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魔法少女リリカルなのは 平凡な日常を望む転生者

作者:blueocean
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第15話 アリサ・バニングスの憂鬱

次の日の学校………

「うっす、アリサ」

私は胸が飛び上がるほど嬉しかった。
いつもはバニングスとかバーニングしか言わなかったアイツがやっとわたしの名前を呼んでくれるようになった。

「き、昨日は災難だったわね」

「まあな。まぁいつものことだし、慣れたけどな」

苦笑いしながら言うアイツ。
………悔しいけど、少しキュンとしてしまった。

「そう言えばアリサ、今日は一人か?」

「な、何でよ!一人でいちゃ悪い!?」

つい怒り口調で返してしまう。
何で怒り口調になっちゃうのかな………

「いや、いつもすずかとセットじゃないか。それにちょっとすずかに用があるんでな」

何よ、私じゃなくてすずかに用なの………

「………すずかは珍しく寝坊したから遅れるって言ってたわ」

「あちゃあ、やっぱそうなったか………」

「何か理由知ってるの?」

「いやな、昨日貸したゲームが原因だと思うんだよ………」

「ゲーム?」

確かにすずかはやる方だけど、寝坊するほどやり込むかしら………

「………おはよう」

そんな時、すずかが教室にやって来た。
とても眠そうな声で挨拶をする。

「やっと来た。おはよう、す………」

「零治君!!」

私の挨拶を遮り、いきなりアイツの所へ行くすずか。
何かいつもよりテンションがおかしいような………

「名作だよ!あれ。テイルズ・ストーリー!!気づいたら朝になっちゃってたよ!!」

本当に徹夜するまでゲームしてたんだ………
心なしか異常なテンションの高さにアイツも若干引いてるじゃない。

「そ、そうか。気に入ってくれたなら何よりだ」

「うん、でね………」

そのあと、すずかはアイツとゲームの話で盛り上がっていた。
完全に私、空気だな………

何か悔しい………





昼休み………

「アリサちゃん」

はやてに声をかけられ私は我に返る。
今は屋上で昼食中。

ちなみに今日はなのはとフェイトは仕事だ。

「すずかちゃん、どないしたん?箸持ったまま眠ってるで」

私が慌てて見ると、コックリコックリ頭を軽く揺らしながら夢の世界に行っているすずかがいた。

「実は………」

私は朝の出来事をはやてに説明した………






「成る程な、確かにあれは名作や。私も借りてプレイしたし。休みの時はヴィータと協力プレイもしてたで」

へえ、協力プレイも出来るんだ………

「あれを初めてやったとき、雷が落ちた気がしたんや。あんなゲームあるやなんて知らんかった!!」

あ、墓穴掘ったかも………

「そうだよね!!はやてちゃんもそう思うんだ!!」

いつの間にか起きた、すずかがはやてに便乗する。
そのあとは朝と同じように私は完全空気だった。

私も借りてみようかな………






「アリサ、ちょっといいか?」

放課後、アイツが私に声をかけてきた!!
いつもなら私が話しかけるのに!!

「な、何よ………」

それでも相変わらず、怒り口調になってしまった。

「そう怒るなよ。本当はすずかに頼もうと思ったんだけど速攻で帰っちゃったからノート貸してくれるやついないんだよ………悪い、ちょっと貸してくれ!!」

私はすずかの代わりか………
そう思うと無性に悔しくなってきた。

「フン、アンタが悪いんじゃない!これからは寝ないようにしなさい!!」

私はついいつも以上にキツい言葉をかけてしまう。

「………仕方がない、フェリアに頼むか」

そう言って私から離れていく。

「あ、ちょっと!!」

「フェリア!悪い、ちょっとノート見せてくれ!!」

アイツはフェリアに話しかけながらフェリアの席に行った。

「何で私はいつも………」

私は小さく呟いた。
自業自得だけど、私の気持ちを少しは感づいてほしい………







「はあ………」

家でため息をつく私。
考えていることはアイツのこと。

いつもアイツに対して怒り口調になってしまう。
そもそも初めて話した時もあまり印象が良くなかったな………







アイツと初めて話したのは去年の秋。
席替えでアイツの隣になった時だ。

アイツの印象はいつも寝ていて取っつきにくい奴。それくらいの印象だった。

「今日からよろしく」

「………ああ」

不機嫌そうに返事をするアイツ。
何が気にくわないんだか………

「不機嫌ね」

「ほっとけ」

そう言って寝てしまった。
………無愛想な奴。

その時は特に何事も起きなかったが、問題が起きたのはその二日後にあった文化祭の出し物を決めるときだった。

私は文化祭実行委員でみんなを指揮する立場だった。
今回、意見が出たのは喫茶店とお化け屋敷。

ちょうど半分に別れていた。
だけど私のクラスは33人。

半分に別れるなんて絶対あり得ない。

「誰か手を挙げていない人いない?」

私はみんなに聞いてみるが反応がない。

「アリサ。多分有栖君だと思う………」

すずかにそう言われてアイツを見る。
みんな、初めての文化祭でやる気に満ち溢れている中、いつも通り変わらず寝ている。

「有栖、起きなさい!!アンタはどっちにするの?」

私が揺すり、起こそうとするが起きない。

「有栖!!!」

大きい声で呼んでも反応がない。

「有栖!!!!」

「うるせぇよ!寝れねぇじゃねぇか!!」

何故か逆ギレされた私は当然言い返した。

「アンタが票を入れないからでしょうが!!寝るんなら帰って寝なさい!!」

そう言われたアイツは直ぐにカバンを取りだし、荷物を入れている。

「………何してんのよ」

「帰る準備。このままじゃ、オチオチ寝れないからな。あっ、喫茶店の方に票を入れておいてくれ」

淡々と私に言って、カバンを持ち、教室を出ていった。

「なんなのよアイツは………」

学園祭のやることは決まったが、アイツの態度が気に食わなかった。
だが1つ、アイツに興味を持った。

………何でアイツはいつも何事にも無関心でいるのだろう?
アイツは基本、寝ていてばっかでクラスの人とも滅多に話しかけないし、話そうともしない。私が見かけるのは時々すずかにノートを借りる時だけ。

