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ソードアート・オンライン~連刃と白き獣使い~

作者:村雲恭夜
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第五話 蒼の剣、再び

「これで……終わり」
左手の刀ーーー固有名«ブルークリムゾン»が武器ごと相対していたモンスター、«リザードマンロード»を切り裂いた。鋭さを限界まで突き詰めた蒼の刃はいとも簡単にリザードマンロードの曲刀を破壊し、HPを吹き飛ばした。
大音響と共に散らばるポリゴンを潜り、目の前に展開する加算経験値とドロップアイテムの一覧を消す。
あの日以来、俺はソロプレイヤーとなり、ボス戦やギルド以外での人の接触を避けている。今もそうだ。
「……ふぅ」
俺は歩きながら溜め息を付き、迷宮区の出口目指して歩く。
現在、アインクラッド攻略階層は84。残り階層26。そして、肝心の生存者は6000人。当初一万近いプレイヤーがこの地に集い、僅か二年で4000人近いプレイヤーが、プレイヤーキル、モンスターキル、戦闘中死亡によってこの世界からも、そして現実世界からもその魂を無くした。
悲しくない、と言えば嘘になる。だが、悲しんだ所でその人物は帰ってこない。
全ては茅場先生が元凶でありーーーーその手伝いをした俺のせいでもあるのだから。



七十四層のフロア攻略を中断し、迷宮区から出た俺は、迷宮区と主街区を繋ぐフィールドに出た。
迷宮区のモンスターよりは甘めな設定をしてあるが、それでも強いのには変わりはない。
だが、弱点を熟知している俺に取っては、やはり弱者に過ぎない。
しかし、今日はフィールドの様子が少し違っていた。
「……可笑しいな」
辺りを見回すと、風が吹くだけの静かな森しか無い。普段、かなりの数のモンスターが湧出しているはずなのだ。
「……調べるか」
スキル欄から«索敵»を選択し、発動すると、辺りを確認する。«索敵»は、自分の回りに存在するモンスターの数やプレイヤーの数・有無を確認するスキルで、大半のプレイヤーがお世話になっている。勿論、サブゲームマスターの俺も例外ではない。
一回、二回と«索敵»を行うも、モンスターの反応は見られなかった。
「……様子が可笑しいな」
時間湧出のモンスターも存在するので、基本的には長時間湧出されないのは異常なのである。そこはあの天才も知っている。
(……プレイヤーがモンスターを倒したなら納得は行くが……)
俺は少し思考し、道を外れ森に入る。
「静か過ぎて逆にな……」
«索敵»を絶えず使用し、状況に応じて動けるようにする。すると。
「グォオオオ……」
唸り声と共に、モンスターが湧出した。
名は『ザ・ヴォーパルリザード』。名から見るに、ボスレベルのモンスターらしい。
「……こんなところにモンスターキラーとはな」
背の片手剣を抜いて呟く。
モンスターキラー、もしくはモンスターバスター。
モンスターを誘導して、プレイヤーを殺すのがモンスターキルなら、モンスターがモンスターを殺し、経験値を奪い取るのがこのモンスターキラーだ。
テスト時には存在しなかった仕様だが、二回目のハーフポイントーーーー五十層以降からその存在が確認されている。
曰く、HP自体は通常と遜色無いものの、攻撃性だけはボスレベルだそうだ。
事実、俺も五十層以降から数体の確認をしている。何れも俺が倒したが。
「……ハッ」
息を吐いて、一気に懐に侵入、心臓に剣を突き立てようと試みる。
「グアッ!」
それに反応し、ヴォーパルリザードは手に持つ片手剣でそれを弾く。
(片手剣使いだとーーーー!?)
通常、リザードマンロードを含む総称«リザードシリーズ»は曲刀を好む習性がある。言わば、このヴォーパルリザードはその概念を完全に壊したと言っても過言ではない。
すぐに離れると、ストレージにあるブルークリムゾンを取り出して抜く。ソードスキルを封印し、数で押しきる。
「オオッ!」
一気に接近する俺に対し、ヴォーパルリザードは構える。
片手剣重単発ソードスキル«ヴォーパルストライク»。
「ッ!」
接近を予測していたかのように放たれたそれを、顔を右に傾けるだけで避け、胸に斬撃を放つ。そのまま通り過ぎると、HPが微量ながら減っている事に気が付く。
「……カウンター型の能力構成(ビルド)か。これは面倒だな」
言いながら、片手剣だけを仕舞い、ブルークリムゾンを片手で持つ。
「さて……と。殺るか」
目を閉じ、呼吸を整え、場と同調する。
「……ハッ」
優しく蹴った地面は抉れず、しかし俺の体は素早く懐に潜り込む。
「グアッ!」
それに反応し、ヴォーパルリザードは片手剣を振るう。
「……」
それを無言で反らすと、拳を叩き付ける。
体術単発スキル«閃打»。
地面を思いっきり踏んで放った閃打はヴォーパルリザードの鳩尾に入り、目に見えてHPを削り、ヴォーパルリザード自身も苦痛に顔を歪める。
「グルル……!」
それでも、攻撃を続行する。
体術重単発スキル«瓦解»。
掌底による顔面攻撃で、プレイヤー相手だと脳を揺らす凶悪な攻撃で、モンスターにも有効な一手だ。
ヴォーパルリザードは顔を片手で覆い、下がるとそのままソードスキルを放つ。
刀単発ソードスキル«鷲羽»。
斬撃はヴォーパルリザードを断罪し、ポリゴンと化した。
加算経験値とドロップアイテムを一瞥しーーーーそこに現れた一匹の小さなモンスターと目が合った。
「キュルッ!」
「……珍しいな。こんな辺境に«バハムートドラゴ»が居るなんて」
«バハムートドラゴ»ーーーーラグー・ラビット同様、超激レアモンスターとしても有名で、前にひょんな事で行動したことがある少女のモンスターーーーー«フェザーリドラ»と同じくノンアクティブモンスターだ。
しかし、フェザーリドラは小柄な水色竜に対し、此方は中級サイズの蒼竜だ。可愛げはフェザーリドラと同様だが、やはり大きさが違う。
「キュルッ!」
翼をはためかせ、手をあげるバハムートドラゴ。俺はどう反応していいか困る。
(……ティムしようにも食い物は無いし……かといってこのまま逃げるのも気が引けるなぁ……)
顔をポリポリと描きながら考えていると。
「キュルル!」
突然、バハムートドラゴが頭に乗っかって来た。
「うわっ!」
突然の出来事で首を前に倒してしまいそうになるも堪え、頭のバハムートドラゴを撫でる。
「キュルル♪」
どうやら嬉しいようだ。
「……これって……ティム成功?」
「キュルル!」
システム外で予想外だが、ティム成功?したらしい。どうやら、単独でモンスターキラーと戦って勝った場合、モンスターが居たときに発生する特別仕様なのか。しかし、モンスターは一匹も居らず、ここには俺とヴォーパルリザードしかーーーー
「……いや、待てよ」
«索敵»を再度使用し、回りを確認すると、モンスターが発生していた。どうやら、モンスターが現れなかったのはモンスターキラーが存在していたことが原因で、討伐した直後、バハムートドラゴが俺を視認してティムったらしい。運が良いとしか言えない。
「キュルル!」
「……呑気だなぁ」
俺は頭にバハムートドラゴを乗せたまんまで、転移結晶を取り出すと叫ぶ。
「転移、ダナク」
すると、青い柱が俺を包み、次の瞬間、五十九層主街区«ダナク»の転移門に立っていた。
「……なあ」
「キュル?」
何?と言うように首をかしげるのバハムートドラゴを髪で確認した俺は言う。
「今からさ、鍛冶屋行くから降りろ重い」
「キュル」
肯定を意味するように、頭から……右肩へ移動した。
「……はぁ」
俺は小さな溜め息を付いて、知り合いの鍛冶屋へ行く。



