リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~
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Another53 真の希望
前書き
パタモンが進化します。
ヴァンデモンを探したのだが、ヴァンデモンの影も形もなく、結局、完全体デジモン2体をデジタルワールドに強制送還しただけである。
ヤマト「さて、パタモン。俺達に何か言うことはないか?」
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ…!!!!!
パタモン[痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!勝手に出てごめんなさいごめんなさい!!絞らないで!!身体が千切れちゃうよおおおおおおおおおお!!!!!]
何でパタモンがヤマトにまるで雑巾のように絞られているのかというと、タケルを自宅に送るために電車に乗っていたのだが、パタモンは好奇心を抑えきれず、電車を飛び出してしまって現在に至る。
ヤマト「はああ…次の電車が来るまでまだまだ時間があるぞ……」
パタモン[ごめんなさい…]
滅茶苦茶絞られたためか若干色落ちしているパタモンがシュンとなっている。
タケル「次はこんなことしちゃ駄目だからね?」
パタモン[うん……]
ガブモン[もう……俺達は他の人達に見られちゃいけないんだからさ。見たい気持ちは分かるけど我慢しないと]
自分もこの世界に来たばかりの時もそうだった。
ヤマトが、パートナーが生まれ育った世界を一刻も早くこの目に焼き付けたい。
空気を吸ってみたい、目で見てみたい、耳で聞いてみたい、匂いを嗅いでみたい、大地を踏みしめてみたい、と湧き上がる衝動を抑えるのに必死だったから。
ヤマト「仕方ないな、タケル、ガブモン、パタモン。次の電車が来るまで、散歩でもするか」
タケル「うん」
パートナーをD-コネクションの中に入れると渋谷の街を歩くことになった。
ヤマト達がしばらく街をふらふらしていると声が聞こえてきた。
ゴツモン[渋谷最高だね!!デジタルワールドよりずっと楽しいよ!!]
ヤマト「…デジタルワールド?」
聞き捨てならない単語に振り返るとそこには2体のデジモンがいた。
ガブモン[パンプモンと…]
パタモン[ゴツモンだ!!]
タケル「知ってるデジモン?」
ガブモン[きっとヴァンデモンの手下だ]
ヤマト「何だって!行ってみよう!!」
ガブモン[うん!!]
何か仕出かされたりしたらたまらない。
パンプモンとゴツモンの元に駆け寄るヤマト、タケル、ガブモン、パタモン。
ガブモン[パンプモン!!ゴツモン!!]
パンプモン[わっ!?]
ゴツモン[あ~~っ!選ばれし子供だ!!]
ガブモン[こんな所で何をしてるんだ?現実世界の侵攻…だよな?]
パンプモン[そうなんだけど渋谷の方が楽しくなっちゃって]
ヤマト「渋谷の方が楽しい?」
ゴツモン[俺達すっかり渋谷系デジモンになっちゃった]
タケル「渋谷系デジモン?」
何言ってるのかさっぱりなタケルであった。
ガブモン[お前達一体何考えてんの?]
同じデジモンとしてガブモンは呆れながら尋ねる。
パンプモン、ゴツモン[[何にも考えてない!!]]
2体の発言と行動に呆れるヤマト達。
馬鹿だとそう思うヤマトであった。
そしてふと、目を離した隙に2体の姿は消えていた。
ヤマト「あ~~、あいつら!!」
ガブモン[追い掛けよう!!]
10分後…。
タケル「はあ……はあ……」
走り回ったせいで息切れしているタケル。
ヤマト「あいつら、どこ行ったんだ?」
運動部であるためか、息切れはしているが、タケルよりはまだ余裕があるヤマトが辺りを見回した。
パタモン[いたーーーっ!!]
ガブモン[あっちだよ!!]
パンプモン[美味い、美味い!!]
何とパンプモンとゴツモンはソフトクリーム屋のソフトクリームを勝手に食べていた。
ゴツモン[ソフトクリームだってさ……デジタルワールドじゃ、食べたことないぞ!!]
