戦国異伝
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第二百二十四話 帝との話その十四
「華美はならんぞ」
「それは、ですな」
「やはりわしは好かぬ」
華美な身なり、それはとだ。家康は言うのだった。
「華美にするのはな」
「ですな、我等もです」
「普通に具足と陣羽織としましょう」
「華美な身なりはです」
「徳川のものではありませぬ」
「華美にして何になるのじゃ」
また言った家康だった。
「一体な」
「その通りですな」
「だからこそですな」
「その馬揃えでも」
「質素にですな」
「いつも通りとしましょう」
「その様にじゃ。具足も陣羽織も鞍も奇麗にするが」
しかしというのだ。
「そうしたことはな」
「せずに」
「そういうことで」
「わしも手入れをするぞ」
自身のそれをというのだ。
「そのうえで参ろうぞ」
「では父上」
ここでは信康が応えた。
「今すぐにそれにかかり」
「そうしてじゃ」
「上洛しましょう」
「場所は都じゃ」
「しかもその場所は」
「御所のすぐ傍じゃ」
「それが凄いですな」
「少し不思議にも思う」
ここでだ、家康はこうも言った。
「馬揃えをするにもな」
「御所の傍とは」
「少しのう」
「帝とお話をされて決められたと思いますが」
「都の大通りではないのか」
「そこでするのが一番あると思いますが」
「吉法師殿は奇策も好まれる」
家康が最もわかっていることだ、信長のこのことは。
「何かあるとな」
「この様にですな」
「そうじゃ、変わったことをされてだ」
「そして、ですな」
「その相手の虚を衝かれる」
「相手、ですか」
相手と聞いてだ、信康はこう言った。
「そう言われましても」
「最早天下は統一されたというのじゃな」
「はい、信長様ご自身によって」
「だからこの場合はじゃな」
「はい、そうした馬揃えよりも」
むしろというのだ。
「政をされて」
「普通にじゃな」
「足場を固められることが筋ですが」
「無論それも行われておる」
信長はというのだ。
「吉法師殿はな」
「言われてみれば確かに」
「そうじゃな、吉法師殿は戦の間も政を忘れられぬ方じゃ」
「だからですな」
「それは忘れておられぬ」
家康は我が子に信長のそのことも話した。
「あの方はな」
「確かに。ただ」
「ここで馬揃えはか」
「どうしても何故と思いますし」
「場所もじゃな」
「どうもわかりませぬ」
「わしもわからぬ、しかしあの方の行われることは必ず狙いがある」
「例えわからぬことでも」
「いつも後でわかってな」
そしてというのだ。
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