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ひねくれ騎士(ナイト)の|生存報告《ライブレポート》

作者:einhart800
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プロローグ

あるところに剣に選ばれた王様の国がありました。王様の周りには12人の騎士と側近の魔術師、お妃様がおりました。彼らは仲良く助けあい、国を守り、育てていました。誰もが幸せであることを疑わなかったある日、お妃様と騎士の一人が愛しあっていることがみんなに知れ渡ってしまいます。王様は怒り、騎士は妃を連れ国から離れました。これをきっかけに幸せだった国が儚く崩れ去ってしまいました。王様と騎士は戦いました。仲が良かった騎士がお互いを殺しあい、多くの犠牲がでました。最後に騎士は教会へ、王様は理想郷へそして王国は忘れ去られました。



現在、他種族の存在、魔法や異能の存在が一般化され世界は大きな変化を迎えた。それに伴い特殊な犯罪が増加し、今の警察システムでは対応することが難しくなった。結果、それらに対抗するためのスペシャリスト、秩序の守護者(キーパーズ)が組織された。
守護者とは異能者・多種族が起こす事件(トラブル)を未然に防ぎ、事件が起きた場合迅速なる解決を行い現代の秩序を守る。また、キーパーに選ばれるものの多くは異能者や多種族が主である。これからの未来を担うキーパーを育てる学び舎、それが国立玉依学園である。
玉依学園は日本で起こる事件に対抗するために設立された学園である。小学校から大学までを一貫しており、才あるものへの門は広い。しかし、才のないものは多くの試験や能力適正により審査され選ばれたもののみ入学が許される。入学したものは自分の能力にあったカリキュラムを行い才を磨く。学生の身ではあるがトラブルが発生した場合は解決への協力が要請される。実践から学べること、状況判断や犯罪者との駆け引きを学習する。活躍によっては授業への出席も免除される。
以上玉依学園入学概要より




