ロザリオとバンパイア〜Another story〜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第38話 人の温かさ
山奥から旅館までの間はずっと、燦と手をつないでいた。手を握った初めは、やはり どことなくぎこちなかった。おっかなびっくり、と言った感じだったのだが、次第に柔らかく握っていた。時折笑顔を見せてくれるのも、本当に嬉しく、そして心地よかった。
「あ…………」
『ん……? お? 見えてきたな。あれがそうだよ。オレが泊まっていた旅館だ』
ジャックは、燦が見ていた先を見て、旅館に着いたことを確認していた。
<はい!>
燦は笑顔でそう書いていた。
~旅館~
『ごめんなさーい!』
旅館は朝早かったため鍵がしまっていた。それは仕方が無い。通常閉めているのは普通だし、門限もとっくに超えている、と言うか日を超えているのだから。
「あらあら 御剣さん? どうして外に? お部屋でお休みをしていると思ってましたのに」
てっきり部屋で休んでいるとばかり思っていた為、驚いた様子で女将さんが、慌てて聞いていた。
『ああ 申し訳ない。 ……昨晩オレの姪っ子が家出したって連絡があってね。それで、一晩中探していたんだ。だから野宿する羽目になって』
ジャックは、苦笑しながら話し そして燦に向かってウインクした。その意図を感じ取ったのか。
<その……ごめんなさい… 私のせいで…>
筆談で詫び話を行い、会話を繋げた。
「そうでしたか… それは大変だったでしょう。さあ、お風呂も入れます。ゆっくりしていってください。」
女将さんは笑ってそう言ってくれた。
『どうもありがとう。この子の分の料金もちゃんと払うよ』
ジャックは、笑顔で迎えてくれたのを見て、軽く頭を下げた。今の燦に必要なのは、笑顔だと思っているから、そして、温かさだと。
「いや いいですよ! 何か、訳けありなんでしょ?そのこの分はサービスって事で。 それに、ここで一泊出来なかった訳ですし!」
女将さんは優しい笑顔で答えてくれた。
『そんな 流石に悪いですよ』
サービスしてくれるのはうれしかったが、流石に悪いと思い答えた。確かに、寝泊まりはしていないが……、完全にこちら側に非がある。 その上 こんな早朝に起こしているのに
「本当にいいんですよ。お嬢ちゃんもゆっくりしていってね」
<女将さんどうもありがとう……>
燦は筆談で話した。
「ふふふ。じゃあ 暖かい料理をもてなすわね」
女将さんは、筆談で先ほどから会話をしている燦にも分け隔てなく接してくれていた。なにより笑顔で接してくれていた。
(本当に…良いとこだなココ… 今度来ることがあったらまた…ここを利用させてもらうか……)
ジャックは俺はそう心に決めたのだった。
人間を滅ぼす、とあの御伽の国の男は言っていた。でも、人と言うものは、本当に温かい。中には例外も勿論いるのだろう。だけど、それでも この温もりを壊す真似は決してさせないと、ジャックはそうも強く思っていた。
『はぁ〜 美味しかったな? 燦ちゃんはどうだった?』
<とっても おいしかったです!>
旅館の料理を堪能し、そして、その後は寛いでいた。燦はずっと笑顔だ。それもまぶしい程。ただ、正座をしている所がひっかかる。
『楽な姿勢でいいんだよ?』
〈あ……、は、はい〉
燦は、はっとして 慌てて戻していた。どうやら、癖になってしまっている様だ。……行儀よくしていれば、きっと見てくれるとも思っていたんだろう。
そんな燦を見て、ジャックは、笑いながら頭をそっと撫でた。
燦は、少し驚いていたが……、直ぐに笑顔になっていた。
『でも、そういえばさ ほんとに良かったの?俺と同じ部屋でさ。』
そして、話によると燦は今年で13歳になるらしい。だから、やっぱり、子供とはいっても女の子だ。しかも、宿泊施設の部屋が同じなのは、色んな意味で抵抗があるのでは?と思い聞いたのだが。
<いえ… そこまでしてもらわなくてもいいです。凄く恥ずかしいですけど… 嫌じゃないです>
顔を赤面させながら答えた。
『……そっか、ならいいんだ』
この子は、親の愛情に飢えているんだと思った。妖力が高すぎるが故、恐れられ手が付けられなくなったんだろう。
(今は、逆に一人にするのは良くないか…)
とりあえず、落ち着いたところで陽海学園への編入の話をしようと考えた。
ページ上へ戻る