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魔法少女リリカルなのは 絆を奪いし神とその神に選ばれた少年

作者:レゾナ
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第二十四話 過去

先ほどの部屋を所長らしき人物が出て行った扉から出る。

先頭を歩くのは全。それに付いて行くフェイトとアリシア、そしてるい。

角につく度に一度皆を止めて、角の先を確認しながら全は進んでいく。

全はこれから先の道、罠がないとも限らないと考えている為、このように慎重に進んでいる。

「「…………………」」

先ほどから全の後ろに子供のようについてくるアリシアをフェイトが全としては心配だった。

先ほどの衝撃からまだ抜け出せていないのだろう。

一言も喋らない。

『ぜ、全?どうにかしてくれない、この空気?』

『無理だ』

『即答!?』

るいは念話でどうにかしてくれと全に頼むが全はそれを即拒否する。

というのも

『これはあの二人の問題だ。他人がどうこう言う問題じゃない』

『それは確かにそうだけど……』

『それに他人に何か言われて解決なんてその程度の問題でしかない。こいつらの問題は二人だけにしかわからない問題だ。二人と同じ境遇の人間でもいればいいんだがな』

『全……』

そう、このクローン問題というのはそもそもクローン同士じゃなければ分かりえない問題だ。

それは他人がどれほど気にするなと言っても心の奥底で燻ってしまう。

それ程、重い問題なのだ。

『だから、不用意に話しかけない事にしたんだ。まあ、問題が解決……つまり、この研究所から出れば戻ると思うから、それまで我慢しろ』

『…………その問題が解決したら、二人がライバルになる可能性があるからなんだけどな……』

『ん?何か言ったか?』

『何でもない。それに今考える事でもないし』

そう言って念話を切るるい。

るいは考える。この問題を解決した後、二人の記憶が戻るかもしれない。

全はその仮定の話を考えていないのだろう、ただ純粋に二人を手助けしたいと思っている。

それはつまり……あの時アリサ達と話していた仮説が事実だという事になる。

【そういえば……全の家にある写真に赤い髪の女の子と全が写ってる写真があったけど……もしかして、あれがるいだったのかしら?」】

【え?】

【全君の家に行った時にね、写真立ての中に今アリサちゃんが言った写真があったの。後は私達と写っている写真と……後、三枚あったね】

【でも、その三枚に写っている人物がね……よぉく知っている人物達なのよ】

【……もしかしてだけど、なのは達?】

【……もしかしなくても、その通りよ】

この仮説が本当で、しかもアリサ達が見た写真の皆は幸せそうだったという。

自分やアリサ、すずかが全を好きになっていたのだ。それはつまり、他の皆も過去に全に出会い、全の事が無意識の内に好きになっているという可能性だってある。

(……ま、こんな可能性、考えるだけでダメダメなんだけどね。今はあまり二人に負担を掛けないようにするのが私の役目だし)

そう考えを纏めてるいは前を行くフェイトとアリシアを見る。

(そう、まずはこの二人にきっちり立ち直ってもらわないと。その為に全は頑張ってるんだし)

るいはそう思い、歩みを止めずに全達についていった。







その頃、全は過去を思い出していた。

ミッドチルダに住んでいた頃の記憶だ。全の両親が魔導師だった事もあってである。

全自身にも陸戦魔導師としての才能があった事もあったのだろう。

その日は。父のかねてからの友人である研究者の家にやってきていた。

「やあ、久しぶりだな、プレシア」

「あら、秀二じゃない。久しぶりね、管理局にはもう所属していないんじゃなかった?」

その研究者は顔立ちが若い事から相当優秀な研究者だなと全はわかった。

全の過去にも優秀な研究者はいた。彼女もまた優秀だったのだが……いかんせん、危険な発明しかしていなかった。

端末さえあればどこでも活動出来る使用者を守る自動防衛型の円盤、充電式ではあるが機関銃などを搭載していた彼女のバッグの中に納まっていた機械の犬。

その他にも色々と開発していた。

「ああ、だけどちょっと魔法に関してこの子が興味を持ってな」

「この子?あら……お名前は?」

女性が全と視線を合わせるように腰を折る。

「……橘全」

「全君、か……いい名前ね、年齢的には私の娘と同い年位か」

「娘だぁ?お前に娘……というか夫がいるのか?ちょっと意外」

「秀二?」

「すいませんでした」

この女性は怒らせたら怖い。この時、全はそう思った。

「お母さん?」

と、扉の奥の方から声がした。まだ幼い声だった。

「あら、アリシア。起きたの?」

「うん……」

瞼をごしごししながら歩いてくる女の子。背丈は全と同じくらいか。金髪という所がちょっと親と似ていないと全は思う。

「金色の髪、か……うん?金色って事は……ああ、お前の夫ってアリットなのか」

「ええ。アリット・カルヴァドス。婿養子だから今はアリット・テスタロッサね」

「へぇ、あいつがね……まあ、お前への好意を隠してなかったからな。それに気づかないお前もお前だったけど」

「その言葉、そっくりそのまま貴方に返すわね。アトレがどうやれば秀二に自分の好意を気づかせれるの?って私に泣きついてきたのよ?」

「お前に泣きついてきたって所でもう重症だったんだな」

「貴方、一旦黙りましょうか?」

「黙らせれるもんなら黙らせて見ろ?俺は全盛期程の力は出せないにしろ、それでもそこそこ強いぞ?」

「あら?それじゃ修練場に行きましょうか?」

そう言って二人はその場を去ってしまう。残されたのは全と少女だけだ。

ちなみにアトレというのは秀二の妻。こちらも魔導師として優秀だった。

「えっと……君、名前は?」

「橘全……君は?」

「私?私はアリシア!アリシア・テスタロッサだよ!」

どうやら眠気が吹っ飛んだらしい。元気な声でそう全に返事した。

「全君、遊ぼう?」

「ああ、別にいいが……」

「それじゃ、早く早く!」

これが、アリシアと全の最初の出会いだった。







(思えば、あの時からだったんだな、アリシアの元気な所は……)

警戒をしながらも、気づかれないように後ろへ視線を向ける。

「……………………」

でも、今のアリシアには元気な所など少しも見当たらない。

(せめて、あの笑顔が戻ってくる手助けをしたいな……)

そう決意を固めながらも先へと進む。

この研究所の所長を追って。 
 

 
後書き
今回出てきた橘秀二ですが、物凄く強いです。具体的に言うとハイスクールD×Dのサイオラーグさん、いますよね?あの人と、タメ張って勝てます。魔法なんか使わずに。

そのせいなのか、自身で部分的な封印をしておりますが。普段は魔力をふんだんに使ってプレシアにようやく勝てるかって感じですね。しかし、ある事件で大怪我をしてしまってから、魔力が上手く練れなくなってしまい、管理局を退局したという過去があります。まあ、今までの武勲のせいか、結構な局員から慕われていますけどね。

秀二の妻であるアトレも同じです。全はどっちかっていうと父親である秀二似です。 
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