なんでこんな目に。俺こと二車 奏真は、本日何回目かのため息を吐きながら入学式の会場へ歩いていく。普通の学校へ行っていた自分からしてみればこんなこと迷惑以外の何ものでもない。俺は普通に勉強して普通の公務員になるのが夢だった。進路希望調査にもそう書いたし、そのために普通科高校の入試も受けた。結果も合格とこれから始まる素晴らしき未来へ向け大きな一歩を踏み出したはずだった。しかし、帰宅途中に川で溺れている小犬を助けてしまったのが運の尽きだ。始めは見かけただけで見捨てるつもりだった。しかし、野次馬が騒がしくしていたから気になって見に行ってみると今にも溺死しそうだった。だから、俺は助けたいと願った。すると、川の水が意志を持ったように動き出し、小犬を救いそして俺の手元へ運んで来たのだ。野次馬たちの視線が一斉に集まり、俺は犬を置いて一目散にその場を離れた。だが、運悪くTwitterに一部始終をupされてしまい次の日には公安の方々が自宅へ押しかけ、異能に関するテストをされ自分が異能であることが発覚した。自分には選択の余地がなく渋々入学を決意することになった。
入学といっても一般の学校から編入してくる奴は限られているゆえに入学式といっても形だけのものだ。事実今年の一般からの入学者は10人と聞いている。そのうち実際の試験を受験して来たのは3人と理不尽にも程があるように思う。そんなことを考えているうちに会場についたようだ。自分の席を探し座る。改めて周りの様子を伺うとみな気を張らず軽く流すように話しをしたり、寝ている奴もいる。だが、いやでも目に止まるものがある。まずは多種族の生徒だ。一般認知がされてはいるが、普通は会うこと自体がレアなほどでこうもたくさんいるといやで視線がいってしまう。
そしてもう一つが・・・・・
なんでそんなに物騒なんだ。
あたりにいる生徒のほとんどが剣や弓、槍などを手元に置いている。俺の周りにはそんなもの置いてる奴はいなく。このことに驚いているの奴が多いようだ。
開会の挨拶があり入学式が始まった。学園長が入学祝いというより進級祝いみたいな話しをした。あと生活指導の教師が注意事項や明日からの予定を話した。それらを聞いて今にも眠りそうになっていると急に歓声が上がった。
何事かと壇上をみると一人の女子生徒が立っている。
「皆さん御入学おめでとうございます。生徒会長の久永 真白です。」
女性にしては少し高めの身長、青みがかった瞳、腰まで伸びる長い黒髪に白いメッシュが目に止まる。顔立ちも整っているいわゆる美少女だ。体型も出るところは出て締まるところはしまっている。
「入学式といっても皆さんには進級したという印象が強いかもしれません。しかし、高等部になり皆さんはこれまで以上に危険な演習、事件に参加してもらいます。結果として卒業できない生徒も何名か出るかもしれません。そうならないためにも自らの技術を高め自分の命は自分で守ることを心がけてください。最後に私たちは、学生という身分ではありますがキーパーであることを忘れないでください。キーパーはあらゆるトラブルを解決するとともに、救いを求める手を決して見捨てず救わなければなりません。高等部になりそんな機会が増えることでしょう。一人でも多くの命を救うことそれがキーパーの義務であり、存在理由です。皆さんはそのことを考え三年間を過ごしてください。」
はっきりと通る声で話した。会場の大半が拍手をしている。これでは、先に話した学園長や生活指導がお膳立て見えてくる。しかし、教師たちは悔しがらずむしろ聞き入っているようにうかがえる。それほど心に響くような演説だったような気がする。俺としては自分の身を危険にしてまで他人を助けようとは思わないと内心思いながら話しを聞いていた。第一、キーパーになりたくてここにいるわけじゃない。無理矢理入学させられてこっちはいい迷惑なんだ。退学しようにもこの学園を退学したら政府の管理下でしか生活ができなくなりプライベートなんてものがなくなるから、しかたなく入学したのだ。それなのに自分から命を投げ出すなんて馬鹿馬鹿しいにも程がある。
生徒会長が一礼をして壇から降り始める。周りももう直ぐ終わることを予想してか雰囲気が緩い。俺もさっき思ったことを忘れるように別のことを考える。すると、突如入り口が轟音を立てて開かれた。多くの生徒が後ろを向く。
「入学式中に申し訳ありません。突然ですが皆さん、攫われてください。」中年くらいの男が言う。同時にオークやトロール、特殊部隊のような装備をした人が入ってくる。生徒たちは驚きはしていたが直ぐさま自らの獲物に手を伸ばし構える。
「やはりいい。この時を狙って正解だ。自分たちをプロだと勘違いしている高等部に入りたてが一番いい獲物だ。お前ら凡人はいらねぇ。魔法持ちを狙え。」
命令に従いオークたちは生徒を襲うが生徒たちの応戦により講堂は混沌と化す。ある者はチームを組みオークと戦闘し、ある者は防御結界を組み非戦闘タイプの生徒を守る。
「出口確保できました。」
一人の男子生徒が裏口にいた敵を一掃したようだ。
「ご苦労です。副会長、戦えない生徒は今直ぐ離脱。残りは各自チームを組んで戦闘を」
結界を張っていたグループのリーダーらしき人が言う。結界のグループが移動し、脱出路の周辺を防御結界で守り中の者で避難誘導を始める。
「あー、やっぱこいつらじゃあダメだな。まあ、いい具合に残ってくれたな。さて俺も始めるか。」
襲撃者が何かの詠唱を始める。そこを見逃さず、副会長と呼ばれた生徒が剣撃を加える。しかし、相手も全てかわしながら詠唱を続ける。どちらもかなりの腕だが、副会長の方が僅かに劣っているように見えた。
「さあ始めようぜ。ガキども」
そう言うと襲撃者の後ろから何かが出ようとしているのが見えた。



