ランス ~another story~
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第2.5章 出会いと再会は唐突に
第33話 最強!最凶?最狂??
~マルグリッド迷宮3層~
ユーリとヒトミは、地下深くに伸びる階段を進んだ。
その先にあるのは第3層のフロアだ。
ここは、一攫千金を目指したり、自らを鍛えたい者などに人気がある場所なのだが。
コレより以降の階層は、常人ではそろそろ、行く前に遺言の用意をしておいた方が良い、と言う謳い文句がある。勿論それは、マルグリッド迷宮入口の管理人も言っている言葉だから、ここで命を落としたとしても、責任は取らないと言う意味でもあるのだ。
「ふぅ……、もう、3層か。ここまで降りてくるのも久しぶりだ。……だが、見つからないな。一体何処で落としたのやら」
ユーリはため息をしながら進んで言った。
依頼人の依頼書には、詳しく《第何層》とは、書かれていない為、必然的に全層をくまなく探さなければならないのだ。だが、しってのとおり この迷宮は何処まで深く続いているのか、まだその全容が?めていないそうであり、ユーリも4層までしか降りた事がないのだ。
4以上降りるとなると、かなり危険が伴うから更に注意をしなければならない。自分の実力を測る、と言う意味では申し分ない難易度なのだが。今はヒトミもいる。認識を逸らせられる、といってもその場からいなくなっている訳じゃないのだから。
「え?? ユーリお兄ちゃんはここに探しものをしにきたの?」
「ん? ああ、そうだよ。そういえば言ってなかったな。オレはギルドの依頼で、ここに落し物をしたと言い、困っている人がいたから、その頼みごとを任されているんだ」
「へぇー、そうなんだっ! お兄ちゃん優しいっ!」
「ん~、そう言ってくれるのは嬉しいが、優しいとはまた違うかな? これは仕事だから」
「うん、判ってるよ。ギルド所属の人、何人か見た事あるよ! でも、こんな危ない所にまで、何かを探しに来てる人はあまりみないから」
目を細めて、笑っているヒトミ。
そもそも、彼女にとってこんな接し方をしてくる人間などは皆無であり、助けてくれた事も勿論無い。その時点でユーリと言う人間が優しいというのは、ヒトミの中では、決定事項なのだ。
「ははは。ありがとう。ヒトミもいるし、さっさと終わらせたい、な。だからここの層で見つかれば良いけど」
ユーリは辺りを視渡す。
落ちていないかどうかを視渡したが、とりあえず入口付近にはなさそうだ。モンスターが持っていった、と言う可能性も否定できないから、寝屋にある可能性もあるからより慎重にならなければならない。……深い層で念入りに調査をすればそれだけ、モンスターに出くわす危険も高くなるのだ。
「ヒトミ、2層でも言ったが、戦闘になったら、絶対にオレの後ろにいろよ? 挟み撃ちになったら、オレの傍を離れない事。……守れるな?」
「うんっ お兄ちゃんの邪魔はしたくないから。もうさっきの人たちもいないし、大丈夫だと思うよ!」
「そうか、だが、万が一と言うのもあるから」
「はい、お兄ちゃん!」
ヒトミはしゅたっ!っと敬礼のポーズをとり、ニコニコと笑った。
少し過保護気味になってしまっている自分が此処にいる事にユーリは勿論気づいている。それは、さっき襲われた事もそうだが、何より今ははっきりとは思い出せないが、過去に生き別れてしまった《妹》がいたから、同じ二の舞は踏みたくないと思っている事が大きいようだ。
「(うん、ここ本当に危ない所だし……お兄ちゃんの邪魔になるのだけは駄目だよね)」
ヒトミもそれは重々に感じている。
そんなユーリの心の機微は判らないが、この場所が危険だと言う事は判るからそれで、こう言ってくれてるんだと解釈をしていた。
「さて……んん??」
ユーリは、違和感を、と言うか異常を感じた。突然、迷宮が揺れた?かと思ったその直後に大きな揺れが起こったのだ。ズズンッと言うけたましい音と共に、轟音が響いてくる。
音的にはまだ遠くだが、間違いなくこの層だ。
「……ここに誰かがいる事は間違いないな」
「う……うん」
ヒトミも驚いたようで、ユーリの服をぎゅっと握っていた。
「大丈夫だ。……ヒトミの事、守るからな」
「うんっ」
ユーリがニコリとそう言うと、ヒトミも笑顔で返し、一緒に第3層へと脚を踏み入れて言った。
~マルグリッド迷宮3層 かごしまエリア~
入層した直後に歓迎してくれたのが、《まだ角くじら》と《アイロンヘッド》だった。
まだ角くじらは、雷の魔法が得意とするモンスターであるが、まだ子供の為威力自体は低い。
だが、真骨頂は詠唱の早さだろう。だからこそ、魔抵抗が低い者にとっては、雷の洗礼を浴びる事になる事になるのだ。
そしてアイロンヘッドは、そのデカイ口を大きく開けて噛み付いてくる動物系のモンスターであり、中々に威力は凶悪。
どちらも、油断にならない相手だ。
「此処まで来たらこの程度くらいは来るか」
ユーリは、剣の柄を握り締めた。
雷を撃ちはなってくるまだ角くじらに対しては。
「ふんっ!」
ユーリは素早く、もう一本の剣、幻獣の剣を地面に突き刺した。すると、雷はユーリに当たる事がなく、剣に命中する。避雷針の代わりにして、直撃を防いだのだ。
「別に喰らっても大丈夫だが、……痺れるのは嫌だからな。……あのミイラさんにもう1つ感謝だ。流石に長物の剣は2本しかないし」
手持ちにあるのは妃円の剣と幻獣の剣、そしてかなみから受け継いだ忍者刀のみだ。2本もっていくつもりは無かったが、リーザスで戦った清十郎の件もある。折れる事もあるからと、ユーリは念の為に持って来ていたのだ。以前の折れた剣は、何年も使っていた事もあり、大分酷使してしまっていたから、と言う理由も大きいだろうけれど。
「くぽっ!!」
何度雷を放っても、ユーリの傍にある剣に当たる為、何度もムキになって連発をしてくるまだ角くじら。勿論無限に撃ち続けれるわけは無いから、それだけでかなり消耗するだろう。
その間に飛んで来たのがアイロンヘッド。
「がぶぁっ!!」
デカイ口を広げ、噛み付いてこようとした。
「お、おにいちゃんっ!」
「大丈夫だ。ただ、ここからは 離れるなよ? 雷が当たるかもしれないからな」
ヒトミは大きな口が迫ってくるのを見て思わず声を上げてしまったが。ユーリはヒトミの方を向かずに、手を挙げた。安心させる為に。
「う、うん。(お兄ちゃん……がんばって……!!)」
ヒトミは再び拝む形で、手をぎゅっと握った。その瞬間だ。
「ん?」
あの轟音と衝撃のせいだろうか……?脆くなっていた天井の一部が再び落下してきて、アイロンヘッドの頭に直撃した。
「ぶげっっ!!」
大きく開けていた口は一瞬で閉じ、その衝撃で歯を何本も砕け散らせている。
「煉獄・斬光閃」
その隙にユーリは、アイロンヘッドとまだ角くじらを遠距離の攻撃で狙った。光を纏う斬撃は 正確にアイロンヘッドの胴体とまだ角くじらのちょこっと出ていた角にヒットする。
「ぐぎゃあっ!!」
「く、くぽぉぉ!!」
アイロンヘッドは、そのまま崩れ落ちるように絶命したが、まだ角くじらは角が折角出掛かっていたのに、それを更に削られるように抉られてしまい、驚いて逃げていった。
「ふむ……」
