FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
新規ギルド
『まずは予選8位、過去の栄光を取り戻せるか?名前に反した荒くれ集団、妖精の尻尾!!』
俺たちが入場すると実況のチャパティがそう会場全体に響き渡るようにアナウンスする。それを聞いて先頭に立つナツさんは高々と拳を掲げるが、俺たちに会場の観客から浴びせられたのは罵声にも似たブーイングの嵐だった。
「何ぃ!!」
「ブーイングだと!?」
「何なのこれ?」
「ひどすぎるでしょ」
ナツさん、グレイさん、ルーシィさん、俺はこのブーイングの嵐に戸惑ってしまう。
『毎年最下位だった妖精の尻尾が予選を突破し、すでに8位以内確定ですからねぇ。大陸中を騒がせた天狼組の帰還により、フィオーレーとなるか!?』
そうか、俺たち去年までは超弱小ギルドだったから人気なんて物が欠片もないんだ。だからこんなにみんなブーイングしてるのか。
「うぅ・・・」
「あぅ・・・」
ルーシィさんとウェンディはこの大ブーイングにガッカリと肩を落としている。
「気にするな」
エルザさんは2人にそう声をかける。
『ホントよかったねぇ。おめでとう妖精の尻尾』
解説のヤジマさんが俺たちにギリギリ聞こえるくらいのアナウンスでそういう。
「応援始めぇ!!」
そんな俺たちの耳にわずかだが、しかしとても大きくて力になる声援が聞こえてくる。
「仲間の声援があればそれでいい」
「うん」
「そうですね」
マスターたちの声援のおかげでルーシィさんとウェンディは気持ちを立て直すことに成功したみたいだ。
「ん?」
「ちょっと待ってくださいよ?」
「てかあれ・・・」
「うそ!?」
「まさか・・・」
「あの人って・・・」
俺たちは応援してくれる妖精の尻尾の皆さんの方を見るとそこには1人いるはずのない人がいた。
「フレー!!フレー!!妖精の尻尾!!」
「マスターメイビス!!」
なんと天狼島で俺たちを助けてくれた妖精の尻尾初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンさんだった。
「フフフフッ、応援に来ちゃいました」
「き・・・来ちゃいましたってあんた・・・」
「大丈夫です。ギルドの紋章をつけた人しか私のことは見えてませんから」
初代は慌てるマスターにそう言う。
「いやぁ、そういう問題なのか?」
マスターは初代の大丈夫という理由にそう言う。
「だって、ずっと天狼島にいるのも暇なんですよ?」
初代は笑顔でそう言う。さすが妖精の尻尾初代マスター、自由ですね。
「なっはははは!!初代が見守ってくれるとは心強ぇなぁ!!」
「いわゆるひとつの勝利の女神って奴ですね!!」
「幽霊だけどな」
応援に駆けつけた初代の姿を見てナツさんと俺は喜び、グレイさんは冷静にそう言う。
『さぁ!!続いては予選7位通過、地獄の猟犬軍団、四つ首の猟犬!!』
「ワイルドォ!?」
「「「「「フォー!!」」」」」
アナウンスの声と共にギルドマークの入った旗を振りながらなんともテンションの高い男たちが入場してくる。それと同時にさっきの俺たちとは違い大きな歓声が起こる。
「今年こそ優勝したれや、野郎共」
四つ首の猟犬のマスター、ゴールドマインがそう言った。
『予選6位通過!!女性だけのギルド、大海原の舞姫、人魚の踵!!』
「そんなギルドがあったのか!!」
アナウンスを聞いてハッピーがそう言い、うちの応援席の男性陣は目をハートにしていた。
『5位は漆黒に煌めく青き翅、青い天馬!!』
『みんなぁ!!頑張れぇ!!』
俺たちと面識のある青い天馬は一夜さんを先頭にヒビキさん、レンさん、イヴさんもいる。その後ろに無限時計で少しだけ話したタクトさんもいた。でもあの青いうさぎは何だ?