本当どうしてこうなった。避難している生徒に混じって逃げる。自分の意思とは裏腹に望まぬことばかり起こる。起こってしまったことは仕方ないとはいうがそれで片付けられるものにも限度がある。まあ、要するにここは普通の学校ではないのだ。普通に過ごしてきた自分のいるべき場所ではないのだ。
そう考えていると新たな轟音とともに何かが現れる。それは講堂の天井を壊し、降り立った。それは表現するに獣の王者であろう。それは他のやつらとは明らかに違う強い力、誇りというべき貫禄を感じた。それは尾は蛇、後ろ脚は山羊、頭はライオン、そうキマイラだ。

キマイラが縦横無人に駆け回る、それに巻き込まれているのは敵味方関係ない、手当たり次第に襲っていく。やがて脱出路の方に向かい突進をしてきた。結界に衝撃が走る。
唸り声を上げ再び突進する。
「私の結界を甘く見ないで。この程度の衝撃は想定済み、絶対に破られることはないわ」結界のリーダーが自信に満ちた表情でいう。
「だろうな、だが狙いはそれじゃねぇ」
「よそ見をするな」
親玉が笑みを浮かべ、副会長の攻撃をかわしカウンターの勢いで殴る。
「グッ.....」

何度目かの突進で衝撃が結界を通じ出口に伝わり、崩れ去る。かろうじて逃げだせたものはいたが。俺も含めまだ何人か残ってしまった。そしてキマイラは大きく息を吸い込む。すると、火炎を吐き出した。
「同じこと」
結界を覆うように張り直し防ぐ。
「ふん、攫うとか言っといてこの程度の実力なんて拍子抜けね。召喚にはさすがに驚いたけど。この私、風紀委員長の玉依このはの敵ではないわ。」
だがキマイラは火炎を吐くのをやめない、それどころか威力を上げている。
「威力を上げてるようだけど。通ることはないわ。さあ、諦めて投降なさい。」
さらに威力が上がる。キマイラが吐く火炎は結界全体にあたり防がれている。それを見ながら襲撃者は笑う。
「お前らサザエのつぼ焼きってうまいよな。」
「いきなり何よ。」
このはが額の汗をぬぐいながらいう。
「あれは貝殻から熱していれば簡単にできる。奴らは貝殻に閉じこもれば絶対安全だと勘違いしてやがる。気づいたときにはもう遅いってな。」
「......まさか。うっ」
風紀委員長が膝をつく。周りを見渡すと倒れている生徒多くが倒れている。俺も意識を朦朧とさせながら立っている。
「集中が乱れてるぜ」
その隙を見逃さずキマイラが勢いをつけ突進してくる。集中力を失い脆くなった結界は耐えることができず破られる。結界内にいた生徒のほとんどが倒れている。俺が立っているのがラッキーなくらいだ。
「よし、そこに倒れてる奴らを回収で任務完了だな。ガキも割とやるようだがまだまだだな。もっと腕を磨きな。」
気づけば副会長も膝をついている。
「黙れ」
そして構えようとする。襲撃者は相手にせず代わりに残っていた兵士が行く手を遮る。