ユーリはとりあえず、敵を一掃できたのを確認すると、幻獣の剣を仕舞い、妃円の剣も鞘へと仕舞った。
「……2度も続くと偶然とは思えないな、ん?」
ユーリはヒトミに安心させようと後ろを見たとき、に気づいた。彼女が祈ってくれている事に。
「終わったよ」
「あっ、良かった! お兄ちゃん!」
ヒトミは気づいたようで、ニコリと笑って手を握った。その彼女を見てユーリは聞く。
「ひょっとして、今のヒトミか? それに以前の時のも」
「え……? 何が?」
「はは。どうやら、惚けるのは苦手みたいだな? 目が泳いでいるぞ」
「あ、あぅ~~……」
ヒトミは 顔を赤くさせながら頬を抑えた。
「う、うん、かげながらお兄ちゃんをサポートするつもりだったのに、早くもバレちゃったんだ」
「まぁ、幾らなんでも、あれを運だけで、片付けたくいないからな。2度も続いたら疑問に思う。そして、ヒトミが一緒に行動するようになってからだし」
ユーリはそう言うと、軽くヒトミの頭を撫でた。ヒトミは 苦笑いをしつつ答えた。
「うん、そうなの。幸福きゃんきゃんの能力の1つで、幸せを齎す効果。簡単に言えば運が増すの。でも、それは元々のその人の素質依存するんだって」
「素質に依存?」
「うん、だから ものすご~~く運が悪い人を助けたりは出来ないの。だから そこまで強力な力じゃないみたいなんだ。……もっと役に立ちたいって思うけど、多分あのくらいが限界みたいなの」
ヒトミは少し沈みながらそう言っていた。だが、戦闘においては一瞬の隙が勝敗を分けるものだ。だから、ユーリは笑いながらヒトミの頭を撫で続けると。
「十分だ十分。逆に運が際限なく上がり続けたら、怠けてしまいそうだ。それは嫌だから仮に、滅茶苦茶上げてくれて、何もせずに敵を倒せるような状況になったら、止めてくれって言うよ オレは」
「あ……。あはっ、お兄ちゃんなら言いそうだね?」
ヒトミはふにゃりと表情を緩めながら笑っていた。
人は、楽な方法を取れるのなら、殆どが楽な方をとるだろう。だけど、目の前の彼は違った。……本当に誠実で、そして自分に厳しい。そんな人なんだって理解出来た。この幸運を齎す能力は、自分自身には適用されない力だ。だから、今日と言う日に本当にヒトミは感謝をしていた。
彼とめぐり合わせてくれた《運》に。
そして、その後。
「ん~……宝箱開けの運もついてるって判断していいか?」
「あはは……、私の力はそんなに長くはかからないの。何度もかけ続けると、運は上がらなくなっていくし。1,2日経てば リセットはされるんだけど」
「むむ、なら全ては自分の運次第って事か、よし覚悟を決めた」
ユーリは鍵がかかっている宝箱の開錠に挑んでいた。
どうやら、レンジャーにとっては、最高である宝箱エリアの様なのだ。
これまでも開けられた形跡が無いみたいなのも幸いだが、こちらにはレンジャーがいなく宝箱開けの技能が無いのも不運。
「ごくり……」
「ごくり……」
ユーリは生唾を飲む。ヒトミもそれを真似するようにした。ユーリと違ってヒトミは笑顔だから、本当にただ真似をしてるだけのようだ。
「お、おおっ!」
ガチャリと言う音が響いた後に一気に緊張を解いたユーリ。どうやら、開錠成功のようだ。
「やったっ!」
ヒトミもガッツポーズをとり、ユーリの腕に飛びついた。彼女を爆風から守る為に後ろにしていた為、突然背中に衝撃が走ったが、小さな彼女が飛びついてきたくらいじゃ大丈夫だ。
「おっとと……、はは こればっかりは嫌に緊張するんだよな」
「えへへ、みたいだね。でもお兄ちゃんなら多少、ばくはつしても大丈夫だって思うんだけど、正直」
「あ、ああ……体力的には問題ないんだが……ちょっとトラウマがあってな」
「トラウマ~??」
「んー、ああ。爆発地獄ってヤツだよ」
頭を抱え込むユーリを見てヒトミは察したようだ。宝箱が何度も爆発した経験があるのだと。
「あはは、でも お兄ちゃん運は良さそうなんだけどなっ。私が見た所……50%以上の確立で成功はしそうだよ? そんなにその日、運が悪かったんだね」
「ああ……《その日》はな」
嫌にユーリは《日》の部分を強調しながら言っていた。どうやら、《その日》に何かあったんだろう。でも、ヒトミは 言及をする様な事はしない。その代わりに別の事を言う。
「じゃあ、どうする?後の宝箱さん達」
言及しないかわりに、ヒトミはニコリと笑って、言ったのは目の前に広がる宝箱。
まだ、5~6個は見える範囲にある。鍵がかかっていない宝箱もある事はあるが、1個だけだ。
「………」
目の前に宝があるのに、何もしないのは冒険者としてはあるまじき行為だろう。ユーリは軽くため息を吐いたのに。
「まぁ…… これを期に、荒療治ってのもいいかもしれないな」
「あはっ、私も付き合ってあげるよ! お兄ちゃん!」
ヒトミは、物凄く良い笑顔でそう言っている。爆発するかもしれないのに。
「ありがとう。でも、爆発したときも楽しそうにしてたら、デコピンだからな?」
「あ……はは、それは難しいかも……」
「まったく……」
苦笑いをしつつ、宝箱へと向かっていった。でも、あの時と比べたら軽いものだ。
そう……あの《へっぽこ》と一緒に行動した時と比べたら……。
~マルグリッド迷宮3層・とくしまエリア~
3層の奥。
ある者が辺りを警戒しながら歩いていた。この場所で警戒するのは当たり前なのだが、この人物が警戒し、集中するのには訳がある。
「まったく、あのコは一体何処にいるって言うのよ……今は色々と国で大変だって言うのに……」
慌てつつも冷静に、誰かを探していた。そう、その誰かを探す為に、集中しているのだ。
その容姿は……色んな所が光ってる。すんごく光ってて、基本的に迷宮は薄暗いんだけど、輝いて見える程だ。……冗談抜きで。その極彩色の服装と分厚い緑の黒縁めがねをつけている女性。
彼女こそ、マルグリッド迷宮1層でゼスの軍人が探していた人物。
四天王の一角、《山田 千鶴子》である。
ある人物を急遽迎えに来る為に公務を一先ず中断して、ここヘルマンにまで来ていた。
……放っておくと、歴史あるこのマルグリッド迷宮の崩壊、そしてヘルマンとの戦争にも発展しかねない状況に陥る可能性が極めて高いのだ。常日頃頭を悩ませる根源であもある人物。
……どんだけ?
「あんの馬鹿……本当に一体何処にいるって言うのよ! ああぁぁ、他の仕事だって まだ終わってないのに、こんな所にまで来て」
気苦労が常日頃絶えない彼女なのである。
彼女は、今反国王派とペンタゴンの反乱が、国で色濃く出てきている為、それらについても色々と対処をしなければならないのだが、全面戦争の方が危険であるとして此処にまで来たのだ。……他に動ける者がいないから、そして探している人物が人物だから、と言う理由が一番だったりする。
「落ち着け……私。大丈夫、落ち着いて探したら 無事に抜け出せるわ」
胸を抑えながら深呼吸をする千鶴子……、胸を触ったら、何故か再びムカついてきたようだ。
「むきぃぃ!! さっさと出てきなさいよ! アニス!!」
彼女の叫びは迷宮奥にまで響いていくが……肝心の人物には伝わらなかったようだ。
そう、この迷宮に来ているのは山田千鶴子だけではない。
ユーリの大問題人物の1人が此処にきているのだ。人類最強、最凶のへっぽこ魔法使いが。
彼の不運が近づいてきている……のだろうか??
