ソードアート・オンライン ~黒の剣士と神速の剣士~
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SAO:アインクラッド
第13話 神速の剣技
俺たちは着々と迷宮区を突き進む。
何度もモンスターと戦闘になったが素早く倒し、何事もなく無事にボス部屋へと着いた。
全員無言で扉を見つめる。
アスナは前に出ると扉に手を当て押す。
ゴゴゴゴという音と共に扉が開く。
アスナが腰のレイピアを抜くとそれを合図にプレイヤー達もそれぞれの武器を構える。
アスナがボス部屋へ入ると同時に部屋の周りに火が灯り、部屋全体が明るくなる。
部屋の中央にはボスが立っていた。
だが、プレイヤー全員がボス部屋へ入っても一向に動く気配がない。
それもそのはず、このボスは一定の距離まで近づかなければ動かないのだ。
それを利用して、隊を3つに分けそれぞれの指定の位置に着く。
アスナは周りを確認して準備が整ったのを確認すると、剣をボスに向け叫んだ。
「戦闘、開始!!」
戦闘は順調と言っていいほどに難なく進んでいった。
ランダムで放つ拳の叩きつけもちゃんと対処出来ていた。
ブレスも上体を反らし腹を膨らませるという少々大袈裟なモーションで、発射する片方の顔の口から少し雷が溢れていたから難なく対処出来た。
1本目のHPゲージが削りきるのにそう時間はかからなかった。
「この調子で行けばなんとかなりそうだな」
スイッチして後ろに下がってきたキリトが言った。
俺はボスから目を離さずキリトに言う。
「だといいんだが…」
本当は、何か起こるかもしれないと俺もキリトも感じとっていた。
根拠はない。だが、クォーターポイントということもあって不安は拭えなかった。
だが、今はその不安を頭の奥に押しやり「スイッチ」という掛け声と共にボスへ向かって行った。
その不安が的中するのに時間はそうかからなかった。
異変はボスのHPゲージが3本目に突入した時に起こった。
2本目のHPゲージを削りきるのと同時にボスは一際大きく叫ぶといきなり上体を反らしブレスのモーションに入った。
少なからずプレイヤー全員に動揺が走る。
いち早く行動に出たのはアスナだった。
「皆さん!落ち着いてボスを見れば……」
だがその言葉は途中で止まった。
それと同時に視界が真っ白になり、ビシャアァァン! という雷鳴のような音がボス部屋全体に響いた。
!?何が起きた?
ようやく視界が元に戻り、1番最初に目に入ったのはボスの姿だった。
それを見た瞬間何が起こったのか理解した。
「両方の…顔で……ブレスを…」
そう呟いた瞬間、背中に衝撃が走り飛ばされていたことに気付く。
立ち上がろうとしたがその直前に全身の感覚が遠ざかる。
まさか!
そう思いHPバーを見ると、HPバーが緑色に包まれて横に同色のデバフアイコンが表示された。
それは《転倒》でも《スタン》でもなく《麻痺》。
キリト達も同様、麻痺になっていた。
周りを見るとほとんどのプレイヤーがブレスを喰らい、麻痺になっていた。
それを確認しながら俺は、ポーチから解毒ポーションを取り出し口に流し込む。
幸いHPは3割減るぐらいで済んだ。
周りを見るとブレスを喰らっていないプレイヤーは近くにいるブレスを喰らったプレイヤーを助けていた。
だが、ボスは麻痺が回復するまで待ってくれるほど甘くはなかった。
そして不運にもボスは俺たちのいる方へ向かってくる。
くそっ!まだか!
俺はHPバーを睨みながら毒づく。
不意にボスの方に目がいく。
ボスは近くまで接近していた。
だが、ボスは立ち止まり獲物を見つめていた。
その目が捉えていたのは……
サキとアスナだった。
ボスがブレスを放つ直前、サキとアスナが前に出ていのだ。
だがら、必然的にブレスを喰らい飛ばされてもサキとアスナがボスに近くなる。
迷っている暇わない。後先を考えてる暇わない。あの2人を死なせるわけにはいかない!
