転生とらぶる
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マブラヴ
1080話
『やぁ、アクセル。急に済まないね』
いつも通りにフレンドリーに声を掛けてくるビルだが、妙に顔に疲れが見えるな。
アメリカ大統領という地位にある以上、その手の腹芸は得意な筈だが……
「こうしてビルと直接話すのは久しぶりだな。……まぁ、直接と言っても通信だが」
『ははっ、そうだね。……ところで、アクセルの周囲には色々と人が多いようだけど、何かシャドウミラーの方でも騒動でもあったのかな?』
シャドウミラーの方『でも』か。その言葉があからさまにビルの心情を現しているように思える。
……とはいっても、こっちだって立場がある。一方的に向こうの要求を聞くような事になったら困る以上、言うべき事は言わせて貰おう。
「ああ。ちょっと問題があってな。……何だと思う?」
映像モニタで、ビルの頬がピクリと動くのが見える。
今の言葉で向こうとしても大体の予想は出来たか。
『それは何なのかな? ……そう聞きたいところなんだけどね。例の演説か』
「正解だ。単刀直入に言わせて貰おうか。あの演説は何のつもりだ? 今の状況でソ連と敵対するとか、正気か? それとも俺達を含めて喧嘩を売ってるって言うんなら、言い値で買うぞ?」
『待て! 待ってくれ! アメリカに……少なくても私にはアクセル達シャドウミラーと敵対するつもりは全くない!』
「その割には随分と俺達の名前を出した演説だったが?」
『違う! あの演説に私の意思は関係ない。……というか、あの演説がある事自体私は知らされていなかったんだ』
「……は?」
ビルの口から出た言葉に、思わず目を見開く。
それもそうだろう。先程まで俺達が見ていた映像で演説を行っていたのは、アメリカの国務長官。分かりやすく言えば外務省とかそういう風に他国との交渉を行う、政府の中でも重鎮中の重鎮だ。
つまり、今俺と話しているアメリカ大統領を務めているビルの腹心と言ってもおかしくないだけの地位にある人物だ。
その人物が全世界に向けて発信したあの演説を、大統領が知らなかった? そんな事が有り得るのか?
「ビル、一応友人として忠告しておいてやる。幾ら何でも、そんな出鱈目を信じろってのは無理だ。国務長官だぞ? そいつのやった事をお前が知らないってのは、ちょっと有り得ないだろ」
『分かっているさ、そんな事は!』
向こうから聞こえてきた声は、怒鳴り声に近い。
演技とかではなく心の底から出した声だというのは、こうして向かい合って顔を見れば分かる。
チラリ、とエザリアやレオンに視線を向けると、その2人も頷きを返す。
この2人はそれなりに外交の時にビルと会っている。
当然全てを知っているという訳ではないが、それでも少なからず相手の事を理解しているというのはあるだろう。
となると……ビルの言っている事は本当か? だが、それこそ国務長官が大統領の了解も得ないままに、あんな派手な真似をするというのは信じられない。
いや、あんな真似をする以上は国務長官だけで出来る筈もない。他にも当然協力者がいる筈だ。
つまり、それらの人物全てにビルは裏切られた、と?