~マルグリッド迷宮3層・とやまエリア~
ユーリは無事に宝箱を開け終わり、次のエリアにまで脚を踏み入れていた。
「やー、流石お兄ちゃん! 宝箱、7コ中6コも開けちゃうなんて、すごいねっ!」
「運が良かったんだな……、これで一生分つかったかもしれないな」
「あはは、ま~さか!」
朗らかに会話が進んでいくが……、この時ユーリの背筋には悪寒が走っていた。
「っ!」
「ん?どうしたの?」
ヒトミはそれに気づいたようで、ユーリの顔を覗きこむ。何やら冷や汗もかいているようだ。冷や汗と言うより、脂汗?
「い、いや……何故だか判らないが、嫌な予感がしてな」
ユーリは手を振り、そして頭も振った。何故だかは判らない。無事、宝箱も開け 確かに爆発はしたが 別にどうってこと無かった。克服できたか?と聞かれればまだまだだ、とも言えるのだが、収穫としては最高だろう。
なのに、何故……悪寒がする?
なんで、≪彼女≫の顔が頭に浮かんだのだろうか。
「お兄ちゃん?」
「………」
「おにーちゃーん! だいじょーぶっ??」
「ああ、大丈夫……ッッ!!」
その時だ。突如、前方より恐ろしい気配を感じた。
「う~~ん、ここにも無いですね。ああもう、一体何処にあるのでしょうか。……この壁も邪魔ですね。えぃ、近道です。白色破壊光線! ビーー!」
壁の向こう側から、スットンキョーな声が聞こえてきたかと思えば、このエリアが凄まじい光に見舞われた。そして、光が晴れたかと思ったら、そこには大きな穴が開いており……地面も抉れていた。
幸いな事に迷宮そのものが崩れるような事にはならなかったが……。
「お……お兄ちゃん? 今のナニ?」
「………さぁ?」
ユーリは、知らん振りをした後、やり過ごそうか?とも思ったが、ここにアイツがいるのならそうはいかない。放置しておいて、そのままにしておくと……下手をしたら生き埋めになってしまう可能性もあるからだ。
このマルグリッド迷宮が何処まで続いているのかは判らないが。
「さぁさぁ、こっちかな? クリスタルロッド~! ……おや?」
その大きな穴から飛び出てきたのは薄い青、水色の触角の様に伸びた髪に修験者の様な井で立ち。そして、大きな肩当てを防具として身につけ、これまた大きな杖、先に赤い宝玉のついた魔法の杖を常備している。
魔法大国・ゼスが誇る?最強の魔法使いとしての技能を持つ魔法Lv3の魔法使い
《アニス・沢渡》だ。
「…………」
「あ、誰か出てきたみたい。……でも、固まってるね? お兄ちゃん? 女の人が来ましたよ? 同じ冒険者でしょうか?」
「あ、ああ!!」
アニスは、ユーリの姿を見るなり、ぱぁっと笑顔になって、ダッシュでこっちへと走ってきた。魔法使いとは思えない体力も併せ持っているのである。
「ユーリ様ではありませんか! アニス、とても合いたかったですよ!!」
「……ん?? 誰だ? 人違いじゃないか? いやぁ、今日もいい天気だ」
「お、お兄ちゃん、落ち着いてっ! ここ、迷宮だよっ? 天気、絶対わかんないよ!」
明らかに動揺を隠せられてないユーリ。慌ててヒトミがつっこんでいた。
「何を言ってるんですか、ユーリ様っ! 貴方は絶対にアニスの運命のお人ですーっ! アニス、貴方の顔だけは忘れませんっ! ユーリ様も忘れてませんよねっ? アニスの顔っ!」
アニスは、ずいっと顔を近づけながらそう言う。
確かに、忘れていない。と言うか忘れられないという方が正しいかもしれない。
「……久しぶりだな。アニス。やっぱ、お前か……」
ユーリは、もう誤魔化しが効かない事を悟ると、がっくりと肩を落としてそう言っていた。
そして、第1層で出会ったあいつら……今度見かけたら、ドロップキックをしてやろうと心に決めていた瞬間であった。
「ひどいですよー、ユーリ様、アニスの事知らない振りをしてますし、何より、再会に喜んでくれてないです」
「ん~~、気のせいじゃないか? オレ、メチャ喜んでるぞ? それに、オレ 今メチャメチャクールだからな。だから、そう思ったんじゃないか?」
「……どっちも見えないよー お兄ちゃん。ほんとに落ち着いてっ!」
明らかにキャラが崩壊しつつあるユーリの手を強く引っ張りながらそう言うヒトミ。
「おや? ユーリ様のご家族も一緒でしたか、って、え?? きゃんきゃん?? それも幸福きゃんきゃん??」
アニスはヒトミを見るなり驚いていた。
それもそうだろう。幸福きゃんきゃん出現率を考えたら。それにユーリの事を兄と呼んでいる事もふまえて。でも、良い獲物だと言う事は直ぐに理解出来た様だ。
「これは、レベルアップチャンスが来ましたねー、アニス。行きまーす!」
「って、行かんでいい!!」
とりあえず、現実を受け入れたユーリは何処からともなく出したハリセンでアニスの頭を引っぱたいた。
すると、アニスは目を丸くさせて、頭を抑える。心なしか、彼女の心情に合わせて杖も撓ってしまっていた。
「なな、ユーリ様? またアニス何か間違えましたか? 粗相をしてしまいました?」
「今攻撃しようとしてたろ? コイツはヒトミって言って、オレの仲間なんだ。とりあえず攻撃は駄目だ。……っと言うか、オレと会った以上、もうお前は何もするな。魔法全般禁止。何かあったらオレが全部対処する」
こめかみを押さえつつ、そう言うユーリ。アニスに任せていたら、先ほどの様に 白色破壊光線と言う凶悪な魔法を躊躇なく撃ち放ったりするからだ。
「おお、流石はユーリさんです。モンスターの心をも惹きつけるとは、流石はアニスの運命の人!」
叩かれて、涙目になったかと思いきや、今度は喜びの表情になるアニス。
とても忙しい人だなぁ、とヒトミは思っていたが 先ほどから連呼しているアニスの言葉を聞いて、疑問を浮かべていた。
「あの~ えと、アニスさん」
「ん? なんでしょう、ユーリ様のお仲間様」
「アニスさんは、ユーリお兄ちゃんの恋人なの?」
「ぶっ!!」「その通りです!!」
ヒトミの質問に殆ど同時に反応した2人。それは、明らかに食い違った回答だった。
「え? ええ??」
「って、コラっ! いったい何言ってんだ、お前は!」
「だって、本当の事ですー」
アニスはそう言って胸を張っていた。
「誰が、恋人だ恋人!」
「だってー、ユーリ様は、アニスの初めてのお人なのですよ! だからこそ、様をつけて呼びだしたんじゃないですか」
「はぁぁ!?」
「ええっ!!」
ユーリは、呆然と声を出し、ヒトミは顔を赤くさせていた。
そしてその頃某場所にて。
~リーザス城・軍隊訓練場~
「わぁっ! あ、危ないっ!!」
突如、手裏剣が飛んできたので慌てて頭を抑えながらしゃがんだメナド。
「な、何するんだよ、かなみ!!」
「あ、ああ! ごめん。メナド……わざとじゃないの。本当に」
「うー、訓練する時はまわり見てしてよ? と言うか的を狙ってやってよ……」
「ご、ごめん……」
かなみは慌てて、手裏剣をメナドから受け取った。そして頭に指を当てて考える。
「(前もこんなの合った……突然、悪寒がしたんだけど……)」
かなみは疑問に思ったが、とりあえず忘れて再び修練を開始したのだった。真の忠臣となる為に、あの人の期待にも答える為に。そのあの人を思い浮かべながら……。
でも、その時に、更に悪寒が走ったのだった。
~カスタムの町・工事現場~
