ピリカピリカ
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2部分:第二章
第二章
「お化けじゃなくてもだよ」
市長さんは怪訝な顔で言うのでした。
「ピエロに化けていたら誰だがわからないからね」
「そうですよね」
「あれだけ濃く化粧していたら」
「やっぱり。危ないな」
市長さんはまた言いました。
「よし。それじゃあ」
「どうするんですか?」
「何か考えがあるんですか?」
「皆、僕と一緒に来てくれないかい?」
こう子供達に対して言うのでした。
「皆ね。いいかな」
「何かあるんですか?」
「一緒にって」
「考えがあるんだよ」
また腕を組みながらの言葉でした。
「僕にね」
「そうなんですか。それじゃあ」
「皆。ここはね」
「うん、そうだね」
「そうしましょう」
子供達は市長さんの言葉を聞いて顔を見合わせて言い合います。皆の心は顔を見合わせているうちに一つになってきました。市長さんとも。
「市長さん、それじゃあ」
「御願いします」
「僕に任せてくれるんだね」
「はい、何かするんですよね」
「それじゃあ御願いします」
「よし、それじゃあ」
皆の言葉を受けて頷きます。
「行こうか」
「行くんですか?」
「何処にですか?」
「そのおじさんのところだよ」
こう子供達に対して告げたのです。
「おじさんのところにね。いいね」
「わかりました。それじゃあ」
「行きましょう」
「これでまずはよしかな」
市長さんは子供達が自分の行動に賛成して一緒に来てくれることを見てまずは満足しました。けれどこれだけで終わらないこともやっぱりわかっていました。
「さてと」
そのうえでまた言います。
「じゃあ行こうか。あの歌が聞こえる場所にね」
「はい、ピリカピリカですよね」
「そうだよ。それにしても」
ここでまた思う市長さんでした。
「あの歌もあの時と一緒なんて。やっぱりおかしいな」
こう思いながら子供達と一緒に街に出ました。街を出ると夕方に近付いている街中に。あの歌が遠くから聴こえてきたのでした。
「ピリカピリカ」
「あっ、あの歌だ」
「こっちよ」
子供達はその歌を耳にしてすぐに言いました。
「こっちですよ市長さん」
「あの歌です」
「うん、こっちだね」
勿論市長さんにも聞こえていました。それで子供達と一緒に歌が聴こえる方に行きます。
「ピリカピリカ」
「まただ」
「やっぱりこっちね」
また聴こえてきました。歌声が段々近付いてきています。
「こっちで間違いないよ」
「それじゃあ」
「今日はよい日だよい子がいるよ」
「この歌だね」
市長さんもはっきりと覚えている歌でした。
「この歌なんだよ、やっぱり」
「市長さんが僕達の時に聴いていた歌ですよね」
「そうだよ。声まで変わっていないなんて」
やっぱりおかしいと思うのでした。
「何もかもって。本当に」
「まさか本当に」
「お化け!?」
子供達はまた不吉なものを感じて顔を見合わせるのでした。
「だとしたら僕達あのおじさんに捕まったら」
「食べられるの?」
青い顔になってきていました。
「いや、そうじゃなくてもだよ」
「そうじゃなくても?」
「飴にされちゃうかも」
子供達のうちの一人がこう言ってきました。
「飴に!?」
「僕達が舐めているあの飴に!?」
「そうだよ。だってさ」
その子供は怖がる顔で皆に言うのでした。
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