FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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気高き敗北者
「ルーシィ!!シリル!!修行の成果見せろ!!」
「ここで勝てばまだ繋がるぞ!!」
「頑張れシリル!!ルーシィさん!!」
後ろからナツさん、エルザさん、ウェンディが俺たちに声援を送ってくれる。
「ノーラン・・・」
カミューニさんと同じ元聖十の三人衆の1人。だけど昨日俺たちを襲撃してきた時はそこまでの実力は感じられなかった。それに、こいつらはさっきグレイさんの邪魔を散々していた。こんな奴等に負けるわけにはいかない!!
「任せて!!絶対勝つから」
「必ずこいつらは倒してみせます!!」
ルーシィさんと俺はナツさんにそう答える。
「頑張ろう!!シリル!!」
「はい!!」
俺とルーシィさんは気合いを入れるためハイタッチする。
『この2つのギルドはマスター同士が親子の関係だそうですね、ヤジマさん』
『ま、違うギルドの紋章背負ったなら親も子も関係ないけどな』
チャパティさんとヤジマさんがそう言う。
『ドラマチックねぇ、しびれちゃう』
ジェニーさんだけはなぜかこの親子ギルド対決に感動してた。
『しかし、この対決は今大会注目選手の1人、ノーラン・レイビー選手がいます!!かつては聖十大魔導の称号を持っていたこのノーラン選手、果たしてどのような戦いを見せてくれるのか!?』
やはり元聖十というだけあってノーランの知名度はかなり高いらしい。観客たちもこの人を見て相当な盛り上がりを見せている。
「両チーム前へ」
俺とルーシィさんは指示された通りに一歩前へと出る。同様に敵も一歩前へと踏み出す。
「ここからは闘技場全てがバトルフィールドとなるため他の皆さんは全員場外へと移動してもらいます。制限時間は30分。その間に相手を戦闘不能状態にできたら勝ちです。なお、本日のタッグバトルに関しましては制限時間終了時により多く戦える状況にある選手が多い方が勝ちとさせていただきます」
つまりノーランかフレアのどっちかを倒して、俺とルーシィさん2人共立っていれば俺たちの勝ちってことになるのか。
「それでは第一試合、開始!!」
ゴォーン
開始の合図を告げる銅鑼が鳴り響く。
「いくわよ!!」
「はい!!」
ルーシィさんが金色の鍵を1本取り出す。
「開け!!金牛宮の扉、タウロス!!」
「MO烈!!」
タウロスさんが斧でフレアとノーランに斬りかかる。2人はそれをジャンプして交わす。
「水竜の鉄拳!!」
「がっ!!」
俺はジャンプして避けたノーランを横から鉄拳で殴り、攻撃を受けたノーランは隣にいるフレアへとぶつかる。
『なんと黄道十ニ門と滅竜魔法の連携攻撃!!先に主導権を握ったのは妖精の尻尾だぁ!!』
チャパティさんが俺とルーシィさんの連携攻撃を見てそう言う。
「わりっ!!フレア」
「いいわよ」
ノーランとフレアはすぐに体勢を立て直す。
「開け!!天蠍宮の扉、スコーピオン!!」
「ウィーアー!!いくぜ!!」
続いてルーシィさんはスコーピオンさんを召喚する。第二魔法源を手に入れたことでルーシィさんは二体同時開門ができるようになったのか。
「サンドバスター!!」
「あはははははっ!!」
スコーピオンさんのサンドバスターをフレアは髪を炎のように燃え上がらせ防ぐ。
「そらっ!!」
ノーランはフレアが弾いた砂の一部を掴むとこちらに槍に変えた攻撃してくる。
「水竜の盾!!」
ルーシィさんに飛んでいったその槍を水の盾を作りガードする。
「ありがとうシリル!!タウロス!!スコーピオンの砂を!!」
「MO!!ばっちり!!」
ルーシィさんに指示を受けタウロスさんは斧を振り上げる。
「吸収・・・」
振り上げられたタウロスさんの斧にノーランが握りきれなかったスコーピオンさんの大量の砂が吸収されていく。
「行きな、タウロス。ウィー!!」
「MO!!」
タウロスさんはフレアに向かってジャンプする。
「砂塵斧アルデバラン!!」