「わ、わぁぁ!! し、志津香っ!? 何してるの!」
「え? 何って? 火を頂戴って言ったのマリアじゃない」
「だ、だからって、火爆破なんて使わないでよ! プチ炎の矢を使って! と言うか、なんでいきなり火爆破を使うのよ! もう、火 ついてるのに」
「あ、あれ?」
カスタムの町にて、志津香は手伝いをしている時だった。今は、季節的にも寒い。だから、外での作業をしている人たちの為に暖を取って貰おうと火をおこしたのだ。薪をくべて……そしてプチ炎の矢を撃って火をつけたら終わりのはず。何故か、変な感じがして思わず魔法を撃ちはなっていたのだ。
「ちょっと、どうしたの? 志津香……?」
ぼーっとしていた親友の前にまでやってくるマリア。
「ごめんなさい。ちょっと寝ぼけてたみたい」
「あ、昨日夜更かししたんでしょ? 駄目だよ。美容にだって良くないんだから。ユーリさんの為にも、ずっと綺麗でいなくちゃ」
「なんでアイツの名前が出てくんのよ!」
っと、志津香は言い返していたが、ユーリの名前を出されて、また背中にちりっと何かを感じた。……この気配はなんなのだろうか。今は判らないため、とりあえず、わけのわからない事を言い出している親友の悪い口にお仕置きをする志津香だった。
~カスタムの町・アイテム屋~
アイテム屋では、がしゃりと言う大きな何かが割れた音が響きわたっていた。
「あれあれー? ……tって、わぁぁ!! 戸棚に置いてあった、ユーリさんとの写真が! 写真立てが割れたですかねー!! 家宝にしてたですのにー!」
トマトが大慌て。何か悪い事の前兆では無いか……、ユーリさんとのと、思っていたのだ。
~カスタムの町・酒場~
昼間だというのに、酒場にのみに来ているのは、ロゼとミリ。何でも、昨日の夜に飲む予定だったのだが、中止になった為、飲み直しをするとの事だった。
「今よ! 間違いないわ!」
「んぉ? いったいどうしたんだ? ロゼ」
「私の面白センサーがびんびんに働いた! 間違いなく」
「おお、成程、それを肴に楽しめそうだな? 相手はどーせアイツのだろ?」
「間違いないわ。ALICE様に誓って」
「なんでそんな事で女神なんかに誓うんだよ」
ロゼとミリはそう言い合うと、どうにかして、その面白情報を得ようかと画策をしているのだった。
~カスタムの町・情報屋~
「むむ、今ある情報だけど……ヘルマンの方が何かキナ臭いですよ」
「ヘルマン、ね。私の方でも色々と?んでる。確かに皇女が生まれて色々と内輪もめが激しいらしいからね」
カスタムの町へと再び情報共有をしにきたリーザス情報屋の優希とカスタムの情報屋の真知子が互いの情報を共有していた。
そして……その後は勿論、他の彼女達と同じ様な悪寒に襲われる。
「何か……嫌な予感がすっっごくしたんダケド……」
「おやおや、ユーリさんの事、占ってみましょうか?」
「やーーーめーーてーー! 当たってる、当たってそうで怖い! ……でも、知りたいよぉぉ 気になるよぉぉ!」
優希は暫く唸りながら考え込んでしまっていた。どっちをとっても地獄、彼女にとって長い日となり、真知子にとっては微笑ましい日となっていた。
「(増えるのは結構なのですが……、うーん、順位は上位を狙わないといけませんね)」
真知子が心配しているのはそこだけだった。……どういう意味かは、秘密だ。
~マルグリッド迷宮3層・とやまエリア~
そして、某場所にて……、色々とトラブルを引き起こしたりしている者達がいる事をこの場の皆は誰も知らなかった。
「そ、その時の事、詳しく聞かせてもらえませんか?? アニスさんっ」
「え? 私とユーリ様の馴れ初めが聞きたいですか?」
「はいっ!」
元気一杯でそう言うヒトミ。
この姿を見てしまったら、アニスももうモンスターとしては見られないようだ。ニコリと笑うと話しを始めようとする……が。
「コラ! 変な事を吹き込むんじゃない!」
「えー、ひどいですよ。ユーリ様」
「後、その、《ユーリ様》って言うのやめてくれ! そう呼ばれるのは嫌だ」
「むむ、ユーリ様が嫌がるなら仕方ありません。お口にチャックの1つですね、了解しました。……むむ、では、旦那様と!」
「断然 却下!!」
「あぅ……、で、では、ユーリさんでは!?」
「出会った当初に戻ったな。よし、それで行こう」
「判りました」
「で、それで、お兄ちゃんとの事教えてくださいっ!」
ヒトミは目を輝かせてそう言っていた。いくらモンスターとは言え、幼さそうに見えるとは言え、彼女だって女の子だから、色恋沙汰話しは気になるのだろう。
「はぁ……。ヒトミ 何も無いって。それは、アニスが勝手に言ってるだけだから」
「酷いですって! これは全部本当の事なのですよー」
「オレには身に覚えがないっての! 大体、オレは そんな節操無しじゃない」
ユーリはさっさと否定をした。
ランスじゃあるまいし、と言いたかったが、ここにいるメンバーは皆ランスの事を知らない。だから 言っても判らないだろうと思って口には出さなかった。ランスといえば、ユーリはこうも思っていた。
幾らランスでも、この娘だけは抱こうとはしないだろうと。……命がかかる可能性があるから。
そして、そんな時だ。
「あああっっ!! やーーっと、見つけた!!」
山田千鶴子こちらへとやってきていた。
どうやら、先ほどの白色破壊光線の衝撃で、位置を大体つかんだようだ。
「おや? おお、千鶴子様ー!」
「千鶴子様ーじゃないわよ! なんでこんな所に来たの!」
「それはですね~。ここに かの伝説の魔法使いの杖! 《クリスタルロッド》があると言う情報を聞きましてですね、これはアニス。千鶴子様の為にと探しにきたのですよ!」
「それ! ガセネタ!! その情報主に聞いて問い詰めたけど、と言うか 情報主 自体胡散臭いヤツで有名な男じゃない! そもそも、その話を取り扱うあの連中もそうだけど、あんたもあんたよ……一応見つけたけどコレよ!」
「えええっ!!」
最後には叫びすぎてクラクラと眩暈がしたのか、たたらを踏んでいた。
その千鶴子がアニスに差し出したのは《魔法のアイス棒》である。それなりに品物揃えが良い武器屋であれば、置いてあるだろう。
「しょぼーーーん……」
アニスは、再び 杖と一緒に落ち込んでいた。
「……あれ? アニス、そちらの方は?」
「しょぼぼーーん………っと、おお! そうでした、紹介しますよ!」
落ち込んでいたのに、あっという間に立ち直っているアニス。やはり ハートが強いのか弱いのかわからない。
「(お兄ちゃん……なんだかあの人のお服……)」
「(言うな、人のセンスだって十人十色だ。……でも、ヒトミが言いたい事も確かに判る。でも、言わぬが花だ)」
「(うん……)」
ヒソヒソ話をしていた2人。どうやら、千鶴子は その内容には気づいていないようだった。何故なら、アニスの言葉に集中していたから。
「アニスの運命の人です!!」
「………へ? って、なななっ!!」
千鶴子は目を丸めていた。
確かにその話は何度も聞いていた。そして、いつしかゼスへと来てもらえないか、とも思っていた人だ。
確か、名を《ユーリ・ローランド》
しきりにその名前を出すアニスを見て、その名前を出している間は大人しく?しているアニスを見て、彼女をコントロールできるかもしれないと、強く思った人だ。
