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空気を読まない拳士達が幻想入り

作者:sibugaki
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第2話 炸裂、北斗神拳! 俺の拳に砕けぬ物はない!!

 
前書き
言い忘れてましたが、これはDD北斗の拳とのコラボなので当然北斗と南斗の拳士キャラは皆二頭身だったりします。
 

 
 月夜の光が照らす光景、それは何処か神秘的な物を感じられた。
 幻想郷内にある此処、霧の湖で見る夜の景色は、決して現代社会では見られない美しさを醸し出していた。
 湖に映る月。ゆらゆらと風に揺られる草木。うっすらと映る山の影など、自然の風景は心を癒してくれる絶好の場所ともいえた。
 だが、そんな大自然の美しい風景の中に、似つかわしくない存在があった。

「くくく、まさかこんな人里離れた場所に奴が居るとはなぁ。最初は突然こんな場所に連れてこられて驚いたが、まぁ良いだろう」

 その似つかわしくない存在は不気味な笑みを浮かべていた。黒いジャケットに両肩に鋭いトゲを飾り、顔は鉄製の仮面を被り素顔を隠している。だが、ジャケットの下は素肌をさらけ出しており、その鍛え上げた胸板には七つの傷が刻まれていた。

「待っていろ、ケンシロウ! 今度こそお前をぶち殺して、誰が北斗神拳の正統伝承者に相応しいか教えてやるぜぃ!」

 物騒な事を大声で叫びながら、そいつは天に向かい高笑いを挙げた。この男の目的は此処幻想郷に居るケンシロウの様だ。そして、この者自身もケンシロウと同じように突然連れてこられた存在の様でもある。
 一体何故? 何の目的があって連れてこられたのか? 
 そんな悩みなどこの男にとっては些細な悩みに過ぎなかった。この男の目的はただ一つ。北斗神拳正統伝承者でもあるケンシロウを倒し、自分自身がその座に就く事にあるのだから。
 肌に冷たい感覚がした。それも唐突に―――

「ん、何だ? 急に冷たくなっ……たわっ!!!」

 その一言が男の最期の言葉だった。言葉を言い終わった後、其処にはかつて高笑いを浮かべていたであろう男が巨大な氷の塊の中に閉じ込められて氷漬けになっていると言う何とも滑稽、いや、恐ろしい光景が映っていた。
 しかも残念な事に、この辺りは人の通りが少ないのでこの男を助けてくれる存在は恐らく、しばらくの間訪れないであろう。
 即ち、しばらくの間ずっとこの男は氷漬けのままと言う事になる。
 まぁ、本編とは関係ないので別に気にしなくても問題はないのでさっさと場面を変えるとしよう。




     ***




「―――ってな事があったんだぜ。聞いてるかぁ?」

 場所は変わり、此処はとある神社の縁側であり、其処では縁側らしく風情のある風景を眺めながら渋い茶と茶菓子を楽しむ日本古来の風情が楽しめる場所であった。
 そんな縁側に魔理沙は腰を降ろしながら前回自分が体験した恐ろしい体験をその神社の家主に長々と駄弁している光景が見えていた。
 尚、魔理沙の駄弁を家主は五月蠅そうなのか、はたまた全く気にしてないのか、のんびりと茶を啜るだけであった。

「だから、さっきも言ったでしょ魔理沙? ただの人間が飛び回ってるあんたを走って追いつける訳ないじゃない。どうせ狸にでも化かされたんじゃないの?」
「ずぇったい違うぜ霊夢! あれは純然たる人間だったぜ! まぁ、背丈は私よりちびっぽかったけど……とにかく人間だったんだぜ! その人間みたいな奴がさぁ、あたしがまた何時もの様に香霖の所で物を借りてったら凄い恐ろしい形相で追っかけてきたんだぜ! しかも半日も!」
「自業自得じゃない。何時も何時も店にツケをため続けてるから霖之助さんが怒って魔理沙を驚かせる為に用意したんじゃないの?」
「まっさかぁ。香霖がそんな事する筈ないぜ」

 げらげらと魔理沙は声をあげて笑った。そんな魔理沙の笑い顔を見た後に、霊夢は茶菓子の饅頭を手に取り、一口に平らげた後に再び茶を啜った。

「にしても暇ねぇ。またどこかで異変でも起こらないかしら」
「良く言うぜ。そんな事言っといて異変が起こる度に面倒臭いとか言う癖にさぁ。ま、此処にもし例のあいつが居たらそれこそ異変だろうけどさ。ま、来る筈ないんだけどな―――」

