ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
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第二十話
前書き
週一のペースに落ち始めて草。夏休みだからこそ忙殺されるって学生の七不思議に入ってもいいと思うんだ(提案
原作で言うところの三巻とソード・オラトリア4巻ですね。つまり二巻の部分は終了です。ちょっと不自然かなって思ったんですけど、同じ結末を書いても意味ないと思ったので。
それではどうぞ。
「じゃあ、よろしく……お願いします?」
ちょこんと首を傾げながらそう言い、アイズは愛剣の鞘を構える。よろしく頼まれた私は彼女にならい、今朝一番にナチュルから受け取った槍をいつものように構えた。
前世にもあったと思う市壁の上で、【ロキ・ファミリア】のエースにして、ついにLv.6に到達した天才少女アイズと対峙する。私と彼女しかいない市壁の石畳をそよ風が撫で、お互いの髪が揺れる。
天を仰げば黒天に瞬く星が私たちを照らし、ふと視線をずらせば内側の都市の姿を一望できる。魔石灯の光がひとつ、またひとつと消えていっては、違う区画から新たな光が灯される。随分遅い時間帯のはずだけど、この都市は夜が更けてから本業発揮する場所の方が多い。
さて、ぎりっと槍の柄を握り締めた私。
……いったい、どうしてこうなった?
◆
「はい。頼まれてた槍よ」
「おぉ! ありがとうございます!」
全長は私の丈ほどあり、白銀製なのか放たれる金属光沢が冷たく鋭い。対照的に柄の握り手には燃えるような赤い革がなめしており、余って垂れたそれが絶妙に気品を際立たせる。これが店に並べば0の数が最低でも5つは付くはずだ。そこにナチュルが手がけたと書き加えればもう一桁増えるまである。
Lv.1の冒険者には握ることすら許されない品質の槍。それをナチュルは躊躇いなく私に手渡した。
頼まれていた、というので解る通り、この槍はナチュルにお願いして作ってもらった一品だ。完全な薙刀を目指し日々鉄と己を鍛錬している最中悪いと知りつつお願いしたら、思いのほかすんなりと受け入れてくれて、発注した二日後には完成させてくれていた。
前世の私に憧れて薙刀を作っているのに、その本人から違う武器を作れと言われるのだから、嫌な顔ひとつはされるだろうなと気構えていた私としては肩透かしを食らった気分だった。
訊ねてみると、「同じ長柄武器だから問題ないわ」とのこと。そして「それに薙刀だけじゃなくて槍も使ってたものね」とフォローしてくれた。ナチュルの工房にあった迷宮神聖譚を手にとって見ると、確かに槍も愛用していたと記述されていた。
私が薙刀を使い始めたのは冒険者人生の後半だからね。それまではずっと槍だったし、というか薙刀を知らなかったし。【撥水】とか編み出してるのも単に槍を使う機会が多かったからだしね。
順序的には 駆け出し(槍) → 二十年後(槍) → それ以降(槍・薙刀) → 終盤(薙刀) って感じ。長柄武器の心得を槍で学んでいたからすんなり薙刀も使えるようになったわけだ。もちろん根本が似てるだけで勝手が違う武器だから慣れるのに結構時間はかかった。
ともあれ、どうしてナチュルに槍を作ってほしいと頼んだかというと、私もそろそろ本腰を入れてランクアップに臨もうと思っていたからである。その願掛けに槍を発注した。薙刀を使い続けるのは構わないけど、深層のモンスターの中には槍の方がやり易いモンスターもいるから、そのための用意である。幸いナチュルの手がける武器は上層で使うと殺り過ぎも良い所、という具合の性能を誇るから深層を目指していく頃合いだ。
ランクアップの最低条件は基本アビリティの項目をE以上にすること。と言っても、これは己の器を深めるために必要な偉業を成し遂げるため必要な力がその程度なのであって、別に全項目E以上にしなければならないという規則はない。尤も、己の限界を突破するほど強いモンスターと相手取る時に頼れるのは腕とステイタスなので、必然的にE以上になっているとは思うが。
私のアビリティ評価は大よそF。駆け出しから一ヶ月ほどしか経っていない者とは思えない成長スピードである。もしかしたら史上最高速度の成長なのではないだろうか。あのヘラクレスですらここまで早くはなかった。まあ、Lv.1のくせに二十階層以降のモンスターをソロで狩ってるから、貰える経験値がバカみたいになってるからなんだけど。一種の裏技、言い換えれば卑怯な手口でもある。