「そ、それは、本当なの!? なら、紹介しなさい、今しなさい、直ぐしなさい!」
「慌てないでくださいよー。千鶴子様っ 今紹介しますです!」
アニスは、本当に良い笑顔でそう言っていた。先ほどまでの、失態でしていた顔は一体どこに行ったのだろうか? でも、とりあえず。
「だから、変な風に言うなっての!」
ユーリは、アニスの頭を、何処からか取り出したハリセンで、ぽかっ! と叩いた。アニスは頭を抑えて涙目になる。
「あぅ~、ユーリ様ぁ……、何度も何度も叩かないで下さいよ~ アニスの頭がアホになるじゃないですか~」
「1周回って丁度良いかも知れんぞ!? 兎に角、アニスは口にチャックだ! 全部オレから説明する」
「判りました。ユーリさま……、じゃなくユーリさん!」
「………」
そのやり取りを見ていた千鶴子。
どうやら、《運命の~》やら、《恋人~》やらは、なさそうだが 相当アニスが信頼をしているのはわかった。 そもそも、アニスが様をつけて呼ぶ人など滅多にいないのだから。
「あー、はじめまして。オレは、自由都市アイスの町にあるキースギルド所属のユーリ・ローランドと申します」
「こ、これはご丁寧にどうも。私はゼス王国四天王の山田千鶴子と言います」
千鶴子はユーリのフルネームを聞いて確信したようだった。
嬉しくて仕方が無いが、とりあえず必至に表情に出さず堪えて、互いに挨拶をはじめた後で本題に移る。
「彼女とは、以前にゼスで仕事をしていた時に知り合いました。なにやら、突拍子も無い事をいっていたと思いますが、基本的には スルーをしてもらえれば幸いかと」
「あ~……その点は了解よ。そもそも、このコが言う事だし」
「あぅーひどいですよ」
兎に角友好的に話しが進めれそうだ。
この後もアニスの話はスルーしつつ、色々と話しをした。ゼスの四天王と話す事など滅多にない機会だ。千鶴子もヒトミについては驚いていたようだが、説明するとすんなりと信じてくれて、何も危害を加えない事を約束してくれた。
ユーリは、ここから……帰ったら、ヒトミに変装をさそうと心に決めた瞬間だった。
「それより、オレは四天王が2人もいたことに驚いた。一人は着ていると入口で聞いたんだが」
「え?」
「………っっ!!」
ユーリの言葉に驚く千鶴子。何故か、アニスは黙っていた。驚いた顔をしながら。
「2人と言うのは誰の事ですか?」
「ん? 千鶴子さんと、アニスの事ですが」
「あ。あわわ……」
「……アニスは違いますよ。このコは私の弟子と言う名目で管理兼監視を私がしてます。間違いなく違う事を宣言しておきます」
「あ、そうでしたか。………アニス、なんで、嘘なんかつくんだよ?」
「い、いやー、ちょっとアニス、背伸びをしたいお歳頃だったわけなのですよ。ユーリ様、千鶴子様と同格に! くらいと思いまして……つい……」
「お歳頃って言う歳なの、アニスは! ……もう、私の方からも謝罪をしておきましょう。この件で無用な混乱を招いていたかもしれませんので」
「……いや、構いません」
そうは言ったユーリだったが、次には額に指を当てて唸った。
あの時、四天王が来ていると言う言葉を聞いてアニスじゃないか?と思った。そして、それが違うと判るとさっさと候補から削除したのだ。もし……個人名で聞いていれば回避出来たかもしれないのだ。
もう、……過ぎた話だが。
「あはは!」
ヒトミはただただ笑っていた賑やかになって、楽しくなったようだ。
「それで、ユーリさんはどうして此処に?」
「ああ、依頼でこの場所に様があったんだ。落し物を探してくれって言う依頼がな。カセットテープを落としたらしいんだ。こんな所で」
「落し物……ですか、考えにくいですね。ここは3層、一般人が立ち入れる場所ではないのですが」
「……その疑問はオレの頭の中でも何度も再生しててね。どうやら、魔物か何かに取られたか、他の冒険者が持って言ったかどっちが濃厚だと思うが」
「ふむ? むむ、落し物落し物……かせっと、カセット……」
アニスは2人の会話を聞いて考え込んでいた。ユーリの言葉を聞いて気になったようだ。
「おおっ! 喜んで下さい! ユーリ様!」
「だから、様はヤメロっての」
「そ、そうでした、ユーリさん!アニス、その落し物、持っています!」
「……何?」
アニスがブンブンと手を振りながらそう答えた。此処に来て漸く報われると思われる情報だった。
「それは本当か?」
「はいです! 確か、1層で見かけましたね。小包に入ってましたので、拝借いたしました! ユーリさんの物だったとはアニスも嬉しいです」
「オレの物ではないが、とりあえず良かったな」
「どうです? アニス、役に立ったでしょう!」
……正直な話し、アニスが持っていかなければ早い段階で依頼終了だったのだが……と頭の中で激しく再生されたが、とりあえず依頼を完遂できた事が良かった為、ほっとなでおろした。
「これです! ユーリさん!」
「ああ、ありが……と?」
アニスに差し出されたのは、ブスブスブス~っと丸焦げになっている≪何か≫。とてもテープだとは思えない。いや……辛うじて原型は留めているようだ。
確認すると……、間違いなくテープだった。
「あ……あれれ?? 黒焦げです?? ああ、なるほどっ! さっきの白色破壊光線の余波で燃えてしまったのですね! 謎が解けました」
「解けましたじゃないわ!!」
「わーーん、ごめんなさーい! ユーリさーーんっ」
アニスがしょぼぼ~~んとさせながら必至に頭を下げていた。だが、壊れてしまったものは仕方が無い。包み隠さず伝える事にしよう。とりあえずそう言う事で依頼は終了だ。
「お兄ちゃん、お疲れ様ーっ」
「そうだな。……折角最後に運が戻ってきたか? と思えたが、そうじゃなかったようだ、今日は良く判らん運勢だったな」
ユーリは頭を掻いていた。
「ほら、アニスも行くわよ? もう、いろんな人に迷惑掛けてるんだから、自重しなさい」
「ご、ごめんなさいー」
そして、とりあえずもう用は済んだ。ユーリは勿論、千鶴子もだ。だからここから出ようとしたのだが、その前にユーリが一言。
「アニス、一応もう一度言っておくが、魔法は禁止だからな。敵が出たらオレがやるから、何もしない事。それを、誓えるか?」
「あ、はい! 勿論です! ユーリさんっ! アニス、良い子にしてますっ!!」
「………」
このユーリとアニスのやり取りを見てて……、千鶴子は激しく思った。会う前から、思っていた事だが、その思いが果てしなく強くなったのだ。
それは、『なんとしてでも、我が国へと来てもらおう』と言う事、それを心に決めていた。
そして、早速行動に移る千鶴子。
「つきましてはユーリさん、少しお話がしたいのですが、よろしいですか?」
「ん? まぁ構わないが、此処を出たらにしないか? あと少しで最奥だ。そこに脱出装置もあるだろう」
「はい。その手筈で良いです。宜しくお願いします」
千鶴子は頭を下げてそう言っていた。
とりあえず、アポは取ったも同然だ。後は如何に好条件でこちらへと来てもらうか……だ、今の状況では、頭痛の種を除けるのが一番好ましいのだから。
~マルグリッド迷宮3層 えひめエリア~
一向は問題なく先へと進めていた。
因みに、これは、アニスが魔法を使用しないからこの上なく安全で且つ安心に先へと進められるのだ。アニスまで、戦いに参加させてしまったら、どうなってしまうか判ったものじゃないから。