「神速…スキル……《2倍速》!」
囁きぐらいの声しか出ないがそれでもシステムは俺の声を認識し、スキルが発動する。
5秒で麻痺が解け、同時に立ち上がる。
だが、既にボスは片方のハンマーを持った手を振り上げていた。
「ッ!!」
無言の気合と共に地面を蹴る。
瞬時にウインドウを開き片手剣をしまい、代わりに両手剣の《ブレイカーストライク》を装備する。
すかさず剣を抜く。
剣全体は白く、刀身の真ん中に紅いラインが入っているシンプルな両手剣だ。
だが、見かけによらず攻撃力はかなり高い。
俺はサキ達の前に出ると振り下ろされたハンマーに向かって両手剣スキル突進技《アバランシュ》を放つ。
直後、ガギィィィンという音と共に腕に強い衝撃が伝わってくる。
数秒、剣とハンマーの押し合いになった後両方共に弾かれる。
なんとか踏みとどまると地面を思いっきり蹴り、ボスへ向かう。
その途中でまたウインドウを開き両手剣をしまい、片手剣《フラッシュグリッター》を装備する。
《フラッシュグリッター》は全身が純白の剣だ。
ボスとの距離を詰めると神速スキル突進技《ストレイトライン》を放ち、一気にボスに近づく。
ソードスキルが終わるや否や、剣撃のラッシュをしかける。
ボスは左手のハンマーを叩きつけるが俺は最小限の動きで避け手に飛び乗ると、そのまま腕を駆け上る。
駆け上る際にも斬撃を浴びせる。
腕を上り終える頃には数十もの傷が刻まれていた。
そこから斬撃を浴びせ続けながら背中へ向かう。
ジャンプしてボスの背後に行くと無防備の背中に神速スキル32連撃技《フロォウイング・スタースラッシュ》を放つ。
ボスのHPが3割程度減る。
その後、技後の硬直《スキルディレイ》が課せられる。
だが、それは1秒もない、一瞬といっていいほどの短い時間だった。
だが、その一瞬が仇となった。
なっ!?
ボスはその一瞬の間に右の拳を握り、腕を振りながら回転した。所謂裏拳だ。
あまり防御が出来ずまともに攻撃を喰らい、壁まで飛ばされる。
「くそっ、ミスった」
俺は毒づきながら剣で体を支えて立つ。
HPはレッドゾーンに入っていた。
すかさずポーチから回復結晶を取り出し回復する。
そうしている間にボスが近づき拳を振り下ろす。
俺は素早く避けるとボスに向かって走る。
「わいらも行くで!!」
不意にボスの後ろから声がする。
その直後、キバオウ率いる軍の連中がボスに攻撃をしかけた。
だがそれは無謀だった。
スイッチする人数もいない。HPは中途半端に回復したまま。そして、麻痺から回復した軍の連中が次々に入る。
自殺行為といっていいほどのものだった。
「何をしているんだ!今は体勢を立て直すのが最優先だろ!一旦下がるんだ!」
「そうわさせへんぞ!美味しいとこばっか取れると思うな!」
「なっ……」
絶句するしかなかった。
何を言っても伝わらないとわかったからだ。
自殺行為だそ。あいつはわかっているのか…
そう思っていると横からキリトが現れた。
「カゲヤ、大丈夫なのか。あいつら」
「自殺行為だ。だが、あいつらが聞く耳を持たない以上俺たちはどうすることも出来ない」
「まずは体勢を立て直そう」
「あぁ」
俺とキリトはアスナ達の元へ戻る。
アスナ達は壁ぎわまで下がり、指示を出していた。
「アスナ。隊は組めそうか?」
「うん。なんとか大丈夫だけど……少し厳しいと思うわ」
俺はボスを見ながら言う。
「あとゲージが2本だからなんとか切り抜けられるだろう」
「それと、ここからはカゲヤ君に指揮をとってもらいたいんだけど…」
「わかった」
俺は少し前に出るとプレイヤー達を見て言う。
「ボスの攻撃パターンは、ほぼランダムになったが防げない事はない。そして、ブレスはモーションが異常に速くなったから、ボスが上体を反らしたらすぐ防御態勢をとればなんとかなる。ゲージはあと2本だ。このまま削りきるぞ!」
俺はボスの方へ向くと叫んだ。
「行くぞ!!」
『おおぉぉぉお!!』
キバオウ率いる軍はボスの右側から、俺たちは左側から攻める。
俺はボスに攻撃しながら指示を出す。
「拳の叩きつけ、B隊ガード!」
ボスが拳を地面に叩きつけるのと同時にまた叫ぶ。
「ハンマーの振り下ろし、全員後方に下がれ!」
ボスがこぶしを引くのと同時にハンマーを振り下ろす。
地面に衝撃が走る。
バランスを崩しそうになるがなんとか持ちこたえる。
それでも数名のプレイヤーが膝をついたり、倒れたりする。
ボスはその隙を見逃さなかった。
!!ブレスのモーション!!
