めだかボックス 〜From despair to hope 〜
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第39箱 「めだかさんのっ!御心のままにっ〜〜!」
「で? 投書の主は匿名じゃなかったんだな? 柔道部へ行く! って言うくらいだからさぁ」
善吉が、めだかちゃんにそう訊くと頷いていた。
「うむ、柔道部部長 鍋島三年生は知っておるな? 2人とも。これは、彼女からの投書だ」
めだかちゃんがそう言って、1枚の紙を差し出した。
「え? それって あの十一組、特待生の鍋島猫美さん?」
「そうだ!」
劉一が訊き、めだかちゃんが頷く。この時劉一は若干安堵していた。それは、女性の名前を呼んだくらいで怒ったりは、もうあまりしなくなってくれたのだ。思わず 苗字だけでなく、名前まで言った途端に、《怒られる》何てことなくなったのだ。他人が見れば、それは理不尽の三文字だろうけれど、『めだかちゃんだから』、と劉一は納得している。
「む…?」
色々と劉一が考えている時に、何かを感じ取ったのか、めだかちゃんは視線を向けた。勿論、その視線に劉一も気づき。
「なんでもないよ! 」
慌ててそう言っていた。後ろめたい気持ちは無いのだけれど。
「ってか あの人いま部長だったんだな。 有名な反則王と呼ばれてる人だろ? あんま悩むタイプじゃなくね? ってか 思えねーぞ?」
善吉の言う事も最もだった。そして、劉一は危機感も若干ながら持ち合わせていた。
「反則王が部長を勤めちゃったら… 部員達みんな反則狙うんじゃないかなぁ?」
有名な人に憧れて、後輩達は入部する。そしてその凄い先輩の背中を見て育つものだ。先輩が凄ければ凄い程、影響するだろう。
「ああ、反則王って言っても、結局は試合とかで勝ってるって話だから『反則負け』にはならねーみたいだぜ? あくまで、反則すれすれってことだろーよ。 ってことは ばれなきゃ反則も作戦の内、ってことだろ? 文句はいえねーと思うぜ」
確かに、善吉の言う事は正しい。必死に勝ちに行っているのだから。
「善吉の言うとおりだ。その志や見事。勝てば官軍とはよく言ったものだよ」
めだかちゃんも認めているのだろう。《天晴れ》扇子を持ってそう言っていた。めだかちゃんの場合は、どんな手を使ってでも来てみろ、精神だから。
「そっか。まっ そうだね! ちょっと偏見してたよ僕。実際会ってみてみればわかるかな」
劉一がそう言うと、めだかちゃんは一歩前に出た。
「投書の内容は、『後継者選びを手伝って欲しい』との事だ、部長と入っても三年生。もう直ぐ引退だからな。 まあ なんにせよ、行ってみようではないか。 柔道部といえば懐かしい顔にも合えるだろうしな。善吉」
めだかちゃんは、善吉を見ながらそう言う。
「え? 懐かしい顔?」
当然だけれど、劉一にはわからない。恐らくは高校以前から、と言う意味なのだろう。劉一は、善吉に聞こうと思ったけれど、何やら表情が優れない様子だったから、訊けなかった。
ひょっとして、以前に 不知火と話していた、善吉が柔道部に行ってない理由がそれだったりするのかもしれない。
~柔道場~
依頼を遂行しようと、3人揃って柔道部へと向かった。強豪だからあって、熱気もあり活気もある。3人が来た事にも気づかない様子で、練習に没頭していた。
そんな中で、1人 こちら側にやってきた。
「やーやー ようこそいらっしゃいませ! ウチが差出人!柔道部部長の鍋島猫美でっす!本日はどーぞよろしく!」
迎えてくれたのは、その話題の鍋島先輩。第一印象は、ほんわかした感じだ。彼女は、握手を求め めだかちゃんとがっしり握手を交わしていた。
「意外なキャラだったね? 善吉」
「そうだな、なぜに反則王? って感じだ」
鍋島先輩の第一印象を善吉と語り合っていた。其々が頭に思い描いていた人物像とは違った様だ。そして、めだかちゃんとの一通り挨拶が終わった所で。
「そや! 後継者選びの前にジブンに挨拶したいゆー奴がおんねん!」
そう鍋島先輩が言うと、善吉の顔があからさまに変わっていた。はっきりと、表情が歪んでいる。
(問題の人、だね……)
劉一は、善吉の顔を見て、一発で判った。その表情は判りやすいと思える程、歪んでいてあからさまだから。
「阿久根! おーーい! 阿久根クン!」
鍋島先輩が、部室の方に呼びかけると、その扉が開いた。まるで示し合わせていたかの様に。
出てきたのは、金髪の男の人。その髪は、めだかちゃんと同じくらい長くてスラっとしている。
さわやか系で、かなり美系と言えるだろう容姿だ。
彼は、善吉や劉一には目も呉れずに、めだかちゃんの方へと向かっていく。 そして、めだかちゃんの前につくなり、跪いた。