タウロスさんが斧を振るうとたくさんの砂嵐が巻き起こる。
「水竜の球!!」
俺はその砂嵐から身を守るために水で大きな球体を作りルーシィさんも一緒に囲う。
『これはすごい!!二体同時開門といえど大変なものですが合体技とは!!』
『あの娘、7年前とは比べ物にならないぐらい成長スたなぁ』
チャパティさんとヤジマさんがそう解説する。
「2人とも御苦労様」
「MO!!」
「ウィーアー!!」
俺が水竜の球を解除すると、ルーシィさんは一度タウロスさんとスコーピオンさんを閉門する。
「やるねぇ」
「「!?」」
ルーシィさんの攻撃が完全に決まったと思っていたら、なんとノーランとフレアは平然と立っていた。
「大丈夫?」
「ええ」
ノーランが片手で魔力の壁を作りタウロスさんの攻撃をガードしたようだ。
「金髪ぅ・・・」
フレアはルーシィさんを睨むと髪の毛を変化させていく。
「髪しぐれ、狼牙!!」
フレアの髪の毛が狼へと変化する。
「だったら・・・」
「やらせねぇよ」
俺がその髪を水で吹き飛ばそうとしたがノーランが闘技場の砂を拾い弾丸に変えて攻撃してくる。俺はそれを避ける。
「任せて!!開け!!巨蟹宮の扉!!」
ルーシィさんはキャンサーさんを召喚する。
「パッパラパラッパ、キャンサー!!」
「私の・・・髪が・・・」
キャンサーさんがフレアの髪でできた狼を切り刻む。
「ナイスキャンサー!!」
「カットならお任せ、エビ」
「敵に背中向けるなんて余裕だね」
ルーシィさんに褒められフレアとノーランに背を向けていたキャンサーさん。その隙をついてノーランがキャンサーさんを蹴る。
「エビ!!」
ノーランの攻撃を受けたキャンサーさんは星霊界へと返される。
「おのれ・・・」
「焦んな。この程度の奴らならなんとでもできる」
ルーシィさんに完全に苛立っているフレア。それを落ち着かせようとするノーラン。
「水竜の鉤爪!!」
「くっ!!」
俺はすかさずノーランに蹴りを入れる。ノーランはそれを腕でブロックする。
「赤髪!!」
ノーランに攻撃を放った俺にフレアが髪を伸ばし攻撃してくる。
「エトワールフルーグ!!」
その髪をルーシィさんが腰につけているムチで絡めとる。
「金髪ぅ!!」
「これはタッグバトルだからね!!」
互いに力を入れ引っ張り合うルーシィさんとフレア。
「これならどうだ!!」
「うおっ!!」
ノーランが剣を作り俺を斬りつけてくる。反応が遅れてしまい俺は攻撃を受けてしまう。
「水竜の咆哮!!」
「うああああ!!」
ブレスでノーランを吹っ飛ばす。ノーランは闘技場の壁へと叩きつけられる。
「ああああ!!」
「くううう!!」
ルーシィさんとフレアの方はいつの間にか互いの手足を髪とムチで掴んでおり、空中で振り回されていた。
「水竜の砕牙!!」
俺はフレアの髪の毛を砕牙で斬りルーシィさんとフレアは引き剥がされる。
『ああっと!!これは一回戦から息つく暇もない攻防戦!!親子ギルド対決!!どちらも引かない!!』
どちらも引かない五分五分の戦いを見て会場の観客たちが盛り上がりを見せる。
『妖精の尻尾の方が少し優勢に見えるわね』
『ノーランくんが苦戦を強いられているのが大鴉の尻尾としては予想外の展開だろうね』
めり込んだ壁からこちらに向かって歩いてくるノーラン。ノーランはフレアの、俺はルーシィさんのそれぞれ脇に立つ。
「ぐっ!!」
「ルーシィさん?」
ルーシィさんが顔を歪める。よく見るとさっきフレアに捕まれていた足が火傷をし、ブーツもボロボロになっていた。
「あつ・・・」
「簡単に立てまい?お前の足は私の赤髪でキズついた」
苦痛に顔を歪めているルーシィさん。フレアはそれを見て笑みを浮かべながらそう言う。
「治癒魔法を・・・」
「大丈夫!!」
俺がルーシィさんの足に治癒魔法をかけようとしたがルーシィさんは普通に立ち上がる。
「もう!!結構気に入ってたのに!!このブーツ」
「また買えばいいじゃないですか・・・」
ブーツを脱ぎ捨てながら文句を言うルーシィさん。でもそこまでダメージを受けているわけではないみたいだし、大丈夫かな?
