僕と影
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僕と影
僕には影がいる。
普段はひっそりと身を隠して何所にいるのか分らないが、何か嫌な事や辛いことがあった時そいつは顔を出す。
影がそばに来ると、僕はたまらず不安な気持ちになる。
影はおしゃべりなんだ。
僕が口を閉ざしたいときも、楽しいことをしたい時も、ずっとしゃべりかけてくる。
嫌なことをずっとほじくり返してくる。
僕は影が嫌いだった。
ある日学校で皆で楽しく話してる時に、会話の中で誰かが「シネヨ!」って言った。
皆はそれを聞いてゲラゲラ笑っていた。でも僕はたまらなく不安になった。
だって影がうるさいから。
「シネヨ、だってさ」
「君の方見て言ったよね。君何かしたんじゃない?」
胃液がこみ上げてくるような感覚がして気持悪くなった。そんな考えが顔に出てしまったらしく、ふと皆の顔をみるとなんだか僕をさげずんでいるような冷たい顔をしていた。
僕は怖くなってその場から逃げだした。
家に帰ってからテレビを見ていると、影が話しかけてきた
「ねえねえ、今日シネヨって言われたでしょ?君なんかあの時気に障ることいったんじゃない?」
テレビを見て気を紛らわしていたのに、こいつはずけずけと嫌な事を思い出させてくれる。
せっかくの気分を邪魔されるのが嫌で無視したかったんだけど、頭の中であの時の会話を考えてしまっていた。
考えてみると確かに僕はあの時その場にそぐわない事を言ってしまった気がする。
「よく思い出してみなよ、ほらあの時さ、君が言ったことが多分つまらなかったんだよ」
影と僕の考えが一致していたもんだから、僕はまた少し考えてしまった。
「だからシネって言われちゃったんだね。」
カチンときて、
「うるさいな!そんなのわからないじゃないか!!」
と怒鳴った。でも影は言うんだ
「だって証拠にさ、あのあと君が怖くなって一人で教室から出た時も笑い声が聞こえてきたでしょ?」
確かにあの時、ひとりで教室から出た時、後ろから数人の笑い声が聞こえてきた気がしたから僕は何も言えなかった。
「…」
そんな僕に優しく、厭らしい口調で影は言うんだ。
「あれ君の事を、見て笑ってたんだよ。辛いね君は、かわいそう」
僕は耐えられなくなって泣いた。
影はいつでもどんな時でも構わず僕に話しかけてくる。
前にも学校の国語の授業中に、急に影が現れて話しかけてくるもんだから
、授業に集中できなかった。指名された時、先生の声が聞こえず無視してしまい怒られてしまった。クラスの全員が笑った。
僕はしゃべると涙が溢れそうだったから、無表情で少し上のほうをじっと見て顔に出さないように我慢していた。
その日は1日憂鬱だった。
夜お風呂に入ってる時にそのことを考えていると、影が現れた。
そして今日の話を始めた。
「ちゃんと先生の話聞いてないから今度は先生にも嫌われちゃったね」
僕は嫌われたと思いたくなかったからむきになってしまった。
「嫌われたかどうかなんてわからないだろ!お前は嫌なことしか言わないな!もうほっといてよ!」
そんな風に僕が怒鳴っても、影はいたって冷静に、静かに言うんだ。
「だって証拠にさ、先生は今日の授業で、「世の中には心の優しくない人もいるけど、皆はそんな人にならないようにしましょう」って言ってたでしょ。」
「あれは君の心が優しくないってことを遠まわしに言ってたんだよ。そうでしょ?そうとしか考えられないよね?そうだよね?」
僕は言われるまでその事に気付かなかったのに。
いつも影に証拠を突きつけられると、反論も出来ずに認めるしかない。
ほんとに影は嫌なやつだ。
なんでこんなやつがいるんだろう…。
心の底から影を殺してしまいたい。
そう思った。
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