話を戻すと、ランクアップするための条件は己の精神的限界を突破することで、その代表的な例が格上のモンスターを討伐するといった偉業を成すことだ。
しかしご存知の通り、下手したらLv.2相当の力の差を覆し続けている私はランクアップできていない。以前説明したとおり、これは前世で何回も限界突破してしまっているため、私自身、もしくは神の恩恵がそれを劇的な成長だと受け止めていないからだ。
ではどうすればランクアップできるだろうか。やはり迷宮の弧王をソロで狩ることぐらいだろう。矛盾しているようだけど、いくら格上のモンスターとはいえ、雑魚に変わりない。そのボスを倒してこそ真の成長が見込めるのではないか。もちろんこれは私に限った話で、他の人それぞれで変わってくる事情だ。中にはトラウマだった同格のモンスターを倒したことでランクアップできた人もいたくらいだ。
そんなわけで、私は下層の迷宮の弧王を倒す準備をしていたわけだ。これでランクアップできなかったら他の手を考えるまでだ。と言っても他に良い案があるのかねぇ……?
受け取った槍を眺めて思考していると、熱の篭った鋳炉の傍で鍛え続けていたせいで汗びっしょりのナチュルが声を掛けてきた。
「あ、そうそう。近いうちに【ロキ・ファミリア】の遠征のお供をすることになったから、しばらく武器の注文は受けれないわ」
「遠征ですか。ということは【ヘファイストス・ファミリア】と合同で?」
「そうよ。私たち鍛冶師は武器の消耗を直すためだけについていくんだけどね。伊達に《戦える鍛冶師》と呼ばれてるわけじゃないわ」
私には縁の無い話だったけど、前世にも似たようなことが結構あった。【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が合同で深層に潜る際に、よく鍛冶師の同行を募る掲示板を見かけたものだ。そのときから【ヘファイストス・ファミリア】が参加していたから、今も昔も冒険者は変わらないものだ。
しかし、遠征か……。確か公には五十八階層まで進んでいることになっているんだっけか。
私の追憶を察したのか、ナチュルは少し気難しい顔に歪めたが、すぐに引っ込めて率直に言った。
「それで、深層について聞きたいことがあるのよ。……構わないかしら?」
何のことかと思ったら、そう言えばナチュルには私のことをクレアではなくレイナとして接してくれと頼んでいた。これは身元の隠蔽することも含まれるけど、同時にクレアという魂がレイナの体を乗っ取っているという事実を忘れないためだ。形而上の話だから気にしなくて良いのかもしれないけど、やはり本来入るべきだったレイナの魂があったはずだ。それを私の都合で押しのけて奪い取ってしまって今に至る。だから、せめて両親が付けてくれた名前を名乗ることにしているのだ。
たぶんそれがナチュルにとって、前世のことに触れないでほしい、というサインだと受け取れたのだろう。意図していなかったとはいえ、誤解を招いてしまった。
「大丈夫ですよ。前世のことなら覚えてる限り話します」
「っ本当!? じゃあ前世の時に使ってた薙刀の出自を……、じゃなくて!」
相変わらず頭には薙刀の事で詰まっていた。恥じ入るように火照った頬を汗と共に拭い去ったナチュルは少し不安げな表情を浮かべた。
「……深層はどんな場所だった? 私は三十階層以降に降りたことがないのよ。そもそも、今回私に声が掛かったのは団長の気まぐれのようなものだし……」
「つまり、万が一のときに自分の力で抵抗できるか不安、と」
「そういうこと。Lv.5とかLv.6の連中が手こずる場所よ? Lv.3の私じゃ成す術も無いんじゃないかって、ちょっと不安なのよ」
遠征時に専門外である鍛冶師が戦場に同伴するというのは、普通に考えて危険極まりない。専門家である冒険者たちでさえ死人が続出する死地に、素人とまで言わないが彼ら以下の鍛冶師が生きて帰ってこれる道理はない。
それでもなぜ連れ出すかというと、武器の損耗を回復できるメリットと、鍛冶師を守りながら進むデメリットが釣り合っているからだ。それに上層までなら鍛冶師たちも十分戦力になるという点もある。
だが、最深層は? 冒険者たちは己の身を守るのに精一杯で、鍛冶師たちを庇う余裕は無いんじゃないか?