『続いて予選4位!!愛と戦いの女神、聖なる破壊者、蛇姫の鱗!!』
ピンクの煙の中から現れたのはさっきまで俺と色々と話していたレオンがいる蛇姫の鱗だった。ギルドのエース格であるリオンさんを先頭に俺たちが天狼島から帰還したあとギルドに挨拶に来た犬っぽい人と眉毛の人、ジュラさんとさっきレオンを呼びに来てたビックテールの女の子が並んでいた。
「なんで予選4位なんだい!!手を抜いたのかいバカ者!!」
そう言ったのは蛇姫の鱗のマスター、オーバ・ババサーマ。確か蛇姫の鱗って去年までずっと2位だったらしいから予選4位というのは不満があるんだろうな。
「ごめんなさいオババ様。あたしとレオンがドジしちゃって・・・きゃっ!!」
ビックテールの女の子が観客席にいるオーバさんの方を見上げながらそう言うと何かにつまずいたのか前のめりに転びそうになってしまう。
ガシッ
しかしそれを後ろにいたレオンが抱き締めるようにして支えた。
「大丈夫?」
「うん。ありがとうレオン」
後ろから抱き締めている形のレオンと抱き締められているビックテールの女の子。それを見た俺とウェンディは、
「「おお~!!」」
なんだか恋人みたいな形になっている2人に見とれてしまっていた。
「誰だあいつら?」
「いつもの愛はどうした?愛は」
ナツさんとグレイさんが見慣れない2人を見てそう言う。グレイさんの言う愛ってシェリーさんのことかな?確かに愛を強調してますもんね、シェリーさん。
「シェリア、慌てるな」
「ごめんね、リオン」
レオンに立たせてもらったシェリアという女の子にリオンさんが声をかける。
「そうそう、慌ててもいいことなんてないからね」
「お前は逆に少しぐらい慌てる心を持て!!レオン!!」
「うわぉ!!俺だけ風当たり強ぇ!!」
どことなくのんびりしているレオンにリオンさんが怒鳴る。予選も遅刻するくらいだし、レオンってのんびり屋なのかもね。
「シェリアはシェリーの、レオンはリオンのいとこなんだ」
「いとこ?」
「おおーん!!めちゃくちゃ強いんだぞ!!」
眉毛の人と犬っぽい人が説明してくれる。シェリアちゃんはシェリーさんのいとこなんだ。そういえば7年前の魔法コンテストでレオンと一緒にシェリーさんのいとこがいたな。あれがあの子なんだ。
「ううん、あたしなんかまだまだ“愛”が足りないの」
「褒めてんだよ!!」
シェリアさんは犬っぽい人に怒鳴られ耳を塞ぐ。
「キレんなよそんなことで」
「トビーさんはすぐキレるよね。飲む?」
「おおーん!!」
眉毛の人がトビーという犬っぽい人に注意し、レオンがトビーさんにどこから取り出したのか牛乳を手渡す。
怒りやすいのはカルシウムが足りないとは言うけど、あの牛乳どこから取り出したんだよ・・・
「やっぱいとこも愛なんだな」
グレイさんはシェリアさんがシェリーさん同様に愛を強調しているのを聞きそう言う。するとレオンが俺の方へと歩いてきた。
「やぁ、シリル。さっきぶり」
「どうも、レオン」
レオンが手を上げ挨拶するので俺も同様に手を上げて挨拶する。
「知ってんのか?」
「さっき知り合ったんです」
グレイさんが俺がレオンを知っているのか聞いてきたのでそう答える。
「てか7年前の魔法コンテストでリオンさんと一緒に来てた金髪の女の子みたいな男の子ですよ?レオンは」
「な!?マジか!?」
グレイさんはレオンをマジマジと見つめる。確かにいくらなんでも変わりすぎだもんね。女の子の格好も可愛かったけど今はすげぇ格好いいし、羨ましいかぎりだね。
「グレイ」
レオンのことを観察しているグレイさんにリオンさんが声をかける。
「あの約束忘れるなよ」
リオンさんはそう言うけど、あの約束って何?
