ソードアート・オンライン~共鳴の宴舞台~
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SAO:アインクラッド〜共鳴しあう絆の中で〜
主人公よりも先にリークさんの過去編
前書き
一行でわかる前回のあらすじ
リークさんまじかっけぇっす。∑(゚Д゚)凄え
「うぅぅぅ……」
迷宮区からの帰り道。リークは呻き声を上げていた。
理由は簡単。勝手に宝箱を開けたことに対して、ルインがリークをおやつ抜きの刑に処したのだ。
「いいじゃん……レア武器あったじゃん…… 結果オーライじゃん……」
「死にかけましたけどね」
「うっ……」
フォルテが静かに突っ込みを入れ、さらに呻き声を上げるリーク。
「しかもレア武器って言っても俺らのギルドじゃ誰も使えないじゃないっすか。五人とも違う武器なのに」
「それは……仕方ないじゃん……」
「だからってなぁ……短剣なんてあんまり使う人いないのに……」
「じゃあ私…… 短剣に移行する」
「「ふざけんな」」
「うぅぅぅぅ……」
雑談を交わしながら、家へと歩いて行った。
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「「さぁ、説明してもらおうか」」
「「うううぅぅぅぅ……」」
場所は変わってギルドホーム。
ルインとフィーネが腰に手を当てて、正座しているリークとフォルテを見下ろしている。
ちなみにその後ろの方ではヒナが「説明……プリーズ……」と、呟いている。
少し目がキラキラしているのは……気にしないでおこう。
「ルインからさっきメッセージが来たぞ。なんでも二人がよくわからないスキルを使ったって?」
「はい、そうなんすよ。フォルテは周りのモンスター全部麻痺らせるし、リークさんは俺のこと切ってもオレンジにならない上に攻撃も敏捷も格段に上がってました。てか無双してました。」
「これについて何かいうことはないか?お二人さん」
「「ううぅぅぅ……」」
ギルドのマスターとサブマスターがギルドメンバーに詰め寄られる図。
言葉にすると違和感があるが、中層に多いギルドと同じように、あまり上下関係というものがないのだろう。
「別にとって食おうって訳じゃないんだから言ってくれたっていいだろう。そんなに嫌なのか?」
「嫌っていうか……その……」
「僕は別にいってもいいと思いますけど」
「あれ!? 裏切り!?」
「もともとフォルテが味方してた訳じゃなさそうだが…… まぁ話してくれるなら文句は言わない。一から説明してくれるか?」
「はい。えーとまずは…… あのスキルのことですが、《共鳴棍》っていうエクストラスキルです。一ヶ月とちょっとくらい前に気づきました。もしかしたらもっと前からあったかもしれませんが」
「そうか…… 敵を麻痺にしたのもそのスキルか?」
「はい。アライン・コンゼァートっていうソードスキルで、7段階の音階によって効果が変わるんです」
「効果ってのはなにがある?」
「麻痺・毒・出血・盲目・スタン・STR低下・AGI低下の7個です」
「なるほど。デバブスキルなのか」
「というと……ちょっと違いますね。共鳴棍はバフも可能なんです」
「それはまた強力なスキルだな…… バフにはなにがある?」
「状態異常耐性・STR上昇・AGI上昇・状態異常解除・スキルディレイ軽減・幸運上昇・移動快適化の7個ですね。こっちは直接プレイヤーに当てなくてはいけません。効果時間とかどのくらい上昇するかとかはちょっとわかっていませんがやりようによってはかなり便利なスキルです」
「周りの敵全てに効いたというのはアライン・コンゼァートというスキルの効果か?」
「いえ、これは共鳴棍自体の効果です。バブ及びダメージを少し、周囲のモンスターとオレンジプレイヤーに与えることができます」
「なるほどな。他にはなにかあるか?」
「特には……ないですね。取得条件もわかってません」
「そうか。では……」
フィーネがグルンと首を回した。
その先にいるのはルイン……に捕まえられているリーク。
フォルテに助けてと目で訴えていたが、それ以上にフィーネの目が語っていた。
「ニゲルナヨ」と。
「さて」
何気ない言葉。
だがそれに反応してリークの肩がビクンとはねる。
「次はお前の番だぞ。リーク」
「フィーネ…… お願いだから……」
「……な?」
「あぁぅぁ……ぁぁ……」
リーダーが誰よりビビっていた。
そりゃもうプルプルプルプルって小刻みに。
蛇に睨まれた蛙どころか鬼の殺気に当てられた鼠だった。
リークさんが弱いのではなく、フィーネさんが恐ろしすぎるだけだが。
いっそ擬音が聞こえてきそうだ。ゴゴゴゴ……って。
「ほら、吐け。吐いて楽になれ」
「私は……私はぁ……!」
どこの刑事ドラマだ。
完全に面白がってるよね。この人。
だが
「私は…… ごめん。言えない」
いつものふざけているような顔とは似ても似つかぬような表情。
その表情につられて、自然とフィーネ達も口をつぐむ。
「こればっかりは……ちょっとまだ、言えそうにない。今更言うのもなんだけど、正直使うつもりはなかった。絶対に使わないって決めたものだったから」
