リリカルビィト~才牙と魔法が交わる物語~“改稿版”
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五十七話、悲劇
前書き
神様「あら? 原作ではこれ、雪が降っていたんじゃ……?」
作者「あぁ、時期的に雪が降るのは可笑しいと思って雨に変えたんですよ」
神様「あぁ……成る程」
作者「其ではどうぞ!」
「……サーチャーによる安全を確認。こっちは問題ないよ」
「同じく安定状態を確認。龍也、お前の方はどうだ?」
「……よし、俺の担当地域でも問題は無い。とりあえずこれで任務完了か?」
龍也は少し離れた場所で飛行しているなのはとヴィータの声に対して、前もって設置・展開していたサーチャーから送られてきた情報を確認した後に答える
和人との模擬戦から暫く経ち……現在龍也達三人は依頼を受けてとある辺境世界での調査任務へとやってきている。説明によると、一週間前くらいからこの世界にて見つかっていた遺跡に設置しておいたセンサーが強い反応を捉えるようになったらしい。最初は遺跡に何かしらエネルギーを発するようなロストロギアがあるという可能性も考えられたようだが、遺跡の発掘を担当したチームから『遺跡の発掘は完全に完了した』という報告が来た為に消えてしまった
なので一度調査の必要があるという結果になり、その任務が比較的手が空いているだろと考え られた教導隊に任され、またその隊の中で偶然空いていたなのはとヴィータの二人が担当となり、龍也は特騎士として二人の手伝いに来ていた
とりあえず現場に到着した後に龍也達は遺跡のセンサーが正常である事を確認したが、センサーには特に問題がなかった為に各自でサーチャーを展開し、周囲に問題がないか調査を続行し今に至る
○●○●
「これまでの調査で特にめぼしい問題は無し……一 体なんなんだろうね?」
「これでもし気のせいだったとかだったらアタシ達完全に出張し損だな」
「まぁ反応があった事は事実な筈だからしっかりと調査しないとな」
「そうだね……うわっ」
龍也達は地面に降りながら会話をしていると、地面の泥濘に足を取られてしまったのか最後に降りてきたなのはが着地に失敗して躓いたように前へ倒れかける。それに気づいた龍也はすぐに前に回り込んでその身体を受け止める
「おっと……大丈夫か、なのは?」
「着地に失敗するなんて情けないぞ」
「にゃはは……お恥ずかしい……」
龍也やヴィータからの言葉に対して、なのはは恥ずかしそうにしながらしっかりと自らの足で立つ。龍也はそこで初めて気がついた
なのはの表情に疲れが見えるのを……
「なのは……もしかして結構疲れていたりするか? もしそうなら後は俺とヴィータの二人でやるが……」
龍也はここ最近なのはがまともに休んでいるのを見た記憶がないのを思い出す
自分が知らないだけで、実は結構疲れてしまっているのかもしれない
前世の経験でそう言うのが一番危ないのを知っているので心配しながら言う
「だ、大丈夫だよ。私は全然元気だから!今のもただ単純に躓いちゃっただけだし」
「……だとよ。コイツは一度言い出したらもう何を言っても聞かないのは分かっているだろう?ならさっさと仕事終わらせちまおうぜ」
「……そうだな」
ヴィータの指摘通り、なのははそう簡単に自分の意見を曲げる事がない。それが彼女の長所であり、また短所でもある事を龍也は今までの付き合いで知っていた
その為もうこれ以上は何も言うまいと考えを切り替えて次に何をするべきかを整理する
「とりあえずセンサーには異常がなかった事と俺らのサーチャーにも反応がなかった事を考えると……後は実際に遺跡を一通り探索するぐらいか?」
「そうだねぇ……とりあえず簡単なところを軽く見まわれば良いって感じだろうね」
「それじゃあさっさと終わらせちまおうぜ?また雨が降ってきちまった」
ヴィータの言葉に龍也は視線を上へと向けてみると、確かに空を分厚い雲が覆い、雨か降り始めていた
バリアジャケットのおかげで体感的にはそこまで寒さは感じていないが、実際に雨まで降ってくるとなると今までとは違って寒くなってくるだろう
「よし、それじゃあ早速……[高エネルギー反応!回避を!]……っ!?」