「ん?」
「俺たちが勝てば、ジュビアを我がギルドに」
リオンさん・・・どんだけジュビアさんのこと好きなんですか・・・
「約束なんかした覚えはねぇけど、お前らだけには負けねぇよ」
グレイさんは笑みを浮かべながらそう言う。それを見て俺とレオンが「ヒューヒュー♪」とか言ってたら俺はグレイさんに、レオンはリオンさんに怒られました。
「そういうことなら、私はエルザさんをいただこう!!」
「勝手にいただくな!!」
リオンさんとグレイさんのやりとりを見て一夜さんがエルザさんへと近づく。
「くんくん、相変わらずいい香りだ」
一夜さんはエルザさんの香りをくんくんと嗅いでいる。一歩間違えればただの変態ですよね。
「俺はお前にするよ。別に好きで選んでるわけじゃねぇぞ」
「あんた・・・そのキャラ7年もやってたの?」
レンさんはルーシィさんに手を出そうとしていた。ルーシィさんはレンさんの相変わらずのツンデレキャラにそう突っ込む。
「じゃあ僕はウェンディちゃんを!!」
「え?あの・・・」
イヴさんはウェンディの手を握りしめる。ってちょっと!!
「ダメですよイヴさん!!ウェンディは俺のです!!」
「じゃあシリルちゃんにしとこうかな?」
「そうじゃなくて!!」
イヴさんを止めようとしたら逆にこっちの手を握ってきた。まだ俺のこと女の子だと勘違いしてるのかこの人。
「僕は人魚の踵に入ろうかな?」
「主題がずれてるよ!!」
ヒビキさんが人魚の踵に入ると言い出したのにトビーさんがキレる。突っ込みとしてはナイスですよ、トビーさん。
「じゃあ俺は君にしようかな?」
そう言ってどこからか現れたのは無限時計で俺たちを一夜さんと一緒に助けてくれたタクトさんだった。で、タクトさんが手を握った相手はというと・・・
「お前、ふざけてんのか?」
なぜかナツさんだった。何してんのあの人!?
「タクト・・・お前慣れないことはしない方がいいと思うぞ?てかその人どう見ても男だし」
「むしろ俺が慣れないことにチャレンジしたんだから褒めてしかるべきだと思うけどなぁ」
「この口か!!この口がそんなこと言うのか!?」
レオンがそう言ってタクトさんの口をバチバチと叩く。ただ身長差が結構あるから叩くのにジャンプしないと届かないのが見てて面白い。
「あれ?2人は知り合いなの?」
「うん。仕事先でたまに一緒になるんだ」
「そういうこと」
レオンとタクトさんは俺の質問にそう答える。いいね、ギルド間を越えた友情って奴かな?
「シェリア!!」
「きゃっ!!」
俺たちが話している後ろでシェリアさんに1人の女の子が抱きつく。あれは人魚の踵にいた子かな?
「ソフィア!?あなたもこの大会出てたの!?」
「うん!!だって大会中の接触は不可抗力でしょ?」
ソフィアと呼ばれた女の子はシェリアさんのまだ小ぶりな胸を掴んでいる。あれってセクハラ・・・いや、女の子同士だからいいのか?
「レオン!!助けて!!」
「いいじゃんシェリア!!女の子同士なんだからぁ」
レオンに助けを求めるシェリアさんとあくまで逃がさないソフィアさん。
「あの2人も仲いいの?」
「まぁ俺ら4人は年齢近いからな」
「よく仕事先でも会うし、それなりに仲はいいと思うよ」
俺の問いにレオンとタクトさんが答える。へぇ、レオンたちは年齢近いんだ。てかタクトさんこの身長で年齢近いの?少し怖いんだけど・・・
「ねぇ、あっちも見たことない人だけど・・・」
ルーシィさんの視線の先にいるのは青い天馬の残りの1人・・・てか人じゃなくてウサギの着ぐるみだった。ウサギの着ぐるみはかっこよくポーズを決める。
「あの中って誰が入ってるんですか?」
俺は気になったのでタクトさんに聞いてみた。
「さぁ?俺もヒビキさんたちも知らないよ?」
「え?」
タクトさんの返しに思わず声を出す俺。同じギルドなのに知らないってありなの?
