流転の防人
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第1章「発進」
前書き
アルゼナル周辺海域に時空跳躍してしまった、ゴジラ・コマンド、両者は戸惑いを覚えながらも接触に向けて動き始めます。
アルゼナル・パラメイル運用兼発進施設
緊急警報のサイレンを受けて資料室を飛び出したサリアはロッカールームで素早くライダースーツを身に纏って対ドラゴン用機動兵器パラメイルの運用兼発進施設へと駆け込んだ。
サリアが到着するとそこには既に二人のメイルライダー、エルシャとサリアと同室のヴィヴィアンが到着しており、駆け込んで来たサリアに気付いたショートヘアの赤髪と黄金色の瞳のあどけない美貌の美少女、ヴィヴィアンが右手を大きく振りながら口を開いた。
「おおーい、サリア、こっちこっち」
「……状況はどうなってるの?」
ヴィヴィアンの声を聞きながら二人の所に駆け寄ったサリアは出撃態勢を整えるパラメイル(フライトモード)を一瞥しながら質問し、それを受けた薄桃色のロングヘアとライムグリーンの瞳の美貌にライダースーツによって更にその存在が強調された柔らかな胸の隆起が魅惑的な美女、エルシャが戸惑いの表情と共に口を開いた。
「それがね、どうもこの警報の正体はドラゴンじゃ無いみたいなの」
「……ドラゴンじゃ……無い?」
エルシャの口から出た俄には信じ難い言葉を受けたサリアが戸惑いの声をあげていると新兵のココとミランダが到着し、それに気付いたヴィヴィアンは再び右手を大きく振りながら二人に向けて口を開いた。
「……おーい、こっちだこっちー」
「「……は、はい!!」」
ヴィヴィアンに声をかけられた二つに分けられたセミロングの黒髪と人懐っこい粒羅な瞳のあどけない美貌が魅力的な美少女、ココと淡いモスグリーンのセミロングヘアに菫色の瞳の朗らかな雰囲気の美貌が印象的な美少女、ミランダは緊張で強張った返事をしながらサリア達の元へ到着し、それに呼応する様に司令室との連絡係の隊員がサリアに向けて口を開いた。
「サリアさん、司令室から連絡です」
「分かったわっ!!」
隊員の言葉を受けたサリアは急いでその隊員の所に駆け寄ると隊員から内線電話の受話器を受け取り、戸惑いの表情を浮かべながら受話器に向けて口を開いた。
「サリアです」
「……私だ」
「……あれっ……司令官」
ジルの言葉を受けたサリアは一瞬言い淀んだ後に言葉を返し、ジルはそれを咎めること無く言葉を重ねた。
「つい先程、アルゼナル周辺海域に突如として6つの彼我不明の目標が出現した、レーダーの反応を見る限り出現した6つの目標は船舶、内3つはかなりの大型船と思われる」
「……船舶……ですか?」
ジルから概況を告げられたサリアは予想外の内容に戸惑いの声をあげ、それから一拍の間を置いた後にジルから更なる説明が行われた。
「監察官がマナによる通信を試みたが先方からは全く返信が無かった、現在目標群は出現した海域に留まっている、現在、第一中隊はどれだけ集まっている?」
「現在、あたしの他にはヴィヴィアン、エルシャ、それに新兵のココとミランダがいます」
ジルの問い掛けを受けたサリアは素早く現在待機している第一中隊の人員を告げ、それを受けたジルは一拍の間を置いた後に命令を下した。
「……サリア、今いる人員を率いて出撃して出現した目標群と接触しろ、第一目標は目標群と接触及び偵察だ、相手の意図、状態は共に不明だ、充分に注意しろ」
「……了解しました、直ちに発進します」
ジルの命令を受けたサリアはそう言葉を返すと受話器を隊員に渡してヴィヴィアン達の所へと移動し、ヴィヴィアン達に向けて命令を下した。
「司令官からの命令よ、現在アルゼナル周辺海域に突如として彼我不明の目標群が出現したとの事よ、レーダーの反応を見る限り目標群は船舶と思われるものの、その意図、状態は共に不明、あたし達は直ちに出撃して目標群との接触及び偵察を実施する、ココ、ミランダ、貴女達はエルシャと行動を共にしなさい、前衛はあたしとヴィヴィアンよ、分かった?分かったなら直ちに出撃よ」
「「イエス・マム!!」」
サリアの命令を受けたヴィヴィアン達は直ぐ様それに応じた後に愛機の所に駆け出し、それを確認したサリアも直ぐ様それに続いて駆け出した。
