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戦国異伝

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第二百二十四話 帝との話その十二

「最初からな」
「そうでしたな」
「だから乱れさせはしなかった」
「しかしこの度はですか」
「乱れさせますか」
「その何者かを」
「そのつもりじゃ、もっとも乱れぬ相手である場合もある」
 信玄や謙信の様にというのだ。
「その場合はこちらが整える、しかし今は煽る」
「煽りに煽り」
「そしてですか」
「その何者かを」
「誘き出すとしよう」
 是非にというのだ、そしてだった。
 その話をしてだ、信長はこうしたことも言った。
「闇には光じゃ」
「光ですか」
「それを使われますか」
「光で照らす、夜の闇は朝の日輪で消えるな」
「はい、跡形もなく」
「夜は朝に終わります」
 朝が来ればとだ、家臣達も述べた。
「それで間違いなく」
「消えまする」
「終わらない夜はなく」
「必ず朝に朝日が昇ればです」
「日輪に消されます」
「だからそうする、光を使う」
 その闇に対してというのだ。
これよりな」
「左様ですか、では」
「上様の思われる様にされて下さい」
「先程も申し上げましたが我等は上様の家臣」
「上様に従いまする」
「頼むぞ。天下は統一されたがまだ泰平を築くには下地が緩い」
 その土台がというのだ。
「その上に色々と築く為にな」
「その土台を確かにする」
「その必要がありまするな」
「そういうことじゃ」
 こう言うのだった。
「土台を築くぞ」
「天下の土台を」
「これより」
「そういうことじゃ、さてこれで今の話は終わりじゃが」
「はい」
「もうこれで、ですな」
「ここまで話をして喉が渇いた」
 こうしたことを言った信長だった。
「少し何か飲もうか」
「では茶を」
 佐久間が言って来た。
「飲みますか」
「そうじゃな、そういえば牛助」
「何でしょうか」
「御主近頃暇があれば茶を飲んでおるな」
「そうしております、ただ政もしかとしてです」
 そのうえでというのだ。
「飲んでいます」
「左様か」
「どうも近頃無性に茶が美味く」
 それでというのだ。
「飲んでいます」
「よいことじゃ。茶は飲んで悪いことはない」
「何一つとしてですな」
「眠い時に飲むとな」
「目が覚めますな」
「そうじゃ、だから飲むことはよい」
 それ自体もというのだ。
「天下万民が飲むべきじゃ」
「酒の様に」
「いや、酒よりもな」
 茶の方がというのだ。
「こちらじゃな、わしは」
「そういえば上様は」
「うむ、昔から酒は飲めぬ」
 信長は下戸だ、それでなのだ。 
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