ヤマト「パンプモン!!ゴツモン!!」
ヤマトの怒声にパンプモンとゴツモンが振り返る。
パンプモン[やばい!!見つかった!!]
ゴツモン[逃げろ!!]
パンプモンとゴツモンはスタコラサッサと逃げる。
ガブモン[待てっ!!]
追い掛けるヤマト、ガブモン、タケル、パタモン。
更に10分後……。
タケル「はあ……、はあ……」
ヤマト「はあ……、今度はどこに行ったんだ……?」
ガブモン[ヤマト、あっち!!]
パタモン[服着てるよ……]
パンプモン[お前こっちの方が似合うんじゃないのか?]
ゴツモン[俺もそう思う!!]
ショーウィンドのマネキンの服を勝手に着ているパンプモンとゴツモン。
ヤマト「見つけたぞ……!!」
パンプモン[また、見つかった!!]
ゴツモン[逃げろ~~!!]
またスタコラサッサと逃げるパンプモンとゴツモン。
ヤマト「く、くそ~~!!」
疲労した身体を叱咤し、追い掛けるヤマト、ガブモン、タケル、パタモン。
更に更に10分後……。
ガブモン[もう駄目、走れない……]
ヤマト「あいつら……」
疲労困憊のヤマト達。
次第にイライラが溜まっていく。
賢「……こんな所で何してるんですか?」
ヤマト「ん?」
ヤマト達に向けて投げ渡される缶ジュース。
反射的に受け取るヤマト達。
ジュースを受け取りながら、事情を説明するヤマト達。
賢「なるほど、自称渋谷系デジモンのパンプモンとゴツモンがはしゃいでいたせいで渋谷が大混乱していたようですね」
ヤマト「それにしても何でお前がここに?」
賢「渋谷にデジモンの反応がありましてね、回収に来たんですよ。」
タケル「でもどうしよう。僕もう走れないよ…」
賢「大丈夫、ああいうのは単純すぎる罠に引っかかるから。見てて」
賢が取り出したのはハンバーガーであった。
ヤマト、タケル「「????」」
ハンバーガーをどうするのかさっぱり分からないヤマトとタケルは疑問符を浮かべるしかなかった。
そして路地裏に来て、ガブモン、パタモン、ワームモンに穴を掘らせる。
ヤマト「なあ、まさか落とし穴か?」
賢「ええ」
ヤマト「あいつら馬鹿だけど、こんな単純すぎる罠に引っかかるかな…」
賢「単純な罠も馬鹿には出来ませんよ」
落とし穴に小枝と少しの土で蓋をすると、その上にハンバーガーを置いて物陰に隠れた。
ヤマト「本当に引っかかるのか…?」
少しして…。
パンプモン[いい匂いだ!!]
ゴツモン[ああ、ハンバーガーだ~!!]
パンプモン[ラッキー!!]
ハンバーガーに飛びつくパンプモンとゴツモン。
近づいた瞬間、穴に落ちた。
賢「ね?」
ヤマト「………………」
やっぱりあいつら馬鹿だと心底思ったヤマトであった。
鎖で雁字搦めに拘束されたパンプモンとゴツモンはヤマトから説教を喰らっていた。
ヤマト「全く……余計な時間を食ったな…」
賢「悪いけど君達をデジタルワールドに強制送還する」
パンプモン[ええ~?]
ゴツモン[もっと渋谷で遊びたい]
ワームモン[知らないよ]
賢がD-コネクションをパンプモンとゴツモンに向けた瞬間であった。
凄まじい悪意のような物を感じたのは。
賢「来たか…」
忘れもしない。
このような陰湿な気配。
パンプモン[ヴァンデモン様…!!]
ヴァンデモン[命令を無視して遊び回った挙げ句捕まるとは…お前達にもう用はない。消えろ!!ナイトレイド!!]
パンプモン、ゴツモン[[うわああああ!!?]]
