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K's-戦姫に添う3人の戦士-

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1期/ケイ編
  K16 助けられる側でも

「天羽々斬、A・レンズ…っ、共に、反応、途絶…!」

 友里が堪らないというふうに背を向けて嗚咽を上げた。弓美も創世も詩織も泣いている。

 だが、未来は泣かなかった。涙も流れなかった。

 悲しくないわけではない。胸は裂けそうに痛い。
 兄妹としてケイと過ごした想い出や、いくつかしか知らない翼の女の子らしい場面が、瞬いては消えていく。


“行ってくる。未来”


 背を向けて去って行ったケイの姿に、どこかで予感していた。
 あの時のケイはおそらく翼同様の覚悟を決めていた。
 小日向未来という存在はケイの命を繋ぎ止めることはないと確信を持っていた。
 一度やると口にした以上は半端に投げない、が小日向ケイのポリシーだから。

「わかんないよ……どうしてみんな戦うの!?」

 弓美が涙を流しながらも、モニターの中の人々が恐ろしいものであるかのように後ずさった。

「痛い思いして! 怖い思いして! 死ぬために戦ってるの!?」
「分からないの?」

 気づけば口を突いて出た。

 未来は弓美に歩み寄り、弓美の両の二の腕を掴んで、しっかりと顔を合わせた。

 翼も、ケイも、あれが最善だと判断したから、命を落とす結果になっても、ああした。
 世界を、未来たちを含む全てを守りたいと思ってくれたから、あの結果になった。

「――分からないの?」

 弓美は顔を歪め、未来に縋って大声で泣いた。





 弓美が落ち着いた頃になって、ちょうど足音がいくつも聞こえた。

 未来はふり返った。
 緒川が先頭に、他のシェルターに避難していた住民や生徒を連れて来ていたのだ。
 無事だったのは未来たちだけではない。彼らもまたクリスの、翼とケイの奮闘があったから無事でいられた。

(ほら。どうして、なんて、簡単に分かるじゃない)

 その住民の中から、小さな女の子が駆け寄ってきた。

「かっこいいおねえちゃんだ!」

 女の子はモニターの中、地面に倒れた響を知っているようだった。
 謝りながら出て来た女の子の母親によると、女の子は以前に響に命を助けられたのだとか。

「響の、人助け……」
「ねえ。かっこいいおねえちゃん、たすけられないの?」

 これには詩織が俯きがちに答えた。

「助けようと思ってもどうしようもないんです。わたしたちには何もできないですし」
「じゃあいっしょに応援しよう!」

 女の子はどこまでも無邪気に、藤尭に、ここから響に話しかけられないかを問うている。

「応援……! ここから響に、私たちの声を、無事を知らせるにはどうすればいいんですか? 響を助けたいんです!」

 未来は弦十郎に対して身を乗り出した。

「助ける?」
「学校の施設が生きていれば、そこからリンクして、ここから声を送れるかもしれません」

 藤尭の答えで、未来にとっては充分だった。

「緒川さん! 学校の施設を動かすにはどこに行けばいいですか?」
「ここからもう一つ上の階層に、動力炉がある部屋がありますが」
「そこへ連れて行ってください!」






 緒川の案内で着いた動力炉がある場所は、出入口が通気口のように小さな穴になっていた。

「この向こうに切り替えレバーが?」
「こちらから動力を送ることで、学校施設の再稼働ができるかもしれません」

 すると、未来と一緒に来ていた友人たちの中で、

「あたしが行く!!」

 弓美が意を決したように大きな声を上げた。

「大人じゃ無理でもあたしならそこから入っていける。アニメだとこういう時身体のちっこいキャラの役回りだしね。それで響を助けられるならッ!」
「でも、それはアニメの話じゃないっ」
「アニメを真に受けて何が悪い! ここでやらなきゃあたしアニメ以下だよ。非実在青少年にもなれやしない。この先、響の友達と胸を張って答えられないじゃないッ!」

 ぽかんと、した。あれだけ泣いて怯えていた弓美が、こんなにも強く訴えて、自ら危険地帯かもしれない場所に飛び込もうとしている。響の友達でいたいからという、理由で。

「ナイス決断です。わたしもお手伝いしますわ」
「だね。ビッキーが頑張っているのに、その友達が頑張らない理由はないよね」

 詩織と創世まで。

 それが響の親友を自負する未来にとってどれだけ胸を熱くさせたか。

 中学時代のことがあったから、リディアン音楽院に進学して、響に自分以外の友人ができたことに不安があった。だが、弓美たちの言葉を受けて、その不安は綺麗に洗い流された。

(この人たちが友達でよかった)



 未来たちは全員で、動力炉に通じる穴に入り、匍匐前進した。

 案の定というべきか、抜け出た部屋の切り替えレバーは、高い位置に据え付けられていた。全員で入らなければ、あの高さに届かなかっただろう。

 一人の肩車では届きそうにない。ならば、と。

 未来たちは組体操の要領で、未来と創世、詩織の順で二段ピラミッドを作り、その上に弓美が立ってレバーに手を伸ばした。

「ぐ、ぬぬ…っ、せー…の!」

 部屋の灯りやモニターが一気に点いた。
 それに合わせて未来たちは全員が態勢を崩して転がった。

 しばらくは痛みに全員して悶えたが、やがて成功を実感し、未来は友人たちと笑い合った。 
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