 退屈そうにつぶやく霊夢に対し、魔理沙は何時の間にか上機嫌になっていた。前回自身が巻き込まれた恐るべき事態を説明出来たが為の安心感であろうか。
 それとも、単に吐き出したかっただけだったのだろうか。その真相を知る術は魔理沙自身にしかなかったりする。

「んで、そんな事を言う為にわざわざ家に来た訳? しかも茶や茶菓子を食べつつ」
「そんな風に睨むなよぉ。だって珍しいじゃんかぁ。此処幻想郷に外来人が訪れるなんてさぁ」
「そんなに俺が来るのが珍しいのか?」
「あぁ、かなり珍しい………え?」

 思わず相槌を打って見せたが、先ほどの声の主は明らかに霊夢の声じゃなかった。隣に居る霊夢はのんびりと茶を啜っているのでとても喋れる状態ではない。
 では、一体誰が?
 恐る恐る魔理沙は声のした方へと視線を動かす。すると、其処には明らかに幻想郷の人間とはかけ離れた作りをした人間が一人立っていた。
 背丈は二頭身程度しかないのに眼力は凄まじく、紺色のジャケットにジーンズ。更には何故か両肩に謎の防具を身に着けた余りにも場違いな姿をした男? が一人立っていた。
 無論、それは紛れもなく前回魔理沙を追いかけまわしたケンシロウその人であった。

「うわわわああああぁぁぁ! ででで、でたたたぁぁ!」
「む、魔理沙か。こんな所で会うとは奇遇だな」
「ななな、何でお前がここに来てるんだぜぇ!」
「霖之助に頼まれてな。博麗神社と言う所に届け物をして欲しいと言うので運んできたのだ。で、此処が博麗神社で間違いはないのか?」

 ケンシロウは縁側辺りをきょろきょろと眺めながら訪ねてきた。もしかして、こいつは知らないまま来たと言うのだろうか。だとしたら余りにも魔理沙は自分自身の不運を呪いたくなった。
 何が悲しくて前回自分の事を半日も鬼の形相で追いかけまわした亜人と対面しなければならないのか。

「此処が博麗神社よ。ところで、あんたは誰なのよ?」
「俺はケンシロウ。ケンと呼んでくれ。今は訳あって霖之助の元で世話になっている」
「あぁ、あんたが今朝の新聞に載ってた亜人ね。因みに、私は博麗霊夢。此処博麗神社の巫女をやってるわ。でも、その霖之助さんが一体私に何の用なのよ?」
「前に修理を頼まれた冷蔵庫の修理が終わったので届けに来た」
「冷蔵庫って……その背中に背負ってる奴の事?」
 
 霊夢と魔理沙の二人は改めてケンシロウを見た。良く見ると、ケンシロウは背中に何かを背負っている。そう、それは紛れもなく冷蔵庫であった。
 しかもかなり大型の奴。型は古いが結構使える代物だ。

「あぁ、そう言えば前に冷蔵庫を壊しちゃって霖之助さんの所に預けてたんだっけ。すっかり忘れてたわ」
「忘れんなだぜぇ! そのせいであたしはまたこいつと鉢合わせる羽目になっちまったんだぜぇ!」
「まぁ、あんたの場合は自業自得なんだし、しょうがないんじゃない?」
「ひ、ひでぇ……」

 どうやら魔理沙は相当ケンにトラウマを抱えてしまったようだ。それほどまでに前回ケンに追いかけられたのは衝撃だったのであろう。

「む、あの時の事か。あれは失礼した。あの後霖之助に聞いたのだが、あれは万引きとは違ったようだな。俺もここに来て日が浅かった故とは言え申し訳ない」
「え? あ、うん……あたしも気を付けるんだぜ」

 ケンシロウの方から魔理沙に謝罪の意を示し、それに釣られるかの様に魔理沙もまた丁寧に謝罪をし返していた。
 なぜかその光景が滑稽に見えてしまった為に霊夢は隠れて笑いを隠していた。

(なんだ、魔理沙が言うような悪い人じゃないみたいね。外来人が来たからてっきり異変か何かかと思ったけど、何の能力もなさそうだし別に気にする事もなさそうね)