「それってあの人ギルドの人間かわからないってことか?」
「うん。俺は見たことないよ」
「それってルール的に大丈夫なの!?」
「まぁ大丈夫なんじゃない?」
レオンといつのまにかシェリアちゃんから離れてこちらに来ていたソフィアちゃんが質問するとタクトさんは適当にそう答える。いいのかよ本当にそれで・・・
『続いて、予選通過3位!!』
俺たちが闘技場の中で盛り上がっているとそんなアナウンスの声が聞こえる。そうだ!!まだ予選通過チーム全部は出てきてなかったんだ!!
『おーっとこれは意外!!初出場のギルドが3位に入ってきた!!真夜中遊撃隊、大鴉の尻尾だぁ!!』
黒い煙の中から姿を現す魔導士たち。それを見てマスターたちの表情が一変する。
「大鴉の尻尾だぁ!?」
「これは、マスターの息子のイワンのギルド」
ナツさんとエルザさんがそう言う。
「でもそれって・・・」
「闇ギルドのはずだろ?」
ルーシィさんとグレイさんがそう言う。闇ギルド!?
「こんなのが大魔闘演舞に参加していいのか!?」
マスターが観客席から怒りの声を上げる。いくらフィオーレ一のギルドを決める祭りだからって、闇ギルドまで参加していいのかよ!?
『えー、公式な情報によりますと、大鴉の尻尾は7年以上前から存在してましたが正規ギルドとして認可されたのは最近のようですねぇ』
『うむ。ギルド連盟に認可されている以上、闇ギルドじゃあないよなぁ』
実況のチャパティさんと解説のヤジマさんがそう言う。すると、俺はその大鴉の尻尾にある男を見つけた。
「お前は・・・」
「昨日の・・・」
俺とウェンディが見つけたのは昨日俺たちを襲い、シャルルとセシリーを魔力欠乏症にしたノーランの姿だった。
「よ!また会ったな」
俺たちにそう言うノーラン。エルザさんはそれを見て驚きの顔を浮かべる。
「貴様・・・なぜそんなギルドに・・・」
「別に、どこにいようが俺の勝手でしょ?」
エルザさんの質問にノーランはそう答える。どうやらこのノーランは本物らしい。つまり、偽物が俺たちを襲撃してきたわけではないということだ。
「妖精の尻尾、猫どもは挨拶変わりだ」
先頭に立つ仮面の男がそう言うと、昨日ノーランの肩に乗っていた黒い生き物の顔がシャルルの物に変わり、コテンッと倒れてみせる。
「お前らがシャルルとセシリーを・・・許さねぇぞ・・・」
早くも一触即発の俺たちと大鴉の尻尾。
「祭りを楽しもう」
それだけ言い残し、大鴉の尻尾は俺たちから離れていく。
シャルルとセシリーをやられた恨み、必ず返してやるからな!!
『さぁ!!予選突破チームも残すところあと2つ!!』
アナウンスの声で一度冷静さを取り戻す俺たち妖精の尻尾。1つは剣咬の虎というのは間違いないだろ?あと1つはどこだ?
「まだ強ぇギルドが隠れてやがったか」
「ジェラールが言っていた魔力と関係あるのか?」
グレイさんとエルザさんがそう言う。俺たちは次のチームが入場する入り口へと視線を向ける。
『予選2位通過!!おおっとこれは意外!!落ちた羽の羽ばたく鍵となるのか!?まさかの・・・まさかの・・・
妖精の尻尾Bチームだぁ!!』
入場してきたのはメンバーを見て驚く俺たち。
「ミラさん!?」
「ガジル!?」
「ジュビア!?」
「エルフマンさん!?」
「ラクサスとか反則でしょ!?」
俺たちは同じギルドのメンバーであるミラさんたちの登場に声を上げずにはいられない。
「妖精の尻尾がもう1チームとは」
一夜さんはなぜか俺たちのギルドから2チーム出ているのにそこまで驚いた様子もなくそう言う。
「つーかつーかつーか!!なんでミストガンがいるんだよ!!」
ナツさんはBチームの後ろにいるミストガンを指さしてそう言う。ミストガンはエドラスに帰ったからここにいるはずないのに、なんでここにいるんだ?