答えと言えば、まあ無いだろう。そんな余裕があれば五十九階層を突破できるはずだし。それも冒険者たちも解ってるだろう。
実際に六十階層以降に立ち入ったことのある私から言わせて貰えば。
「たぶん五十階層で待機させられると思いますよ。その辺の説明、受けてないんですか?」
「まだよ。と言うか、この話は本当についさっき言い渡されたばっかなのよ。椿め」
どうやら今の【ヘファイストス・ファミリア】団長は椿と言う人らしい。あからさまに嫌そうに顔をしかめるナチュルは、よぎったその人の顔を煙に払うように頭を振った。
「私の見解では五十一階層からは凌げる程度の実力を持った者しか連れて行かないと思います。【ロキ・ファミリア】ほど大きな団体ですから、余計な物は五十階層の野営地に置いていくかと」
「……そんなにヤバイところなの? 五十一階層から」
張り詰めた顔で訊ねてくるナチュル。
うーん。どうだったかなぁ。とりあえず竜がバカみたいに出てきたのは覚えてるんだけどねぇ。いかんせん私の体感じゃ二十年ちょっと前の記憶だ。強烈なシーンが断片的に思い浮かぶ程度。深層と言われて真っ先に六十階層以降の景色を思い出したのは内緒だ。
「ヤバかったと思います」
「具体的には」
「えぇっと、確か……、そう! 下から大きな竜に狙撃されたりします」
「そ、狙撃!?」
「何層も下から炎ブレスを吐いてきます。だから床もぶち抜かれて落っこちたこともありました。落ちてる最中も岸壁に巣食う翼竜にも狙われたりします」
「それが噂に聞く《竜の壷》……」
あー、そんな名前付けられたような。何せ五十台の階層のマッピングデータをそのまま【ゼウス・ファミリア】に譲渡しちゃったから、彼らがそう名づけてたはず。
未到達階層を切り拓いた者に名づけの権利が与えられる。有名なのは《嘆きの大壁》である。だから六十階層以降の名づけもクレアに権利があったけど、そんなネーミングセンス無いから放ったらかしにしてた気がするなぁ。
ちなみに、何で公で発表されている到達階層が五十八階層なのかというと、それ以降に立ち入った人が二人しかいないからだ。当然、私とヘラクレスである。私たちだけランクが抜群だったせいで、私たちに付いてこれる人がいなかったのだ。
あまりに個人なのでギルド側が公に発表する到達階層は『ひとつのファミリアに所属するメンバーが五人以上で構成されたパーティが到達した階層』という定義に変えた結果である。だから最期を迎える直前に発表された私の到達階層は不明と表記されていたはずだ。
馬鹿にするつもりは毛頭ないけど、Lv.6の冒険者が手こずる階層ならLv.10は朝飯前で乗り越えられる階層だからねぇ。Lv.6の冒険者の立場で言えば、Lv.2の冒険者が手こずる階層を踏破する感覚かな? まあ、真に恐ろしいのはLv.10でも手こずる階層でLv.8のヘラクレスが普通に戦えていたことなんだけど。
五十一階層以降の大体を語り終えたところで、ナチュルがそれとね、と前置きを入れて聞いた。
「みんなが必死になって目指してる六十階層って、どんなところだったの?」
周りがテストに向かっている最中で模範解答を覗き見るような、そんな背徳感を感じているのか、わずかに強張った頬。しかし、ナチュルが実際に見ることができるわけではない。
言っていいものか迷った挙句、こう返した。
「何ていうか、静かな場所でしたよ」
「静か……?」
「五十台の階層とは大違いでした」
《竜の壷》が炎をメインにしているならば、六十台の階層は水だった。古代林のような捩れ苔た木が水面からたくさん突き出ており、モンスターは控えめである。もちろんそいつらは凶悪の一言だけど、五十台の階層の苛烈さと比べればマシだ。私もよく六十台の階層に持ちきれなくなった新発見のアイテムを寄せ集めていたものだ。
こういうときに情景を絵のように保存できるアイテムが欲しいと思うんだよね。それを魔法道具屋さんに言ったら「無茶振りにもほどがあるわ」と怒鳴られたけど。今はあるのかな? 探してみよう。