「い、嫌、こないで。こないで」
自分と同じく運良く立っている女子生徒がいう。それに反応したのかキマイラの蛇が彼女に近づく。そして襲いかかる。



何度目だろう。どうしてこうなった。こんな絶望的状況でも俺はどうすれば自分が助かるかを考える。目の前で襲われそうになっている女子生徒は自分とはなんの関係もない生徒だ。今日初めてみた生徒だ。そんな人に自分の命を張れるのか。答えはノーだ。ここは見捨てて気づかれないように距離を取っていけば助かるだろう。
ふと生徒会長、久永真白の言葉が頭をよぎる。
『救いを求める手を決して見捨てず救わなければなりません。』
「たすけて…....助けてー」
気づいたら女子生徒を突き飛ばしていた。
蛇の頭は空を切る。
「こっちだ。」
すぐに距離を取り自分に注意が向くように移動する。キマイラの注意が俺に向き追い始める。出口から離すことはできたがすぐに追いつかれ前足で叩かれる。直撃ではないが衝撃に飛ばされ地面に打ち付けられる。体中に痛みが走る。キマイラがもう一度前足が振り下ろそうとしているのがわかった。痛みのせいで立ち上がれない。この一撃は当たるのだろう結果どうなろうと誰かを救ったという事実は残る。このまま終わるのもいいかもしれない。
「準備、整った。ましろいいよ」
そんな声が聞こえた。同時にキマイラの周りに結界が張られ、また、光の鎖が縛り身動きを封じる。結界の中は自分とキマイラそして眼の前に悠然として立っている久永真白だけだ。
「耳を塞いで」
こちらに振り向き言う。言われた通り耳を塞ぐ。キマイラを向き一呼吸置き、指で唇をなぞる。
そして真白は口を開いた。
「〇〇〇〇!」
真白が何か言うとキマイラが地面に押し付けられるように重力がかかる。
「〇〇〇〇!」
さらなる力がキマイラにかかる。
「〇〇〇!!!」
同時にキマイラが弾けとぶ。真白が再び唇をなぞる。
一瞬すぎて何が起こっているのかわからなかった。真白がこちらを向き何かを言うが耳をふさいでいるから聞こえない。すると、近づいてきて耳につけてる手を握りゆっくりと外す。
「もういいよ」
「あ、ありがとう……ございます」
そう言うと真白は微笑んでくれた。
その笑顔からは安堵を感じる。まるで大切なものを失わなかったように。
「ましろ、お疲れ。今、結界解く」
自分たちを覆っていた結界が解かれる。
「申し訳ありません。自分の力が至らないばかりに、会長の手を煩わせてしまいました。」
副会長が囲んでいた敵を倒し、頭を下げてやってきた。
「問題ありません。真っ先に出口を制圧してくれたので早く準備が出来ました。感謝しています。」
副会長に微笑む。
「はい、ありがとうございます。ところで、そいつは何です。」
真白に向けているのとは明らかに違う態度で接してきた。
「彼がキマイラをここまで引きつけてくれたので逃げ遅れた。生徒を巻き込まずに済みました。ありがとう」
再び微笑んでくれる。
「い、いえ、俺は、無我夢中で....」
シドロモドロになっしまう。
「そうか、協力感謝する。見たところインターンのようだが正しい行動を取れたようだな。俺は副会長の室島 赤城だ。」
淡々といってくる。明らかに嫌っているのだろう。全く、何で俺が敵意を向けられなきゃならん。言われなくてもあんたの恋路を邪魔する気はない。
「そういえば主犯の男は?」
「そうですね。そういえば姿が....」
突然だった今ここで話をしていた副会長....室島 赤城が吹っ飛ぶ。そして会長の眼の前に襲撃者が現れる。
「噂通りの化け物ぶりだな生徒会長さん。だが不意打ちなら余裕だ。」
襲撃者は右手に魔力を収束させ、一気に解き放つ。爆風と煙が漂う。



