戦国異伝
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第二百二十一話 肥後の戦その六
「よし、行くのじゃ!」
「はっ!」
井伊が応えてだった、すぐに。
彼の兵を率いてだ、その伏兵達に横から向かい。
戦に入った、島津の騎馬隊は井伊の軍勢には負けなかった。
だがそれで動きを止められた、信康はそれを見てからまた言った。
「では敵が止まっている間にな」
「我等はですな」
「前の敵をですな」
「退けますか」
「数では大きく勝っておる」
それでというのだ。
「ここはこのままじゃ」
「半月の形で、ですな」
「攻めてそのうえで」
「押し潰し」
「勝ちますな」
「そうする、ではな」
こう言ってだった、そして。
信康はそのまま攻めさせた、だが薩摩隼人も強かった。
幾ら攻められようとも崩れない、その強さを見て。
榊原は唸ってだ、己の家臣達に言った。
「敵ながらのう」
「はい、強いですな」
「見事な戦ぶりです」
「岩屋城の時もそうでしたが」
「今もですな」
「全くじゃ」
こう言うのだった。
「強い、しかしな」
「伏兵は封じました」
「釣り野伏せは」
「では、ですな」
「後は」
「このまま攻めよ」
半月に囲んだ島津の軍勢をというのだ。
「そして隙を見てじゃ」
「後ろにも回り込み」
「そして、ですな」
「攻める」
「完全に囲み」
「そうせよ、よいな」
こう命じてだ、そしてだった。
信康は島津の軍勢を攻めさせてだ、そこから。
隙を見て後ろにも回ろうとした、すると。
山田はそれを見てだ、周りの者達に言った。
「後ろに回られるな」
「はい、このままでは」
「そうされますな」
周りの者達も応えた、この様に。
「では、ですな」
「ここは下がりますか」
「そうする、伏兵だった騎馬隊達もじゃ」
山田は彼等のことも話した。
「退かせよ」
「ではまた火矢をですな」
「それを放ちますな」
「そして退きの合図を出して」
「下がらせますか」
「そのうえでじゃ」
下がらせてというのだ、伏兵だった騎馬隊も。
「また戦うとしよう」
「畏まりました、では」
「場を替えて」
「ここは退く」
山田はまた言った。
「後は城に篭るとしようぞ」
「ですな、この戦で兵を減らしてしまいました」
「では次は籠城ですな」
「そうして戦いましょうぞ」
周りの者達も言ってだ、そしてだった。
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