「まあ、その他はお楽しみです。きっとそう遠くないうちに六十階層に到達できるはずです」
「はぁ……早く新しい鉱石見つからないかしら……」
興味があるのはそこかい。前世で使ってた武器がそれに当たると思うけど……。あっ、だから薙刀の出自を聞いたのね。気が向いたら必要だった材料を教えてあげよう。
心底困ったように頬に手を添えてため息を付くナチュルは、そっと近くに落ちていた設計図に目を落とした。釣られて覗き込むと、そこには斧槍に似た絵と、それを作るのに必要な材料の理想が書き込まれていた。
私の視線に気がついたのかナチュルはその設計図に目を向けたまま言った。
「これね、半年くらい前に思いついたデザインなのよ。だけどその通りに作るとどうしても武器の先端に重心が置かれちゃって使い難かったわ。だから軽い素材が必要だったんだけど、今じゃそれを満たす材料が無くてね。久しぶりに掘り出したから気になったのよ」
「それにしても中々奇抜ですね」
「ふふ、素直に『子供が思いついたような物』って言ってくれていいのよ?」
「いえ、そこまでは言いませんけど」
まあ、見せられて改まれば誰か思いつきそうなデザインではある。槍のような刃の両側に左右対称に三日月状の刃が付いている物だ。ただ、これに至るまでノーヒントだったのを考えると、やはりナチュルは凄い人だと改めて思う。
確かにこれならば斬る、突く、叩く、薙ぐ、払うもできるだろう。ただ難点なのがナチュルが言った通り従来の薙刀と掛け離れた重心操作、そして何よりも上記の攻撃手段を全て操れる技量が必要になる。
最初は三日月状の刃は薙刀の名残かと思ったけど、あえて逆剃りにすることで攻撃範囲と鋭利さを飛躍的に上昇させているのが解る。この発想を得るのにどれだけの苦労があったかは推して計るべし。
鍛冶以外は大雑把と自他共に認めるナチュルが、半年以上前に描いた設計図を保管していたということは、彼女自身も会心のデザインだと感じたからなのだろう。
「それでは私、そろそろ行きますね」
「引き止めて悪かったわね」
「いえ、私の方こそ。この槍、ありがとうございました」
そのデザインを完成させてやりたいと思ったなら、それを可能にする材料を深層から持ち帰るのみだ。今すぐにとはできないけど、いつか必ずそうしたいと思った。私のことを慕ってくれる人のために。
よし! 今日は良いダンジョン日和になりそうだ!
◆
そう思っていられたのも僅かだった。ナチュルの工房を出て、最近見つけたバベルまでの近道を歩いていたときにばったり出くわしたのだ。
ぼろぼろのベルに肩を貸すアイズに。
「なっ───」
私とばっちり目が合ったベルは、なぜか顔面蒼白になってアイズと私を忙しなく見渡し、急いで離れようとしたところをしっかりアイズに腕を固定されているためつんのめる。いったい何がしたいんだ君は。
アイズはというと、私のことをいつものお人形のような無表情でじぃーっと見つめてきており、離れようとするベルの腕だけはがっちり握っている。肩を貸しているのだから当然だけど、なぜかベルは凄い焦って離れようとしている。
で、どうしてか彼らの肩越しにある物陰から真っ黒な気配がビンビン漂ってるんだけど、いったいどういう状況なんでしょうかね? 耳を澄ませれば「あはははははっはははははあはっはははははは」とか聞こえるし……。アイズ気づいてないのかしら。
「お二人とも、何をしてるんですか?」
「びゃ!? こ、これは別に変なことをしてたわけじゃなくて──」
「レイナ、このことは誰にも言わないで……」
「ア、アイズさん!? もうちょっと言葉を選んで!?」
何か、二人が訴えてきていることが微妙にかみ合っていないような……。もしかしなくともアイズの方が正しいんだろう。ベルはちょっと何を言ってるのか解らないですね。
そうこうしているうちに物陰に潜む黒の何かがだんだん遠ざかっていき、やがて小さな笑い声も聞こえなくなった。ちょっと壊れかけたおもちゃみたいな印象を受けたけど、きっと無関係だよね?