煙が晴れると真白は、襲撃者から離れた位置に倒れていた。
「全くあんな咄嗟に結界を張るとはさすがだな。だが、そこまで読んでのこの技ようやく目的が遂行できるぜ。まったく、どうしてこう使えない部下ばかり回すだろうね。上の連中はよぉ。」
そして襲撃者はゆっくりと真白に向かって歩いていく。
自分を救ってくれた真白が連れて行かれてしまう。それなのにいつも通り、自分が助かることしか考えていない。そうだ助けてもらったからって絶対に助けなければいけないって道理はない。このまま静かにしていれば敵は去っていく。頭の中はそんなことでいっぱいだ。ふと視線を戻すと襲撃者は真白の眼の前に立ち手をかけようとしている。自分という人間はこれでいいのか、眼の前に広がる絶望的状況、恩人が犠牲になろうとしている。
「あーもぉー」
また、飛び出した眼の前に刺さる赤城が突き刺した剣を引き抜いて。俺は襲撃者に挑んだ。
「なんだ。まだ、動けるのがいたか。」
俺の初撃はあっさりと受け止められる。
「素人かよ。さっさと失せろ」
腹部に蹴りを入れられ、大きく吹っ飛ぶ。
「がはっ」
同時に意識まで持って行かれそうになる。くそ、やっぱり挑むなんて間違えだった。すみません。
(物には込められた思いがある。それを感じ、身を任せろ)
頭に言葉が駆け巡る。
(じゃねーと姫さんは助けられねーぞ。さあいけ、偽りの騎士。)
赤城の剣に力を込めるように意識を集中させる。すると、剣から伝わってくる込められた思いと戦闘の記憶。それらを読み取り今の自分にできる技術をまねる。
「所有(ポゼッション)」
「なんだ、まだ、倒れてなかったか。素人のくせによ。」
襲撃者が再び俺に向き直る。
俺は一気に距離を詰め切る。
「また同じか。」
先ほどのように防ぐが今度は。
「なに!?」
受け止めて腕ごと切る。腕についていたプロテクターが割れる。
「威力が上がった.....いや、魔力を纏わせたか。」
今この剣には俺の魔力が纏われ黒い靄がかかっている。
「素人にしてはやるじゃねーか。武器に魔力を纏わすのは基本だが。おいそれとできるもんじゃねー。第一さっき拾った武器でやるなんざなおさらだ。赤いペンキを青に変えるようなもんだからな。」
「もう、退いてくれないか?」
これが今の俺にできる限界。魔力を纏わせることができたがほんの一瞬だけだ。タイミングが良かったからあたっただけだ、そう何発も当たるとも思えない。だから、虚勢を張り退却を促した。
「面白いな、お前。ただの素人だと思えば変に肝が座ってやがる。」
「お褒めにあずかり光栄だよ。さあ、どうする?」
「そうだな、じゃあ........もっとやろうぜ。」
今度は向こうから仕掛けてくる。素早い連打だ。避ける技術も受け流す術も知らない俺は全身に魔力を纏防御する。少しの隙を見つけ剣を振るうが難なく避けられる。
「やっぱり素人か。少しでも期待した俺がバカだったぜ。」
腹部の蹴りと受け止めた連打が効いてもう立っているのもやっとだ。
「じゃあな、今度こそ眠れよ」
男が右手に魔力を収束させる。真白を倒した技だ。考える生き残る方法をボロボロになっても逆転する方法を。
やはり、自分にできる唯一の技にかけることにした。
意識を今まで以上に集中させる。自分のなかにある魔力を限界まで送る。剣からも新たな情報を読み取る。そして一つの名前が伝わってきた。
「カリバー.........エクス、カリバー.....」
同時に黒い魔力に覆われた剣が紅い輝きを帯び始めさらなる光が集まってくる。
「その剣は....魔剣か?いや、この輝き方は...........聖剣か」
男が少し驚くが、
「おもしれえ、最高だぞ素人ーーーー」
剣を構える伝わる知識には必要な詠唱が頭に浮かぶ。
「あふれる怒りの業火、彼の王を討ち滅ぼせ!!滅ぼし勝利する剣(エクスカリバー)!!!!」
同時に男も解き放つ。魔力の力がぶつかり合い大きな爆風がおこる。そして再び煙に包まれる。









