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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第六話 «暴風戦王»VS«獣使役»

翌日、午前八時。
今日の気象設定は薄曇り。七十四層の主街区«カームデット»を包む朝靄は未だ消えず、外周から差し込む陽光が細かい粒子に乱反射して、周囲をレモンイエローに染め上げている。
アインクラッドの暦は現在、秋の深まる«トネリコの月»。気温はやや低めではあるが、一年の中でも最も爽やかな季節なのだが、俺の気分は低調であった。
「……(ギリギリ」
「や、ヤベェ……。サブマスターがキレ掛かってる……!」
「ヤベェよヤベェよ……!」
今回、ミドルランクで結成した«ドラゴンファング»のメンバーと共に七十四層の迷宮区攻略を予定していたが、メンバーが一人足りず、待ちぼうけを食らっていた。ラットは「アイツは時間厳守ってもんを知らないからな」とか言っていた気がするが、時間厳守を守らないプレイヤーは今回が初だ。
時刻はまもなく八時十分になる。勤勉な攻略組がゲートから現れ、迷宮区目指して歩いていく。
「……あと来ないメンバーは誰だ!」
近くの片手剣使いに叫び、まだ来ぬメンバーの名前を聞き出す。
「えーっと……ミドルランクで構成されてるメンバーの中で唯一の攻略組で……«獣使役(モンスターテイマー)»と呼ばれてる者です」
「だから誰だって聞いてんだよ!!」
バキッ!と地面を砕く様な音と共に地面を踏む俺。メンバーは一同に震え上がり、二の次も言えなくなる。
こうなった以上、メンバーを置いていくもやむ無しと判断した俺は、メンバーに号令を掛け、迷宮区に向かおうとするとーーーー。
「お、お待たせしましきゃっ!」
転移門から飛び出して、転けた少女が現れた。
「……コイツか」
「へ、へい。間違いありやせん。«獣使役»です」
少女は騎士型のモンスター«ダークネス・ホーリーナイト»に立ち上げられ、眼鏡をかけ直す。
「えーっと、遅れてスミマセンでした!«ホーリーナイト»の調子が悪いようでしたので、少し様子を見ていたら時間になってしまい!」
慌ててドラゴンファング式の敬礼をすると、改めて名を名乗る。
「わ、私はドラゴンファングの突撃編成チームを任されています、クレイと申します!称号は«獣使役»を頂いて……」
と、そこで少女、いや彼女は口を開けたまま俺に詰め寄った。
「うおっ!」
遠くから見ていたので分からなかったが、結構小さい。小六位か、それ以下の身長に見える。
すると、クレイは叫ぶ。
「ああああああああっ!」
「何だよ急に!!」
耳を塞いで言い返す。途端、ホーリーナイトがクレイの頭を叩いて引き離す。……ティムモンスターって、ここまで忠実だったっけ?
「キュル?」
肩の上でバハムートドラゴが首をかしげる。そうだよな、お前は普通だな。
すると、クレイは言う。
「あの……つかぬことをお聞きするんですが……」
眼鏡を外して、言う。
「私のこと、覚えてますか?」
「あ?」
眼鏡を外した顔を見ると、何処かで会ったことのある顔だった。何処で会ったかは流石に忘れたが。
「……会ったことあるか?」
「なっ!?」
絶望した顔で、一歩下がる。
「ま、まさか忘れてる……!いや、二年も会ってないから当然の反応だけど薄情過ぎる……!」
パコーン!と小気味いい音でホーリーナイトが主人(クレイ)を叩く。だから、そんな設定あったか?
「なら……この口調なら思い出してくれるよね、クウト君?いや、この言葉なら思い出してくれるかな……天城さん?」
途端、俺が殺気を出したと共にギルドメンバーが武器を取る。
「ちょ!待ってってば!!思い出してくれてないの!?」
クレイが言うと、ホーリーナイトが前に出る。
「ホーリーナイト、待って!クウト君、私だよ私!クレイだってば!!」
すると、装備を変えて、俺の見たことのある人物に変わった。
「……クレイ!?あのクレイか!?」
ようやく安堵の顔をしたクレイは装備を戻し、言う。
「全くー。何で早く思い出してくれないのよ!」
「二年も会わなきゃ気付かねぇよ」
手を顔に当てて上を見る俺。ギルドメンバーは警戒を解くように武器をしまう。同類と知ったからだろう。
「お前、何時からこのギルドに?」
「一年半前かな、ラットさんが初期メンバー足りないから誘われたんだー。ステータス的には申し分無かったし、いいかなーって」
エヘヘ、と笑うクレイ。今まで同じギルドに所属していたが、全く気がつかなかった。
「あ、そうだ!デュエルしよ、クウト君!私、強くなったんだよ?」
「……そうだな。お互いモンスターをティムしてるようだし、良いだろう」
装備欄を操作し、右手に片手剣を装備すると、システムメッセージが出現する。
【クレイから1vs1デュエルを申し込まれました、受託しますか?】
勿論、Yesを押し、オプションは初撃決着モード。理由は単純に時間が惜しいからである。
六十秒カウントが開始され、お互いに離れる。
俺は左右に刀と片手剣を握り、ペン回しを横でするように一回転させる。
対するクレイは、細剣を腰から抜いて、横にホーリーナイトが両手に片手剣を持って立つ。
「全力で行くよ!」
「望むところ……」
肩に乗っかっていたバハムートドラゴは吠え、飛翔して隣に行く。
カウントを待つ間、ギルドメンバー以外のギャラリーが集まり、円を作る。当たり前だが、ここは街のど真ん中である上に、俺とクレイの知名度はある人物たちに近いほど高いプレイヤーなのだから。
「おい、ドラゴンファングのクウトとクレイがデュエルだとよ!」
ギャラリーの一人が叫び、どっと歓声が湧いた。
そして、カウントが、残り三秒となる。
3
2
1
DUEL!!