「タンクは前に出てガード!他はタンクの後ろに行き、防御態勢をとれ!」
俺は叫びながら全力で走る。
タンクの後ろに回ったところで視界が白くまり、ビジャァァァンと雷鳴のような渡る。
なんとか麻痺は免がれたか
周りを確認すると殆どのプレイヤーがHPを1割から2割程減るぐらいで済んだ。
軍の連中を除いては、だが。
軍の連中はブレスに対応出来るはずもなく全員が麻痺になっていた。
だが、運が良かったと言うべきかボスはこっちに向かってきた。
どうする……ボスのHPゲージはあと1本と3割……ここは一か八か賭けてみるか
俺は立ち上がるとプレイヤー達に向かって叫ぶ。
「全員、全力攻撃!!ボスの攻撃は俺が弾く!!その間に削りきれ!!」
素早くウインドウを開き、フラッシュグリッターからブレイカーストライクへと武器を変える。
その間にプレイヤー達はボスに向かう。
キリト達はすでにボスに攻撃していた。
そのキリト達にボスはハンマーを振り下ろそうとしていた。
俺は腰を落とし力を溜めると思いっきり地面を蹴り今出せる最速のスピードでボスに向かって走る。
ボスに近づくと地面を蹴りジャンプする。
数回、回転しながらの右下からの斬り上げてハンマーを迎え撃つ。
直後、剣とハンマーが激突しお互いに押しあう。
「ハァアッ!!」
気合と共に剣を振りきり、ハンマーを弾くことに成功するが反動で地面に叩きつけられる。
だが、ボスはハンマーを弾かれたことによって少し怯む。
その隙に体勢を立て直し、次の攻撃へ備える。
その時、後ろから声をかけられた。
「カゲヤさん!ここからは俺たちがボスの攻撃を防ぎます!あなたはボスを攻撃して下さい!」
5名のタンクのプレイヤーの1人が言う。
「わかった。あとは頼んだ」
「はい!」
俺はボスへ向かいながら、ブレイカーストライクからフラッシュグリッターに武器を変える。
俺はボスへと近づくと脚を駆け上る。
腕を上った時と同様に脚も斬り刻む。
脚を駆け上ったあとには数十もの傷がつく。
背中に回るとボスの体を蹴り跳躍する。
頂点に達し空中で停止すると片手剣スキル4連撃技《バーチカル・スクエア》を放つ。
《バーチカル・スクエア》が終わるとすぐに片手剣スキル4連撃技《ホリゾンタル・スクエア》を発動し、次々とボスの背中にソードスキルを叩き込む。
地面に着地した時点でボスのHPは残り3割だった。
いける!
プレイヤー全員がそう思った瞬間、最悪のことが起きた。
ボスが上体を反らしたのだ。
勿論ブレスのモーション。
その瞬間、希望が絶望に変わる。
今、この状況でブレスが放たれれば確実にレイドの7割から8割は死ぬ。
防御も回避も不可能。残る手は……
ボスを……倒す!!
「神速スキル……《3倍速》!!」
発動した途端全身が淡い青白い光に包まれる。
少し力を溜め地面を蹴り、全力で走る。
あっという間にボスの背中に辿り着くと瞬時に神速スキル32連撃技《フロォウイング・スタースラッシュ》を発動し、ボスへと放つ。
「ハアァァァァァ!!」
気合と共に次々と撃ち込んでいく。
ボスのHPも勢いよく減っていく。
だがあと少しの所でボスがブレスを放とうとする。
もっと速く!加速しろ!
段々剣を振るスピードが速くなる。
「ハァア!!」
気合を迸らせ最後の突きを撃ち込む。
直後、ボスが不自然に止まりそして、ポリゴンの欠片となって爆散した。
俺は重力に従い落下して地面に倒れる。
その直後『Congratulations』と文字が高々と浮かび上がる。
途端、歓声がボス部屋へ響き渡る。
やっと……終わった…
そう思い目を閉じて仰向けのまま横たわる。
すると不意に声をかけられる。
「どうする?カゲヤ。まだ休んどくか?」
「いや、もう行く。じゃないといろいろ聞かれそうだからな」
俺は立ち上がり剣を鞘に納めるとキリトと一緒に奥の扉へと向かう。
「私たちには教えてもらうからね。カゲヤ君♪」
横からサキがひょこっと現れて笑いながら言う。
「わかったよ」
俺はため息をつきながら26層に繋がる階段を上って行った。
そのあと、サキ達(主にサキとアスナ)から神速スキルについてをあれこれ聞かれたことは言うまでもない。
後書き
今回は武器とスキルの紹介だよ♪
まずは武器から
◆両手剣《ブレイカーストライク》
意味は《破壊者の一撃》
◆片手剣《フラッシュグリッター》
意味は《閃光の輝き》
次はスキル
◆神速スキル《2倍速》と《3倍速》
速さに関係する全ての物の速さを倍にする。
ただし3倍速からは連続で使ったり、使用時間の長さでクーリングタイムが長くなるデメリットがある。
※クーリングタイムになるのは神速スキルそのものです。言い換えれば、クーリングタイム中は神速スキルは使えないということになります。
◆神速スキル32連撃技《フロォウイング・スタースラッシュ》
名前は《流れる星の斬撃》という意味でつけました。
技の軌道としては、スターバースト・ストリームとスター・スプラッシュを混ぜ合わせたような感じだ。
カゲヤ「本当、チートになってきているな」
作者「一応それ相応のデメリットもあるからいいじゃん」
カゲヤ「因みにクーリングタイムの時間は?」
作者「決まってないよ。使用した回数、使用時間で変わるよ」
カゲヤ「他はないのか?」
作者「あるよ。でもそれは、これからのお楽しみということで」
カゲヤ「その方が良さそうだな」
作者「じゃあ、次回も」
カゲヤ「よろしくな」
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