ドリトル先生と森の狼達
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第七幕その十一
「この人達もいて。お友達には凄く恵まれているから絶対に幸せになれるよ」
「僕は今も凄く幸せだよ」
「いや、もっと幸せになれるから」
狼さんは先生にも言い切ってみせました。
「ずっとね」
「皆がいてお仕事があって安定した収入があっていいお家に住んでいて着るものも満足していて美味しいものを何時でも食べられる」
先生はこの幸せを挙げていきました。
「これ以上の幸せがあるのかな」
「幸せは天井知らずだよ」
「そんなものかな」
「善行には善行に見合う幸せがあるっていうじゃない」
だからです、先生みたいなとてもいい人はというのです。
「それならだよ」
「ううん、幸せになれるんだ。今以上に」
「絶対にね」
「だとするとどんな幸せかな」
「先生も知っているけれど経験したことのない幸せだよ」
「さて、どんな幸せかな」
「やがてわかるよ、とにかくね」
何はともあれというのです、ここでの狼さんのお言葉は。
「お茶の後で皆のところに案内させてもらうからね」
「宜しくね」
「そういうことでね、しかし先生のことがよくわかったよ。全部じゃないにしても」
「それは何よりだよ」
「皆を大事にしてるのなら」
動物の皆、王子やトミー達をです。
「先生はずっと幸せにいられるよ」
「そして今以上に幸せになれる」
「そうなれるよ」
「日笠さんもね」
「何時かはね」
動物の皆は狼さんの言葉を受けてこの人のことを思い出しました。
「あの人もね」
「幸せになれるね」
「いい人だから」
「とてもね」
「そうだね、日笠さんいい人だね」
先生は動物の皆が日笠さんのお名前を出したところで皆にもお話を向けました、とても暖かいですがやっぱり気付いていないお顔で。
「あの人は絶対に幸せになれるよ」
「はい、先生失格」
「本当にそうしたところは駄目だから」
「もう、頼むよ」
「素質のその字もなくてもね」
「欠片位はかすってよ」
「僕達でもフォローしきれないこともあるから」
動物の皆はここでまた先生に呆れてしまいました。
「本当にね」
「日笠さんも可哀想になるから」
「そこはほんの少しだけでも気付いてくれたら」
「そこから僕達も動けるのに」
「先生に幸せを届けられるのに」
「ううん、何か全然わからないよ」
確かに先生は正直です、嘘を言いません。
ですがその正直さにです、狼さんも苦笑いでした。
「これは駄目かな、当分は」
「当分であって欲しいよ」
「ずっとこんなのだから」
「イギリスじゃそんな話全然なかったし」
「日本でやっとなんだよ」
先生のその野暮ったい外見でなくお心に気付いた人がです。
「それでもなんだよ」
「肝心の先生はこんな調子なんだよ」
「だからね」
「もう気が気でなくて」
「困ってるんだよ、僕達も」
「わかるよ、これは凄いよ」
狼さんから見てもでした。
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