俺が知っている限り、ビルは政治家として決して無能ではない。いや、かなり有能であると言ってもいいだろう。
でなければ、幾らアメリカがマブラヴ世界で最大の国力を持っている国であったとしても、大統領になる事は不可能だ。
事実、当初は何かとシャドウミラーに対してちょっかいを出してきたアメリカだったが、俺達の実力がどれ程のものなのかを理解するにつれて、態度を軟化させていった。
更には多分にパフォーマンス的な意味もあったのだろうが、俺達が国連の会議に参加する為にアメリカに行った時には直接本人が出迎えもした。
この世界で最大の国力を持つアメリカの大統領が、10人程度で国と名乗っている俺達に対してあそこまで丁重に接するというのは、無能な大統領では出来ない筈だ。
無能な場合、いっそ俺達を捕縛するなり基地を占拠しようとして戦争になっていた可能性すらもある。
……そう。己の身の程を知らずにホワイトスターを占拠しようとし、結局は国を滅ぼされて史上最も無能な皇帝として未来永劫語り継がれるだろう門世界のモルトのように。
そんな事にならず、最初は敵対気味であってもすぐに友好姿勢を打ち出し、最終的にはMSすらも譲渡される関係になった。
その辺を考えると、ビルは間違いなく有能な大統領だと断言してもいい。
だと言うのに……
「そう怒鳴るな。大体、何だって国務長官が大統領を無視してこんな行動に出るんだ?」
『正直、その辺がよく分からない。何を思っての行動なのか……』
「そもそも、だ。演説で言っていたソ連の行動だっていう証拠も色々と怪しいぞ?」
『何? どういう事だ? その件についても嘘なのか?』
驚きと……微妙な焦り、か? まぁ、今回の件では散々なビルが唯一得た利益だったのだから、それが実は嘘、出鱈目でしたとなれば、この態度もしょうがないか。
恐らくだが、ビルとしてはソ連と恭順派が繋がっている証拠を公にせず、裏からソ連との交渉で使うつもりだったのだろう。
ソ連は以前よりも明らかに国力が減っているが、それでもまだ戦術機を独自開発するだけの技術力を持っており、未だ大国と呼んでも差し支えない。
そんな国だけに、色々と交渉する内容とかはあるんだろう。
「そうだ。俺達は恭順派のアジトからコンピュータを幾つか確保している。勿論あの爆発だったから色々と壊れていたりはしたが、それでも修復するのは難しくない」
まぁ、全部技術班任せなんだけど、その辺は置いておくとして。
「で、その中には全く意味のないデータが入っていたよ」
『意味のないデータ?』
「ああ。これを用意した奴は気が利いてるぞ? ポルノムービーを残しておいたんだから」
『それは……あー、その、本当かな?』
さすがに信じられないとばかりに告げてくるビル。
いやまぁ、うん。その気持ちは俺も分かる。もし俺がビルの立場であったとしても、重要証拠品の中にポルノムービーが入っていると聞かされればこうなるだろう。
別にコンピュータウィルスの類が仕掛けられていた訳でもないし、どこからどう考えてもこっちに好意すら感じさせる……と思うのは、男だからだろうか。
少なくてもうちの男勢は、若干ではあるが恭順派に対しての敵意が下がった者もいるだろう。
まぁ、だからといってこれまでやってきた事を許すような事はないが。
さすがにここまで徹底的にこっちに敵対しておきながら、ポルノムービーでどうこうする筈もない。
「勿論本当だ。疑うのなら……」
ここで見せようか? そう言おうと思った瞬間、ゾクリとしたものを感じる。
別に念動力が命の危機を知らせてきた訳ではない。それ以外の何かが俺の危機を教えたというような印象。
ともあれ、其処此処から向けられる視線は、レモンを含む俺の恋人達……だけではなく、オウカやエザリアのような者達までもが俺にジットリとした視線を送っていた。
「あのね、アクセル。私達がいる前でそういう映像の話をするのはデリカシーがないと思うんだけど。どう思う?」
「あ、ああ、その……悪い」
レモンの言葉に反射的に謝るが、レモンの場合ポルノムービーとかは普通に見ていそうなイメージがあるんだけど。
これがコーネリアやスレイなら頬を赤らめつつも少し興味のある仕草をし、マリューなら溜息を吐いて見て見ぬ振りをする。シェリルなんかは興味深げに見るだろうし、それはあやか達も同じか。
そんな風に考えていると、俺に向けられた視線が再びジットリ感を増す。
「とにかく、そういうムービーが入っていたのは事実だ。そんな真似をしてまでこっちをおちょくってくるような奴等が、わざわざソ連と繋がっているってデータを残していると思うか?」
『……確かに』
苦々しげな表情を浮かべつつ頷くビル。
勝手に行われた演説であっても、それが事実に基づいてのものであれば、まだビルにとって救いがあったのだろうが……その証拠からして意図的なものであるとなれば、正に踏んだり蹴ったりといったところか。
「それで、どうする?」
『どうするとは?』
だからこそ、こうしてビルの口から出る言葉には元気がなくなっているのだろう。