「まさか・・・お前ジェラール・・・?」
エルザさんがそう言うとミストガンは口元に人差し指を持ってきて「シーッ」と言う。
「「「マジか!?」」」
なんといきなり俺たちもルール無視。ギルドメンバーじゃない人を使ってしまうという展開になってしまった。
「ジュビア」
「へぇ、あれがジュビアさんね」
「あの人がリオンの“愛”する人?」
リオンさんはジュビアさんを見つめ、レオンとシェリアちゃんがそう言う。
「どういうことなんだよ。なんで妖精の尻尾から2つも出てんだ。ワイルド過ぎんだろ」
四つ首の番犬の人がそう言う。確かになんでうちだけ2チーム出てるんだろうな?
『いやー、今回からのルール改正により戸惑っている方も多いみたいですねぇ、ヤジマさん』
『ああ、今回の大会では各ギルド1チームないス2チームまで参加できるんだよなぁ』
チャパティさんとヤジマさんがそう言う。今年からそんなルールができてたんだ。それも予選を作った1つの理由なのかな?
「そんなの聞いてなかったよ!!マスター!!」
「内緒にしてるなんてひどいです!!」
「がーはっはっはっはっ!!見たか!!これが妖精の尻尾じゃあ!!」
ルーシィさんとウェンディにマスターが大笑いしながら答える。
『決勝では各チームごとの戦いになるわけですが、同じギルド同士が争うことができるのでしょうか?』
『大丈夫じゃないかね?あそこは』
心配するチャパティさんとそう返すヤジマさん。うちは毎日ギルド内でケンカしてるからな。多少の殴り合いなら問題ないと思うけどね。
『でも、ちょっとずるくない?例えば各チーム1人ずつ選出して争う競技があったとして、妖精の尻尾だけペアで戦えるってことだよね?』
『100以上のチームの中、決勝に2チーム残った妖精の尻尾のアドバンテージということですね』
ジェニーさんとチャパティさんがそう言う。
『ハッハッハッ、これは有利になったね、マー坊』
『ま・・・マー坊?』
ヤジマさんのマー坊という単語にチャパティさんは?マークを浮かべる。もしかしてマスターのことか?マカロフさんだからマー坊ってことかな?
「そっか、だから参加チームが多かったのね」
ルーシィさんが昨日のカボチャが言っていたギルド数の多さをそう解釈する。なるほど、そう言うことだったのか。
「冗談じゃねぇ!!」
ナツさんがBチームの前に立つと会場中に聞こえるぐらいの大きな声でそう叫ぶ。それにより会場の全員があっけにとられていた。
「例え同じギルドだろうが勝負は全力手加減なしだぁ!!別チームとして出場したからには敵!!負けねぇぞこの野郎!!」
「臨むところだよ、予選8位のチームさん」
「ぐっ・・・」
ナツさんはガジルさんに痛いところをつかれ狼狽える。しかしガジルさんなんか強くなったのが肌でわかる感じがするなぁ。よほどすごい修行をしたのかな。
「ジェ・・・ミストガン・・・お前・・・」
「中々話のわかるマスターだ。事情を話したらここをよく承諾してくれたよ」
ジェラールはどうやらこの大会に謎の魔力が感じられることをマスターに伝えたらしい。それで特別に参加させてもらったわけか。
「会場には近づけんと言っていただろ」
「あの時は、この方法を思い付かなかったんだ」
「ルール違反だ。お前はギルドの人間じゃない」
「俺とミストガンはある意味同一人物と聞いているが・・・」
コソコソと言い争っているエルザさんとジェラール。するとジェラールの後ろからラクサスさんが肩に手を回す。
「ま、そう熱くなるな。“祭り”だろ?なぁ?ミストガン」
「そういうことだ。エルザ」
ラクサスさんとジェラールにそう言われエルザさんはまだ少し納得できないようだ。
「それとなぁミストガン、ミストガンはもう少し無口だ。気を付けな」
「了解」
ラクサスさんに注意されるジェラール。もしバレたら俺たちが脱獄犯を匿ってたことになるのかな?まぁその時はその時だけど。
その後もエルザさんとジェラールは謎の魔力について少しを話をしていたけど、どうやら今年はまだその魔力を感じていないらしい。大会中になんか起こるのかな?俺もわかるかわからないけど一応注意はしておこっと。
『さぁいよいよ予選通過チームも残すところあと1つ!!』
チャパティさんがそう言うと会場中が今までで一番の盛り上がりをみせる。もうどのギルドが出てくるのかわかっているからだろう。
『そう、皆さんすでにご存じ!!最強!!天下無敵!!これぞ絶対王者!!剣咬の虎だぁ!!』
そして姿を現す絶対王者、1人は両手を広げ観客の声援に答えながら現れた金髪の男。その隣には黒い髪を無造作に伸ばし静かに歩いてくる男。その後ろには薄い紫色の髪をオールバックにし手を振りながら現れた男。
その後ろにいるのは薄い水色のショートヘアの女の人。さらには薄い緑色の髪を伸ばした男が拳を掲げ入場し、最後に姿を現したのはまるで舞踏会のような仮面を着けた男が赤い帽子を抑えながらやってくる。
「出てきたな」
「楽しもうぜ、ナツさん」
ナツさんと金髪の男は面識があるらしく互いを見据えてそう言う。
「何ガンたれてんだよコラ」
「ガジル」
その隣の黒髪の男はガジルさんを見ていた。何かあるのか?
