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零から始める恋の方法

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ドキドキ肝試し1

 で、当日。


 「・・・雪菜ちゃん。私はてっきり男子を誘うものだと思ってたわ」


 「いえ・・・やはり利英さんは頼りになりますし・・・」


 「巨神兵だろうが邪神だろうが毒蛇神だろうが、とりあえずなんでも倒すよー!!」


 なんか規模が神話クラスで頼れそうなことを言っている。
 なんだかよくわからないけど、とりあえず頼もしいので良しとしよう。


 「なにが悲しくてお前なんかと・・・。上本ー・・・手ごろな女子誘ってくるってお前約束してたよなー・・・」


 「手ごろなのがいなかっただけだ。諦めろ」


 あれは上本先輩・・・。
 うぅ・・・私に誘う勇気があれば・・・。


 「すいませーん」


 ちょっ!?利英さん!?


 「私ピアノ同好会に所属しているものなんですけれども」


 「ああ、ノリが大好きな利英ちゃんだろ?雪菜ちゃんから話は聞いてるよ。それで俺たちに何か用?」


 「あ、はい。手ごろな女ならここに二人いますので是非ご同行させていただきませんか?」


 え。



















 で、開会式。
 秘密裏にこっそりやるのかと思えば、ステージまで用意されサッカー部の主将とピアノ同好会の会長さんの二人があいさつをしていた。
 で、監督役として先生が数名いた。
 これは開校以来から続く一種の伝統行事みたいなものらしく、学校側公認なんだとか。


 「で、どこから回る?近場だと『うごくせきぞう』だね」


 『うごくせきぞう』は夜中になると初代校長の裸像が直立不動の姿勢からいつの間にかボディビル的なマッスルポーズをするんだとか。
 ホラーなんだかコミカルなんだかよくわからないが、銅像のポーズが自動的に変わるのは普通じゃない。


 「お、まだマッスルはしてないみたいだな」


 「なんか中に機械でも入ってるんじゃねーの?」


 「そんな無駄なことに金かけるわけないじゃん。いくらここが金持ちの名門だからといってそんなことは・・・」


 確かに機械じかけというのが妥当だが、そんなくだらないことのためにお金を使うはずもない。
 やはり、通りすがりの誰かが銅像の前でボディビル的なマッスルポーズを決めていたのを誰かが銅像と勘違いしたのか・・・。


 「・・・あ、ボタンだ。ぽちっとな」


 利英さんが銅像の陰に隠れていた隠しスイッチらしき何かを押したらしく、すさまじい機械音とともに銅像がトランスフォームしていく!


 「・・・マジで機械じかけだったんだな」


 「説明文によると初代校長がボディビルとメカニックにはまってたらしく、生徒たちにこの二つの素晴らしさを伝えるためにこの銅像を作ったらしいよ」


 「・・・しょーもねー」





















 続いては玄関ホールにかざってある『歴代美人教師のモデルコンテスト』だ。
 もうなにがホラーなんだかよくわからないけど、歴代の美人教師たちの肖像画が真夜中になると一位から順に左から並び変わるらしい。


 「てか、なんで美人教師の肖像画なんてあるんだよ」


 「あれじゃね?ミスコン的な」


 「そういうのって普通生徒を対象にするものじゃないんですか?」


 「ああ、持上たちはまだ知らないだろうけど、どうもうちのミスコンとかって対象とらないらしいんだよ。だから、参加したもの勝ちってわけ」


 成程。
 ということは、年代的にもタイミングを逃さず、そのものの美のフィールを余すことなく受け止めれるわけか。
 何を言っているかもうよくわからないけど、とにかく比較的オープンなミスコンらしい。


 「で、これが問題の肖像画だね」


 「いたって普通の肖像画ですね。しかも、美人教師というだけあってみなさんとってもきれいな方ばかりです」


 「三島先生がグランプリなんだっけ?ほら、保健室の」


 「あー、俺の調べによると男子からはあのどことなく怪しげな雰囲気がいいんだとか。ほら、ミステリアスな女医ってなんか近寄りがたい雰囲気だろ?だからそこに足を踏み入れたくなるんだよなー!これが」