とりあえず行動を起こそうとしたタイミングで龍也のガーディアンウィルが警告を発する。普段の訓練の賜物か、 その警告に即座に反応する事が出来た龍也達は飛行魔法を使用し、上空へと飛びあがる。すると次の瞬間、下で爆発音があったかと思うと先程まで龍也達が立っていた地面は何かによって爆発が起き、くぼみが形成されていた
「攻撃!?」
「今のは……魔法じゃない?」
「……いた!」
龍也達に対して攻撃を仕掛けてきた対象がどこに いるかは意外と速く見つける事が出来た。敵はそう遠くない場所にある森の中、その一角に光を反射する銀色のボディを持った大きな羽虫のような機械がこちらに対して丸いカメラアイを向けていた
「なんだアイツ……原生動物とかの類じゃ絶対ちげぇぞ!」
「分からない……だけど敵意はあるみたいだね……」
「本来なら捕獲が一番良いんだろうが……なりふり構っている訳にはいかないな。破壊する方向でいくぞ!」
「「うん(おう)!」」
三人で目配せを行った後にそれぞれの役割を果たす為に行動を開始する
●○●○
龍也達三人で行動を行う場合、接近型であるヴィータがフロントアタッカーとして先行、龍也となのははセンターガードとして主に中距離からの戦闘を主とし、ヴィータを援護しながら隙を見て必殺の一撃を叩き込むスタイルとなる。その為龍也は敵の頭上を取りつつ、いつでもヴィータの援護が行えるように自らの周囲にいくつかの魔力スフィアを展開する
「てりゃぁぁぁぁっ!!」
先陣を切ったヴィータが上段に振りかぶったアイゼンを羽虫型の機械めがけて勢いよく振り下ろす
貫通は難しいにしてもそのボディをへこませる事が出来ると思われたその一撃を羽虫はボディからケーブルのようなものを出現させ、それを利用して自らへと一撃が届く前に制止させた。それに対してヴィータは一瞬驚いたような表情を見せるがすぐに気持ちを切り替えたのか適度な距離を取って相手の反撃に備える
そしてそれと等しいタイミングでガジェットからいくつかの光線が発射され、距離を取っていた 為にヴィータは容易に回避行動に移る事ができ、 回避が困難なものは防御魔法で防御を行った
●○●○
「(近距離攻撃に対してはあのケーブルがしっかりと防御してくるか……それなら俺やなのはが…… ん?)」
龍也は時折こちらにも飛んでくる攻撃を回避しながら対策を考えていると、ふと違和感を感じて視線をなのはの方へと向ける
「(おかしい……いつものなのはの戦闘スタイルじゃない……一体どうしたんだ?)」
何時ものなのはは空中での軌道はどちらかと言えば曲線を描く事が多い。だが今日のなのはの軌道はどちらかと言えばフェイトのそれに似た直線的なものになっていた
しかもその軌道はいつもより危なっかしく、何時敵の攻撃が当たってもおかしくないように感じられる
「なのは! そんな直線的な動きじゃ危ないぞ!」
「大丈夫! 攻撃はちゃんと防ぐから!」
とっさに注意の言葉をなのはへと投げかける龍也、なのははその軌道を直そうとはせずに戦闘を続行する
「(どうしたんだなのは……まるで何かに焦っているような……)」
いつもと違う感覚……それを感じてしまうが故にどことなく不安な気持ちになる
龍也は少しでも早くこの戦いを終わらせようと敵の隙を見て周囲のスフィアを発射する
「属性"雷"、スパークシューター……ファイア!」
発射したスフィアは電気を纏いながら螺旋を描くように羽虫へと向かっていく。そしてはたき落とそうとした幾多ものケーブルを回避し――
――突然展開された障壁なようなものに触れた後にかき消された
「なっ!?」
「無効化された!?」
龍也の見た限り、スパークシューターは防がれたというよりは障壁のようなものに触れた 瞬間に消滅したように見えた
それはつまり何かしらあの障壁がスフィアに対して干渉を行っていると言う事だと予想が立てられる
「っ……それなら!」
「おっ、おいなのは!」
先程の攻撃を見て対策を考えたのか、なのはが一気に羽虫との間合いを詰めるように飛行する
それに合わせるように羽虫は身体から板状のアームのようなものを二つ出現させ、それを一度 なびかせた後になのはめがけてそれぞれ間を置きながらも高速で伸ばす
「っ!?」
それに対してなのはは直進を止めて上昇をかけ、一本目を回避する。そしてそのまま上昇を続 けて二本目も回避しようとするが――
「危ない!」
「きゃっ!?」
