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零から始める恋の方法

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おかしなこと

 で、少し歩いたところ。
 まだ半分ぐらいしか歩いていないが、利英さんとの話はとても楽しくたいした苦ではなかった。
 と、その時だった。


 「おーい!」


 えーと・・・アレは確か紗宮先輩でしたっけ?
 こちらに気が付いたのか手を振ってくれている。
 学校までまだ少し距離があるから一緒に行こうかな?


 「・・・雪ちゃんいこ。遅刻しちゃう」


 「え・・・でも紗宮先輩が・・・」


 「いいから。いこ」


 利英さんが私の手を引っ張って強引に進んでしまう。
 私はすれ違いざまに軽く会釈をして謝罪の意を示す。


 どうしたんだろ・・・さっきまで別に不機嫌とかってわけでもなかったのに・・・。
 なにより、利英さんが他人にこんなに冷たくするなんて・・・。



















 「あの・・・利英さん」


 「なーに?」


 学校について、私は何故あんなことをしたのか聞いてみようと思った。
 喧嘩でもしたのかな・・・。


 「紗宮先輩と喧嘩したりしたんですか?」


 「・・・別に。雪ちゃんには知らなくていいことだから」


 そう言うなり自分の席に戻ろうとしてしまう。


 「待ってください!」


 「・・・何?」


 思わず私は利英さんの腕をつかんで引き留めてしまう。
 それに少し不機嫌になったのか利英さんが若干睨みつけるような視線を送ってくる。
 ちょ・・・利英さん怖い・・・。


 「え・・・えと・・・その・・・」


 利英さんの迫力に少し驚いてしまい、言葉が出てこない。
 言いたいことは頭では理解しているというのに、何故かそれを言葉にできない。


 「・・・じゃ、また放課後ね」


 「あ・・・」


 利英さんはそういうなり一方的に行ってしまった。
 ・・・どうしたんだろう。
 紗由利さんとかなら知ってるかな・・・。

















 昼休み。
 利英さんはすぐにどこかへといってしまったので、弁当をとりあえず机の上に置いておく。


 これで食べてくれるよね・・・?


 一応利英さんに頼んで紗由利さんのメールアドレスと電話番号も手に入れている。
 もしもの時、一番頼りになるのはなんだかんだで紗由利さんだと思ったからだ。


 「あ、もしもし紗由利さん」


 『あ、はい。あら、雪菜さんですか。何かご用でしょうか?』


 一応今は客人ではないので『さん』らしい。
 こういう細かいところも使い分けているんだ・・・。


 「あの・・・利英さんのことなんですけど・・・。今日何か不機嫌みたいで・・・。しかもいつもの利英さんと何か違う感じがするんです・・・。雰囲気というか・・・なんというか・・・」


 『・・・』


 「あの・・・紗由利さん・・・?」


 『・・・雪菜さん、貴方には知らなくてもいいことです。では、失礼します』


 「え・・・?それはどういう・・・紗由利さん!?・・・切れちゃいました」


 一方的に電話を切られた。
 ・・・なんか今日はみんな変だ。
 必要以上に私に隠し事をしている。
 そんなに大事なことなんだろうか?


 「おい、持上どうしたんだ?」


 「雪菜ちゃんが大声出すなんて珍しいねー。俺、初めて見たかもしれないよ」


 「あ・・・央山先輩に上元先輩、こんにちは」


 私が電話で柄にもなく大声を出していたので心配してきてくれたらしい。
 一応事の次第を伝えると央山先輩が答えてくれた。


 「俺の経験からするとだね・・・」


 「お前こんな経験あるのか?」


 「いや全然」


 うぅ・・・。
 なんか少し頼りない・・・。


 「まあ、でも大方のことは分かるよ。多分利英ちゃんたちは雪ちゃんにサプライズパーティをしたいんじゃないかな?」


 「サ・・・サプライズパーティですか・・・。でもなんで・・・」


 「そりゃあ、誕生日とかが近いからじゃないか?」


 確かに私の誕生日は8月26日であと一か月ほどだが・・・。
 ふつうこんなに早くから準備するだろうか・・・。


 ・・・でも、利英さんならありそう。
 だけど、それだと紗宮先輩を無視したこととは・・・。


 「じゃ・・・じゃあ、なんで利英さんは紗宮先輩を無視するような真似をしたんでしょうか・・・。あれはまるで心の底からかかわりたくない、という感じでした・・・」


 「うーん・・・そればっかりは流石の俺でもねえ・・・。でも、利英ちゃんのことだからそんな嫌悪するようなことはないとは思うんだけど・・・」


 「こればっかりは本人に聞くしかないよな。ま、いずれ話してくれるさ。なにも無理に聞くことはない。誰だって話したくないことの一つや二つあるからな」


 確かにそうですよね・・・。
 利英さんがそんな冷たい人なわけないですし、人の話したくないことを強引に詮索するのもいけないことですよね・・・。
 私はこの時からこのことについてこれ以上考えることはやめた。
 ただ、利英さんは昼休みに一度も教室に現れず、当然私が作ったお弁当も食べてくれなかった。


 
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