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DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)

作者:あちゃ
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相も変わらず一方的

戦闘面では問題も無くなりつつあり、少しずつだがダンジョンを奥へと進む私達。
余裕が出来てくると別の物に意識が行っちゃうのが私の悪い癖…
完璧に暗記しているDQ3の知識が、この先に『稲妻の剣』がある事を思い出させる。

サマンオサでの事があるから、勝手に開けようとすればブン殴られる恐れがある…
ではどうするのか…
うん。素直にお父さんにお願いしよう!

「お父さん…この洞窟に、結構強力な剣があるんですよ。宝箱を開けたいのですが…許可してもらえます?」
幸いな事に側にいたのはお母さんだけ。
父親に甘える幼気な少女のフリをして、ガチで甘える私って可愛いよね?

「…またモンスターかもしれないだろ!サマンオサで懲りなかったの?」
お父さんも小声で返答してくれます。
「その件につきましては十分に反省してます!ですが、この洞窟の宝箱にはトラップはありません!100%安全に、強力な武器を入手出来るんですよ」
「それはゲーム内での事だろ…此処でも同じとは限らないだろ…」
う~ん…やはり、あの一件は尾を引くね。
しかし諦めるわけにはイカンぜよ!

「いいえ!基本設定に違いはありません!この洞窟内では宝箱は安全です!お父さんは、冒険者としてスペシャリストかもしれませんが、DQ3の知識で私はスペシャリストです!」
ネクロゴンドの洞窟には、人食い箱もミミックも存在しません!
つまり、めちゃんこ凄いアイテムが手にはいる事はあっても、M((マジで))M((ムカツク))トラップに引っかかる恐れはないのですわよ!


自信に満ちた私の言葉に、お父さんも立ち止まり考え、目の前の宝箱を見つめています。
「………よし!おいカンダタ…ちょっとその宝箱を開けてみろ!」
よっしゃ!珍しくお父さんを説得出来ました。
でも何故だかカンダタに宝箱を託し、自身は2.3歩後ずさる。

「はぁ!?何で俺なんだよ!モンスターかもしれないだろ!!」
「うん。だからさ…危ないだろ!」
「俺ならいいのかよ!」
「うん」
う~ん…お父さんらしいわ。

「父さん…いくら何でも酷すぎですよ!カンダタさんだって、僕等の大切な仲間ですよ!…それに、急にどうしたんですか?普段なら宝箱は危険だから開けるなって言うのに!」
「だって…あの宝箱に、凄そうな物が入ってる気がするんだもん!…そんな匂いがする」
えぇ~?もうちょっとマシな理由を考えてよ!

「匂いって…そう言う不確かな情報で、危険な事をさせるのはどうかと思いますが!」
「大丈夫…多分危険じゃない!僕を信じろ…な、カンダタ!」
そうよ100%安全よ!

「父さん!いい加減に「分かりました…私が開けます!」
お父さんのいい加減な態度に腹を立てるお兄ちゃん…
しかしアルルさんはお兄ちゃんの文句を遮って、お父さんの意見を信用する。

「え!?き、危険だよアルル!匂いがするとか、そう言うレベルなんだよ!」
「大丈夫よティミー…リュカさんが開けろと言うからには、危険では無いのよ。そして中身も凄い物なのよ…きっと」
うん。自分は後退ったのに、危険じゃない匂いがするって、信じられるワケないわよねぇ!
私は知っているから驚かないけど、アルルさんはどうして信じられるの?

「うん。パパを信じるいい義娘(むすめ)だ!」
お兄ちゃんがお父さんを睨み付けてますぅ…
「だったら…僕が開けるよ!アルルを危険に晒すわけにはいかないよ!」
「そ、そんな…ダメよ!この世界を救うのは私の役目…その為に成すべき事は私がやるの!それが勇者アルルよ!」
「そんなの関係ない!僕には君を守る事が役目だ。その為にはやるべき事をやる!」

………凄いわね。
宝箱を開けるかどうかで、ここまでイチャつけるのね。
見習った方がいいかしら?

