黒魔術師松本沙耶香 妖女篇
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17部分:第十七章
第十七章
「そしてその魔性をそのまま身にまとっているから」
「魔都に?」
「そうよ。東にある魔都に」
「この巴里も魔都と呼ばれているけれど」
美女はここで巴里について語ってみせた。確かに巴里には魔性もあるのは確かであった。それも色濃くである。その証として依子がこの街に来て美女を弄んでいることがあると言っていい。
「東の魔都から来てそれで」
「その魔性の中にあるのよ」
それが己だという沙耶香だった。
「だから。それも当然よ」
「魔性だけが醸し出せる魅力なのね」
「そう。それなのよ」
まさにその通りだといった言葉であった。
「それがね。私なのよ」
「東の魔都。貴女のいるその都」
「興味を持ったかしら」
「ええ」
美女は沙耶香の今の言葉に微笑んで返した。そしてまた言うのだった。
「だからね。また」
「また、なのね」
「抱いて」
己の身体をそっと彼女に寄せて囁くのだった。
「また。そうしてもらえるかしら」
「いいわよ」
微笑んで言葉を返す沙耶香だった。
「それじゃあ。またね」
「女同士だからこそ味わえる楽しみは」
「そうよ。それはこの上ない快楽なのよ」
目元が細いものになった。そこには夜の楽しみが浮かんでいた。まだ昼であったがそこには確かに夜が存在し彼女もその中にいたのだ。
そしてその夜の中で。また言ってきたのだった。
「女同士だからこそ確かめ合えるのよ」
二つの豊かな胸が重なり合う。沙耶香の胸は雪の様に白く柔らかくもあり美女の胸に触れても弾き返すものがあった。それだけの豊かであり張りのある胸だった。
その胸の中に美女を抱きだった。沙耶香は再び楽しみの中に入った。それが終わってから彼女と別れホテルも後にする。するとであった。
前に速水が出て来た。彼はすぐに沙耶香の前に来て声をかけてきた。
「それでですが」
「わかったのね」
「はい、これが教えてくれました」
言いながらその手にカードを出してきた。それはタロットの小アルカナのうちの一枚であった。沙耶香にそのカードを見せながらの話であった。
「それでわかりました」
「そうなの。わかったのね」
「貴女もそうではないのですか?」
速水は楽しげに笑いながら沙耶香に告げた。
「既に」
「私もわかっていたというのね」
「そうではありませんか?」
その微笑みと共にまた沙耶香に言ってみせたのだった。
「貴女もまた」
「わかっていたのね。それも」
「貴女のことですから」
だからだというのだった。
「それは既に」
「そうよ。ほら」
ここで彼女が言うとだった。上から一羽の烏が来た。それは沙耶香の右肩に止まりそのうえで一輪の黒百合に変わったのであった。
「これでね」
「やはりそれでなのですね」
「そうよ。これでわかったわ」
「あの方がおられるその場所が」
「もっとも向こうも」
沙耶香は既に見ている目でまた述べた。
「それはわかっているでしょうけれどね」
「そうですね。あの方のことですから」
「現に百合は二つ出したわ」
二つだというのだ。
「それでも。戻って来たのは」
「ですね」
「それではもう一つは」
「途中で鷲に襲われたわ」
その結果だというのだ。
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