«ドラゴン・ファング»。それが知り合いが経営する鍛冶屋兼バー兼ギルドの名前だ。
ドアを開けると、カランと言う音と共に、騒がしい音が響く。夜型のプレイヤー達が景気付けに飲みに来るのが多いため、何時もこんな感じだ。
すると、カウンターに居た男が手を振る。
「おーい、此方だー!」
手を振る方へ歩いてカウンター席に座ると、話し掛ける。
「相変わらず商売繁盛で何よりだ、ラット」
ラット、と呼ばれた男は笑うと言う。
「ハハハ!そこはアレよ!お前さんのお陰って奴だ。お前さんが前線で戦っているからうちの名も売れまくりでなぁ!これからも贔屓に頼むぜぇ!っと……」
すると、肩に乗るバハムートドラゴに気がついた様だ。ラットは続けて言う。
「旦那……それバハムートドラゴじゃねぇですかい!?」
「……ああ。さっき前線でモンスターキラーに出会ってな、その時運良くティム出来た」
すると、客が聞いていた様で、おお!と声を上げる。
「流石だねぇクーやん。伊達に«空の剣士»って呼ばれてないねぇ?」
「おいおい、サブマスターに失礼過ぎるだろ?そこは«暴風戦王(エアリアル)»と呼ぶべきだ!」
「どっちでもええやろ?双方共に、サブマスターの二つ名だからなぁ!」
ハハハ!と笑う客。すると、ラットは言う。
「済まねぇな旦那。外では規制させてっけどどうしても此処じゃ口を滑らせちまう様でなぁ……」
「申し訳無さそうに言うなよ、ラット。俺が頼んだんだから、少しは多目に見てやってくれ」
俺は言うと、ラットがギルドマスターの顔をして言う。
「所でサブマスター……。聞きやしたか?」
出されたジンジャーエールを飲みながら、俺は何を?と答える。
「第一層にある«アインクラッド解放軍»の動向でさぁ。知り合いから聞いた話じゃ、仲間割れしてるようで派閥争いが絶えねぇ様で」
「それで」
「近々、この層のボスを討伐する部隊が派遣される様でさぁ。あくまで噂で真偽の確かめようがねぇですが」
「……そいつは気になるな。他のギルドの動向は」
「様子見、って所ですね。«KoB»も«聖竜連合»もその他のギルドも」
それを聞くと、俺は少し考えて言う。
「……ラット。ギルドから少人数でいい、出せるか?」
すると、ラットは待ってました、と言わんばかりに言う。
「へい。そう言うと、思いやして支度だけはさせてありやす。ただ、殆どミドルランクなんですが……」
「問題ない。一人も殺させなきゃ良い話だ」
その話題はお仕舞いと言うように、俺は話題を変える。
「所で、俺の武器の調整とドロップアイテムの整理をしたい。調整と買い取り、頼めるか」
「へい、分かりやした」
ラットは言うと、お代わりのジンジャーエールを差し出して、俺はそれを飲みながら買い取りを行った。 
 

 
後書き
今回から、クウト君が後書き参戦です!
クウト「……よろしく頼む」
キャラが二年で変わるって!!
クウト「……普段はこんなもんだ」
クレイ、何時だそう。
クウト「……あのな」
まー、その次考えるか。キリトとアスナも出さなきゃ行けないし。
クウト「そうだな……」
次回、相対«暴風戦王»VS«獣使役(モンスターテイマー)»。お楽しみに!
クウト「風の剣士、推して行くぞ!」 
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