話しかけられても無視するし、みんなアイツを避けている気がする。

何でなんだろう………






喫茶店と決まった文化祭の出し物。
だけどいざ準備となった時、事件が起こった。

「男子がボイコット!?」

「そうなの………」

男子の大半がお化け屋敷をやりたかったらしく、それでも渋々準備をしていたが、女子の偉そうな態度に腹を立て、お化け屋敷を選んだ男子がほとんどボイコットしてしまった。

「どうしよう………アリサちゃん」

「………取り敢えず私たちで出来るところまでやりましょう」

そう言って残っているみんなと共に作業に戻った。



「お願い、このままじゃ間に合いそうにないの!!協力してください」

授業が終わった後、みんなの前に立ち、頭を下げてお願いする私。
だけど男子には届かず、時間ばかり過ぎていってしまった。

「アリサちゃん………」

「何で聞いてくれないのよ………やっぱり私が悪かったのかな………?」

「そんなことない!アリサちゃんは精一杯やってるよ!!」

「………ありがとうすずか」

すずかが私の手を取り勇気をくれる。
………もう少し頑張ってみよう。







「………はぁ、仕方ないな」

そんな2人の教室を覗いていた一人の生徒がそう呟いたのだった。




放課後………

今クラスに残っているのは私とすずか。
時刻はすでに18時30分を回っており、他のみんなは帰ってしまった。

「………すずか、もういいよ。後は私がやるから。これ以上はどうしようもないよ」

「ううん、私もアリサちゃんが帰るまで帰らないよ………」

「すずか………」

「最後まで諦めずに頑張ろう!」

私って本当にいい友達を持ったな………



しばらくして………

「二人とも下校時刻はとっくに過ぎているんだ。そろそろ帰りなさい」

担任の先生に注意され、強制的に下校させられてしまった。

「アリサちゃん………」

「明日、朝早く行って準備するわ。すずかは………」

「私もやるよ。これ以上遠慮したら怒るからね!」

「………ありがとう、すずか」

でも、それでも間に合わないだろうな………
私はすずかに感謝しつつ、心の中では諦めていた。




翌日………

「どういうことよ!!これ!?」

朝早く、教室に来た、私とすずかは驚いた。
絶対に間に合わないと思っていた、教室の準備が終わっていたのだ。

しかも、装飾なども時間がなく諦めていた物もちゃんとしてあった。

「誰が準備を?」

すずかの問いに私は当然答えられない。
教室に入り、再度確認する。

「………完璧ね」

「本当に。でも誰が………」

ふと、すずかが教卓の上に置いてある紙に気付いた。

『これで文化祭の準備してないとか抜かすなよ!!俺は眠いから欠席する。男どもの説得は自分でやれバニングス。 有栖零治』

「アイツ………」

「有栖君………」

そんなことするなら最初っから来なさいよ。
かっこつけちゃって………

「すずか」

「うん、頑張ろうアリサちゃん」

その後、私はしつこく頭を下げ、無事男子を説得することができ、クラスを団結させることが出来た。






「………その頃からかな。アイツに構い始めたのは」

ふと、携帯を開き、画像を出す。
その画像にははやてと話している零治がそこに写っていた。

「頑張ってもう少し素直になろう。そしていつか………」

アリサは静かに決意を新たにしたのだった。






余談………

「お疲れさまでした」

「ああ、みんなありがとな」

時刻は朝の4時30分。 作業を終えた俺たちは帰路についていた。
横には星と眠そうな夜美。

俺の背中にはライが眠っている。

「本当に終わるかどうか分からなかったぞ」

欠伸をしながら夜美が言う。

「本当に悪かった。どうしてもほっとけなかったんだ………」

ライを落とさないように頭を下げる。

「まぁ私たちも楽しかったですし、その性格がレイの良い所ですから」

「そうだな」

星と夜美が顔を見合せ笑いあう。
………なんだか照れ臭いな。

「なんだ?照れているのか」

「まさか」

俺は平然を装い返事をした。

「それより今日は何処かに遊びにいかないか?」

「お、良いではないか」

俺の提案に真っ先に反応する夜美。
まあ星は渋るだろうな………

「でも、学校が………」

俺の予想通りにやっぱり躊躇する星。

「たまにはいいだろ。それに眠くて授業なんて受けられないだろ」

「そうですが………」

「分かった。だったら夜美とライと3人でいくよ。なっ?」

夜美に問いかける。
流石、分かってるな。

「そうだな、星は留守番ってことだな」

「そんな………」

冗談のつもりが本当に悲しそうな顔をする星。

「じょ、冗談だって。一回帰って少し寝たら行こうぜ」

「そうだな」

「………二人とも意地悪」

夜美の返事と星のすねた返事をもらいました。



その後、昼まで寝た俺たちは、午後から四人で遊びにいくのだった。
この翌日、2人からあの時の事をしつこく聞かれることはなかったが、よく話しかけてくるようになった。 
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