下を向いて、拳を握りしめ、絞り出すように紡がれる言葉。
「だから……」
「もういい」
悲痛な叫びを遮ったのはフィーネ。
厳しい言葉を言いつつも、少し居心地の悪そうな顔を浮かべている。
「その、すまなかったな。今思えば無遠慮だった。謝ろう」
「俺も、すんません。そこまでキツイとは思いませんでした」
「ごめんな……さい……」
「気づけなくて、すみません。自分のことしか考えてませんでした」
フィーネを始めとして、口々に謝罪の言葉を述べるメンバー達。
リークの表情は暗いままだったが、少しだけ笑顔を見せ、呟いた。
「ごめん、皆。明日にはいつも通りの明るい私に戻ってるよ。でも今日だけは、ちょっとだけ一人にさせてくれないかな」
少し影のある笑顔を残して、リークさんは奥の部屋へと向かっていった。
ここで騒げるほど図太い神経は持ち合わせてはいない為、少しの静寂がギルドホームを包み込む。
だが、その静寂が破られるのは、すぐ後だった。
「ルイン」
「え?」
静寂を破り、ルインの名を呼んだのは、
「どうしたんだよ、フォルテ」
副ギルドマスター フォルテだった。
「ちょっと来てください。話があります」
________________________
ギルドホームを出て、歩くこと数分。
主街区の中ではあるが、町外れと呼ぶにふさわしい場所。
「で、なんだよ話って」
「リークさんのことです」
「そこまでは俺にだってわかるっての。その話の内容を教えろよ」
「……ルインは、一番後に《シンフォニック・B・シーヴス》に来ましたよね」
「おう、そうだな」
「じゃあルインは知ってますか?《借り物のサーカス》っていうギルド」
「どっかで聞いた気がするけど…… わかんね」
「今から言うことは、他言無用でお願いします」
「ん……わかった」
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第46層のことです。
ボス部屋が見つかって、二回目の偵察を任されたのが、《借り物のサーカス》でした。
ですが、偵察に向かってから何時間経っても、そのメンバーが一人として帰ってくることはなかったんです。
結晶無効化空間でもないから、転移することは簡単。なのに誰一人として帰ってこない。
不審に思うのは普通でしょう。
そこで、今で言う血盟騎士団みたいな大きいギルドが、見に行ったんです。
すると、その部屋にはボスはいなくて、いたのはたった一人のプレイヤーでした。
そのプレイヤーは、オレンジのアイコンでもなかったのに、私が殺したってうわ言のように呟いていたそうです。
そしてそのプレイヤーっていうのが、ギルド《借り物のサーカス》ギルドマスターの…… リークさんでした。
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「そして、第1層の生命の石碑。《借り物のサーカス》のメンバーはリークさん以外全員死んでいました。死因は……斬撃ダメージです」
「ボスはどんな奴なんだ?」
「ゴーレム型で、一度目の偵察の結果を見るに斬撃ダメージが入るような攻撃はありません」
「…………そうか」
「今まで僕は、この事件について二つほど可能性を考えていました。一つは殺人ギルドの急襲。もう一つがギルドメンバーの裏切り。ボスを倒した後にそれがあれば、リークさんがグリーンのまま人殺しをしたということが成り立ちます」
「それが今日のことでもう一つの可能性が出てきたってことか」
「はい」
もし、リークがオレンジにならないスキルやアイテム、裏技などを使えるとしたら、そういうことは可能になる。
そして実際、ルインのHPは確実に減っていたにも関わらず、リークのアイコンはグリーンのままだった。
見た目を変えているだけではないことは、圏内に入れている時点で確実である。
「それで」
ルインが口を開く。
「お前はどうしたいんだ?」
まっすぐと、逸らさずに。
無遠慮に、ただ素直に、彼は質問をぶつける。
「僕は……」
返答に困るフォルテ。だが、しばらくするといつも通りの笑顔を浮かべて、彼もまっすぐと、彼なりに言葉を紡いだ。
「リークさんが、人殺しをしているのなら、その傷を少しでも埋めたい。また人を殺さなくてはいけないのなら、僕がそれを請け負いましょう」
「……そうかい」
ルインはフッと軽く息を吐き、石畳の道を歩き始める。
「お前って頭いいけどバカだよなー」
「バカで結構。気が楽でいいです」
「いじりがいのねぇ奴だなぁ」
日常は、続く。
変化を加えながら、続いていく。
当たり前に、当然に。
そして何より、残酷に。
後書き
フォルテ君は一番最初の話でちょっと出てるからリークさん先に過去編やりました。
フォルテ「僕本当に主人公なんですよね…?前回僕のユニークスキル出た時もついでみたいに紹介されたし……」
あー……うん。主人公主人公。
フォルテ「ちょっとぉ!?」
それじゃあ次回のお話も!
フォルテ「耳を傾ける前に教えてくださぁい!!」
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