 霊夢から見るとケンシロウは特に何の変哲もない人間に見えるのだろう。まぁ、それはまだ霊夢がケンシロウの真の姿を見ていないからなのだが。

「冷蔵庫は何処へ運べば良い?」
「そうね、とりあえず台所へ置いてくれればそれで良いわ。でも、一人で大丈夫なの? 結構重いんじゃないのそれ」
「問題ない。この程度の荷物なら片手で十分過ぎる程だ」
「へぇ、人間の癖にかなりの力持ちなのねぇ」

 ふつうに関心するだけの霊夢だったりする。そんな霊夢と魔理沙を他所に、ケンシロウは冷蔵庫を背負いながら言われた通りの場所。つまり台所へと冷蔵庫を運び、其処で荷を降ろした。

「ご苦労様。わざわざ悪かったわね。折角だし、茶でも飲んでいく? ほんの少しだけど茶菓子もあるけど」
「何!? 水と食料を恵んでくれると言うのか?」
「いやいや、誰も水と食料なんて言ってねぇし。茶と茶菓子って言ってるだろ?」

 ケンシロウの素っ頓狂な発言に霊夢は目が点になっており、魔理沙は手を左右に振りながら冷静にツッコミを入れていた。
 
「にしても魔理沙。彼の何処が恐ろしいのよ? ただ力が強いだけの小人なんて此処じゃ珍しくないじゃない」
「何言ってんだぜ! あいつに追いかけまわされた時のあたしの気持ち分かるか? 危うく捕まって全身の骨をへし折られそうになったんだぜぇ!」
「そんなのあんたお得意の弾幕で追っ払えば良かったじゃない」
「………あ!」

 どうやら恐怖の余りすっかり忘れ去っていたようだ。考えてみればそうだった。如何に力が強かろうと足が速かろうと所詮は人間。空も飛べないだろうし、ましてや弾幕も恐らく打てないであろう。
 そうなれば撃退も容易い筈である。何故もっと早く気付かなかったのか。つくづく魔理沙は前回惨めに逃げ回っていた自分が恥ずかしく思えてしまった。

「折角のご厚意だが遠慮しておこう。それよりも、俺が貰うべきこの水と食料を麓の村人達に分けてやってくれないか。これを得た村人達がまた明日を懸命に生きられるだろうからな」
「其処まで此処は切羽詰まってないわよ失礼ね。でもまぁ良いわ。霖之助さんには無事受け取ったって言っといてね」
「分かった。では、失礼する」

 届け物を無事に終え、ケンシロウは役目を終えて帰ろうとする。

「それにしてもあんたは凄い人間なのねぇ。空を飛んでる魔理沙相手に走って追いつくなんて―――」
「む、それほど凄い事なのか?」

 霊夢の呟いた一言にケンシロウは反応して振り返った。

「そりゃ凄いわよ。能力のない人間が飛んでる魔法使い相手に走って追いつくなんてまず考えられない事だからね」
「問題ない。北斗神拳に不可能な事はないからな」
「北斗神拳? 何よそれ」

 聞いた事のないフレーズを聞き、霊夢の頭の上に?マークが浮かび上がった。因みに、魔理沙は後ろの方で未だにネガティブシンキング中なのでしばらくそうっとしておくように。

「北斗神拳とは、二千年の歴史を持つ一子相伝の暗殺拳だ。相手の経絡秘孔を突き内部から破壊する事を極意とする一撃必殺の拳法。それが北斗神拳の事だ」
「うわぁ、聞いた私が言うのもあれだけど、相当胡散臭いわねぇ」

 霖之助と同じく霊夢もまた胡散臭いと思っていた。まぁ、実際問題そんあ拳法があったら世に広まらない筈がない。下手したら紅魔館の門番辺りが使ってそうな気もする。が、生憎彼女はそれらを使ってなかった気がする。

「で、一子相伝って事は、それを使えるのはあんた一人って事?」
「嫌、俺の他に三人の兄が居る」
「え? 何よそれ。一子相伝って言っておきながら三人も使える奴が居るの? そんな胡散臭い拳法を」
「うむ、だからこそ、俺は北斗神拳正統伝承者として、兄達が間違った道を進んだ時は、命懸けでそれを止めねばならない。恐らく、兄弟同士で血で血を洗う熾烈な戦いとなるであろう」

 一人悲しき決意に思わずぐっとなるケンシロウであったが、余りにも突拍子もないセリフな為か霊夢にはちんぷんかんぷんであった。
 そもそも、外の世界がどんな風になっているかは大体把握している。少なくともケンシロウが言うような世紀末な世には恐らくなっていない筈だが―――

「まぁ、良いわ。変に引き留めてしまって御免なさいね」
「気にすることはない。これも北斗の運命。俺は生まれた時から暗殺者としての道しかなかった。ならば、その宿命を全うするまでの事だ」
「あっそう……まぁ、下手に人里に迷惑掛けるような真似はしないで頂戴ね。そんな事したら流石に私も黙ってられないから」
「分かっている。この力は弱き人を守る為の拳。この拳で俺は乱世を生きる人々を救って見せる」
(だからそこまで荒んでないっての!)