「どうだ!!」
地面に倒れこむ。身体から力が抜ける。ほんとどうしてこうなった。感じる達成感を胸にまぶたが熱くなった。
「くそが、中々の威力じゃねーか」
煙が晴れると襲撃者は立っていた、ボロボロではあるがまだ動けるようだ。もう絶望しかなかった。自分にできる精一杯をやったのに倒すことは不可能だと理解してしまう。そうこれが現実だ。どんなにあがいてもどんなに手を伸ばそうとも所詮凡人は凡人、ましてや今初めて戦ったような奴が勝つなんておとぎ話も大概だ。
「さてと、テメェからだな。まあ、悪いところじゃあねぇからそう気張るなよ。俺が保証してやるからさ」
その通りだ。素直にさらわれていればこんな思いしなくて済んだ。最初から間違えていたのだ。最初の選択を悔やむ。
「さ、行くぜ」
襲撃者が手を伸ばす、自分もその手を取ろうと伸ばす。
「確保」
同時に襲撃者が結界に閉じ込められる。
「あそこまで派手だと.....結界張るの大変。でも、男の子頑張った。だから、強いの張れた。」
女子生徒が歩いてくる。風紀委員長にそっくりだが雰囲気が違う。
「へっ。こりゃあ、俺の負けだな。よし、逃げるとするか」
「無駄。」
「そうでもねぇぞ!!!」
地面を殴るとそこから光があふれ男を包む。そして消えた。
「今回は向こうの準備の方がよかった。素直に認める。」
するとこっちを向き手を差し伸べる。
「大丈夫?」
「はい、助けていただきありがとうございます。」
手を取りながら返事をする。
「別に、生徒会なら当然」
「生徒会?風紀委員じゃないんですか?」
聞いてみる。
「それはお姉、私は生徒会書記。玉依 咲夜。」
目は澄んだ藍色、黒い髪を後ろでひとつにまとめている。胸が大きく体つきも魅力的だ。しかし、彼女から出るミステリアスな雰囲気が沈黙を作っている。
「あなたは?」
「俺ですか。俺は、二車......奏真です。」
なんとか立ってはみたがやはり疲労感が襲い再び倒れる。今度は意識まで遠のいていく。目の前の危機が去ったことで安堵の気持ちが大きくなっだからだろう。
「ムニュ」
顔に何か柔らかいものが当たった気がした。









目が覚めた。そこは病院などで見かける天井によく似ていた。
「目が覚めましたか?」
声のする方に顔をむけると生徒会長久永真白が座っていた。
「生徒、会長?」
「はい。気分はどうですか?」
「まだ、少しふらふらしますけど大丈夫です」
「申し訳ありません。あなたのような入学して間もない生徒にあんな無理をさせてしまい。」
真白が頭をさげる。
「い、いえ、謝らないでください。ただ無我夢中で、せっかく助けてもらったのに助けられないなんて嫌でしたから」
思ったままを言う。そう言うと真白は優しく微笑み問いかける。
「そうですか。質問です二車君。」
俺の目まっすぐ見る。
「なんでしょうか?」
「救いを求める手があるならどうしますか。」
突然だった。だが、自分にキーパーとしての責任感、または、正義感というものが存在するなら救うのが当たり前なのだろう。でも俺は自分が助かる道を考える。それが自分だと認識している。しかし、今回の事件で俺は人を救うために全力を尽くした。この人間性は変えることはできないのだろう。いくら自分の助かる道を思考しても結局は身体が動いてしまうどうしようもないくらいお人好しなのだ。だから、俺はあえてこう答えるどこまでも正直になれない自分の心に従って。
「自分の手で救えるものなんてたかが知れてます。そんな俺より会長のような人に救われた方が周りもその人も喜ぶはずです。だから、きっと俺が救うなんてことはしないでしょう。」
真白が俺の目を見続ける、そして何かを悟ったように微笑んだ。
「あなたはとても素直じゃないですね」
「自分の意思に従っているので充分素直だと思います。」
俺も笑う。
「分かりました。そんなあなただからこそ直接守護者について教えなければいけません。これも生徒会長の義務でしょう。二車 奏真君、あなたを生徒庶務に任命します。」
「え、どうして今の質問からそんなことになるんですか?俺は守護者に向いてないんですよ」
慌てて訂正を申し立てるが
「異論は認めません。私たちがあなたを一人前にしてあげます。もう決定したので従ってもらいます。」
そう言うと真白は鼻歌を歌いながら保健室を出てった。
これが俺の日常の終わりであり、騎士になるための生存報告(ライブレポート)の始まりである。 
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