駆け出したサリアを発進態勢を整えた愛機、アーキバス・サリア・カスタムの所に駆け寄るとそのシートに跨がり、ライダースーツから伸びるコネクターをライダーシートに接続した後に司令室に向けて通信を送った。
「こちらサリア機、発進準備完了」
「了解、発進進路クリア、発進願います」
サリアの通信に対して司令室からオペレーターのヒカルが返信を送り、それを受けたサリアは琥珀色の瞳に静かに閉ざした。
(……行ってきます、アレクトラ)
サリアは胸中で愛しい女に呼び掛けた後に目蓋を開き、琥珀色の瞳に決意の光を宿しながら口を開いた。
「サリア機、発進します」
「了解、サリア機、リフト・オフ、コンプリート」
サリアはヒカルの返信を聞きながら愛機を発進させ、アーキバス・サリア・カスタムは光の翼を煌めかせながら発進していた。
星の瞬く夜空へと発進したサリアは愛機を緩やかに上昇させて集合空域へと向かい、その後方ではヴィヴィアン達がサリアに追従する為に発進していた。
瞬く星の中上昇を続けるサリア機、ジルは司令室からそれを見送り、右手に装着された義手を誰にも気付かれない様に密かに、そして固く握り締めていた。
ジルに見送られながら発進したサリア機は程無く集合空域へと到着し、追従して来たヴィヴィアン達と合流すると未知なる目標群へ向けて前進を開始した。
アルゼナル周辺海域・自走式ドッグ極光
アルゼナルから発進したサリア率いる接触兼偵察隊、その存在は遭遇した光の渦による混乱状況収拾に努めていたゴジラ・コマンド側にも正体不明のアンノウン(国籍不明機)として確認され、長曽我部は接近してくるアンノウンの一団を前に決断を迫られていた。
「IFF(敵味方識別装置)に反応無し、高度1200にて此方に向けて接近中、か」
「恐らくスクランブル(緊急発進)して来たんでしょうね」
長曽我部が接近中のアンノウンの状態を確認していると羽島が厳しい表情を浮かべながら口を開き、長曽我部は頷く事で応じた後に言葉を続けた。
「問題は接近しているのがどう言う連中かだが、こればっかりは接触してみるまでは分からんな」
「……出ますか?」
長曽我部の言葉を受けた羽島は表情を引き締めながら問い掛け、それを受けた長曽我部は頷いた後に言葉を重ねた。
「スーパーX3を出す、羽島お前は第1特殊戦術飛行隊主力と共にスクランブル態勢で待機してくれ」
「了」
長曽我部の指示を受けた羽島は小さく頷きながら返答し、それを受けた長曽我部は頷いた後に後方に控えるパイロットスーツ姿の二人の女性自衛官(スーパーX3運用の為航空自衛隊より派遣)に向けて口を開いた。
「藤田、永倉、頼んだぞ」
「「了解です」」
長曽我部の言葉を受けた二人の女性自衛官、藤田梨々香一等空尉と永倉奈々美二等空尉は歯切れ良い口調で応じながら敬礼し、それを確認した長曽我部は答礼する事で応じた後に二人を促してブリッジを後にした。
ブリッジを出た三人はそのまま極光の船内へと歩を進めドッグ区画への入口へと到着し、長曽我部は入口にかけられていたロックを指紋、声紋、虹彩の複合認識システムを利用して解除した後にドアを開いて藤田と永倉を従えてドッグ区画へと足を踏み入れた。
長曽我部達が足を踏み入れたドッグ区画ではツナギ服を来た整備員達が厳つくずんぐりとした印象を受ける大型のデルタ可変翼機、特殊飛行要塞スーパーX3の最終調整作業を行っており、長曽我部が作業を監督している整備班長の所に向かうと整備班長は敬礼した後に口を開いた。
「最終調整作業は間も無く完了します、冷凍弾及び超低温レーザーの燃料は定数の50%を搭載し、カドミウム弾については未搭載です」
長曽我部が整備班長の言葉に頷いていると整備員が最終調整作業が終了した事を告げ、それを受けた整備班長はもう一度長曽我部達に敬礼した後に部下達と共にドッグ区画から退去を始めた。
「よし、行くぞ」
整備隊の退去開始を確認した長曽我部は藤田と永倉に声をかけながらスーパーX3目掛けて駆け出し、収納式のラダーを使ってスーパーX3の機内へと入った。
長曽我部達はラダーを収納した後にスーパーX3の三座式コクピットへと移動し、長曽我部は左側の機長席へと腰を降ろしながら藤田と永倉に声をかけた。
「発進準備、完了次第報告」
「「了解(ラジャー)」」
長曽我部の言葉を受けた藤田と永倉は即座に言葉を返し、先頭の操縦手席に腰を降ろした藤田はモニター類を確認して整備隊の退去が完了しているのを確認した後にエンジンを始動した。
