ソードアート・オンライン~共鳴の宴舞台~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
SAO:アインクラッド〜共鳴しあう絆の中で〜
ピンチ&覚醒!?
前書き
一行でわかる前回のあらすじ
長い説明と肉とクジラ。あとお仕置き。( T_T)\(^-^ )スパーン
第69層迷宮区
現在最前線のダンジョンである。
その迷路のような道と大量の宝箱のトラップは、大いにプレイヤーたちを苦しめ、未だにボス部屋までたどり着けてはいなかった。
躍起になって、と言うほどでもないが、ボス部屋を探し求め探索するプレイヤーがここにも三人。
フォルテ、ルイン、リークの三人は、モンスターを倒しつつ、ダンジョンの奥へ奥へと進んでいた。
「よっ……と、ここらの敵はあらかた片付いたか?」
ルインがトゲトゲしたダチョウみたいなモンスターを斬り倒して呟く。
「そうですね。今のツノ鳥で最後です。」
「ツノ鳥ってなんだよ……? 前々から思ってたけどさ、フォルテってあんまりネーミングセンスないよな」
「なっ……!?」
「だってお前せっかくテイムしたバルーンホエールなんて呼んでる?」
「え? くじらって……」
「そのまんま! いやまぁクジラだけどさ!」
その時黙っていたリークがルインに向き直って言い放った。
「クジラじゃないよ! くじらだよ!」
…………
「え、ごめんなさいリークさん。どう違う?」
「表記。」
「え?」
「表記。」
「……先、進もうか」
「ですね」
そうして歩き出してすぐのことだった。
少し後ろを歩いていたルインが声を上げた。
「ん……? あ、ちょっと待って」
「どうしました?」
「いや、ここ…… ほら 宝箱。」
ルインが見つけたのは隠し部屋のような場所。 その先には開けられていない宝箱が置いてあった。
だがしかし。
「ここトラップ多いんだよな……」
「どうします? 僕もルインもリークさんも罠解除どころか罠看破も持ってませんからね……」
「どしたのー?」
「「!!」」
ここで前の方を歩いていたリークさんが戻ってきた。
直後の二人の動きは迅速だった。
まず隠し部屋への入り口にルインが立ち塞がり、彼の武器である大剣を縦に掲げ、部屋に入る道を塞ぐ。
続いてフォルテがリークさん本人を羽交い締めに……するとハラスメントコードに引っかかるので、足を捕まえようと低姿勢で襲いかかる。
結果は。
「オープン!!」
「「うぉい!?」」
いつの間にか後ろに……というか宝箱の前にいたリークさんが清々しい笑顔で蓋を開けていた。
咄嗟に追いかけてももう遅い。
ビー!ビー!ビー!
鋭い警戒音と共に大量のモンスターが壁を開いて出てくる。
すぐに部屋を出ようとしても、出入り口まではもうモンスターでいっぱいだった。
即座に頭を戦闘モードに切り替え、三人で背中合わせになるように位置取る。
「なんで開けちゃったんすかぁ!」
「そこに宝箱があったから!」
「登山家かなんかですか!?」
「私は山より海が好き!」
「んなこと聞いてないっす!」
「来ますよ!」
ほとんど全方位からの攻撃が彼らを襲う。
だが。
「んなもん喰らうかよっ!!」
「フィーネさんのお仕置きの方が怖いくらいです」
「え!? じゃあ次も開けていい?」
「「ふざけんな」」
それぞれがそれぞれの武器を使い、ダメージは全くと言っていいほど受けていなかった。
「おっらああ!」
ルインが大剣を振り回し、敵を切り潰す。
「ふっ!はぁぁ!」
フォルテが棍棒を叩きつけ、敵を砕き割る。
だが、そんなことよりも。
「うらうらうらうらぁぁぁ!!」
リークが己の背丈に迫るほどの長刀で敵を貫き、薙ぎ、斬り払う方が、早く正確である。
「まったく、頼れるリーダーだなぁ!」
「男のプライドなんて、ボロボロですよ」
「違ぇねえ!」
ルインもフォルテも、攻略組の中でも実力は上位に位置する。
《聖騎士》には及ばなくても、《黒の剣士》や《閃光》クラスの力を持つほどに。
だがそれ以上に、彼女は強い。
先ほど例えに出てきた、《聖騎士》と肩を並べるほど。
だとしても。
「クソッ…… 多すぎる」
「トラップだといっても、これほどなのは初めてです……!」
「キリがないよ!?どうしよう……」
モンスターが、多すぎる。
「これあれじゃねぇか!? この前情報屋が言ってた結晶無効化のトラップ!」
「宝箱の中身がレアアイテムな代わりに、物凄い数のモンスターが出てくるっていう…… 強引に支払わされたあの情報ですか!」
「だって気になったんだもん……」
「まぁいいですけどっ」
そんなことを話している間にも、敵はどんどん増えていく。
敵は倒せてはいるが、少しづつ体力が削られていく。
どれほどの数の敵が出てくるのかは未知数。流石に無尽蔵に出てくるわけではないだろうが、どちらにせよキツイことに代わりはない。
そんな中一人だけ、迷っている者がいた。
(どうする? どうするどうするどうする!?)