「私の・・・焼ける髪・・・赤髪がその程度のダメージ?」
「・・・・・」
動揺を隠しきれていないフレアと立ち上がったルーシィさんに唖然としているノーラン。
「ノーラン」
「いいよ、やって」
フレアとノーランが互いを見てうなずく。
「あああああ!!」
フレアは叫ぶと赤い髪を地面の中へと潜り込ませる。
「何よ!!」
「もしかして・・・」
こいつら、ルーシィさんの足を狙うつもりか!?今ルーシィさんは足に何も履いていない。それでさっきの攻撃を受けたらいくら何でもまずいぞ!!
「俺が見ます!!」
俺は魔水晶を使って地面の中を覗く。ルーシィさんの足を狙っているのならと俺はルーシィさんの足元の地面を中心に見つめる。しかし、そこにはフレアの赤髪が来ていない。
「あれ?」
「どうしたの?」
ルーシィさんが赤髪を見つけられなかった俺に声をかける。俺はルーシィさんの足元のから徐々に徐々にフレアの方まで視線を動かしていく。フレアの赤髪が地面の入ったところまで見ると、赤髪は俺たちとはまるで別の方向に伸びていた。
「ルーシィさん、どうやらフェイクみたいです」
「そう、ならよかっ―――」
俺とルーシィさんはフレアの方へと視線を向ける。すると、そのフレアはどこかを指さしている。その方向は地面に潜り込ませた赤髪が向かっていた方向だった。
「「?」」
俺とルーシィさんは意味がわからずにそちらを見る。そこにいるのは、俺たち妖精の尻尾の応援団。
「それそれどんどん攻めんか!!レイヴンの奴等の鼻っぱしらを砕いてやれ!!」
マスターはよほど息子のイワンが嫌いなのか誰よりも大きい声でそう言っている。
「はっ!!」
「?」
ルーシィさんが何かを見つける。俺もマジマジと見てみると、アスカちゃんの後ろに赤い髪の毛がうねうねしていた。そう、フレアの赤い髪の毛が!!
「おい!!がっ」
「アスカちゃん!!うぐっ!!」
俺とルーシィさんがアスカちゃんに危険を知らせようと声を上げようとしたら俺の腹にノーランがパンチを入れ、ルーシィさんの口をフレアが赤髪で塞ぐ。
「吹っ飛べ!!」
「うあっ!!」
ノーランが俺に巨大な砲丸を作りぶつけてくる。
「きゃっ!!」
ルーシィさんはフレアに投げられ地面に叩きつけられる。
「声を出すな。これは命令。逆らったらどうなるかわかるわよね?いくら頭の弱そうな金髪でも」
フレアはルーシィさんを見下ろしながらそう言う。
「てめぇら・・・」
「なんだよ」
俺がノーランを睨み付ける。ノーランはまるで気にしていないかのような顔で俺を見下ろす。
「誰も気づかない、気づくはずがない。その気になれば、一瞬であのガキを・・・」
「殺すことさえ造作もないんだぜ?」
フレアとノーランは冷酷な表情でそう言う。
「なんて奴等なの・・・」
「許せない・・・」
ルーシィさんと俺は卑怯な手を使うノーランとフレアに怒りを覚える。
『行き詰まる攻防が続くバトルパート!!シリル・アデナウアー&ルーシィ・ハートフィリアvs.ノーラン・レイビー&フレア・コロナ!!そういえばヤジマさんが評議院にいらしたころは妖精の尻尾も今とはずいぶん違った評判だったんですよね?』
『人気もあった。実力もトップレベル。ただス問題ばかり起こスて大変ではあったがな』
『いやー、当時のことを知らない人も多いでしょうね』
チャパティさんとヤジマさんが今互角に戦いを繰り広げている俺たちを持ち上げる。
「く・・・くくくくく」
フレアは座りこんでいるルーシィさんを見て笑っている。
「声を出すな、動くな、魔法を使うな。逆らったらどうなるかわかるわよね?」
「くっ・・・」
