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ピエロの仮面

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2部分:第二章


第二章

「中に入ってお茶とお菓子でも食べながら楽しくお話しよう」
「はい、それじゃあ」
 こうして男の子はおじさんに案内されて体育館の中に入った。いつもは見慣れている体育館も今はまるで違っていた。外からは動物の鳴き声が聞こえ中は昨日見たサーカスの装飾があちこちにある。様々な花や紙で飾られそれだけを見ても実に眩い。その中を進んで一旦体育館の外に出て。そうして駐車場に並んでいるキャンピングカーの一つに案内されたのであった。
 車の中はそのまま家だった。テレビもあれば様々な衣装も置かれている。それにテーブルや椅子もちゃんとありそこの上にはコップやお皿もある。席は車にそのまま備え付けられている形になっていた。男の子はまずその席の一つを指し示してもらったのだった。
「じゃあそこに座ってね」
「この席にですね」
「そうだよ。ええと、お菓子は」
 車の横の方にある木の棚を開けてそこから何かを出そうとしていた。
「何がいいかな」
「別にいらないですけれど」
「ははは、それは言ったらいけない言葉だよ」
 おじさんは男の子の今の言葉は笑って遮ってしまった。
「それはね。子供は言ったら駄目だよ」
「そうなんですか」
「子供はお菓子を食べるものだよ」
 そして今度は男の子にこう告げるのだった。
「お菓子をね。だからね」
「食べていいんですか」
「そういうこと。それで何がいいかな」
「ええと。だったら」
「クッキーなんてどうかな」
 男の子が考えているところで言ってきたのだった。
「クッキー。好きかな」
「はい、大好きです」
 男の子はクッキーと聞いてその顔をすぐに明るくさせた。
「クッキーあるんですか」
「チョコレートクッキーとレーズンが入ったクッキーがね」
 しかも修理は一つではなかった。
「どっちもあるよ」
「どっちもですか」
「さあ、君はどっちがいいかな?」
 ピエロそのままの口調で男の子に話してきた。
「チョコレートかクッキーかどちらが」
「そう言われると」
「好きなのを選んでいいんだよ」
 男の子が迷っているのを見てあえてといった感じの言葉であった。
「どっちでもね」
「それでしたら」
 男の子は暫く俯いた。そうしてそのうえで彼に答えるのだった。
「チョコレートを」
「それでいいんだね」
「はい、チョコレートを御願いします」
 男の子はまた言うのだった。
「そっちを」
「わかったよ。じゃあ僕もチョコレートにするよ」
「おじさんもですか」
「一人が違うものを食べるわけにはいかないだろう?」
 またピエロの口調になっての言葉だった。
「だからだよ。ここはね」
「わかりました。それじゃあ」
「それで飲み物は紅茶をね」
 言っている側から早速その紅茶を入れるのだった。そのかぐわしい甘ささえ含んだその香りが車の中を支配していく。男の子はその中で運ばれてくるその紅茶とクッキーを見ていた。そうしてその中でまた言うのだった。
「それでおじさん」
「何かな」
「ピエロですけれど」
 テーブルの上に紅茶とクッキーが置かれた。ピエロのおじさんは二人に向かい合う形で座った。こうしてようやく本格的な話になるのであった。
「あれってどうやってなるんですか?」
「最初はね。仮面を被っていたんだよ」
「仮面をですか」
「うちのサーカスじゃ最初そうだったんだ」
 こう男の子に話すのだった。
「最初はね。けれどそれは止めたんだよ」
「どうしてですか」
「色々あってね」
 目が動いたがそれでも語りはしなかった。
 
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