 相変わらず言動が何処かぶっ飛んでいるのだが、この際これ以上ツッコミを入れるのは無粋だと思い思いとどまる事にした霊夢だった。
 
「で、あんたは何時まで塞ぎ込んでるのよ」

 ケンシロウを送り返した辺りで霊夢はその遥か後ろの方ですっかり意気消沈している魔理沙の方を見た。
 魔理沙はと言えば前回追いかけ回された際に何故弾幕で追っ払わなかったのかと未だに後悔している真っ最中なのであった。

「うぅぅ、我ながら情けないんだぜぇぇ」
「あのねぇ、それだったらそのケンって人に弾幕勝負挑めば良いじゃない」

 呆れた口調で霊夢は言った。だが、その一言が後の惨劇の引き金になるとはこの時の霊夢自身全く自覚していなかったのだから世の中とは恐ろしいものである。

「そうか! そうだよなぁ! そうだよ! こんな事で塞ぎ込んでる暇があんならちゃっちゃと弾幕勝負挑んで勝っちまえば良いんだぜぇ! そうと決まれば善は何とかだぜぇぇ!」

 一人雄叫びを挙げつつ魔理沙は縁側を飛び出しケン目指して走り去ってしまった。自分が空を飛べると言う事を忘れる程に。
 そして、霊夢はこの時脳裏に一つの疑問が浮かんできた。

「そう言えば、ケンって人……弾幕使えるのかしら?」

 疑問に思うのであれば何故そんな事を勧めたのか?
 因みに言うとだがケンシロウは当然弾幕は使えなかったりする。まぁ、当然の事でもあったりする。




     ***




 縁側を抜け、ケンシロウは博麗神社の境内前に来ていた。境内と言うからには賽銭箱やでかい鈴のついた紅白の紐などが当然の如くついている。

「そう言えば、神社に来たら賽銭をすべきだと前に聞いた気がするな」

 何処で仕入れた情報なのか。とにもかくにもケンシロウは賽銭箱の近くに立ち、懐から小銭を数枚取り出してそれを投入し、主室に紐を掴んだ。

「おい、ケン! あたしと弾幕勝負を―――」

 そんな時、魔理沙がケン目がけて駆けつけてきた正にその時であった。ケンシロウが掴んだ紐に突如として電流が走り、その電流が紐を伝わり、神社全体へと飛躍していった。
 一瞬の出来事ではあったのだが、その光景ははっきりと魔理沙の目にも映ったのだった。

「お、おいケン。今のはなんなんだぜ?」
「む……どうやら、経絡秘孔を突いてしまったようだ」
「は? 経絡秘孔!? 何だよそれ……ってか、おい、神社が―――」

 魔理沙は思わず後ずさった。彼女の目の前では、何と博麗神社が徐々に歪な形を成して膨らみ始めているのだ。
 ところどころボコボコと膨らんでいく。まるで風船のようだった。
 そして、ある程度まで膨張した後、風船が割れるのとほぼ同じ要領で博麗神社は粉々に砕け散ってしまった。
 その際に【あべし!】と何故か砕ける音がそう聞こえてしまったのは恐らく幻聴なので気にしないように。
 とにもかくにも、ケンシロウが神社の紐を引っ張ったが為に博麗神社の経絡秘孔を誤って突いてしまい、その結果博麗神社は見るも無残に粉々になってしまったのであった。

「あ、あぁ……あわわ……」
「むぅ……まさか、俺とした事が誤って秘孔を突いてしまうとは……俺も迂闊だった。これも平和な幻想郷に浸りすぎたせいだろうか」
「言ってる場合か! とにかく逃げるんだぜぇ!」

 一人全く状況が読めていないケンシロウの襟首を引っ掴んで魔理沙は上空へと飛び上がった。みるみる内に高度を上げて博麗神社を後にする。

「魔理沙よ。何をそんなに怯えているのだ?」
「お前こそ何でそんなに平然としていられるんだよ! 霊夢の神社をぶっ壊したんだぞ! しかも跡形もなく! あんな事して霊夢が黙ってる訳ねぇだろうが」
「霊夢? それは、今俺達を追いかけ来ている彼女の事か?」
「へ?」