「キュルウウウ!!」
「ゴアアアッ!」
先に出たのはホーリーナイトとバハムートドラゴ。
ホーリーナイトが剣でバハムートドラゴを斬ろうとすると、バハムートドラゴは圧倒的機動力でそれを避け、尻尾で鎧の頭を叩く。
「ゴアッ!?」
よろけた所に、俺の蹴りが炸裂し、吹き飛ばされる。恐らく、これでホーリーナイトは脱落だ。
「ハアッ!」
その代わり、まだ滞空中の俺に対し、クレイは突貫してくる。
細剣突進ソードスキル«フラッシング・ペネトレイター»。
彗星の如く全身から光の尾を発する彼女の姿は、非常に美しい物であるが、それを遮る様にバハムートドラゴが手で俺を掴んで回避行動に移る。
「くっ!」
間一髪。クレイのフラッシング・ペネトレイターを避け、バハムートドラゴは俺を降ろし、横に付く。
「流石バハムートドラゴだね。主人思いなんだ」
フラッシング・ペネトレイターの硬直時間が終わり、構え直しながらクレイが言う。
「キュル♪」
それを聞いて照れ臭そうにするバハムートドラゴ。つーか昨日の今日なんだけど。
「次は此方から行くぞ!」
「キュルル!」
バハムートドラゴの放つ青色の息吹を身に受けた俺は素早くなり、刀を振り下ろす。
「うわっ!」
紙一重で避けたクレイは下がり、俺はそれを追撃しようとする。
「甘いよ!」
しかし、それは罠だった。クレイの細剣が光る。
細剣単発ソードスキル«リニアー»。
「うおっ!」
ブレーキを踏むも間に合わず、肩にかする。HPが少し減少した。
「流石。あの場で体を傾けるとはね」
「ソードスキル開発者舐めんな」
言い返して一歩下がる。
「両方に武器を持ってたらスキル使えないんじゃ無いの?」
「ああ。だが、強攻撃が当たれば俺の勝ちだ」
「そう言えばそういうルールだったね!」
すぐにクレイが接近し、細剣を正確に放つ。軌道を少しでも予測出来ないと強攻撃を食らう俺は素早く裁き、攻撃に転じる。
「おおっ!」
片手剣連続ソードスキル«スネークバイト»。
厳密にはそれを模した攻撃なのだが、アシストと威力が無くても剣次第ではダメージは高い。
「くっ!」
すぐに防御したクレイに、すぐさま次の攻撃を放つ。
刀三連続ソードスキル«緋扇»。
上下に素早く斬り分け、一拍置いてから突きを放つ、緩急あるソードスキルだ。
「うわっ!」
細剣を弾かれ、手から離したクレイに、三回目の攻撃を放つ。
片手剣単発ソードスキル«スラント»。
斜めに放たれた片手剣はクレイを切り裂き、強攻撃と判断したシステムがブザーを鳴らす。
結果、俺の勝ちが決まった。
「つ、強すぎでしょ!」
ホーリーナイトに起こされる形で起き上がったクレイが言うと、バハムートドラゴが頭に乗っかり鼻息をする。ドヤ顔してるのだろうか。
すると、ホーリーナイトが手を出してくる。
「ん?」
「珍しい!ホーリーナイトが自分から手を出して握手を求めるなんて滅多に無いよ!?」
握手なのか、と思いながら握手を交わし、クレイから手を離す。
すると、ギルドメンバーの一人が言う。
「えーっと、サブマスター。時間押してるんで行きやしょう」
「ああ、そうだったな」
剣と刀を仕舞い、手ぶらになると改めて言う。
「ドラゴンファング、これより迷宮区攻略を始める。全員、気を引き締めて望む様に!」
了解(イエスマム)!』
「違うだろ……」
『す、済みません!了解(イエスサー)!』
敬礼をすると、俺は手を顔に当てて言う。
「……大丈夫かこれ」
多少不安になり、溜め息を付きながら先頭を歩き始めた。 
 

 
後書き
クレイ「と、言うことで二年後の私も参戦だよっ!」
ナイト「グゥ(よろしく頼む」
クウト「意思疎通しずれぇ奴が来やがったなおい!?」
作者「それがうちの小説だからねぇ……」
クウト「何時からそんな小説になった!?」
ナイト「グルル(落ち着きなって」
クウト「分からねぇからお前は何も言うな!」
ナイト「グル!(それはないぜ兄貴」
クレイ「私は何となく分かるかなー」
ナイト「クグ!(流石マスター!」
作者「……ヒロインにスペックで劣る主人公」
クウト「いや、多分スペックは俺の方が高いはずだ!多分!」
作者「……負け惜しみかー」
クレイ「ですねー」
クウト「次回、風の剣士と黒の剣士。風の剣士、推して参る!」
作者・クレイ「無理矢理終わりに持っていったな」
クウト「黙れー!!!!」 
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