戦国異伝
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第二百二十話 戸次川の戦いその四
「それに添ってな」
「戦うのですな」
「しかし戦じゃ」
信長はこうも言った。
「戦はな」
「何が起こるかわからない」
「そうじゃ」
それでというのだ。
「その時はな」
「それがしの裁量で」
「動くのじゃ、特に島津はじゃ」
この家のことも言う信長だった。
「何をしてくるかわからぬ」
「こちらの意表を衝きますな」
「だからな」
「はい、その時は」
「御主に任せる」
采配を委ねられる信長にというのだ。
「ではよいな」
「畏まりました」
信忠も頷く、こう話してだった。
織田の軍勢は先に進んでいく、その次の日にだった。
大雨が降ってだ、その結果丹羽が信忠に言った。
「兵糧が流されました」
「どれ位じゃ」
「はい」
丹羽は大雨により流された兵糧の量もだ、信忠の話した。
「これだけです」
「そうか、それだけ流されるとな」
信忠はそう聞いてこう答えた。
「不安が出来るな」
「薩摩まで攻め入りそこから帰るまで」
「幾分な」
「ではどうされますか」
「買うとしよう」
これが信忠の考えだった。
「兵糧をな」
「この地において」
「そうじゃ、すぐに商人達を呼ぶのじゃ」
信忠は丹羽に淡々として話していった。
「そして武具はどうじゃ」
「はい、そちらはです」
「大丈夫だったか」
「流されはしましたが」
それでもだというのだ、丹羽はその量も話した。
「これだけです」
「それだけならよい」
信忠はそれはよしとした。
「武具はな、しかし」
「それでもですか」
「大雨の後じゃ、手入れはよくしてくれ」
このことも言う信忠だった、そのうえで話を戻した。
「してな」
「はい、兵糧は」
「それは買う」
「この国の民達にはですな」
「出させぬ」
それはしないというのだ。
「この地は戦が続いておる、民達も疲れておる」
「これ以上疲れさせぬ為に」
「そうじゃ、兵糧は買う」
それからだというのだ。
「商人達からな」
「そうされますか」
「してじゃ」
さらに言った信忠だった。
「その兵糧を買うことじゃが」
「何か」
「余計に買う」
「余計にですか」
「島津家も兵糧を買うであろう」
「この大雨で島津の兵糧もまた」
「流されているであろう」
そのことを見越してのことだった。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「あの者達の兵糧も買ってな」
「兵糧を渡しませぬか」
「そうする、金は多く出せ」
信忠は金には糸目をつけぬとした。
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