「このまま好きにさせておいていいのかって事だ。何だって急にソ連に対してここまで敵対的な行動を取ったのかは分からないが、まさかあの演説……いや、非難声明だけで終わるとは思わないだろう?」
もっとも、アメリカがそれで終わらせようとしても、ソ連の方は絶対に許さないだろう。
ソ連という国は面子を重視する国だ。その国が、公の場であからさまにテロリストと繋がっていると言われ、非難されたのだ。当然それで済ませる筈があるとは思えない。
まぁ、恭順派がソ連と繋がっていた可能性はまだ残っているが……状況を見る限りでは、完全にアメリカに、それも一部のアメリカ人達に嵌められたのは恐らく間違いない。
そんな国がどう対応するのかと言えば……答えは難しくはないだろう。
「……アクセル。残念なお知らせをここで1つ」
ビルと俺の話を聞きながら、何かを操作していたレモンがそう告げてくる。
いつものからかうような、面白そうなものに対する声ではなく、どこか呆れたような声。
微妙に嫌な予感を抱きつつ、レモンに言葉の先を促す。
こっちの声が聞こえているのだろう。映像モニタの向こうにいるビルもまた苦々しげな表情を浮かべている。
「アラスカとアメリカの緩衝地帯にアメリカ軍と思しき軍隊が集まっているわ。数は、大体戦術機80機、ガン・ルゥ100機、リニアガン・タンクと戦車は200機ってところね」
ビルが映っているのとは違う映像モニタに映し出されたのは、マブラヴ世界の上空に上げたシャドウミラー製の偵察衛星が捉えた映像。
この世界の映像とは違い、かなり画面の解像度は綺麗だ。
それこそ、地上に置いてある新聞の文字すら普通に読めると以前聞かされていたが、それですらもかなり遠慮した表現だったらしい。
『これは……馬鹿な! 誰がこんな事を指示した!?』
憤然と叫ぶビル。
実際、大統領というのはアメリカ軍の最高指揮官という形式になっている。ここまで大きく軍を動かす場合、当然ながらその辺の許可は必要になる筈だ。
それを知らなかった。つまり、これも今回の件を仕組んだ者の行動か。
まぁ、アラスカの緩衝地帯付近に集まっている時点で、既にそれは決まっているが。
「ソ連がアメリカの発表に反論する前に仕掛けるか。国連の決議がどうこうと言ってた割りには随分と強引だな」
「つまり、それだけ向こうも焦ってるって事だろ? 俺達の名前まで出したんだから、色々と危機感を覚えるのは当然だろうけど」
俺の呟きにムウが当然とばかりに言葉を返す。
確かにそれもあるだろう。元々速やかに奇襲をしてアラスカを落とすつもりだったか。
「けど、確かにあそこに集まってる戦力は結構多いですが、それでもアラスカを落とせるでしょうか?」
まず無理だろう。そんな思いと共にオウカが呟くのが聞こえてきた。
確かに大戦力ではあるが、マブラヴ世界の中でも高い国力を持っているソ連を落とせるかと言えば……難しいだろう。
「となると、何か奥の手があるのは間違いないな」
『奥の手と言っても……シャドウミラーを引っ張り込むとか? けど、そっちの話を聞く限りだとそんなつもりはないんだろう?』
確かにビルの言う通り、この件に関してアメリカの味方として手を出す事はない。
寧ろ、現在の状況を考えるとソ連の方に手を貸すという事すらあるかもしれない。
もっとも、一番可能性が高いのは第3勢力としてこの件に介入。事態を詳しく調べるといったところだが。
『だろう? まぁ、正直大統領の立場として言わせて貰えば、アメリカの味方をしてくれると嬉しいんだけどね。ともあれ、シャドウミラーは味方をしないと、今回の件を企んだ者達にしても理解している筈だ。シャドウミラーがどのような性格の国家なのかというのは、散々分析してきたんだからね』
それを俺達の前で言うのか? いやまぁ、ビルらしいと言えばビルらしいんだが。
「じゃあ、向こうの奥の手って何かあるのかしら?」
そう呟いたのは、美砂。
確かに俺達が協力するというのが有り得ない以上、向こうにしても絶対に何らかの手段はある筈だ。
そう思った、その時……
『っ!?』
映像モニタの向こう側で、ビルが息を呑み顔色を変えている。
それも、生半可な顔色ではない。真っ白になったその顔色は、不治の病を患っているようにすら見えた。
「何だ? 何か思い当たる事でもあるのか?」
どう考えても心当たりがあるというビルへと問い掛けると、難しい表情を浮かべたまま黙り込む。
「ビル。お前が何を隠しているのか分からないが、今回の件はこの世界崩壊の序曲にすらなる可能性があるぞ」
『……G弾、だ』
……G弾? G弾!?
「馬鹿なっ、まだ開発を続けていたのか!」
ビルの言葉に、俺は思わず怒鳴り返すのだった。
後書き
アクセル・アルマー
LV:42
PP:370
格闘:301
射撃:321
技量:311
防御:311
回避:341
命中:361
SP:1402
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
???
撃墜数:1183
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