マジノ線
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「だからだ」
「ですからやはり」
「ベルギーからです」
「攻めるしかありません」
「マジノ線は攻められないので」
高官達は困惑した顔で話すばかりだった、彼等もそれしかなかった。とかくマジノ線の存在が大きかった。
ドイツはどうしてフランスに勝つべきか考えていた、しかしマジノ線は堅固でベルギー方面からの進軍は読まれている。
ベルギーやオランダも軍備を整えている、ドイツも今回は勝てないという読みが多かった。だがここでだった。
ドイツ軍の中に一人の参謀がいた、その者の名は。
エーリッヒ=フォン=マンシュタイン、中将の階級にある彼がヒトラーに進言したのだ。
「総統、森です」
「アルデンヌの森をか」
「はい、戦車即ち機械化部隊によってです」
ドイツ軍の誇るこの部隊を使うというのだ。
「越えてマジノ線の後方に周りです」
「そこからマジノ線を攻撃するのだな」
「一気に攻めるべきです」
「森を機械化部隊で突破するか」
「そうです」
「それは可能なのだな」
ここでだ、ヒトラーはその目を鋭くさせた。
そしてだ、マンシュタインにこう言ったのだった。
「戦車や装甲車は森を越えられるのだな」
「そうです、ですから」
「ではだ、それでいこう」
ヒトラーはマンシュタインに答えた。
「貴官の案でな」
「では」
「しかし。その作戦はだ」
ヒトラーはここでこうも言った。
「二つの前提が必要であろう」
「最初の一つは、ですね」
「機械化部隊は森を越えられるのか」
そのアルデンヌの森をというのだ。
「それがだ」
「まずありますが」
「しかしだな」
「これは可能です」
マンシュタインは断言した、国家元首であるヒトラーに対して。
「私が保障します」
「わかった、貴官の言葉を信じる」
ヒトラーもマンシュタインに毅然として答えた。
「このことについてはな」
「では」
「そのうえでだ」
さらに言うヒトラーだった。
「もう一つの前提だが」
「敵のことですね」
「敵が迅速かつ有能な対応をするかどうか」
「そのこともですね」
「問題だが」
このことについてもだ、ヒトラーは言及した。
「どうなのか」
「そのことについては」
「情報部に念入りに調べさせている」
ヒトラーは既に知っていることだった、実はここではマンシュタインにあえて言ってみせたのだ。自分が情報に秀でていることを彼に知らしめる為に。
「ベルギー、オランダ両軍はどうでもいい」
「彼等はですね」
「数も装備も敵ではない、指揮官達もだ」
「そうですね、私も彼等はそうだと見ています」
マンシュタインもこの二つの軍については相手にしていなかった。
「彼等は直接攻めても倒せますが」
「問題は彼等を蹴散らせてもだ」
「彼等と戦う間にです」
「英仏軍が来る」
「それが問題です」
だからマンシュタインもアルデンヌからのルートをヒトラーに進言しているのだ、このことが容易に想像出来る故に。
「そうなります」
「そうだな、だからな」
「私もあちらはです」
「攻めてもか」
「機械化部隊、作戦の核はアルデンヌです」
こちらにしているのだ。
ページ上へ戻る