「ご無沙汰しております。めだかさん……、生徒会立ち上げの大切な時期にお気を煩わせてはいけないと 控えておりましたが ずっとあなたに再会を心待ちにしておりました」
彼がそう言うと、辺りが一気にざわついた。有り得ない様な表情を見せていた。
「(阿久根って名前……、確か……) あっ 柔道部のプリンスって呼ばれてる先輩だった。女子の中でかなり有名だ!前にちょっと小耳に挟んだよ。そういえば」
「カッ!」
劉一が、思い出して納得してる、そして善吉はやっぱり不機嫌だった。そして、彼を跪かせている原因の人、めだかちゃんはと言うと。こちらもちょっぴり怒っている様だ。
「…………堅苦しい真似はよせ 阿久根二年生 他の者が見ておるぞ。貴様ほどのものがそのように振舞っては示しがつくまい」
めだかちゃんは見下ろしながらそう言っていた、とても友好的とは思えない。それに、めだかちゃんの真骨頂は上から目線だから、と言う理由はあるだろう。
そして、本当に堂に入ってる。
だが、阿久根先輩が跪いてるのは絵になってない。他の部員もめだかちゃんが言ってる通りだ。
プリンスと呼ばれる所以の力を持っているであろう、阿久根先輩が他者に頭を垂れる姿を見るのは、複雑なのだろう。それが話題の怪物生徒会長だとしても。
「いえ……、誇りこそすれ あなたに 傅く姿を恥とは思いません 今の俺があるのはあなたのおかげなのですから」
阿久根先輩は、咎められてもあの状態を辞める様子はなかった。それを見ていた劉一は。
「めだかちゃんはああいうのは好まないんじゃない?」
「あん?」
善吉に訊いていた。と言うより事実を話していた。
「んー。だってさ? めだかちゃん、唯 崇められるよりは、『なにくそーー!』って頑張る姿の方が好きでしょ? 絶対にさ。 だから絶対服従みたいな姿を見せるよりはがんばる姿を見せたほうが喜ぶとおもうんだよね」
劉一は、じーーっと阿久根先輩を見ながらそう言っていた。これは実体験上の事でもあるから、間違いないだろう。
「……まぁ、色々とあるんだよ。あの人とはな」
善吉は、あまり多くは語らない。あまり語りたく無いのだろうか? だけど、劉一が言う事は否定はしてなかった。
そして、更に阿久根先輩は続けていた。完全な下僕として従っていると言っているかの様に。
「めだかさんには感謝をいくらしてもしたりな……」
と続けていたその時だ。めだかちゃんが阿久根先輩の頭を鷲づかみにして、無理矢理頭を上げさせた。
「(あっ……でた……。あれって 結構痛いんだけど、阿久根先輩大丈夫かな?)」
めだかちゃんの凶悪とも言っていい握力をその頭に受けている阿久根先輩を心配している劉一。だけど、それは杞憂だった。
「私に感謝していると言うならば 頭を下げるな! 胸を張れ!!」
めだかちゃんが、阿久根先輩に顔を近づけ一喝した瞬間、と言うより 阿久根先輩はめだかちゃんに触られていると理解してたのか、その握撃を受けても苦痛の表情は一切にせず
「は……… はいぃぃ!! めだかさんのっ! 御心のままにっ!!」
快感を感じてる、とでも言う様にオーラが体中から出ていた。何をされてもオールOK、めだかちゃん限定の超どM状態だった。
「おっと……、それより 生徒会を執行しなければな、後継者選び、つまりは新部長の選定だったな」
めだかちゃんは本来の目的を言うと、阿久根先輩を放した。
まだ、阿久根先輩は意識を手放してしまっているのだろうか、固まったままだった。
「とりあえず、貴様は特別枠だ、阿久根二年生 善吉と談笑でもしておいてくれ、 積もる話しもあるであろう。 劉一!」
そして、めだかちゃんは劉一を呼ぶ。阿久根先輩と入れ替わるような感じで、劉一が隣に立ち、阿久根先輩は意識がどうなっているのかは判らないけれど、足取りはしっかりとしていた。
劉一とすれ違う時は、ぽわんぽわん、とした感じの空気だったんだけど、善吉の側に来た途
突然、ピリピリムードに変わっていた。笑顔とは程遠く、心底嫌悪している様だ。それはお互い様であり、善吉も負けじと睨みを効かせていた。
とりあえず、2人は知らない間柄でも無い様なので 劉一は置いといて置いといて
「はいはい! めだかちゃん。僕はどうしたら良いのかな?」
生徒会長であるめだかちゃんの指示には従わないといけないだろう。それが補佐の約目でもあるのだから。
「ふむ。私1人でも問題はまったくないのだが、補佐という位置にいてくれている劉一には顔を立てんとなと思ってな」
「え?」
と言う訳で、劉一も手伝う事になったのだった。
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