「本当にユーリさんはアニスの扱いになれてるんですね」
「まぁ……こうなる前に酷い目にあってるがな」
「心中察しますよ」
互いに苦笑いをする2人。気がかなり合っているようだ。同じ気苦労を知っているからだろう。
アニスはと言うと、ヒトミと一緒に楽しそうに話をしていた。
「それで、それでーっ!」
「アニスがですねー、廃棄迷宮と言う場所で……」
何やら初めてあった時の事を話している様なのだ。ヒトミもフレンドリーに話す事が出来ている。アニスとはいろいろと、話が合う様だ。……同じ人物が大好きだから、と言う理由が大きいだろう。
ユーリは余計な事を言っていないかを聞き耳立てて聞いているとき。
「……アニスが運命の人とゼスでも頻繁に言っているのですが、何かあったのですか?」
「……考えてる様な事は無い。ただ、廃棄迷宮で出会ったと言う事だけだ。何故だか判らないが、そこはゴブリンがいて……む?」
ユーリは、話を途中で止め、……周りを見渡した。突然、エリアの空気が変わったのだ。
「こ、これは……」
「アニス、ぴりぴりするです……」
千鶴子もアニスも気がついたようだ。空気がぴりっと変わったこの感じは前にも経験した事がある。
ユーリはとりあえず、ハニーが傍にいた為、試しに剣で斬りつけた。
「あいやーー……出番なのに一瞬で……ひどーい……」
はぐれハニーは、訳の判らないセリフと共に、割れて絶命していた。
「ふむ。どうやら、剣は、物理攻撃は使えるな、どうだ?」
「そうですね……、なら魔法です! 白色破壊k「止め止めっっ!!」もがっ!!!」
ユーリはとりあえず、アニスの口を塞ぎ試しうちを阻止した。多分、間違いないと思われるが、万が一にでも、使えでもしたら大変だからだ。
基本的に、魔法と言うのは、その魔法自体の強さもあるが、殆どが使用者本人の魔法力に比例する。Lv3の魔法力を遺憾無く発揮されでもしたら、最悪だ。
「……ご想像の通り、魔法が使えなくなっています。まさか、ここにゴブリンがいたとは聞いてませんでしたね」
千鶴子は、手を開けては締めて感触を確かめながらそう言っていた。このエリア全体で魔法が使えないようだ。つまり、魔法使いのみだった場合、この層に来たら最奥を守っている敵を倒す事が出来ず、脱出もできない。
「いやーユーリさんがいてくれて本当に良かったです。やはり、アニスの赤い糸で結ばれたお人です!」
「とりあえず、アニスは魔法禁止だって言っただろう。試しうちも駄目だ」
「……何も言ってくれないのは否定されるより、アニス悲しいですよ~」
アニスはわざとらしく泣いていた。
「お兄ちゃん、あそこ……」
ヒトミはアニスの頭を撫でてあげながら奥を指差した。そこには、アイツの姿があったのだ。
「ゴブリンだな。……トロールじゃなくて良かった。もし、トロールだったら、死活問題だった」
「トロールならば、アニスの出番ですねー!」
「禁止だ!」
「あう……」
「ここは申し訳有りませんが、お願いしても良いでしょうか?」
千鶴子は、アニスの頭を抑えながらユーリにそう言っていた。
「ええ。大丈夫です。寧ろゴブリンで助かりましたよ。アニスの魔法を防いでくれますから」
「その辺りは私も同感です。ふふ、気が合いそうですね、ユーリさん」
「ああーーずるいですよ! 千鶴子様! ユーリさんは私の運命の人なのですから!」
「取られなくなかったら、普段からもっとしっかりとする事ね」
「……人をダシにして話を進めるのは止めてくれ」
「あははっ、お兄ちゃんモテモテだね~」
2人に詰め寄られるユーリを見て笑顔になるヒトミ。ユーリ自体は苦笑いをしているようだけど。
「さて……さっさとゴブリンを倒しますか」
ユーリは、とりあえず話にはこれ以上加わらず、剣の柄を握り締めた。おちゃらけモードは終了し臨戦態勢に入ったのだ。こちらには魔法使いが3人中2人。防御の魔法も使えないから、体力が少なく後衛向きである魔法使いにとって、ハニーとゴブリンは天敵と言っていいから。
「宜しく頼みます」
「ユーリさん! やっちゃって下さい!!」
「お兄ちゃん、がんばってっ!!」
3人に応援された以上はがんばらないといけないだろう。本当に、あまり無い状況だ。ここ最近は、多い気がするが。
「さあ、とっとと終わらすか」
「みぃーこみこみこみこ!!」
ゴブリンは、奇怪な動きをしながらつっこんで来た。だが、その本領は魔法を封じる事にある為、正直自分には大した効果は無い。
「動きが気持ち悪いくらいと言う意味では効果はあるか……」
「ぽわぁわゎわわわ……」
ユーリは確実にダメージを与えていった。その姿を見ていた千鶴子は。
「……かなりの使い手ね。動きの1つ1つに、まるで無駄が無い。……それに 本気だとも思えないわ」
「それはとーぜんですよ! 千鶴子様っ なにせ、私の運命の人ですからっ!」
アニスは、胸を張ってそう答えていた。
そして、ヒトミは笑顔で見ていたが、時折顔を歪めていた。
「あはは、それにしてもやっぱりゴブリンって変な動きするから気持ち悪い……」
一応、同じモンスター同士でもある、ヒトミにも言われるんだから相当なのだろう。
「あの動きが周囲の魔法の流れを完全に止めてるんですよ」
「はいっ! 本当に、はた迷惑な存在ですよね!」
「……アニスが言うと違和感が滅茶苦茶あるけど、魔法使いとしてはそうよね」
千鶴子は眉間を押さえながらそう言っていた。
アニスの迷惑な魔法を封じると言う意味では、最適な存在だが、アニスだけでなく、自分達の魔法も封じられるのだから。
「煉獄・乱閃」
「ぽおーーーわーーー!!」
そうこう言ってる間に、ユーリの無数の攻撃がゴブリンの全身を満遍なく襲い……、ゴブリンを絶命させた。あの動きが止まった事で周囲の魔法の流れが通常に戻る。
「おおっ! さすがはユーリさん! 魔法の流れが戻りましたねー。これは確かn「却下」しょぼーーん……」
まだ、言い切っていない段階だったが、ユーリがすかさずそう言っていたので、アニスは何も出来ないままになっていた。……何もしない、それが一番なのは間違いない。
「本当に頼りになりますね。ユーリさん。……いろんな意味で」
「オレも、心中察している。こいつの監視人なのなら」
ユーリも千鶴子も苦笑いを互いにしていた。
そして、スタンプも押し、脱出装置へと向かう。
「それにしても、アニスは、歳下好みなのね。貴女のタイプは漫画基準だったから、これまで判らなかったけど」
千鶴子がそう言ったと同時に空気が張り詰めた。
そして、何処からか、ピシッ!! と、何かにヒビが入ったかのような音が聞こえた気もする。
「………」
「ああっ! 駄目です千鶴子様っ!!」
「え??」
千鶴子は、その雰囲気は読み取れたものの、何故こんな風になったのかわからないし、何が駄目なのかもわからない。
「お兄ちゃん??」
「……いや、何でもナイヨ」
なんでもなく見えないヒトミだった。彼女も、ユーリの歳はわからないし、何より自分からみれば十分歳上だから何も思わなかったようだ。
「ユーリ様のお顔は神秘なのです。運命の人ならば当然なので!」
「コラ!! 神秘言うな! そんな神秘いらんわ!」
「え?? 一体どうしたって言うの」