藤田の操作を受けたスーパーX3はメインエンジンを始動させ、猛然と吠えるエンジンの轟音が広大なドッグ区画全体に木霊した。
右側の通信・分析員席に座った永倉はエンジン始動によって可動した各種センサー類を手早くチェックして行き、異常が無い事を確認した後に長曽我部に向けて報告を行った。
「各種センサー類異常ありません」
「機体、エンジン、共に異常無し、何時でもいけます」
永倉に続いて藤田からも異常が無い事が告げられ、それを受けた長曽我部は指揮統制システムを確認して衛星通信システムが使用不能である事を確認した後にブリッジに連絡を送った。
「極光、こちらゴジラ・コマンドA(アルファー)、発進準備完了、やはり衛星通信システムは使用不能だ指揮統制はバクアップの通常無線を利用して行う、接近中のアンノウンに動きは無いか、送レ」
「ゴジラ・コマンドA、こちら極光、アンノウンは依然として此方に向けて接近中です、このままの進路だと約15分程で接触します、現在、アンノウン及び運用司令部との交信をはかる為通信中ですが未だに応答はありません、指揮統制の件は了解しました、送レ」
長曽我部が通信を送るとブリッジから接近するアンノウンの現状が報告され、それを受けた長曽我部は一拍の間を置いた後に通信を再開した。
「A、了解した、直ちに発進し接近中のアンノウンとの接触を図る、上部ハッチ開放してカタパルトをセットしろ、終ワリ」
「極光、了解です、ハッチ開放、カタパルトをセットします、終ワリ」
長曽我部の通信を受けたブリッジは即座に返信を返し、それから数拍の間を置いた後にスーパーX3の頭上の天井がゆっくりとスライドし始めた。
天井が開き切るとスーパーX3の頭上に星の瞬く夜空が現れ、続いてスーパーX3を乗せた床がモーターの駆動音を響かせながら斜めにせり上がり始めた。
せり上がる床はスーパーX3が45度程上向きになった所で停止し、続いて床に収納されていたリニアカタパルトが伸びてセッティングを完了した。
「極光こちらゴジラ・コマンドA、只今より発進する返信不要、終ワリ」
リニアカタパルトのセッティングが完了したのを確認した長曽我部はブリッジへと通信を送り、その後に静かに前方を見据えながら命令を下した。
「スーパーX3、テイク・オフ」
「了解(ラジャー)スーパーX3、テイク・オフ」
長曽我部の命令を受けた藤田は復唱しながらエンジンの出力を上昇させ、その後にリニアカタパルトを作動させた。
藤田の操作を受けたリニアカタパルトはエンジン出力を上昇させたスーパーX3を強引に加速させながら虚空に射ち出し、スーパーX3はエンジンを轟かせながら星の瞬く夜空へと駆け上がった。
「……アンノウン確認、機数5、4時の方向より、高度1200で接近中です」
藤田がアンノウンと同じ高度まで上昇させたスーパーX3を水平飛行に戻している間にレーダーで接近するアンノウンを確認した永倉は各種センサー類を確認しつつ長曽我部に報告を送り、それを受けた長曽我部は操作を終えた藤田に向けて命令を下した。
「藤田、進路4時、目標アンノウン」
「了解(ラジャー)」
長曽我部の命令を受けた藤田はそう応じるとスーパーX3の機首を接近するアンノウンの方へと向けて前進を開始し、スーパーX3は接近して来るアンノウン目指して前進を開始した。
アルゼナルを発進したサリア率いるパラメイル隊と極光から発進した長曽我部率いるスーパーX3、共に相手との接触を目指して発進した両者は邂逅の為に向けて急速にその距離を縮めながら前進を続けた。
後書き
次回予告
サリア隊とスーパーX3、その接触の寸前にアルゼナルと極光はコンタクトに成功し、両者は遂に邂逅の時を迎えたが異彩を放つ互いの存在に両者は困惑を隠せなかった。
困惑するアルゼナルとゴジラ・コマンド、しかしながら困惑する両者を余所にアルゼナル本来の敵、ドラゴン来襲の兆しが現れてまう。
サリア隊はスクランブルしたゾーラ率いる第一中隊本隊と合流してドラゴン出撃に備えるが突発事態により第一中隊の一部が分断されてしまう。
錯綜する状況の中、分断されたアンジュ、ココ、サリアの上空にドラゴン出現の兆しが現出し、錯綜する状況を確認した長曽我部は躊躇う事無くスーパーX3を前進させた。
流転の防人
第2話「鉄壁」
哀しき未来に抗え、スーパーX3
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