それにしても、誰にも言わないで、と来ましたか。何かいけないことでもしていたのかね?
「それは場合によります」
「レイナさぁぁぁん!?」
「ベル、ちょっと静かに」
アイズに窘められたベルは口をつむり、今にも泣き出しそうな表情で私を見つめてくる。君が何を訴えたいのか解らないけど、ひとまず静かにしておこうか? もしかしたらギルドが出張ってくるような事態なのかもしれないし。
「実は、私が戦い方を教えてる」
「へ?」
「ふぅ」
だから何でベルは安堵のため息をついているんだ……。
しかし、アイズがベルに戦い方を教えている……? どういう意味だ? そういうのはダンジョンに潜ってするものじゃないのか? バベルはまだ先の方にあるし、彼らが来たのはバベルとは真反対の方角だったし。どういうことだ。
疑問が顔に出たのか、アイズはつっかえつっかえになりながらも答える。
「えっと、私は幹部で、ベルは違うファミリアだから、密会してるのはまずくて」
……えぇっと? 言葉の節々が欠けてるけど、繋げると『アイズは【ロキ・ファミリア】の幹部だから、他の派閥であるベルと密会するのはいけないこと。それが公に出るとマズイ』ということかな……?
私はそういう煩事とはほぼ無縁の生活を送ってたから良く解らないけど……。もしかするとヘラクレスも無理して付き合ってくれていたのかな? うっわ、それ知らないで気軽に誘ってたわ。ゴメン。
雲の上にいるであろう親友に謝罪を述べながら、ひとまず整理する。
「とりあえず、私はこのこと(何のことか正直良く解ってないけど)を誰にも言いません。これで大丈夫ですか?」
「ありがとうレイナ。助かる」
「……え? レイナ? え? えぇ!?」
まぁた何かパニくり始めた。普段は良い子なんだけど、時々意味解らないこと口走ったりするからねベル。大体そういうときは早めに切り上げることにしてる。
「そういうことなので、私はここら辺で」
「あの、ちょっと待って」
「え? 何でアイズさんとレイナさんが知り合いなんだ!? 何で親しげなんだ!?」と小さく呟くベルを置いといてアイズは私を呼び止めた。アイズも意外と私と同じように解らないことは触らないことにしているらしい。
歩き去ろうとした足を止めて振り返ると、アイズは私の方に手を伸ばしてきたけど、途中でベルの顔を見て手を宙で彷徨わせた。
「ごめんなさい。本当にちょっとだけ、ここで待ってて」
「? 解りました」
今度は何だ? ひとまず待つけど。アイズはもう一度謝りを入れてからベルに肩を貸しながら細道の奥へ消えていった。どうでも良い事だけど、けが人を運ぶ速度じゃなかった。結構速かった。
手持ち無沙汰なので貰った槍で素振りをしていると、すぐにアイズがパタパタと駆けて帰ってきた。今度はベルの姿は見えず、どうやら彼の本拠地かどこかに送ってきたようだった。
「その、ちょっとお願いがあって」
「私に?」
はて、今の私が一級冒険者の悩みに役立てるものなのやら。不思議に思いつつも続きを待っていると、アイズはここだけはっきりとした口調で言ったのだった。
「私に、戦い方を教えて」
後書き
本当はもっと続くんですけど、続けたらクッソ長くなっちゃったんで区切ります。
書いてて思ったんですけど、Lv.10でも手こずる階層って実際どのくらいなんでしょうね? 六十階層までがLv.6の限界だと仮定するなら、百階層でようやく止まる感じですね。
でもこれ、Lv.6が三人とLv.5多数で手こずってるのが現状ですから、Lv.10ソロなら九十階層あたりが妥当なのでしょうか。
おお、原作でダンジョンの最深部が何階層か発表されるのが怖いぃ。もしこれで「七十階層までだZE☆」とか言われたら元も子も無くなっちゃうZE☆
まあ、そうなったら「オリジナルですから」とご都合主義を発動するんですけど。
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