獰猛な蝙蝠がパンプモンとゴツモンに襲いかかるが、ワームモンがスティングモンに進化して蝙蝠を弾き飛ばす。
賢「ヴァンデモン、ここでお前が出て来たのは寧ろ好都合。ここで始末してやる」
ヴァンデモン[選ばれし子供か……お前達は何者だ?確か紋章を持つ選ばれし子供は8人のはずだが……]
賢「さあ?それを知る必要はない。お前はここで消えるんだから……」
ヴァンデモン[小僧の分際で言ってくれる…ブラッディストリーム!!]
スティングモン[スパイキングフィニッシュ!!]
ヴァンデモンとスティングモンの必殺技が激突する。
2体は同時に弾かれ、距離を取る。
ヴァンデモン[ナイトレイド!!]
スティングモン[ムーンシューター!!]
2体の技が再び激突するが、相殺されてしまう。
ヴァンデモン[な、何故だ?何故私が成熟期相手に……!!?]
スティングモン[僕はこの世界の環境に適応し、お前はまだこの世界の環境に適応出来ていない。それによってお前は本来の実力を発揮出来ない。尤も]
スティングモンは凄まじいスピードでヴァンデモンに肉薄すると拳によるラッシュを叩き込む。
ヴァンデモン[がはあっ!!?]
スティングモン[お前が本調子であろうと僕はお前如きに負けるつもりなど微塵もない。]
前世のヴァンデモンとの戦闘経験もあるために、本調子でもないヴァンデモンを叩き潰すなど容易に出来る。
ヤマト「完全体を成熟期で……」
完全体には完全体でないと勝てないと思いこんでいたヤマトにとっては衝撃的な出来事であった。
賢「特訓すればこれくらいは出来るようになりますよ。さあ、スティングモン。早くヴァンデモンにとどめを」
スティングモン[分かっているよ賢ちゃん。スパイキング……]
ヴァンデモン[ぐっ……だが、私がこの程度でやられると思うな!!ナイトレイド!!]
振り向きざまにタケルに向けて技を放つヴァンデモン。
獰猛な蝙蝠がタケルに迫る。
ヤマト「タケル!!」
賢「しまった!!」
タケル「うわあああああ!!?」
自分に迫る獰猛な蝙蝠に恐怖し、身動きが取れないタケル。
しかしそこにパタモンが割って入った。
パタモン[タケルは…タケルは僕が守る!!]
パタモンの強い気持ちに呼応し、今まで反応がなかったデジヴァイスが光を放った。
蝙蝠が聖なる光に弾かれた。
ヴァンデモン[何だと!!?]
賢「あれは進化の光…」
パタモン[パタモン進化!エンジェモン!!]
かつての独り善がりの進化ではない正真正銘正しい進化をした成熟期の天使に進化した。
タケル「パタモンがエンジェモンに進化した…エンジェモン…僕のこと分かる?」
かつての失敗が頭に残っているのか、不安そうにエンジェモンに尋ねるタケル。
エンジェモンはそんなタケルを安心させるように笑った。
エンジェモン[大丈夫だ、タケル。私はもう間違えたりはしない]
タケル「エンジェモン…!!」
エンジェモンにパタモンの面影を見出したタケルは歓喜の笑みを浮かべた。
そしてヴァンデモンは焦りの表情を浮かべた。
ヴァンデモン[くっ、少々貴様らを甘く見ていたようだな。今回の勝負は預けてやる!!]
成熟期とはいえ、自分と相性の悪いエンジェモンがいる上に慣れない環境で本調子でないために、ヴァンデモンは急ぎ、この場から去って行った。
ヤマト「待て!!」
賢「っ、いけない。今の騒ぎでパトカーが…皆さん、早くこの場を離れて!!」
ヤマト「くっ、後1歩のところで…仕方ない、タケル!!」
タケル「うん!!…その前に…」
パンプモンとゴツモンをデジタルワールドに強制送還し、すぐさまこの場を去るのだった。
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