「それに、千鶴子様のおっぱいだって、控えめで可愛らしいです。私は可愛らしいものに心を打たれるのです」
「はぁぁ!? 何を突然!! って ちょっと自分がおっきいからってぇ!!」
「私は可愛らしいのが好きなんです!」
「「可愛らしい言うな!!」」
「褒めてるのに……」
「褒めてないわ!!」
「だから、一体なんの事なのっ!!」
「???」
言い争っている意味がいまいち判らない千鶴子とヒトミだった。その後……ユーリの実年齢を聞いて、再び驚愕するのだった。
何故ならユーリは、千鶴子自身より2つも歳上なのだから。
~マルグリッド迷宮・入口~
一行は、迷宮の入口まで装置を使って戻ってきた。太陽の光がまぶしく、久しいと感じるのは仕方ないだろう。事実、結構長い時間潜っていたのだから。
「ふぅ……、釈然としない終わり方だが仕方ないか。依頼品がこんなだし」
ユーリは袋の中のカセットテープだった物を見つつ、そう呟いていた。何はともあれ終了なのは終了。思い出の品がこんな風になってたら、怒るだろうと思えるが、その点は自業自得だと言う事で納得してもらうしかない。
「いやー お天道様がまぶしいですね~ユーリ様っ!」
「様はヤメロ」
「あぅ~、わかりました。ユーリさん」
「ふぅっ……」
「あははっ 久しぶりにお外に出たなー」
じゃれているアニスと簡単に対応するユーリ、そして 終わった事にほっとしてる千鶴子に外の太陽を見てはしゃぐヒトミだった。兎にも角にも、これで終了!誰がなんと言おうと。
「さて……と、はい。後は、世話役任せました。取り扱いには十分に注意してください。愚問かと思われますが」
ユーリはアニスを両手で抱えると、千鶴子に手渡した。まるで、ぬいぐるみを渡すかのように!……凶悪なぬいぐるみもいたものだと思える。
「はいはい。っと言いたい所ですが、ユーリさん、先ほど話があると言った件で少しよろしいでしょうか?」
「ああ、そういえば言ってたな。構わないよ」
ユーリが頷いたと同時にだ。千鶴子がかなりの剣幕で迫ってきた。……ユーリが、たじろいでしまったのも無理はないだろう。
「単刀直入に申し上げます。……お願いします! ゼスへと着ていただけませんか!! 貴方が望むもの、何でも何としても叶えてさしあげますのでっ!! ええ、何でも言って下さい! 何でもがんばってやります! 流石に、ゼスの国王! は厳しいですが。(マジック様とご婚約されれば……。うーん、難しそうですね)その側近なら幾らでも! っと言うか、望むどんな地位にだって捻じ込みますので!」
ユーリは、いつしか、マリスにも引き抜きを受けたが、それ以上の情熱だった。
絶対に、アニスの絡みだと言う事は判る。ゼスきってのトラブルメーカーなのだから。千鶴子の言う、『がんばってやる』と言うのは、一体何をやるのだろうか……。
「あ、あー 実に熱心な勧誘だが、悪いが辞退をさせてもらえないか?」
一先ず丁重にお断りをしようとしたら、更に懇願される。
「そこを何卒!! 何卒お願いします!! 大変なのは十分に身に染みてます!! お願いしますっっ!!」
今度は、拝むように頼まれた。……対処に困ると言うものだ。罪悪感も出てくるのだから。
「あ、あの~、一体何の話をしてるのでしょうか? 千鶴子様がそこまでなさるなんて」
アニスは、話の全容を聞いていなかったようだ。ヒトミと一緒になってはしゃいでいたから……。
「アニスは黙ってなさい!!」
「ご、ごめんなさい~~」
そして、千鶴子の一喝で黙ってしまうアニスだった。
「……千鶴子さん。何も、断る理由、それはアニスと言うわけじゃないぞ?」
「はい……。それはもう、身に染みて……って、ええ??」
千鶴子は驚きの声を上げた。
てっきり、断る最大の要因はアニス絡みだと思っていたからだ
「オレが、今のゼスに行ったら、正直、殺人鬼になる可能性が高い。……ゼスに行った事は何度かあるが、それはもう、清々しい程に、普通に……、膿共が沢山いたからな」
「………」
そう言って、背を向けた。
その言葉に千鶴子は何も言えない。若くしてゼスを任されているとも言っていい立場にある自分だ、そう言われてしまえば、普通は言い返さなければならないが、何もいえないのだ。
「成程、判っているみたいだな。悪いが此処はゼスじゃなくヘルマン。自重せず言いたい事ははっきりと言わせてもらったよ」
「……ええ、私も身に染みてますので。頭が痛い件です」
ゼスと言う国は、発達した魔法技術の恩恵で何不自由ない住みよい国と言う定評がある。
マジックアイテムの生産・輸出の産業で更に経済的にも豊かであり、極めて生活のレベルも高い。……が、その恩恵は一部の魔法を使える者だけなのだ。魔法を使えない者達の生活は悲惨そのものと言ってよく、低価格で取引をされ、売買をされる。要らなくなったら処分を厭わない。
何度かゼスに言った時、差別を受け虐げられている者達を助ける為に、何度剣を振るったか判らないのだ。
「魔法使い至上主義の国。大規模な改革でも起こらない限り相容れない。……ギルドの依頼で向かうのなら兎も角、所属するとなるとぶっちゃけ、一番行きたくない国だ。戦国時代の真っ只中のJapanよりもな」
「それは……、返す言葉もございません。ユーリさん」
千鶴子は表情を険しくさせてそう言っていた。
先ほどまでの威勢はもう何処にもなく、国の最大の汚点を言われてしまったのだ。返す言葉もないのは仕方が無いだろう。
「悪い。……貴女に言うような事ではなかった。憂いている者の1人なんだから」
「そう言っていただけるだけでも幸いです。今は無理でもいつかは、変える。私達の代で必ず」
「……手伝える事が合ったら言ってくれ。それに関しては惜しまないつもりだ。だが、ギルドを介してくれよ」
「ありがとうございます」
千鶴子は頭を下げていた。
そんな事をする理由がまるでわかっていないアニスはただただ見ている事しか出来なかった。聞いていないんだから。
「なら話は終わりだな。はぁ……それより無事に帰れて良かったよ」
「あら? ユーリさんは実に軽くこなしているように見えましたが?」
「こんなに近くに、危険爆弾があったんだぞ? ……気が休まらないも同然だ。常に緊張をしてた」
「ああ……それは納得です」
アニスを見ながらユーリはそう答えた。
アニスはと言うと、難しそうな話しをしていたせいか、今はヒトミと一緒に遊んでいた。魔法を使わないか、と恐ろしかったが禁止!を連呼した事が効果的だったのかそんな気配は無い。
そして、アニス達の方を見たからこそ、2人の会話が訊く事が出来たのだ。
「それで、お兄ちゃんが初めての人って言うのは本当なんですかっ?」
「はい、それは本当ですよー」
「なな!!」
「ぶーっ!!」
また、例の話をしている2人を見て思わず吹き出したユーリと驚愕する
「ななな、あ、アニスは処女じゃなかったというの!!」
「そうですよー! 私は大人の仲間ですっ!」
「がーんがーん……、わた、わたしより早いなんて……」
あまりの事に放心しかける千鶴子だった。だが、勿論だけど、ユーリは納得してない。
「こらぁぁ!! アニス!! だから、てきとーな事を言うな!」
「えー! ほんとの事ですー!!」
アニスは真剣な表情を崩さなかった。そして、ユーリは思い出す。この話をする時の アニスの顔は、いつになく、真剣だった事を。それは、何処か抜けている様な顔じゃない。
