魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年
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第二十六話 真実
「くっくっく……はは……」
全達の前で突然笑い出したアリット……いや、スバルは顔を手で抑える。口元を覆っているようだがその下卑た笑いは漏れてしまっており、あまり意味はなかった。
「いやぁ、まさかあの人の関係者がプレシア以外にもいたとは思わなかったよ。あの研究所の職員はあの事故で全員死んだからね」
「なるほどな。一時期プレシアさんと連絡が途絶えてたけど……あの事故、アリシアが危険な目にあったあの事故は偶発的じゃなくて、必然だったって事だな」
「その通り。それはプレシアにもわからない程だったのだけど……あの兄だけはわかったみたいでね。僕に聞いてきたんだよ「何であんな事したのか」ってね」
先ほどとは違う声音で話すスバル。どうやら無理をして話をしていたらしい。
「だからさ……あの時していた研究を……その身に味合わせてやったのさ」
スバルがそう言って指をパチンを鳴らすと、スバルの後ろにあった壁が横に開いていく。
そこに広がる光景に全は唖然とした。
そこには、人が吊るされていた。十字架に吊るされたかのように吊るされている男性。
意識はないのか俯、き一言も発さない。
「アリットさん!!!」
全が叫ぶ。そして男性を知らないフェイトやアリシア、るいも気づいた。
あそこにいる人物こそ、フェイトやアリシアの父親、アリット・テスタロッサだという事を。
「お前、アリットさんに何をした!?」
「兄はバカな男さ。あんな事をしでかした僕に猶予を与えてしまった。準備は十分だった……体から因子を抽出するのは、ね」
「因子……?」
るいが反復する。因子とはどういう事なのか。
「兄は家族……いや、僕や周りには隠している事があるのはわかっていた。けど、それが何なのかわかった時に、僕は兄こそがこの研究の完成系だとわかったよ」
「何を……言っている?」
「キミは知っているんだろ?兄は生まれつき……人には見えないある物が見えていた。それは兄の生まれた時の状況によるものだともね」
「ま、まさか……」
「そう、知ったよ。兄が何をひた隠しにしてたのか……ようやっと、知る事が出来た」
そして、スバルは手を広げて宣言する。自身の研究の名前を。
「プロジェクト『リライヴ』。それが僕の提唱したプロジェクト名さ」
「リライヴ……?それと、アリットさんに何の関係……が…………」
リライヴ、アリットの目、それらを総計して全は気づいた。このプロジェクトの真の意味に。
「お前……死んだ人間を甦らせようとしているのかっ!?」
「「「えっ?」」」
そんな全の言葉にスバルは
「はっはっはっはっは!!!さすがだね!!その通りさ!!人間は何で死ぬのか……そして死んだ後の人間は決して甦らない。それは絶対の法則。だけどね、そんな事を可能にしてしまうのが、兄の眼なのさ!!」
「ぜ、全?アリットさんの目にどんな秘密があるの?」
「………………………」
全は口を閉ざす。自分の口からが言いたくないのだ。
「教えてあげよう」
「っ、止めろ!!!」
しかし、全の言葉を無視してスバルは喋る。
「兄の眼にはね……死が、見えてるのさ」
「死……?」
「そう、兄は名前をつけてなかったけどね。けど、確かに見えている。どんな風に見えているのかは知らないけどね」
「お前……どうやって、その事を知った!?」
全は怒る。普段は怒らない全がだ。ただ事ではないとるいは察する。
「ちょっとね。さてと……こんな事実を知った君たちは殺さないとね。ああ、サンプル達は別だよ……と言っても、それはさっきまで」
そう言ってもう一度指をパチンと鳴らす。すると、スバルの横の地面が横にスライドしていきそこからカプセルが三つ出てくる。
そこにあった物にスバルを除く全員が絶句した。
「あ……」
「あれは……」
るいと全はそこまでしか言えなかった。それもそうだろう。
なぜなら
「わ……」
「私、達……?」
カプセルに入っていた人物は、フェイトやアリシアと酷似していたのだから。
「その通りだよ。どうせならもっと確実なデータが欲しかったんだけどね。送られてきたデータを何とか繋ぎ合わせて形にしたんだ」
「彼女達は……僕の計画の集大成……リライヴとは再帰という意味だ。いづれは、死んだ人間の髪一本だけでもあれば生き返らせる事が可能なんだよ」
「そ、そんなのって……」
「神の領域、かい?それでも、人間の欲っていうのは深いんだよ!僕はその欲を見事形にしてみせた!……用済みは処分しないとね」
そう言うと、カプセルから中に入っていた水が突如抜けていき、カプセルが開かれる。
フェイト達に似た人物たちはゆっくりと目を開いていく。
「さあ、君たちの敵はあいつらだ。頼むよ、愛しき娘達」
フェイト達に似た人物……言うなれば、フェイト・コピーやアリシア・コピーと言うべきだろう。
彼女達は拙いながらも構える。
「くそっ……!」
こうして、望まない戦いが始まった。
ピクッ
その時、誰も気づくことが出来なかった。アリットの指が少しだけ動いた事を。
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