 ケンシロウの言葉に魔理沙は胆が冷える思いをしながら後ろを振り返った。其処には確かに霊夢が飛んで追いかけて来ている。
 鬼の形相通り越して悪鬼の表情となった紅白巫女が魔理沙とケンシロウ目がけて襲い掛かってきているのだ。

「むぁぁぁちなさぁぁい! あんたたちぃぃぃぃ!」
「ぎぃぃぃやぁぁぁぁぁ!」

 再び魔理沙の逃走劇が始まった。しかも、今度はお互い空を飛べると言うので有利性は皆無だったりする。しかも、こちらはケンシロウと言うお荷物を抱えての飛行。それに対し霊夢の方は手ぶらにも近い状況だったりする。
 明らかに分が悪すぎた。

「あんたたちぃぃぃ! よくも家の神社を壊してくれたわねぇ!」
「ごごご、誤解だぜぇ霊夢ぅ! 壊したのはあたしじゃないんだぜぇ!」
「お黙り! あんた達以外に一体誰が神社を壊すって言うのよ! 二人まとめて退治しちゃるわぁぁぁ!」
「いやぁぁぁ! 何で毎回あたしは追いかけ回されなきゃならないんだぜぇぇぇ!」
「大変だな、魔理沙」
「お前が言うな! この元凶!」

 悪鬼の表情となって追いかける霊夢に対し前回以上に必至に逃げ回る魔理沙。そして、一人状況が呑み込めず話についてこれていないケンシロウ。そんな三人の壮絶な追走劇はこれまた半日近く続けられる事となる。しかも、追いかけている相手が霊夢なので、当然の如く弾幕の雨あられが降り注ぐ事は最早当たり前の如くであり。
 その結果、周囲の里や山々やその他の箇所に甚大な被害が被ってしまった事もあったのだが、その辺に関しては深く触れないで頂きたい。
 どうせ幻想郷では良くある事なのだろうし―――




     ***




「遅いなぁケン。一体どうしたんだ?」

 時刻は既に夜を回っており、一人店に居た霖之助は少しケンの身が心配になっていた。
 ケンが博麗神社目指して此処を発ったのが丁度お昼前。順調に行けば夕方前には帰ってこれる筈なのだが、未だに帰って来ていない。
 ちょっとだけ心配になりだしていたのであった。

「うぅむ、まさか帰り道の途中で妖怪に絡まれたとか? だとしたら危ないなぁ。幾ら北斗神拳とか言う胡散臭い拳法を使うって言ったってただの人間だし。少し様子を見に行ってみるか」

 心配になった霖之助が店の扉を開けて外に出た時、目の前には既にケンシロウと魔理沙の二人が立っていた。弾幕で黒焦げになりあちこちから黒煙を巻き上げながら―――
 そして、その後ろでは風呂敷に大荷物を背負っている霊夢の姿まであったのだから霖之助が驚くのは最早明白の事だったりする。

「ど、どうしたんだ二人とも? それに霊夢、その大荷物は一体―――」
「霖之助さん、暫く厄介になるわ」
「え? 何で!? って言うか、届け物は?」
「全部なくなったわ。粉々になってね」
「………ど、どう言う事?」

 全く話が呑み込めていない霖之助の為に黒焦げとなった魔理沙が説明に入った。

「ケンが博麗神社の経絡秘孔を突いて、神社を全壊させちまったんだぜ」
「すまぬ、俺の不注意であった」
「え、えぇっと……それ、本当の事?」

 正直信じられないと言った顔をしている霖之助に向かい、ケンシロウと魔理沙、そして霊夢の三人は揃って首を縦に振って頷いて見せた。
 こうして、神社が再建されるまでのしばらくの間、ケンシロウに続き霊夢までもが香霖堂の世話になる事となった。
 まぁ、香霖堂の世話になっているケンシロウが神社を全壊させたのだから当然と言えば当然の事なのであろうが。





つづく 
 

 
後書き
次回予告


人里にて触れただけで人の病を治す奇跡の男が居ると言う噂を聞きつけたケンシロウは、急ぎ人里へと向かう。
だが、同時に人里へ迫る悪しき者が居た。

次回、空気を読まない拳士達が幻想入り

   第3話 戦慄の人里! 北斗現れる所乱あり!

「お前はもう、死んでいる―――」 
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