フレアにアスカちゃんの命を握られてしまい動けないルーシィさん。無論、それは俺にも同じことが言えるわけで・・・
「金髪ぅ!!」
「シリル!!」
「ああっ!!」
「ぐあっ!!」
ルーシィさんはフレアの赤髪に叩かれ、俺はノーランの手から放たれた弾丸を受ける。
「フハハハハハハ!!」
赤髪をムチのようにしならせながらルーシィさんを殴打するフレア。
「ルーシィさん!!」
「声を出すなって!!」
ルーシィさんの名前を呼んだ俺にノーランが作った槍で攻撃してくる。
「きゃああああ!!」
赤髪によって振り回されるルーシィさん。ノーランは俺の腕を掴むと振り回されているルーシィさんにタイミングよくぶつける。
「ああっ!!」
「がっ!!」
地面に叩きつけられる俺とルーシィさん。俺たちが反撃できない理由を知らない観客からはヤジが聞こえてくる。
『これは一体どういうことでしょう?先程までの激戦からうって変わって一方的な展開に』
「くっ・・・」
アスカちゃんを見る。その横にはまだフレアの赤髪がある。
「そぉれぇ!!」
「きゃああああ!!」
フレアは赤髪を炎でコーティングしてルーシィさんを連打する。
「さっきまでは散々やられたからなぁ、その分もきっちり返してやる!!」
「うわああああ!!」
ノーランは槍に雷を纏わせ俺を何度も何度も攻撃してくる。
しばらくすると2人は一度攻撃の手を休める。その時、ルーシィさんと目があった。その目は【棄権しよう】と言っているように俺には思えた。
確かに、アスカちゃんのことを考えたら棄権して命の危険から解放してあげた方がいい。俺はしぶしぶルーシィさんの提案にうなずく。
「降参・・・」
ルーシィさんが降参しますと言うとすると、フレアがそれを邪魔するように髪で口を塞ぐ。
「ルーシィさん!!がっ!!」
倒れたまま掴まれたルーシィさんを見上げるとその頭をノーランに踏まれる。
「誰がしゃべっていいって言ったよ、金髪!!」
フレアはそのままルーシィさんの手足を拘束し身動きが取れないようにする。
「降参なんかさせないわ。これからたっぷりと遊んであげるんだから」
「お前もそこで大人しくしてなよ、シリル」
ノーランは反撃できない俺の頭をグリグリと踏みつける。
「いい?声を出さないでちょうだい。ただし、悲鳴は許すわ」
フレアはそう言うと大笑いしながらルーシィさんの口を塞いでいた髪をどける。
「そうね、まずはどうしてくれようかしら。その服ひんむいてやるのもいいわね、この大観衆で」
ルーシィさんの表情が少しずつ恐怖に変わっていく。
「それも面白そうだけど、もっといいこと思い付いちゃった」
フレアの赤髪が大鴉の尻尾のギルドマークの刻印へと変化する
「お前の体に大鴉の尻尾の焼き印を入れてやるわ。一生消えない焼き印をね」
「やめろ!!」
「だからしゃべるなって」
叫んだ俺の頭を蹴るノーラン。そしてノーランは耳元でこう呟いた。
「安心しろ、ルーシィの次はお前にその焼き印を入れてやるからよぉ」
「くそがっ・・・」
人質を取って有利になった途端にこれか。これがカミューニさんと同じ三人衆の一人なんて・・・
「どこに入れてほしい?ん?」
フレアは焼き印を入れる場所を探している。するとルーシィさんの手の甲の妖精の尻尾のギルドマークに目が止まる。
「そうか、妖精の尻尾の紋章の上にしてほしいのね」
「お・・・お願い!!それだけはやめて!!」
「しゃべるなっつったろ!!」
ルーシィさんの右手に焼き印が迫る。
「いや!!やめてっ!!」
どうする!!せめてアスカちゃんが解放されれば反撃のチャンスがあるのに!!
