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ドリトル先生と森の狼達

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第五幕その五

 先生は皆にです、北東の方を見つつ言いました、その野兎の夫婦が言った方を。
「今からね」
「うん、行こうね」
「あっちの方にね」
「山犬さん達がいるっていう」
「あそこにね」
「そう、行こう」
 是非にと言う先生でした。
「これからね」
「それにしても山犬は」
 王子が言うことはといいますと。一行は早速歩きはじめています。
「最初は飼い犬でも」
「うん、野生化するとね」
「完全に山の生きものになるんだjね」
「これは他の生きものもだよ」
「山犬に限らないんだね」
「ほら、ディンゴっているね」
「ああ、オーストラリアの犬だね」
「ディンゴは最初は飼い犬だったんだよ」 
 先生はこのことを王子にお話しました。
「アボリジニーの人が持ち込んだんだ」
「あの人達がなんだ」
「氷河期の頃にね」
「ふうん、大昔だよね」
「昔は昔だけれどね」
「人が持ち込んだのは確かなんだ」
「そう、家畜にしていた犬達をね」
 そのオーストラリアにというのです。
「それが彼等なんだよ」
「それで野生化してなんだ」
「ディンゴになったんだ」
「最初オーストラリアにはイヌ科の生きものはいなかったんだね」
「あそこは有袋類の島だからね」
 カンガルー等がそうです、お腹のところに袋があってそこに子供を入れて守って育てる哺乳類達がそれです。
「そうした生きものはいなかったんだ」
「それで犬がいるってことは」
「そう、わかるね」
「人間が持ち込んだものなんだ」
「最初は飼い犬でもね」
「野生化するんだね」
「そうなるからね」
 だからだというのです。
「この山でもね」
「山犬は野生化しているんだ」
「そうなんだ」
「ううん、飼い犬ではなくなっているんだ」
「その逆もあるね、野良犬や野良猫でもね」
「人が飼えば飼い犬、飼い猫になるね」
「そういうものだよ、動物は野生化して家畜化するんだ」
 先生は王子にこのことをお話するのでした。
「その境目はわりかし曖昧でもあるから」
「飼い犬も山で野生化して」
「山犬になってしまうんだ
「そういうことなんだね」
「そうなんだ、野生とそうでないかは」
 それこそとです、先生はお話します。
「実は曖昧なんだ、結構ね」
「はっきりしていなくて」
「少しのことでなんだ」
「野生になったりそうでなくなる」
「そうしたものなんだ」
「そうだよ、これは人間もだからね」 
 他ならぬ先生達もというのです。
「だから野生児や狼に育てられたとかいう話もあるんだ」
「狼に育てられた子供」
「そういえばそうしたお話もありますよね」
 王子とトミーがここで狼に育てられた子供のお話を受けて言いました。 
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