 央山先輩が一人だけ盛り上がってるが、この一番左の三島先生という人が美人教師の中の美人教師らしい。
 そもそも、美人とかって雰囲気でも評価されるんだ。


 「よくわからないけど、もうここはいいだろ。次行こうか」






















 次は踊り場の踊り子。
 一階と二階の階段の踊り場に真夜中になるとオペラ歌手みたいな歌声を発しながらバレエのような華麗な踊りを見せるシルエットのみが現れるという。
 だんだんそれっぽくなってきたが、なんかオチが読める気がする。


 「お?聞こえてきた聞こえてきた」


 確かにきれいな歌声だ。
 声の高さから言っておんなのひとだろうか。
 シルエットは・・・たしかにバレエのような華麗な踊りだ。


 「・・・あれ?あそこの部屋電気ついてない?」


 「お、本当だ。誰か休憩してるのかな?お茶でももらってこよーぜー!」


 「おい!ったく・・・。持上はどうする?俺たちだけで先行くか?」


 え・・・。
 これって・・・二人っきり?


 『雪菜・・・怖いか?』


 『す・・・少しは・・・』


 『そうか・・・。!?危ない!』


 『キャッ!?』


 『雪菜・・・大丈夫か?』


 『は・・・はい・・・。あっ!上本さん、あなた私をかばって・・・』


 『何・・・この程度どうってことないさ』


 『上本さんステキ!!』


 なんてことも・・・。
 実にすばらしいじゃないか。


 よし、ここは臆せず攻める!


 「行きましょう!」


 「そうか。さっさと済ませちまおうぜ。こんなかったるいイベント」


 因みに後に利英さんたちから聞いたのだが、バレエみたいな人は昔踊り子に憧れていた教師が躍っていたものだったらしい。
 ・・・なんというか・・・黒歴史・・・。


 「次は・・・『無限回廊』というものらしいです」


 「ああ、他はふざけているものが多いが、マジなやつもいくつかある。その一つがこいつだ。下手すると、一生この廊下でさまようかも・・・な」


 「い・・・一生って・・・。こ、怖いこと言わないでください!」


 うぅ・・・。
 ただでさえこういうの苦手なのに・・・。
 で、でも運が良ければうれしはずかしなイベントもあったりして・・・。


 「ま、そう怖がるな。たかが噂話だ」


 そう言って、頭に手を置いて撫でるようにしてくれる上本先輩。
 っく・・・これはなかなか・・・。


 「はうぅ・・・。も・・・もっ・・・!?」


 私・・・先輩の前で何を・・・。
 いくら先輩のなでなでが気持ちよかったからといってそんな恥ずかしいことを頼むだなんて・・・。
 やはり、こういうイベントのせいで混乱しているんだよ、うん。
 だからさっさと終わらせるべきだ!


 「どうした?持上。早く終わらせようぜ」


 「は、はい!そうですね!!夜も遅いですし、早く終わらせちゃいましょう!」


 まだ混乱している頭で無理に急ごうとしたのがいけなかった。
 結果的に言うと、私は自分の足につまずいて転んだ。
 それは派手に、頭から。






















 「ん・・・んぅ・・・」


 「ん?起きたか。持上」


 「うぅ・・・上本せんぱーい・・・。だいしゅきでしゅー・・・」


 「そうかそうか。もう大丈夫か?」


 「はい・・・でも立たせてくださーい・・・」


 「仕方ねえなー・・・。ほらよ、っと」


 男の子の手って意外とごつごつしてるけど、結構あたたかい・・・じゃなくて。
 さっきから私は何を言っているんだろう。
 というか、なんで私は寝ていたんだろうか。


 「えーと・・・私何してましたっけ?」


 「大丈夫か?お前は転んで頭をうった。んで、眼を回してたから少しここで休んでいただけさ」


 それはうれしいんだけど・・・。
 なんで、廊下?普通保険室とかじゃ・・・。


 「・・・保健室に連れていけなかったのは悪かった。行こうとも思ったが、移動しようとしてもどーも、さっきからずっと同じ場所にいる気がするんだよな」


 それって・・・。


 「あの・・・じゃあ、『無限回廊』の噂って・・・」


 「マジっぽいな」


 「きゅぅ・・・」


 もう・・・いやだ・・・。
 気絶しよ。


 
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