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困ったマニア

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第三章

「それで今回はね」
「そのシュミレーションで、ですか」
「勝負するんですね」
「戦車と戦車でね、要するにね」
 ここでこうも言った部長だった。
「アニメであったでしょ、ガールズアンドパンツァーっていう」
「ああ、女の子達が戦車に乗って戦う」
「そうして部活をする、ですね」
「ああした感じですか」
「要するに」
「そう、そうした勝負をするの」
 部長は部員達にアニメも出して説明した。
「独ソ戦をやるのよ」
「では今回も負けないわよ」
「今度は勝つわよ」 
 沙織とすみれはそれぞれ不敵な笑みを浮かべてライバルに告げた。
「これまで五十戦して二十五勝二十五敗」
「引き分けはカウントしないでね」
 つまり五十戦以上行っているのだ、そのシュミレーションを。
「今度勝って勝ち越すわよ」
「それは私の台詞よ」
「じゃあ明日にでもね」
「この学校でしましょう」
 場所の話もした、そしてだった。
 沙織とすみれは勝負の約束をした、その次の日の放課後。
 二人は学校の校庭に対峙した、それぞれ前に大きなダンボール箱を置いている。そのうえで校庭の中で向かい合っていた。
 そしてだ、そこでだった。
 沙織からだ、こう言った。
「じゃあはじめましょう」
「今からね」 
 すみれも沙織のその言葉に応える。
「そうしましょうね」
「じゃあお互いプラモデル出しましょう」
 二人共言葉のやり取りの次でだった、それぞれの前のダンボール箱からだ。
 戦車のプラモを出した、ドイツ軍のものとソ連軍のものを。
 その用意を見てだ、立会い役の部員達が話した。
「校庭でやるのね」
「広い場所で」
「ディオラマの上で出来る数じゃないから」
「だからなのね」
「ううん、ソ連軍だから」
 すみれの出しているTー34を主軸としたそれを見てだ、一人が言った、
「ここはね」
「雪原ね」
「ロシアの大雪原」
「東部戦線みたいに」
「それじゃないことがなのね」
「今一つね」
 そこがというのだ。
「残念だけれど」
「いいんじゃない?春か夏ってことで」
「夏の東部戦線での戦い」
「クルスクとか」
「あの時の戦いってことで」
 今の緑の平原、校庭でのそれでというのだ。
「確かに東部戦線は冬が凄かったけれど」
「それでも冬だけじゃなかったから」
 何年越しで戦っていたのだ、それこそ春も夏も秋も。
「いいんじゃない?」
「それもそうね」
「言われてみたら」
「今ここでしてもね」
「いいわね」
 二人の用意を見つつの話だった、そしてだった。
 二人はそれぞれの戦車を置き終えた、そのうえで。
 定規を使って戦車達を動かしだした、どちらも見事に列を整えていてそれを動かしている。そこから。
 攻撃距離に入りだ、お互いに。
 攻撃を告げてだ、サイコロを振って。
「中破ね」
「大破ね」
 ゲームを進めていく、そして。
 制限時間になった時にお互いの残っている戦車の数とそれぞれの損害状況を調べた。そのうえでだった。
 審判役の部長は二人にだ、強い声で告げた。 
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