「ん?」
俺は視線を感じそちらを見る。黒髪の男のそばにいるオールバックの男が俺を見てほくそ笑んでいた。
「なんだ?」
意味がわからなかったけどこっちも笑みを返す。男はそれを見て頭をかきむしっていた。まるで自分の言いたかったことが伝わらなかったみたいな顔をしている。何か文句あるなら直接言おうか?
「あれがフィオーレ最強のギルドか」
グレイさんが剣咬の虎を見てそう言う。俺が何気なく視線を観客席に向けると剣咬の虎の応援席にエクシードが3匹いた。もしかしてセシリーたちと一緒にこっちに送り込まれたエクシードかな?元気そうでよかったな、今度エクシードたちにでも教えてあげようかな。
『これで全てのギルドが出揃ったわけですが、この顔ぶれを見てどうですか?ヤジマさん』
『若いっていいねぇ』
『いや・・・そういうことじゃなくて・・・』
ヤジマさんに思ったような回答を得られずに唖然とするチャパティさん。
『で・・・では皆さん!!お待ちかね大魔闘演舞のプログラム発表です!!』
チャパティさんがそう言うと闘技場の地面から版のようなものが現れる。そこには1日目、2日目・・・と書かれており、それぞれの日に『???』と『battle』という文字が記されていた。
「1日に競技とバトルがあるのか」
「バトルか」
「よかったじゃないですか、ナツさん」
グレイさん、ナツさん、俺がボードを見ながらそう言う。
『まずは競技の方ですが、これには1位から8位までの順位がつき、その順位により各チームにポイントが振り分けられます』
ボードにそのポイントの内訳が書いてある。1位が10点、2位が8点、3位が6点、4位が4点、5位が3点、6位が2点、7位が1点、8位が0点となっているようだ。
『なお、競技パートはチーム内で好きな選手を選ぶことができます。ただし、同じ選手が2日連続で競技パートに参加することはできません』
2日連続で出れないってことは1日目に出ちゃったら仮に2日目が得意そうな競技だと出れなくてポイントが稼げなくなりそうだな。競技パートも選手選びは重要か。
『続いてバトルパート、こちらはファン投票の結果などを考慮して主催者側でカードを組ませてもらいます』
「なんだと?」
チャパティさんの説明にエルザさんが反応する。
「勝手にカードが組まれるのか」
「つまり、運が悪いと競技パートで魔力を使いきったあとにバトルパートに突入?」
グレイさんとルーシィさんがそう言う。でも条件は全チーム一緒だし、気にすることはないだろう。
『バトルパートのルールは簡単!!各チーム対戦していただき、勝利チームには10ポイント、敗北チームには0ポイント、引き分けの場合は5ポイントずつ入ります』
じゃあ競技パート8位でさらにバトルパートも負けると1ポイントも入らないのか。そうなったりしたらかなり厳しいだろうな。
『ではこれより、大魔闘演舞オープニングゲーム『隠密』を開始します!!』
そう言うとボードに大きく隠密と表示される。
『参加選手は各チーム1名、ゲームのルールは全選手が出揃ったあとに説明させていただきます』
隠密・・・どんなゲームなのかな?そういえば昔隠匿って魔法があったよな?あれと何か関係あるのかな。
「まずオラにまかせるだ!!」
「忘れるな、魂はいつでも」
「「「「「「ワイルドフォー!!」」」」」」
なんと早いことかすでに選手を決めたギルドが出てきたようだ。