そして、何処か赤く頬を染めていた。そんな姿を見たら、もう嘘だと思えなくなってしまう。
「アニス。……オレには、全く身に覚えが無いんだぞ? なんでだ?」
「酷いですよー……って、言いたいのですが」
アニスは、最初の真剣味は、影を潜め、……段々表情が強張っていく。
例えるならば、何か悪さをして叱られる前の子供の表情だろう。
「アニス、別の魔法を色々と試したくなりまして~。それで、ユーリさんにも見ていただこうとしたじゃないですか」
「ん……、ああ、確かそんな事あったな。あの迷宮を出て、軽く飯を食べに言った時か?」
「はいです。その時に、間違いなく、ユーリさんに、攻撃付与の魔法を使ったのですが……、何を間違えたのか、《恋人ナール》と言う魔法を発動させてしまいまして。アニスが覚えている魔法じゃないんですが」
「………」
アニスの言葉に固まってしまうユーリ。
つまり、真相はこうだ。
迷宮での共闘やらなんやらで大分懐かれてしまっていた状況だった事は間違いない。そんな時にアニスの無茶苦茶な攻撃魔法は知っていたから、補助魔法であれば問題ないだろうと覚える練習を付き合っていたのはうろ覚えだが確かに覚えていた。そこで、なんでそんなのが発動したのかわからないがまったく関係無い魔法が発動したようだ。あろう事か自分に向かって。
「アニス、それで一日を楽しく過ごしたですよー! それは、勿論 夜の営みも……きゃっ」
「きゃっ……! じゃないわ!! 何だそれ! 聞いてないぞ!」
「アニスだけの秘密だったんです~! ああ、もう秘密じゃなくなってます!!」
「そりゃそうだろうな! 今正に暴露したんだからな!」
ぎゃーす! と怒っているユーリと、しょぼくれているアニス。
これで合点がいった。
その類の魔法は本人外の人格が宿ると言っていい魔法の為記憶もまるで残らないのだ。故にユーリが覚えている筈も無い。
すっぽりと抜け落ちていると言う事だったのだ。
「……それじゃ、強姦みたいなもんじゃない。魔法で狂わせるなんて流石はアニスといえばそうだけど……こんな事じゃないかって思ってたわ」
動揺しまくっていた千鶴子はいつの間にか平静に戻れていたようだ。だが、そんな風にいっても説得力はまるで無いのである。
「あ、はは……人間の恋って大変。なのかなぁ……?」
ヒトミはそんな彼女達を見て苦笑いをしていた。
そして……そのアニスの告白は、某町・国にいる彼女達に再び悪寒を与える事になったのだった。
恐るべしゼスが誇る 最強、最凶、最狂のへっぽこ魔法使いアニス・沢渡 ここに在り
〜人物紹介〜
□ 山田千鶴子
Lv35/50
技能 魔法Lv1 情報魔法Lv2 経営Lv1
ゼスの四天王の一角であり、四天王の筆頭、国王が不在気味なため、若くして国政をも司る事もしばしば。そして、ゼス最強にして、最狂の魔法使いアニスのお守役でもある女性。
ここまで説明すれば真面目であり相当な苦労人だと言う事がわかるが、文面で説明文を書けば800字原稿用紙10以上書いても収まりきらない程苦労している苦労人である。
尚、顔は美人なのだが、服装のセンスは全くと言っていい程無く、まだ処女であり、その事は気にしている。
□ アニス・沢渡
Lv50/88
技能 魔法Lv3
ゼスが誇る最強にして、最凶、最狂のへっぽこ魔法使い。「歩く天災」とも言われる不名誉極まりないが、全部自業自得である。 そしてこの世界で歴史上においても数少ない魔法Lv3と言う伝説クラスの破格の素質と魔力を持つ魔法使いなのだが……それを補って余りあるどんくささと制御の甘さで敵味方区別無く全滅させてしまう事が多い為 天災の他、「味方殺しのアニス」とも呼ばれている。
ユーリとはとある事で面識を持ち、その強さと容姿を見て一目惚れをした。(漫画に出ていたキャラに似ていたから)
そして、いつの間にか無理矢理?と言うわけではないが、ユーリのの意思とは無関係に行為をしており、それが益々懐く結果となってしまった。
ユーリにトラウマを与えた程印象に残っている数少ない人物である。
□ 見当かなみ(2.5)
今日も忠臣目指して頑張ってます。
一途な女忍者。
突然襲ってきた悪寒は過去最大級のものであり、手元が覚束無い程。危うく親友に大怪我をさせてしまう所だった。
□ 魔想志津香 (2.5)
カスタムの町で復興を手伝っている嘗ての四魔女のリーダーであり、ユーリの幼馴染。
手伝っていたのだが、何故か手元が狂ってしまって、こちらは危うく大火事にしそうになってしまう所だった。
□ トマト・ピューレ(2.5)
カスタムの町でアイテム屋を営んでいる少女。
こそっと、ペペに撮ってもらった写真をネガ事売ってもらい飾っていたが、割れてしまって意気消沈気味である。
□ ミリ・ヨークス(2.5)
元四魔女の1人のミル・ヨークスの姉であり、ランスをも凌ぐ性豪の少女。
ユーリ事でロゼとは気があったようで、以前よりも絡む良い酒飲み仲間となっている模様。
□ ロゼ・カド(2.5)
カスタムとAL教団が誇る?こちらも最凶淫乱シスター。
相変わらず情報センサー?の類であろう面白センサーとやらは、町でも絶好調に発動しており、様々な人をからかっては遊んでいる。遊び相手はカスタムでは志津香とランだったりする。
□ 芳川真知子
カスタムの情報屋を営んでいる少女であり、ユーリを想っている事を隠さない数少ない少女。
色恋沙汰の相談役も最近ではしようかと思っているとか。
占いの腕も精度ばっちりであり、ロゼのセンサーと共に重宝している。
□ 色条優希(2.5)
リーザスの城下町の情報屋を営んでいる少女。
今回もカスタムの町へとやってきたが、ユーリがいなかった事を残念に想っている。
真知子の占いは非常に当たるから信頼しているのだが……知りたくもあり知りたくも無い事が多々ある為、占ってもらうのにはかなり躊躇している。
〜モンスター紹介〜
□ アイロンヘッド
歪んだ形の大きな頭部が丸ごと口になっている魚ととりの中間の様な生物。
大きな口での噛み付き攻撃の威力は中々に凶悪。
□ まだ角くじら
角が生えかけの角くじらで所謂 子供・下位種。
雷の魔法を得意としているが、威力はさほど無い。
〜技能紹介〜
□ 運気付与
幸福きゃんきゃんの技能のひとつで運を上昇させて幸運を齎す。他者に付けることは出来るが、自分自身につける事は出来ない。後、運が異常に無い人にも効果は期待できない。
~魔法紹介~
□ 恋人ナール
その名前の通り、使った相手が恋人になってしまう魔法。魔法を実体化させ、魔法薬として精製することも可能。薬の場合は、精製する、濃縮させる時間に比例して、その効果時間が増える。……が、最長で1週間。
ユーリのトラウマとなってしまう魔法である。
〜その他〜
□ 宝箱
鍵が掛かっていない宝箱については、ノーリスクで開く事が出来るが、施錠されている物は失敗すれば何故か爆発する仕様となっている。
当たれば驚くし、そこそこダメージも負ってしまうから開ける時は注意が必要である。
……その爆発のせいで、トラウマを負ってしまった人もいるとか。
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