぞれが驚きながらジークから馴れ初めを聞きだそうとしたり嫉妬したり応援したりしている中、ドロシーは一人、結婚して後の生活を脳内シュミレートし更に赤くなりながら暴走するのでありました。 
 

 
後書き
次回、VSチェスの駒の大軍! 
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