『まず名乗りをあげたのは四つ首の猟犬のイェガー!!』
会場の魔水晶ビジョンに参加するイェガーさんの顔が映し出される。
「最初は様子見、アチキにやらせて!!」
「許可しよう」
「頑張れべスさん!!」
『人魚の踵からはベス・バンダーウッド!!』
続いて女性だけのギルド、人魚の踵が名乗りを上げる。
「まずはナルプディング、お前がいけ」
「了解でさ」
『大鴉の尻尾からはナルプディング!!』
次に出てきたのは俺たちを昨日襲ったノーランがいる大鴉の尻尾。
「僕が出るよ」
「待ちたまえ、イヴくん」
青い天馬ではイヴさんが出ようとしていたがそれを一夜さんが止める。
「タクト、君が行きたまえ」
「はい!!一夜さん!!」
『なんと青い天馬からは今大会最長身、タクト・オリヴィエ!!』
やっぱりタクトさんはでかいんだな。この大会に出てる人で一番高いのか。でもそれって隠密に向いてない気がするけどね。何か作戦があるのかな?
「私が出よう。今日は小鳥たちの歌声が心地よい」
『大注目!!剣咬の虎からは赤い月に歌う吟遊詩人、ルーファス登場!!』
そのアナウンスと同時に会場が今日一番の盛り上がりを見せる。
「なんでこんなに騒いでるんだこの野郎!!」
「人気度が高いんですね」
ナツさんと俺が観客たちの声援を聞いてそう言う。
「ゲームのルールはわからんが隠密ということは、隠れることが必須か」
「となると、シリルかウェンディのどっちかがいいと思うけど・・・」
エルザさんとルーシィさんが俺とウェンディに視線を向ける。だったらここは俺が行くべきかな?いきなりウェンディに任せるのは可哀想だし。
「小さい方が有利かもしれないなら、あたしかレオンかユウカだね」
「小さい言うな」
シェリアちゃんとユウカさんがそう言う。レオンはリオンさんに近づいていく。
「ここは俺が様子を見ようか?リオンくん」
「いや・・・」
レオンがリオンさんに自分が出ようか聞いたがリオンさんの答えはNOみたいだ。
「初めから飛ばしていく。俺が出る」
『蛇姫の鱗からはリオン・バスティアだぁ!!』
ラミアはリオンさんが出るのか。いきなり勝負に出ましたね。
「ほう、だったら俺が出よう。この大会どんなもんか見させてもらうぜ」
『妖精の尻尾Aチームからはグレイ・フルバスター!!』
リオンさんに対抗してグレイさんがうちからは出ることに決まった。
「あーん!!グレイ様が出るならジュビアも!!」
「オイ!!わざと負けたらただじゃおかねぇぞ!!」
『妖精の尻尾Bチームからはジュビア・ロクサー!!』
グレイさんが出るならジュビアさんも出るとは思ってたけど、本当に出てきたよ。ジュビアさんじゃグレイさんを攻撃できないと思うけど、大丈夫なのかな?
『以上、8チームより参加選手が決定しました!!そしてオープニングゲーム隠密、そのルールとは・・・』
ついに始まる最初のゲーム。一体どんな競技なのか、じっくりと見させてもらいましょうか。
後書き
いかがだったでしょうか?
ついにオープニングゲームが開幕しました。
そしてさっそく特別ルール、『2日連続で同じ選手が競技パートには出れない』これはのちのち活かしていく予定です。
次回は当初の予定通りオリキャラたちの紹介です。ただ、魔法はまだ伏せておきますのでご了承ください。
次回もよろしくお願いします。
ページ上へ戻る