ひたすらにモンスターを倒しながら、考え続ける。
(このままのペースで倒し続ければ、切り抜けることは高確率で可能。だけど……)
この世界は、疲れることはない。汗が出ることすらない。だが。
(HPでも身体的な体力でもない。問題は、精神力……!)
今もモンスターは増え続けている。最初の頃と比べるとペースは落ちてきてはいるが、出ていないわけではない。
(いつ終わるかわからない戦いを永遠にし続けるのは、下手をすれば気が狂ってもおかしくはない!)
何周走れ。何本打て。そう言われているわけではない。いつ終わるのかはわからないが、終わるまで戦い続けろ。
(そこまで気力が持つのか!? 二人を信じないわけじゃないけど…… ここで誰かを失ったり、全滅なんてことは絶対に避けなきゃいけない)
力は、時に人を傲慢にさせる。
だが、力とともに責任感を、想いを持った人は、その力に背中を押されることもある。
(誰一人として死なせはしない。私はリーダーとして、皆を導く!)
「フォルテ!ルイン!」
唐突にリークが、いつもと比べ物にならないほど乱暴な口調で叫ぶ。
だが二人はそれに驚くでもなく、困惑するでもなく、ただにやりと、笑みを浮かべた。
「私がGOって言ったら開始!先ずは一箇所に集まって、フォルテはジャンプして、空中で用意しろ!ルインはフォルテが用意できるまで時間稼ぎ!用意できたらフォルテは敵を止めろ!そしてルインは回復!後は私がやる!」
「「了解!」」
二人はそう答えると同時に、敵を払いのけ、爆散させた。
「GO!!」
ドンッッ!!
何かが爆発したのかと思うほどの轟音が鳴り響き、三人は駆け出した。
着くと同時にフォルテとリークがジャンプ。その下で、集まってきたモンスターに対してルインが大剣を掲げる。
「うおおおおおっ!」
ルインがグルングルンと回転し始め、剣の周囲にエフェクトがかかり始める。
「《サイクロン》!!」
大剣用範囲ソードスキル《サイクロン》
自分を中心に大剣をグルグルと振り回し、全方位へ攻撃をする技だ。
威力は十分であり、少量のノックバックも発生する。難点は上下には向けられないのと硬直が長いことだ。
その上でフォルテは、棍棒を剣道のように上に掲げ、溜めを作る。
そしてルインが硬直に襲われ、モンスター達に襲われそうになった瞬間。
「はあああああっ!」
フォルテは一直線に敵へと突っ込み、
「《一人っきりの演奏会》!!」
目の前のモンスターに棍棒を叩きつけた。
グォォォオオオン…………
音階でいうなら『レ』の音。
ドラのような音が鳴り響き、モンスターが吹き飛ぶ。
–––––だけではなかった。
その周囲にいたすべてのモンスターが、まるで時間が止まったようにその場で固まったのだ。
いや、その言い方は少し違う。モンスター達は、その姿勢で固まり、ばたりと倒れた。
倒れ伏すモンスター達のHPバーを、点滅する緑の光が囲んでいる。その下に浮かぶ、小さな稲妻のアイコン。
状態異常–––––《麻痺》
だが、片手棍用のソードスキルにはそんな効果を持つものはない。
もちろん、さっきルインが使ったサイクロンにも、そんな効果はない。
しかし、敵は例外なく固まっている。
そこへ、声が飛び込んだ。
「ルイン!歯ぁ食いしばれっ!」
「え?ちょっ! がぁ!?」
結晶が使えずにポーションで回復していたルインを、リークが切った。
ルインの体力が二割ほど削られて、リークのアイコンがオレンジ色に––––––––
–––––––––ならなかった。
普通、プレイヤーがプレイヤーを攻撃した場合、アイコンがオレンジ色に変わり、犯罪者となる。
だが、間違いなくルインを攻撃したはずのリークのアイコンは、緑色のままだった。
そして。
リークがモンスター達に向き直り、怒声をあげた。
「うちの船員に手ぇ出したってことは!覚悟できてんだろうなぁ!」
乱暴に、出鱈目に、嵐が駆け抜ける。
「私等のギルドは、いや、海賊団は、あまくねぇぞ!」
モンスターを切りながら叫ぶ。ただひたすらに、切り刻む。
「耳かっぽじってよく聞きな!あんたらを送る者の名だ!」
先ほどまでとは比べ物にならないほど速く、強く。
「《シンフォニック・B・シーヴス》海賊団、《荒波船長》リークだ。墓に入るまで覚えときな」
最後の一体が、砕け散った。
後書き
リークさんがなんかすごいことした回ですねー。
フォルテ「あれどうなってるんですか?」
それは後のお楽しみってことで。
それじゃあ次回のお話も!
フォルテ「耳を傾けていってくださいね!」
ばいばい〜
ページ上へ戻る