「「アスカちゃん」ってな!!」
ナツさんの声が聞こえアスカちゃんの方を見ると、そこにはアスカちゃんを人質としていた赤髪を焼いているナツさんがいた。
「何!?」
「あれが聞こえてたのか!?」
「!!」
「ナツさん!!」
驚くフレアとノーラン。ルーシィさんもナツさんがフレアの髪を焼いたことに気づく。
「ルーシィ!!シリル!!今だ!!」
「ありがとうございます!!ナツさん!!」
俺は自分の頭を掴んでいるノーランの足首を掴む。
「しまっ・・・」
ノーランが俺が足をつかんだことに気づいたがもう遅い!!
「うおおおおおおっ!!」
俺はノーランの足を掴みそれをフレアへと投げつける。
「なっ!!」
「ぐふっ!!」
ぶつかるフレアとノーラン。俺はそれに両手を合わせてジャンプする。
「見よう見まね・・・水竜の顎!!」
「きゃああああ!!」
「ぐあああああ!!」
ノーランとフレアのいた場所が凹む。それによりルーシィさんを拘束していた赤髪が外れる。
「ありがとうナツ!!シリル!!あとは任せて!!」
ルーシィさんは金の鍵を1本取り出す。
「開け!!双子宮の扉、ジェミニ!!」
「「ピーリピーリ!!」」
ルーシィさんはジェミニを召喚した。何をする気なんだ?
「あれ・・・やるわよ!!」
「まだ練習不足だよ」
「できるかわからないよ」
ルーシィさんにジェミニがそれぞれそう言う。
「とにかくあたしに変身!!」
「了解!!」
「ピーリピーリ!!」
ジェミニはルーシィさんへと変身する。なぜかバスタオル姿の。
「ちょっ!!/////」
「「「「「「「「「「オオッ!!」」」」」」」」」」
ジェミニの変身したルーシィさんに思わず顔が赤くなる俺と歓喜の声をあげる観客の男たち。
「何よその格好!!」
「しょうがないよ、コピーした時の服装なんだから」
「そっか、昨日のお風呂上がりに・・・」
ルーシィさんは思わず自分の犯してしまったミスに顔を伏せる。お風呂上がりに何やってるんですかこの人は。
「ふむふむ」
「見るなぁ!!」
ジェミニがバスタオルの中を観察していた。ルーシィさんはそれに怒鳴る。
「シリルも見る?」
「け・・・結構です/////」
ジェミニの問いに首を振る。ジェミニはルーシィさんから頭を思いっきり叩かれてました。
「金髪ぅ・・・」
「ジェミニを使って何する気だ・・・」
俺の攻撃をまともに受けたためにダメージを負ったフレアとノーランが座ったままルーシィさんを見る。
『これは・・・これは・・・ナイスハプニング!!』
『うむ』
『へぇ、結構出るとこ出てるわね』
実況席もルーシィさんのバスタオル姿に興奮していた。ジェニーさんはライバル心剥き出しだけど。
「シリル!!離れてて!!」
「は・・・はい!!」
とりあえずルーシィさんたちから距離を取る。しかし2人になって一体何をする気だ?
『ルーシィ・ハートフィリアが2人になった!!しかも1人はバスタオル姿!!』
『あれは双子宮のジェミニ、黄道十二門だね』
いまだ興奮状態のチャパティさんと冷静さを取り戻し解説を始めるヤジマさん。
ルーシィさんとジェミニは手を合わせる。
「「天を測り、天を開き、あまねく全ての星々。その輝きをもって我に姿を示せ」」
次第に高ぶってくるルーシィさんとジェミニの魔力。これって確かエンジェルを倒した時に使った魔法・・・
「テトラビブロスよ、我は星々の支配者。アスペクトは完全なり」」
「な・・・何よこれぇ・・・」
「この魔法は・・・」
ルーシィさんの魔法に驚くフレアと顔をひきつらせるノーラン。ルーシィさんとジェミニは合わせた手を握り合わせながら上に掲げる。
「「荒ぶる門を解放せよ!!」」
2人が背中合わせになり両手を握り合わせる。
「「全天88星・・・光る!!」」
目を開けるルーシィさん。その瞳は金色に輝いている。そして周りの景色が宇宙空間のように変わる。
「星空だと・・・何よこれぇ・・・」
「ぎりぎり防げるか・・・」
フレアとノーランがそう言う。
「「ウラノ・メトリア!!」」
たくさんの星々が光り輝き、フレアとノーランを襲い―――
バヒュン
「え?」
「は?」
突然ルーシィさんの魔法が消える。それはフレアとノーランに当たり消えたわけではなく、どういうわけか消えてしまったのだ。
「!?」
「こいつは・・・」
フレアとノーランも何が起きたのかわからず唖然としている。観客たちも何が起きたのか理解できずざわめいている。
よく見ると、ルーシィさんと一緒に魔法を放ったジェミニも姿を消している。
「かき消された・・・」
魔力の消耗が激しかったのか、フラフラしだすルーシィさん。
フレアは待機している大鴉の尻尾の仲間たちの方に視線を向ける。
「オーブラか・・・」
ノーランが何かを呟く。すると、力を使い果たしたルーシィさんが横に倒れる。
『えー、大技かと思われましたが、ルーシィの魔法は不発?ヤジマさんこれは・・・ヤジマさん?』
そのままバタンッと倒れてしまうルーシィさん。
「ルーシィさん!!」
俺が駆け寄るとルーシィさんは完全に魔力を使いきっており、立ち上がることができない。
「てめぇら・・・」
あきらかに外部の力が加わっていた。そこまでしてうちを陥れたいのか!!