「…それじゃぁ、一緒に開けましょうティミー」
「…うん、そうだね。それだったら、モンスターが出てきても怖くない!」
やっぱムリ!
見てて苛つくわ。
「…何だかイライラする空気が漂ってきますわ!1発ぶん殴っちゃって下さいお父さん!」
「まぁまぁ…良いじゃないか、このくらい。宝箱1つでイチャイチャ出来るなんて、凄い事だよ!もっと見ていようよ」

「う、うるさいわね!今、開けるわよ…私達の事は放っておいてよ!」
どうやらお二人は、自分たちの世界に入り込みすぎて、私達の事を忘れていた様だ。
アルルさんは顔を真っ赤にして、悪態を吐きながら宝箱へと歩いて行く…お兄ちゃんとお手々繋いで!

そしてお二人はゆっくりと宝箱を開ける…
中には私が睨んだ通り『稲妻の剣』が入っており、取り出したアルルさんが凛々しく構えてみる。
「まぁ!?その剣は『稲妻の剣』ですわ!ダーマに居た時に、旅の人から教えて頂きましたわ!」
自分でも感じるくらいワザとらしいアイテム説明…

「へー…強そうな剣だねぇ………よし!それはアルルが使うんだ!そんで、アルルが使ってた『草薙の剣』はウルフが使え!」
しかしながらお父さんの一方的なアイテム配分で、私への追求は有耶無耶な感じになっちゃった。
「ちょっとリュカさん…俺は良いですけど、そんだけゴツイ剣なんですから、戦士のカンダタが装備した方が良くないですか?」
「うん。そうだねウルフ…その方が効率的に見えるよね!」
「じゃぁ…」

「でも、その剣は格好良すぎる!カンダタには似合わないよ…それに宝箱を開けたのはアルルだからね。アルルが装備するのが自然だ!」
今更だけど…すげーよね、この(ひと)
なんでこうも身勝手な理論が展開出来るの?

「何て酷い理由…では、リュカさんの指示通りカンダタが宝箱を開けていたら!?」
「その時はカンダタが装備すれば良いんだよ…でも、カンダタは開けなかった!ビビって開けられなかったんだ!格好悪~い!…そんな奴に、そんな格好いい剣は似合わない!お前には、その『バトルアックス』が似合ってる」
あのね…ワザとらしく口を手でかくし“プププッ”って感じで笑いながら喋るのよ。
ムカつくわよね♥

「そ、そんな一方的な!」
「いやアルル…良いんだ。旦那の言う事は事実だ!俺はビビって開けられなかった…その剣は勇者のアルルに似合ってると思うぜ!」
多分アルルさんは心底ムカついたんだと思う…
でもカンダタが大人しく従っちゃったから………

「カンダタ…」
「それに俺は剣を振り回すのは似合わない…斧をぶん回してる方がお似合いさ!」
「じゃぁ…斧系の強力な武器を見つけたら…」
「あぁ、そん時は誰にも譲らねぇ!例えビビって宝箱を開けられなくてもな!」
「ふふふ…分かったわ、その時はカンダタに譲ります」
やっぱりお父さんって凄い。
リーダーとしての資質に欠けるアルルさんを、立派なリーダーへと押し上げてるんだもの…
お兄ちゃんもアルルさんも、その事に気付いてるのかしら?

「ほら、丸く収まったよ」
でも…私が深読みしすぎかと思う様な台詞を言うのは止めてもらいたい。
お兄ちゃんなんかは殺しそうな勢いで睨んでるわよ。
「どうしようマリーさん…僕、息子に睨まれてますよぉ!」
「大丈夫よお父さん。娘は全員がお父さんの味方ですから!」
全員ってのは言い過ぎかしら?
フレイはファザコンではなさそうだったし…



 
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