突然なのはの飛行速度が減少し、その動きがゆっくりとしたものになってしまう。その為本来なら回避できたはずのアームを避ける事が出来ず、結果腹部にアームの一撃を受けてしまう
一撃を受けたなのはは飛行状態を維持する事が出来ずに地面へと落ちてしまい、それが結果的に大きな隙となる
「おいなのは! 早くそこから逃げろ!」
明らかに動揺しているのが分かる声色のヴィー タの叫びがその場に響くが、どうやらなのははすぐには動ける様子ではなく、その間にも羽虫は森から移動しながら先程は板のようだったアームの先端をとがらせて再度なのはめがけて伸ばそうと する
「(迎撃は間に合わない……それならっ!)ウィル!!!! 頼む!!!"天撃の"」
「了解!!! "天撃の追風"!!!」
ウィルの応答と共に龍也は風の天撃で加速、更に龍也の周囲を翡翠色の光が包み込み始める。なのはの前に着いた直後、龍也は腹部に鋭い痛みと熱さを感じた
●○●○
~なのは視点~
「(くっ……身体が……重い……)」
相手の攻撃を受けて地面へと墜落してしまった私は急いで再度空中へと飛び立とうとする
けどいくら魔力を集中させて飛行魔法を使おうとしても上手く魔力を集中させる事が出来ずにもたついてしまう
「(確かにここ最近色々と魔法を使うのが難しくなっていたけど……こんな時に……)」
ここ最近、任務や訓練中にいつもの感覚で魔法を使おうとした時に上手く魔法が使えない時が あった。それでも普通の時よりも集中して使えば魔法は使えていたので特に誰に相談する事なく過ごしていた
だけど今日はついさっき足をもつれさせてしまった時くらいから急激に身体が重く感じられる ようになり、今に至ってはまともに魔法を行使することさえできない
「(このままだと……攻撃されるっ)」
視界の片隅に私を墜落させた羽虫が現れたかと思うと、先程のアームをゆっくりと振りかぶって再度私に向けて振り下ろしてくる。その一撃は確実に私に向かってくるのが分かり、私はいずれ訪れるだろう痛みに耐える為に身体に力を込めた
そして次の瞬間、私の周囲が翡翠色の光に包まれたかと思うと、予想していた痛みの代わりに私の顔に何か生温かい液体が降りかかってきた
「……えっ…………?」
「た、龍也!?」
「ゴァッ……ガブッ……」
私の顔にかかった液体が地面にたれて赤い染みを作り出す
それを見て私の顔にかかったのが血液だと把握した瞬間、最悪な事態が頭をよぎって顔を上げる
そして顔を上げた私の視界に入ってきたのは、翡翠色の光の中に立つ龍也君の姿。だけどその腹部には羽虫のアームが貫通していて、真っ赤な血を垂れ流していた
「龍、也君……」
「だ、だから言っただろう……危ないって……」
「てめぇ! くらえぇぇぇぇっ!」
私が目の前の光景に圧倒されて動けない間に、ヴィータちゃんがアイゼンの一撃を入れ、その反動で龍也君の腹部からアームが抜け落ちる
そして結果的に支えを失った龍也君が私の方へと倒れこんでくる。倒れこんできた龍也君は意識がないのか、軽く身体を揺すっても反応が返ってこない
「……ねぇ、龍也君。起きてよ……起きてよ……」
[マスター!治療魔法を!]
「あっ……うん!」
レイジングハートに促されて、急いで龍也君に対して治療魔法を使用する。今回はなんとか上 手く魔法を使用することができたが、元々私はシャマルさんみたいに専門じゃない。だからすぐに効果が見られるような治療を行う事が出来ず、精々止血が出来る程度しか効果がない。それが悔しくて私の両目からはどんどん涙があふれてくる
「なのは! 龍也は大丈夫か!?」
どれくらいか時間が経った後にヴィータちゃんが私達の元へと駆け寄ってくる。私は涙をふく事なくヴィータちゃんの方へと視線を向ける
「ヴィ、ヴィータちゃん……龍也君が……龍也君が……」
「分かってる! とりあえずは船へ連れていかねぇ と……後方部隊、急患だ! 至急……」
ヴィータちゃんが後方部隊へと連絡を始める。 私はその間も龍也君をただ抱きしめることしかできなかった……
後書き
龍也「それで、は……感想……待って、ます……」
なのは、ヴィータ「龍也(君)、無理に喋っちゃ駄目!!!!!!!????」
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