「大鴉の尻尾!!」
俺が怒りに身を任せ魔法を出そうとした時、
カンカンカンカンッ
試合終了のゴングが鳴る。
『おおっと!!ここで時間切れ!!現在戦闘不能状態にあるのはルーシィただ一人。よって今大会タッグバトルルールにより勝者、大鴉の尻尾、フレア・コロナ&ノーラン・レイビー!!』
素早く立ち上がり倒れたルーシィさんを見下ろすフレアと俺をじっと睨むノーラン。
会場は大鴉の尻尾の勝利に大歓声を上げる。
「わ・・・私の勝ちだ。ざまあみろよ金髪ぅ。みっともない!!無様!!負け犬!!あははははは!!」
ルーシィさんをバカにするフレア。それとは反対にノーランは不機嫌そうに押し黙っていた。
「なんだよ今の!!魔法不発かよ!!」
「ダセー!!』 」
「これで大鴉の尻尾は18点、妖精の尻尾はくぷぷ・・・いまだに0点」
会場中がルーシィさんの魔法の不発を大笑いする。
「よき魔闘でした」
カボチャがそう言うとフレアとノーランは闘技場を後にする。
「残念だったな、シリル」
「てめぇ!!」
俺は悪びれもしないノーランに怒りを覚え掴みかかろうとした。しかし、闘技場に入ってきたナツさんにがっしり掴まれ止められる。
「やめろ、シリル」
「止めないでくださいよナツさん!!」
ナツさんを振り払おうとするが強めに押さえられているため身動きができない。
「悔しいのはお前だけじゃねぇ」
ナツさんが顎をクイッとするのでルーシィさんの方を見ると、目を覆い涙を流していた。
「わかったか、ここは抑えろ」
「・・・はい」
俺はナツさんにうなずき解放される。ナツさんはその足でルーシィさんへと歩み寄る。
「泣くな、ルーシィ」
「だって・・・悔しいよぉ・・・」
ルーシィさんは倒れたままナツさんにそう言う。
「涙は優勝した時のためにとっておこうぜ」
ルーシィさんは目をこすりながら上体を起こす。
「すごかったぞ。おかげで俺たちはこの世界で戦えるってわかった。0点?面白ぇじゃねぇか、ここから逆転するんだ」
ナツさんはルーシィさんに手を差し出す。ルーシィさんはその手を掴む。
「うん・・・燃えてぎた」
ルーシィさんの顔は涙でボロボロになっていた。ナツさんとルーシィさんはそのまま闘技場から出ていく。俺もそのあとに続いたが、途中で立ち止まり反対側の出入り口を見る。そこにはこっちを笑いながら見ていたノーランとフレアがいた。
「大鴉の尻尾・・・いや、ノーラン。この借りはかならず返してやる」
俺はそう言い、闘技場を後にした。
後書き
いかがだったでしょうか。
カミューニと比べるとノーランがあまりにも弱い・・・一応理由はありますがそれにしては弱すぎる。
それだけシリルが成長してるんですかね?そういうことにしておきましょう。
次は残りのバトルパートです。
次回もよろしくお願いします。
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