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ドリトル先生と森の狼達

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第十幕その四

「これは世紀の発見です」
「そうまで仰いますか」
「実際にそうです」
「そうですか、ただ」
「ただ、とは」
「このことを発表すべきでしょうか」
 先生はここで本題に入りました、先生にとっての。
「果たして」
「勿論ですが」
「当然のことですか」
「そうです、これは世紀の発見ですから」
 日笠さんは先生に即答しました。
「それこそ」
「そうですか、ただ」
「何かあるのでしょうか」
「おかしな人が奈良県と和歌山県の境に沢山入らないでしょうか」
 先生は日笠さんに真剣なお顔で尋ねました。
「マスコミや学者、それに密猟者」
「不安なのですね」
「かなり、本当に」
「そうですね、こうした場合は」
「何かお考えがありますか」
「はい、法整備ですね」
 日笠さんは先生にここでは表情を消してです、動物園の人というよりは法律家の様なお顔になってお話しました。
「やはり」
「法整備ですか」
「密猟禁止地区に指定しまして」
「ニホンオオカミの生息している地帯を」
「そしてニホンオオカミを特別保護指定動物にしましょう」
「ニホンカモシカの様にですね」
 先生はここでこの動物の名前を出しました。
「あの生きものもそうですから」
「そうです、同じです」
「天然記念物ですか」
「そうなって当然です」
 日笠さんははっきりと言いました。
「ニホンオオカミならば」
「では」
「このことは園長にお話しましょう」
「八条動物園の」
「そして学園長にもです」 
 八条学園の、というのです。
「学園長は八条家の方ですので」
「日本の環境保護のこともですか」
「一族に議員の方がおられ様々な慈善活動を一族全体でしておられるので」
「こうしたことにもですか」
「強い発言力を持っておられます」
「それでは」
「はい」
 日笠さんは先生にまた答えました。
「それではです」
「動物園の園長先生にお話されるのですね」
「私達の仕事は野生動物の保護も入っています」
「はい、生物学者として」
「ですからこのことはです」
「発表したうえで」
「保護しましょう」
 この二つを並行させようというのが日笠さんのお考えです。
「是非共」
「ではお力をお貸し下さいますか」
「とんでもない、先生がです」
「僕がですか」
「私達にお力を貸して欲しいです」
 これが日笠さんのお返事でした。
「是非共」
「そうですか、僕が」
「何しろ先生が発見されたのですから」
 そのニホンオオカミさん達をというにおです。
「ですから」
「僕が、ですか」
「私達にです」 
 お力を、というのです。 
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